小説:アクレニア戦記 ~二つの決意~ (完結)
五章 すべての終わり
チュンチュンチュン……。
翌朝。
「俺たちはいけないから」
「ユリたちは、ここから動いちゃいけないの。だって、こここそがユリたちのいるべき場所だからね」
双子はそう言うと同行を辞退した。
その事に少し残念がったシオンだったが、どうすることもできないのでそこで別れることを了承した。
ユフィーなどはいつも通りにそっぽを向いていたが、カナはユリとは別れたくないらしく、最後までごねた。
曰く──。
「あんな服もう何回も着れないんだよ!? まだまだいっぱい可愛い服があるのに!」
「知らないわよ。周りにはほぼ強制的に着させたくせに」
「見るのはいいですけど、着るのはちょっと……」
このような女性陣の意見により、カナは終わったら会いにいくという形で折れた。
そして今現在は、拠点に向かって移動しているのだが──。
「……これも王道っていうのかな?」
「面倒くさい方の、ね! 『死氷結(キラースノット)』!」
頻繁に襲いかかってくるようになった魔物の群れに、ユフィーの魔法が炸裂する。
細い縄となった死の氷は、魔物の群れを搦め捕り、結びあげ、その命を終わらせていく。
シオンはそのお零れを掃除するように、カテドラルで切り裂いていった。
「こんなの王道って言いませんよー。王道って言ったら、何か大きな人がお城で待ってるんじゃないんですか?」
風燐華を振りながらリィナがそんな愚痴をこぼす。
風を纏った攻撃ではないために少し時間がかかっているが、それでも魔力を浪費するよりはいいと考えたのだろう。
足のみを動かしているような滑らかな動きで、魔物を切り裂いていく。
「リィナちゃん。それじゃおとぎ話にある『魔王』様だよ……。っ! はぁぁぁぁ!!!」
リィナの言葉を返すことで少し油断していたのか、顔のすぐ横を通り過ぎていった死に驚くカナ。
だが、すぐに頭を切り替え、刺突の壁を繰り出す。
レストーションの長さを活かし、相手の間合いに入れさせない。凄まじい速度で繰り出される突きは、少しばかりの残像を持って魔物を突き殺していった。
「あ! リィナ、あった! あそこだ!」
突然声を上げ、視界の端に写った目標を指差すシオン。
シオンが指差したのは、完全に死を連想させる切り立った崖。所々に鋭利な土の突起が突き出しており、落ちている状態でぶつかればどうなるか容易に想像できた。
それを見たリィナは少し嫌そうな顔をしたが、すぐに手元にある風燐華を見て語りかける。
「……手伝ってくださいね、『風燐華』。……では、行きます! 風よ。渦巻きを我が足元へ。上昇せしは、己が肉体。『風華昇(ウィニーアップ)』」
四人の足元に魔力が集中し、その魔力は風となり、足場となる。
少し心許なくなった地面の感触は次の瞬間浮き上がり、四人の体を上空へと誘う。
「よし。リィナはこのまま制御をお願い、僕が進路を言うから。カナとユフィーは何かあったときの迎撃を。結構足場が心許ないから、力があまり入らないだろうけど」
「分かりました、頼みますね」
「了解よ」
「うーん、やるだけやってみるよ。いざとなったら振り回すし」
シオンの指示に、三人は各々の反応の仕方で応える。
リィナは制御のために風に近くなるようにしゃがみ込み、ユフィーはスターレインを構え、カナはレストーションを担ぎ直す。
それを確認したシオンは、自らの役目を果たすため、地図を片手に進行の指示を飛ばしていく。
所々突き出る土の塊を器用に避け、着々と目的地に近づくシオンたち。
「っ! カナ、そっち頼むわ!」
「せやぁ!!」
翼を持った魔物たちはシオンたちを追いかけており、その迎撃をユフィーとカナは慣れない足場ながらも務めていた。
ユフィーの遠距離での迎撃に、カナがその迎撃の網からもれた敵を刺し貫く。その貫いた敵を、カナは器用にその迫る群れの中に投げ返したりして、進行を防いでいく。
「シオンさん! あれ!」
終わる事のない敵の攻撃に少し焦っていたシオンに、リィナの驚く声が上がる。
その声の雰囲気に、何事かと思ったシオンだったが、その視線の先を見つけると少しだけ安堵の息を漏らした。
「あれが『ケニハルナ砦』の裏門、いや、ルナニスクルメアの本拠地か……。リィナ、あの門の前の広場に降りるよ」
「……狭くないですか?」
「まあ、少しね」
シオンが指示したのは、人の身長などゆうに超える扉の前に開かれた広場。おそらく、扉が開く最低の範囲だけを確保しているのだろうが、今のシオンたちが求める範囲には少し心許なかった。
