小説:真・恋姫無双 白の銀紅
序章
その五
将への誘い
賊の討伐が終わった後、いきなり本陣へと招かれた。
「此度は賊の討伐に力を貸していただき、嬉しく思う」
簡易の天幕の中なので、大仰な事はできないが、それなりの設備が揃った所で、いきなりお礼を述べられた。
「いえ、自分としてはじこぼーえーってのをしただけなんで」
「そうか。だが、礼は言わねばならんよ。私は孫堅文台。呉の太守だ。で、こっちから…」
「その娘の孫策伯符よ。あ、一応娘ねー」
「軍師をしている、周瑜公瑾だ。聞いてみたい事は山ほどあるが、後にしよう」
「わしは黄蓋公覆じゃ。全く、若いのにたいしたもんじゃのう」
「自分は彪夾鴻雅。よろしく」
簡単な自己紹介が終わり、孫堅が核心をつくように聞いてくる。
「一つ質問だ。とは言っても、ここにいる全員が同じ疑問を持ってるけどね。…あんたがあの紅い閃光を出したのかい?」
「紅い閃光?」
「ああ。我々の放った矢を全て消し去った、紅い光だ」
「凄かったわよー。気が付いたら紅く光ってなくなっちゃてるんだもの」
周瑜、孫策が補足するように言葉を発す。
「ええ。それなら出しましたよ。あんな矢の壁に降られたら死ぬしかないんで」
「そうか。あのような技、見たことが無いのでな」
それからは途方も無い質問攻め。何処から来たのか、とか。何故あんな所を一人で、しかも徒歩でいたのかとか。色々な事を聞かれた。
しかし、今まで黙っていた黄蓋が口を開いた事で、それは唐突に終わった。
「お主…噂に名高い『白の銀紅』ではないのか?」
「?祭、なんだい、その二つ名は?」
「夏蓮殿。最近、城下や周りの村で噂になっている男の名です。何でも、普通は人の良い好青年が、賊を無償で討伐してくれると」
「なに?それじゃ義勇軍みたいな物じゃない」
「いいや、策殿。違うのは、その男は賊をたった一人で潰すと言うのです。それこそ、何万人でも」
「何万人も、とは。それでは、その噂にも数が流れているのでは?」
「いや、そこまではわしも知らん。ただ、噂と言う物は尾ひれが付いて何ぼの物じゃからな」
「で、彪夾がそうだと言いたいのか?祭よ」
「確証は無いがの。噂に流れている背格好が似ているのじゃよ。白の輝く髪は長く、紅い目は燃えるよう。暗い外套に身を包み、腰には二振りの剣…」
「って、そのままじゃない」
「確かにそうだな」
その言葉と共に、彪夾へと視線が突き刺さる。
「………」
それに対し、彪夾は少しむず痒そうにしている。
「…よし、決めた。彪夾、あんたうちで働かないかい?」
「夏蓮様!?」
「なんだい冥琳。戦力が多いに越した事はないし、あたしはこいつがなんとなく気に入ったんだ。…で、どうする?」
周瑜が咎めるのを一蹴し、身を乗り出すように問いかけてくる。
「働くって、何すんの?」
地が出てしまっているが、この際気にしない事にする。
「何って、そりゃ城の中で政務とか、兵の調練とか…他にも色々あるだろう?」
「じゃあ、そのよくわかんない事をしてれば、飯は食えるの?」
「ああ。給金も出るぞ。…の前に、客将をしたことが無いのか?」
「客将?聞いた事ないけど…」
そのような知識は持っていない。生まれた頃、物心付いた時には独りで、賊を倒していれば飯が食えると認識していた俺にとっては、無用の知識だった。
そのため、料理やその他の雑多の技能はそこそこあるが、そういう小難しい事は解らないのだ。
「ねえ…。あたしはちょいと間違えてしまったのかね?」
「かもしれませんね…」
「そうね…」
「そうじゃの…」
「?」
四人全員がいぶかしむ様子に、俺はただ首を傾げるばかりだった。
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