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小説:アクレニア戦記 ~二つの決意~ (完結)

五章 すべての終わり

 コツコツコツ……。
「……誰もいないね」
 当然魔物や、ルナニスクルメアの構成員から攻撃を受けると思っていたシオンは、何もないことに驚いていた。
「……ええ、やけに静かだわ」
 四人の歩く石畳から鳴る足音だけが異様に響く空間に、ユフィーは警戒の色を濃くする。
「人の気配は……あるんですけど……」
 周囲に気を配りながら歩くリィナだが、掴めている気配はあるのにその存在が希薄な事に顔をしかめていた。
「お宝あるかなー……お宝、お宝、お宝……」
 一人完全に趣旨がズレてきているが、それでも周囲を気にしている事に代わりはないようだ。
「……でも、これは迷うね、下手したら」
「確かにそうね。何でこんなにも同じ形の柱しかないのかしら」
「……私は何も言いませんよ……」
「うん。リィナちゃんは何も言えないね」
 砦の中の風景がいっこうに変わらないことに、シオンとユフィーが悪態をつく。
 それに合わせ、リィナが恨み言を吐くかのように呟いき、カナはそのリィナの呟きに、小さく突っ込みを入れた。
 この四人、今から戦いを始めるというのになかなかに和やかである。
 バチバチバチ……。
 爆ぜる音が響く。
 今まで和やかに進んでいた四人が、その音と共に臨戦態勢を整える。
 シオンはカテドラルを、ユフィーはスターレインを、リィナは風燐華を、カナはレストーションを構え、油断なく辺りを見渡す。
 バチッバチッ。
 電気が流れ、落ちる音がシオンたちの目の前で鳴り響く。そして、その余韻が冷めやらぬ中で、四人の人影がシオンたちの前に現れた。
「よぉ。久しぶりだな、てめぇら。と言っても、約一名には初めましてか?」
「あら、あなた挨拶が出来たんですか。これからもその心がけを忘れないで頂きたいですね」
 律儀な言葉を吐く『エルブレイア』に、『ヒーナス』が信じられないと言った声をあげる。
「ちっ。やっぱ外にいる奴等は使えねぇな」
「…………」
『コーガディーガ』は憎々しげに空を見上げながら、もう一人の黒髪の女性はただ無言でシオンたちの前に現れた。
「君たちは……!」
「……やっぱりあんたたちがいるわよね……!」
「……今度は逃しません」
「ああども、初めまして」
「「「律儀に返事をするな!」」」
「ええ!? 怒られるような理由あった?」
 カナの台詞に、シオンたち三人が声を揃えて突っ込みを入れる。
 その勢いに、カナは少々驚きながら小さくなっていく。
「はっはっはっ!! やっぱりおもしれぇな、全くよ!」
「黙って下さい。一番最初に死ぬくせに」
「んだとてめぇ! お前が死ねよ!」
 大声をあげて笑う『エルブレイア』に、『ヒーナス』の辛辣な台詞が刺さる。
 それに反応してしまったため、食ってかかるようにして『ヒーナス』の体を掴もうとする『エルブレイア』。
 だが、今まで無言を貫いていた黒髪の女性が、自らの隠し持っていた短剣を引き抜いて止めた。
「……私からすれば、お前たちなど全て雑魚。喚くな、黙れ」
「ぐぐ……」
 その女性の威圧感に、『エルブレイア』は渋々と言った様子で、『ヒーナス』に伸ばしていた手を引っ込める。
「へっ! いいじゃねぇか! いい加減に始めようぜぇ!?」
『コーガディーガ』が瞬時に取り出したソルトレスターを振りかざし、石畳に向かってそれを振るう。
 石畳に突き立てられたソルトレスターから魔力が流れ、石畳を変質させる。
 剥がれていく石畳が鋭利な形状へ変化し、捻れ、一つ一つ歪な槍へと変化していく。
「殺せ! 『土槍煉獄(ヘル・スピアース)』!」
『コーガディーガ』が命じた通り、死を孕んだ歪な槍がシオンたちに迫る。
「ちっ! 『結晶氷陣(クリシミナル)』!」
 舌打ちと共にユフィーのユターレインが輝き、一瞬にして分厚い氷の壁が出来上がる。
 その氷の壁にぶつかると思われた土の槍は、急激に方向を変えて槍を生み出した石畳へと突き刺さった。
「ざぁーんねぇーん。ホントはこっちだ! 消し飛びなぁ!」
 ドゴォォォォン!
「なっ! 床が!」
 楽しそうに笑った『コーガディーガ』の深い笑みと共に、石畳に突き刺さった土の槍が爆発する。
 砦全体を揺るがす大きな音は、絶大な破壊力を持って石畳の床を破壊した。
「うわぁぁぁ!!」
「くっ! シオン!」
「キャァァァ!!」
「……うわーなんかなつかしいー……」
 石畳の床の崩落に巻き込まれた四人は、瓦礫と自らが出した悲鳴と共に落ちていく。
 そして、四人が落ちた穴を見つめながら『コーガディーガ』は言う。
「これでいいんだろ? これでよぉ」
「けっ! 俺はこのままでもいいってのに、物好きだねぇ……」
「上出来でしょう。それに、この方が私たちとしてはやりやすいのでね」
「……行くぞ。奴等は必ず来る。そのための分断だ」
「へーいへい」
 深緑色の翼を生やして飛ぶ黒髪の女性に、『コーガディーガ』はソルトレスターを担ぎ直して従った。
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