小説:真・恋姫無双 白の銀紅
序章
その十一
VS夏蓮
「全く、老いぼれには手加減無しかの」
「え?手加減は無しって言ったはずだよね?」
「まあ、そうじゃが…」
「そうそう。…さて、あと一人だよね」
最後の一人、夏蓮を見据える瞬。
「そうだ。さて、この南海覇王を思いっきり振るえる相手に巡り会えるとはね…。今からでもゾクゾクするね」
孫呉の宝剣、南海覇王を抜きながら、ちょっと危ない笑顔を浮かべる夏蓮。
「やば。母様のいつもの癖が…」
「雪蓮。お前も似たような物だろう…?」
「ぶーぶー。私はあそこまでならないわよー」
その後ろで雪蓮と冥琳が何かを言っているが、瞬には距離上聞こえなかった。
「あのー、夏蓮さん?顔が怖いよ?」
かなり逃げ腰で問う瞬。それにとってもいい笑みで答える夏蓮。
「大丈夫。祭の時みたいにやってくれればいいから」
「なにを!?」
ずっと笑っている女の人は、失礼だがとっても怖い。しかも、眼が笑っていないのだから。
「フフフ…。さあ、楽しみましょう?」
いきなり、予備動作もなしに突っ込んで来る夏蓮。そこからは、横薙ぎに空気を引き千切りながら迫る剣。
「うわっ!」
咄嗟に剣を交差させて受ける。だが、十分に体勢ができていなかったために大きく吹き飛ばされる。
「まだまだ!」
さらに追撃を仕掛ける夏蓮。防御の事などまったく考えない、完全な剛の型に瞬は防戦を余儀無くされる。
「く…。重いな、くそ…」
無意識でやっていた剣の強化を、意識して氣を流し込む。それでもやはり打ち手が違う剣だ。ただの兵が使うような、予備のたくさんある剣を使う瞬は必死に耐えていた。
「(やばい…。絶対に後何合かでどっちかが折れる…!)」
名工が打った剣は、材料の質からして違う。一本物と大量生産品では、強度は火を見るより明らかだった。
バキャァァン!
耳を塞ぎたくなるような音と共に、ついに瞬の剣が折れる。一本となった剣を両手に持ち替え、攻撃を捌く瞬。
「もう、一本も、へし折ってあげる、わ!」
さらに攻撃は苛烈さを増し、その様はまるで暴風。嵐のような連撃に、瞬はなす術が無いかのように思われた。だが―――
「あれは!」
雪蓮が叫ぶ。瞬が雪蓮、祭との試合で見せたように凄まじい速さで動く。しかし、今回は用途が別で、夏蓮の攻撃を全て避けている。
剣の暴風の中をひらりひらりと避ける瞬。その様はまるで蝶が踊る様だ。
「よ!ほ!は!」
「く!」
さすがに夏蓮にも疲れが見え始める。今まで全力で剣を振っていたのだから、それも当然といえば当然なのだが。
「ハアァァァーーー!!!」
「っ!そこ!」
体力の切れかけた夏蓮が、勝負を決めるために気合を入れて剣を振る。そこに現れた僅かな振りの大きさを、瞬は見逃さなかった。
斜め上段から振られる刃にあわせ、体を振られる剣の角度に合わせる。そこからすぐに体を落とし、一気に足に力を入れる。
ゴス!
「がはっ!」
そしてそのまま爆発的に地を蹴り、拳を鳩尾に叩き込む。夏蓮はそれをまともに受け、鈍い音を奏でながら吹き飛ぶ。その吹き飛ぶ前の空間には、剣を左手に後ろに構え、右手の拳を真っ直ぐに突き出した瞬が残された。
「やば…。またやりすぎた…」
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