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小説:真・恋姫無双 白の銀紅

序章
その八

VS太史慈




「私が最初です。よろしくお願いします。彪夾殿」

中庭のような、綺麗に整備された開けた場所に出ると、いきなり弓を構えられた。

「えーっと、太史慈って、弓?」

「ええ。見た通り、弓ですが…」

「…やりにくいなー…」

弓は遠距離から攻撃できる武器で、それを主として使う人間は、相手に接近させる事を絶対に許さない。それに、将を名乗っている者となれば、かなりの使い手だと思われる。

そして、対する瞬の武器は剣。間合いの違いは誰の目から見ても明らかだ。瞬は、太史慈から放たれる矢の雨からどう逃れるか、それがこの試合の焦点となる。

「…では、行きます!」

宣言し、構えていた弓からすばやく矢が放たれる。

試合のため、矢尻を潰した矢を使っているとはいえ、当たれば相当痛い。運が悪ければ、骨折までいくかもしれない代物だ。

「それっ!」

体を横に開き、矢の軌道から外れると共に飛ぶ矢を叩き落す。右に左にと、揺さ振られながらも全ての矢を叩き落していく。

「やりますね…。ですが…これなら!」

弓の弦が大きく引かれたかと思うと、矢が一息に三本ほど飛んでくる。

「おわっと!」

一本を叩き落し、残りの二本を体を捻って避ける。それからは、降ってくる矢の本数が増え、休む暇が無いほどに体を動かされる。

「母様。瞬ってば、かなり善戦してるけど、避けてばっかりね」

「確かにな…。まあ、あの矢の雨の中を突っ切っていくのは、いささか勇気がいるが…」

屋根のついた所で、呑気に勝負の行方を見守る親子。

「そうじゃな。しかし、佳澄の奴、力みすぎじゃ。あれならすぐに疲れてしまうぞ?」

冷静に分析する老将が一人。それ以外の者は、意外に黙ってこの戦いを見ていた。

「あー、もう!めんどくさい!」

右手に持つ剣を引き気味に構え、それに左手を添えて下段に構える。

「セイッ!」

下段から上段へと。一気に剣を振り上げる。気を込めた一撃は斬撃となり、太史慈を襲う。

「くっ!」

体を捻り、真横へと飛ぶ。かろうじて避けた斬撃は、後ろの壁に大きな傷を作る。

「な…」

「やべ…。配分間違えた…」

驚く太史慈。だが、それを放った瞬は罰の悪そうに頭を掻いている。

「なんて威力…。避けきれてなかったら、死んでた…」

「ごめん。次からは使わない。なんか、矢ばっかでイラついてたみたいだから」

「そうしてくれると助かる…。私にはあれを防ぐ術は思いつかない…」

言葉はそう言うが、双方武器は納めない。

太史慈は弓を構え、瞬は腰に差したもう一振りの剣を抜く。そして、それを交差させ、体の重心を落とす。

「はっ!」

気合と共に、弓から矢が放たれる。真っ直ぐに向かう矢を、瞬は左手に持つ剣で弾く。次に放たれた矢を、右の剣で弾く。その次には、戻ってきた左の剣で弾く。

「さーて、反撃開始と行きますか」

重心を落とした構えを解き、ゆっくりと相手へと歩み寄る。その間には、飛んでくる矢を左右の剣で器用に弾きながら進む。

「く!」

止まらないと悟ったのか、太史慈は矢を放つのを止めて、懐から短剣を抜き放つ。

そして、短剣を深く構え、音も無く走りよる。

ガキン!

剣同士が交錯し、激しい音を立てる。だが、その音が鳴り終わったと気づいた頃に、地面へと短剣が突き刺さる。

「終わりー。ってね」

そう軽く言ったと同時に、太史慈の首には剣が突きつけられていた。

「…負け、ですね。良いでしょう。私の真名は佳澄。この名、あなたに授けます」

「俺は瞬。って知ってるよね?」

手を取り合い、真名の交換を行う。その顔には、清々しさが感じられた。


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