なにせ、敵の攻撃を逃げるように迎撃しながら降りていく必要があるのだ。山小屋一軒も確実に建ちそうにない範囲には、誰もおりたくはないだろう。
「……跳び移ってもいいですかね? ここからみんなで跳んだ方が早い気がするんですけど……」
「出来るの? そんなこと」
「今の足場の魔法を弱い攻撃魔法に変えたら、それを足場にして蹴ることが出来るらしいです。カイさんが言ってました」
足場の説明をしながらリィナはシオンに提案する。
普通であれば、四人が今の状況のままゆっくりと目的地に降りられる方がいい。だが、目的地は狭く、敵の襲撃もやむ気配がない。
だからこそ、自らの体一つで突っ込んみ、その背後に向けて攻撃魔法を放って囮にした方がいいと、リィナは提案したのだ。
「出来るならそっちの方がいいか……。じゃあリィナ、それで頼むよ。ユフィーは少し無理だろうから、僕が何とかするよ」
「分かりました。すぐにできるので、いきますよ?」
「分かった。カナ! 今から足場がしっかりするから、あの場所まで跳んで!」
その指示が出た頃にはだいぶ下がった所まで来ており、カナやリィナのような身体能力が高い者には何ともないような高さになっていた。
「よーし! ならば、跳ぶぞー!」
「ちょっと、あたしにそんな脚力は……」
「ごめんユフィー。黙ってないと舌噛むよ!」
「じゃあ行きます! 『風翔凛(ラン・ウィニング)』!」
「って、キャァァァァ!!」
リィナの魔法の呪文とユフィーの悲鳴が重なる。
それも当然だろう、一瞬だけ地面とほとんど変わらなくなった風の足場を蹴り、自らを担いだシオンが空中に飛び出したのだから。
隣を見ると、カナはありえないぐらい楽しそうに跳んでおり、リィナは追ってくる魔物に冷静に生み出した竜巻をぶつけていた。
そしてユフィー自身はと言うと──。
「…………///」
真っ赤になって、いわゆるお姫様抱っこという状態を満喫していた。
ジャリッ。
意外と危なげなく降り立ち、シオンは腕の中のユフィーを見る。
「ごめん、ユフィー。こうやって跳ぶんだったら担ぎ方がこれしか見つからなくて……」
「え、ええ!? い、いいいえ、べべべ、別に構わないわよ///!?」
顔を赤くしながら猛然と真後ろに動くユフィー。
そして、その先には扉が。
ゴンッ。
「っつ!!」
ギギィ……。
当然後ろを見ていないユフィーは綺麗にぶつかり、門に体を強かに打ち付ける。
だが、怪我の功名とでも言うべきか、その人の背丈を優に越える門はゆっくりと開いていった。
「……絞まらないけど、入ろうか」
「それが私たちですよ!」
「リィナちゃん、それ意味ないから」
「…………///」
・・・
・・
・
翌朝。
「俺たちはいけないから」
「ユリたちは、ここから動いちゃいけないの。だって、こここそがユリたちのいるべき場所だからね」
双子はそう言うと同行を辞退した。
その事に少し残念がったシオンだったが、どうすることもできないのでそこで別れることを了承した。
ユフィーなどはいつも通りにそっぽを向いていたが、カナはユリとは別れたくないらしく、最後までごねた。
曰く──。
「あんな服もう何回も着れないんだよ!? まだまだいっぱい可愛い服があるのに!」
「知らないわよ。周りにはほぼ強制的に着させたくせに」
「見るのはいいですけど、着るのはちょっと……」
このような女性陣の意見により、カナは終わったら会いにいくという形で折れた。
そして今現在は、拠点に向かって移動しているのだが──。
「……これも王道っていうのかな?」
「面倒くさい方の、ね! 『死氷結(キラースノット)』!」
頻繁に襲いかかってくるようになった魔物の群れに、ユフィーの魔法が炸裂する。
細い縄となった死の氷は、魔物の群れを搦め捕り、結びあげ、その命を終わらせていく。
シオンはそのお零れを掃除するように、カテドラルで切り裂いていった。
「こんなの王道って言いませんよー。王道って言ったら、何か大きな人がお城で待ってるんじゃないんですか?」
風燐華を振りながらリィナがそんな愚痴をこぼす。
風を纏った攻撃ではないために少し時間がかかっているが、それでも魔力を浪費するよりはいいと考えたのだろう。
足のみを動かしているような滑らかな動きで、魔物を切り裂いていく。
「リィナちゃん。それじゃおとぎ話にある『魔王』様だよ……。っ! はぁぁぁぁ!!!」
リィナの言葉を返すことで少し油断していたのか、顔のすぐ横を通り過ぎていった死に驚くカナ。
だが、すぐに頭を切り替え、刺突の壁を繰り出す。
レストーションの長さを活かし、相手の間合いに入れさせない。凄まじい速度で繰り出される突きは、少しばかりの残像を持って魔物を突き殺していった。
