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小説:アクレニア戦記 ~二つの決意~ (完結)

一章 変化の予兆

 チュンチュンチュン……。
 いつもと変わらない、鳥の鳴き声が響く静かな朝。
 だが、周りには以前崩れた瓦礫と、魔物の亡骸が残っていた。
 そんな朝の空気の中、ユフィーは案内された部屋につけられた鏡を見ていた。いつもと違う、金色の髪を下ろした状態で鏡をまっすぐ見つめている。
「…………」
 そして、無言のままに髪を結っていく。
 左には黒い色のいつものリボンを。右には──。
「……ミーナ……。……あたし、頑張るね」
 青緑色のリボンを。
 固く結ばれた決意のリボンは、ユフィーの心を表していた。
「……よしっ! 行きましょうか!」
 頬を両手でパシリと叩くと、後ろの壁に立てかけてあったスターレインを手に取る。
 そして、もう一度鏡を一瞥した後、ユフィーは部屋の扉を開けた。
・・・
・・
・
「よし。行こうか、ユフィー」
「ええ。行きましょう」
 シオンとユフィーの二人は城門の前に来ていた。
 シオンは腰にカテドラルを吊り、ユフィーは背中にスターレインを背負っている。
 そして、その二人の前にはクルトとリサーナ、トラヴァスまでもがいた。
「……リサーナさんとトラヴァスは分かるんだけど、どうして父上までここに?」
 王であるクルトが、こんな時に出てきていいわけはない。
 クルトとしては、ただ単に息子を見送りたかっただけだったが、シオンはその意図に気づかなかった。
 だからこそ、クルトは無言で一歩前に進み、シオンにあるものを手渡す。
「……これは?」
 シオンに手渡されたのは、質素な銀色のネックレス。
 丸形のプレートに十字架が彫られた、何の変哲もないネックレスだ。
「これは『時の証(エヴィデンス・クロック)』という。帝国王家に伝わる秘宝だ。お前を守ってくれるだろう」
「『時の証』……。ありがとうございます」
 シオンは時の証を首にかけると、クルトに向かって礼を言った。
 その礼をクルトは再び無言で受けると、後へと下がった。
「じゃあ、行ってくるね。リサーナさん、トラヴァス、父上」
「はい。お帰りをお待ちしております」
「頑張って下さい。俺も待ってますから」
 リサーナとトラヴァスは、それぞれの言葉でシオンたちを送り出す。
 そして、その言葉を背にシオンとユフィーは歩き出した。
 この旅が、自らのためになるものだと信じて。
 それぞれの揺るがぬ決意を持って、二人の若者は歩き出したのだ。


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