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小説:アクレニア戦記 ~二つの決意~ (完結)

エピローグ 決意の未来へ



 時は流れ、帝国では再び戴冠式が行われようとしていた。
「いやー、シオン君って本当いい所住んでるよねー」
「そりゃ王族なんだから仕方ないでしょう? 逆に質素極まりない所に住んでる方がおかしいわよ」
「ふわー……やっぱり綺麗ですねー。私の家の所にある物なんかより高そうな物もいっぱい置いてますー」
「……皆? 何でここにいるのかな?」
「私がお通し致しました。殿下のご友人だと聞いたもので」
「リサーナさん。それでも簡単に通しちゃダメでしょう……」
 シオンの心労はかなり極まっていた。
 戴冠式前のあの異様な雰囲気を二度目で受けているのに、そこにいるのは前回と違った旅の仲間の姿。なぜいるのかと問い詰めてみれば、おもしろそうだからの一点張り。
 ユフィーは元々帝国領に住んでいたためにここにくるのは簡単なのだが、リィナとカナに至っては王国の者のはずなのだ。
 この場所に来るには相当の労力があったはずなのだが──。
「兄様と父様に行きたいと言ったら行ってこいと了承してくれたので来ました。シリアナ王も来たがってたみたいでしたよ?」
 とのことなのである。
 その事にシオンは頭を痛めたが、せっかく来てくれた友人を追い返す訳にもいかない。なので正式な客人として迎え入れていた。
 そして、カナに至ってはどこからこの情報を仕入れたのか、なぜかかなりの量の食料を持ってシオンに会いにきたのだ。
 曰く、「あの時の鉱石がバカみたいに売れてねー。この腕を直すのにも一役買ったばかりか、それでも十二分に余っちゃったから、お祝いのために持ってきたんだよあっはっはっはっは!」
 その際にはもう持ってきていた食料を口にしていたことは割愛する。
「で? シオンはもう行かないといけないんでしょう? さっきから外がかなりうるさいわよ?」
「ああうん。そろそろだね。父上も待っているだろうし、行かないと……」
 重い腰を上げ、ユフィーに言われた通りに出て行こうとするシオン。
 因みに、服装はあのダサさ極まりない服装ではなく、蒼を基調とした質素なロングコートに変わっていた。リサーナがシオンの意見を取り入れて作らせたものである。
「いってらっしゃーい! 私たちはここで見てるよ! 特等席をありがとね!」
「カナ、あんまりはしゃぎすぎるとまたどやされると思うよ?」
「う……それは勘弁……」
「私が見てますから大丈夫ですよ」
「それもそっか。じゃあユフィー、リィナ、カナをお願いね?」
「はい!」
「何か釈然としない……」
「自業自得でしょ? まったく……。……あ……し、シオン。ちょっと待ってくれない?」
「ん? なに、ユフィー?」
「……これ///」
 耳まで顔を真っ赤にさせたユフィーが、シオンにある物を手渡す。
 それは、彼女自身の魔力で作られた氷のペンダント。翼を象った氷のそれは、日の光に当たって綺麗な輝きを放っていた。
「わぁ……。ありがとう、ユフィー」
「……お、お祝いよ///。念を込めて作ったから、そうそう簡単には溶けないわ。これからは、王様になって全然会えなくなるんでしょう?」
「うん。最低でもここ一年は会えなくなるかもね。結構忙しくなると思う。彼らに頼まれたこともあるし」
 あれから、クロストティアたちはひっそりと暮らすことを選んだ。
 さすがにあの砦内で暮らすことは不可能に近かったために、シオンが帝国領に招いて間借りした村の一角に住んでいる。
 彼らの主張としてはそんなに長く生きられないから、こんな設備はいらないとの事だったが、シオンはそれを頑なに拒否したために渋々と言った形だが。
 だが、シオンはそれでよかった。彼らが望む世界を、彼らが生きているまでに少しでも実現する。
 それがシオンの今の目標なのだから。
「じゃ、行ってくるよ。これ以上長引かせる訳には行かないからね」
「ええ。いってらっしゃい」
 ユフィーは珍しい暖かな笑顔でシオンを送り出し、それを見たシオンは同じ暖かな笑顔で応え、部屋を後にした。
「あれー、ユフィーちゃんついていかなくて良かったの?」
「いいわよ。あそこからは、あたしたちが歩んでいい場所じゃない。あそこはもう、シオンの道よ」
「そうですね。あ、見えましたよ! 何かカッコいいですねー……」
「そうだねー……。ユフィーちゃん、頑張れ!」
「え? 何を頑張るんですか?」
「あなたは知らなくていいわよ、リィナ。……カナ? 少しお話ししましょうかね?」
「へ? ええええーーーっとぉぉ……」
 汗をだらだらと流しながら、威圧感たっぷりのユフィーの視線から逃れようとするカナ。
 ユフィーはそんなカナの頭を握り、少し懲らしめてやろうとしていたが、シオンの演説が始まったことにその手を止めた。
「──ここに宣言する! 僕は王として、あなたたちに約束しよう! 僕が目指す世界は、『分かり合う事の出来る世界』! そのために、僕は誓う! 王として、僕は決して屈しない! そのために、どんな困難が待ち受けていようとも! 僕は、あなたたちの笑顔を守るために、戦うことを誓います!!」
 わぁぁぁーーーー!!!
 拍手が巻き起こり、ここに新たな王が誕生した。
 フォーゲルノート帝国国王、シオン・セナ・ファルカスが。
・・・
・・
・
「ふぅ……。やっと終わったよ……」
「お疲れ様。格好良かったわよ?」
「はい! こんなに皆から好かれているなんてすごいです!」
「うん。滅多に見ないよね、あんな人気ぶりは」
 戻ってきたシオンに、少女達の労いの言葉がかかる。
 その労いを受けながら、シオンは椅子に座り、大きくため息を吐いた。
「はぁぁ……。でも、ここからが始まりだ。やらなきゃいけないことは、たくさんあるんだから」
「じゃあ、あたしたちも手伝うわよ?」
「はい。私は王国側ですけど、だからこそ出来る事がありますから!」
「私も私も! 絶対こっちの方が楽しいもん! トレジャーハンターやってるより、絶対に食い扶持稼ぎやすいしね!」
「皆……」
 約一名不純な考えが混じっている気もするが、それもいつもの事なので、シオンは素直に感謝していた。
 一人でできることは少ない。だからこそ、協力しあうのが人間なのだ。
 そうやって人は集まり、国になり、世界になる。
 その事を、シオンは今まさに噛み締めていた。
「ありがとう。僕は、一人じゃないよね」
「当たり前じゃない。それに、あたしの生きる意味はあなたなのよ? だから、あたしはあんたについていくわ」
「恩人には一生をかけて報いろって言われましたからね。これぐらいは当然ですよ!」
「うんうん。楽しくないと! 私の決意は、シオン君がくれた。笑っていられる世界……一緒に作ろう!」
「うん! 皆、これからもよろしく!」
 そして、少年と少女たちは手を取り合った。
 これが大きな一歩。
 これを、世界に広めていく。
 それが、この世界を変えていくものだと信じて。
 そして、この想いこそが『決意』。人を動かし、繋げていく。
 決意こそが、『想いの力』なのだ。

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