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小説:真・恋姫無双 白の銀紅

序章
その十

VS祭




手に剣を構え、こちらへとやってくる祭。

「あれ?祭って弓じゃなかったっけ?」

先程の討伐の折には、確かに弓を使っていたはずだ。それなのに、手に持つのは兵が使うような、平凡な剣。

「なに、わしはこっちでもいけるしの。佳澄とは弓でやったのじゃから、別に良かろう?」

「まあ、そっちの方がいいんだけどさ…」

「ん?なんじゃ、一本でやらんのか?」

いつまでも剣を納めない瞬に、祭が不思議そうに訊ねる。

「そんなに残りの手が少ないし…」

「ふむ。…なら始めるとするか、手加減は無しじゃぞ」

「はーい」

両者が構えを作る。祭は右手に剣をダラリと構える格好で、瞬は体を横にして、左の剣を下段に突き出し、右の剣を上段に逆手に持って構える。そのまま構えを動かさず、両者睨み合う。

「…試合だというのに、この緊張感…面白いのぅ…」

「…そりゃどうも」

口から漏れる言葉と、その体から醸し出される空気は全く違う。抑えきれない闘気が、体から溢れ出して瞬を圧迫する。

「ふむ。動かんのもつまらんの。こちらから行かせてもらうぞ!」

言葉が言い終わると同時に、そのまま走り寄って来る際。そこから繰り出されるのは鋭い右からの打ち上げ攻撃。それを左の剣で受け止め、すかさず右の剣を振り下ろす瞬。祭は体を捻って避け、その捻りの回転を入れたまま剣を振る。避ける隙を与えない動きに、瞬は剣を交差させて受け止める。

「重いなー」

「ふん。あれを受け止めるとはなかなかやるの…。結構本気だったのじゃがな」

「力を受け流せてなかったら、剣が折れる所だったよ…」

「よく言う…。その気で覆われた剣は、簡単には折れんじゃろぅ」

瞬の持つ剣を顎で刺しながら指摘する。

氣とは、体内にある誰しもが持つ力だ。その力の容量が多い、又は独力で使えるようにした者だけが氣を操れる。一般的に氣は大きく二つに分かれ、内氣功と呼ばれる物と外氣功と呼ばれる物がある。

内氣功は身体強化に使われる。なので、容量云々ではなく、独力の修行で氣の覚醒ができる。対して、外氣功は体外に氣を放出し、それを攻撃などの用途に使う事ができる。他にも用途はあるのだが、外氣功が扱える者は生まれ持った氣の容量が多いため、一番それが扱いやすいという事もある。

だが、そのような生まれ持った才覚にも、天才という分類は分けられる。外氣と内氣、本来はどちらか一つだけでも修めるのが大変な物を、両方とも修めてしまう者がいるのだ。

「外氣と内氣…。どちらも使えるとは思わなんだ」

「外氣?内氣?ひょっとしてこの紅いの?」

「そうじゃが…気付かずに使っていたのか?」

佳澄に放った紅い剣閃。あれは外氣が外に以上放出された証だ。次に、剣を覆ううっすらとした紅い膜。内氣を剣へと伸ばし、剣の強度を上げているのだ。

「(…これなら、他の者にも見えているのではないのか?)」

氣の容量が大きい者は、氣の才覚がある者以外にもその光が見えるようになる。それが一流の武人となれば当然だ。

「(それに…剣に氣を這わせるなど、この目で見るまでは信じられんかったが…わしには無理じゃな…)」

本来、内氣は身体強化にしか使えない。なぜなら、無機物に自分の血を流す事など無理だからだ。自らの血の巡りを強化する事によって、体内の氣は巡る。それを体外の無機物に流すのは至難の業だ。それをほぼ無意識にやっているのは、ありえない事だ。

「ふーん。まあでも、これの所為で昔は大変だったんだよ…」

遠い目をして、昔を思い出している瞬。

「そうか…。じゃが、今は試合中じゃぞ!」

容赦なく飛んでくる攻撃。それを少し危ないながらも受け止める瞬。

ガン!

「もう…。ちょっとは待ってよ…」

「…そ、そういうのは後にせい!」

「それもそうだね。…後一人残ってるし、これで終らせる!」

「ハア!」

瞬の気合の声と共に、瞬の姿が掻き消える。雪蓮の試合の時に見せた動きに似た動きに、祭の体が一瞬固まる。

「く…。速い!」

「こっちだ!」

掻き消えたと思ったら、右に。その次は左。その動きが少しずつ見えなくなってくる。

「なに!?ここから見てても見えないわよ!」

「あたしも見えん。なんと言う速さだ…!」

雪蓮と夏蓮が遠く離れた所から感想を述べる。

「………!」

佳澄は弓を使う戦法のためか、その動きから何かを学ぼうと必死に目が動いている。

その他の軍師、虎の次女は完全について行けずに目を丸くしていた。

「……そこか!」

速すぎるためにもはや見えなくなってしまった瞬を捉えるため、祭がわずかに感じ取った氣を頼りに突きを繰り出す。

「残念。はずれ。…そして、終わり」

貫いたのは何も無い虚空で、次の瞬間には祭の首に剣が突きつけられていた。



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