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日韓友好に向けて


金さん

 蔡さんの友達が近くまで来ているというので、移動して会うことになった。
蔡さんの友達は、金さん(韓国ではもっとも多い名字)といい、蔡さんと同じ年齢でやはり大学の講師をしているという。
蔡さんがよく使う喫茶店が待ち合わせ場所だ。
ちなみに清州は喫茶店の多い町としても知られているという。
 喫茶店に向かう途中、橋の両脇にビニールハウスのような屋台が並んでいるところを通過する。
 外は寒くても中は暖かい。
生きたタコが泳いでいる屋台もある。
 韓国では、生きたタコを躍り食いするという。
 この一画は、三次会で主に使われる場所だそうで、今の時間帯はほとんどお客さんがいなかった。
 この屋台を通りすぎて、しばらく歩くと目指すべき喫茶店「詩想」はあった。
 漢字で「詩想」という名前の喫茶店が韓国にあるとは、思いもよらなかった。
 金さんは、喫茶店の中ですでに待っていた。
 金さんは、大学で漢文を教えているという。
 小柄で黒い帽子をかぶり、眼鏡をかけている。
 日本語はほとんどわからないが、長野県にホームステイしたことがあるそうだ。
日本語で話しをしていると、所々で「そうですか」と言う。
 話しの内容がわかっているのではなく、適当に言っているだけのようで、にこやかに笑いかける。
 「そうですか」は韓国語で「クロスミカ」だと教えてもらう。
この喫茶店でビールを飲みながら蔡さんの通訳をまじえ、楽しく歓談した。
ビールを飲むのには、全部飲み干さなければつぐことができないとか、女性から男性についではいけないと聞いていたが、この場ではそんなしきたりはなかった。
 金さんは、私を見て「仲佐さんは日本人としての違和感が全くない」と言った。
 金さんの持つ日本人のイメージも豊臣秀吉なのかもしれない。
非常に楽しい時間で、気がつけば夜の九時になっていた。
韓国では、女性が一人でタクシーに乗るのは危険とされているという。
 そういうわけで、金さんを家までタクシーに乗って送っていくことになった。
 金さんは、タクシーの中でも「日本では、お坊さんのお嫁さんになることはどのように思われているのか」ととんちんかんな質問をした。
 彼女は熱心な仏教徒だという。
 金さんの家は、工業団地を過ぎた田舎にあり、昔ながらの瓦屋根である。犬が五匹もいる。
 名残惜しいが、金さんとはここでお別れとなった。
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