「あ! リィナ、あった! あそこだ!」
突然声を上げ、視界の端に写った目標を指差すシオン。
シオンが指差したのは、完全に死を連想させる切り立った崖。所々に鋭利な土の突起が突き出しており、落ちている状態でぶつかればどうなるか容易に想像できた。
それを見たリィナは少し嫌そうな顔をしたが、すぐに手元にある風燐華を見て語りかける。
「……手伝ってくださいね、『風燐華』。……では、行きます! 風よ。渦巻きを我が足元へ。上昇せしは、己が肉体。『風華昇(ウィニーアップ)』」
四人の足元に魔力が集中し、その魔力は風となり、足場となる。
少し心許なくなった地面の感触は次の瞬間浮き上がり、四人の体を上空へと誘う。
「よし。リィナはこのまま制御をお願い、僕が進路を言うから。カナとユフィーは何かあったときの迎撃を。結構足場が心許ないから、力があまり入らないだろうけど」
「分かりました、頼みますね」
「了解よ」
「うーん、やるだけやってみるよ。いざとなったら振り回すし」
シオンの指示に、三人は各々の反応の仕方で応える。
リィナは制御のために風に近くなるようにしゃがみ込み、ユフィーはスターレインを構え、カナはレストーションを担ぎ直す。
それを確認したシオンは、自らの役目を果たすため、地図を片手に進行の指示を飛ばしていく。
所々突き出る土の塊を器用に避け、着々と目的地に近づくシオンたち。
「っ! カナ、そっち頼むわ!」
「せやぁ!!」
翼を持った魔物たちはシオンたちを追いかけており、その迎撃をユフィーとカナは慣れない足場ながらも務めていた。
ユフィーの遠距離での迎撃に、カナがその迎撃の網からもれた敵を刺し貫く。その貫いた敵を、カナは器用にその迫る群れの中に投げ返したりして、進行を防いでいく。
「シオンさん! あれ!」
終わる事のない敵の攻撃に少し焦っていたシオンに、リィナの驚く声が上がる。
その声の雰囲気に、何事かと思ったシオンだったが、その視線の先を見つけると少しだけ安堵の息を漏らした。
「あれが『ケニハルナ砦』の裏門、いや、ルナニスクルメアの本拠地か……。リィナ、あの門の前の広場に降りるよ」
「……狭くないですか?」
「まあ、少しね」
シオンが指示したのは、人の身長などゆうに超える扉の前に開かれた広場。おそらく、扉が開く最低の範囲だけを確保しているのだろうが、今のシオンたちが求める範囲には少し心許なかった。
なにせ、敵の攻撃を逃げるように迎撃しながら降りていく必要があるのだ。山小屋一軒も確実に建ちそうにない範囲には、誰もおりたくはないだろう。
「……跳び移ってもいいですかね? ここからみんなで跳んだ方が早い気がするんですけど……」
「出来るの? そんなこと」
「今の足場の魔法を弱い攻撃魔法に変えたら、それを足場にして蹴ることが出来るらしいです。カイさんが言ってました」
足場の説明をしながらリィナはシオンに提案する。
普通であれば、四人が今の状況のままゆっくりと目的地に降りられる方がいい。だが、目的地は狭く、敵の襲撃もやむ気配がない。
だからこそ、自らの体一つで突っ込んみ、その背後に向けて攻撃魔法を放って囮にした方がいいと、リィナは提案したのだ。
「出来るならそっちの方がいいか……。じゃあリィナ、それで頼むよ。ユフィーは少し無理だろうから、僕が何とかするよ」
「分かりました。すぐにできるので、いきますよ?」
「分かった。カナ! 今から足場がしっかりするから、あの場所まで跳んで!」
その指示が出た頃にはだいぶ下がった所まで来ており、カナやリィナのような身体能力が高い者には何ともないような高さになっていた。
「よーし! ならば、跳ぶぞー!」
「ちょっと、あたしにそんな脚力は……」
「ごめんユフィー。黙ってないと舌噛むよ!」
「じゃあ行きます! 『風翔凛(ラン・ウィニング)』!」
「って、キャァァァァ!!」
リィナの魔法の呪文とユフィーの悲鳴が重なる。
それも当然だろう、一瞬だけ地面とほとんど変わらなくなった風の足場を蹴り、自らを担いだシオンが空中に飛び出したのだから。
隣を見ると、カナはありえないぐらい楽しそうに跳んでおり、リィナは追ってくる魔物に冷静に生み出した竜巻をぶつけていた。
そしてユフィー自身はと言うと──。
「…………///」
真っ赤になって、いわゆるお姫様抱っこという状態を満喫していた。
ジャリッ。
意外と危なげなく降り立ち、シオンは腕の中のユフィーを見る。
「ごめん、ユフィー。こうやって跳ぶんだったら担ぎ方がこれしか見つからなくて……」
「え、ええ!? い、いいいえ、べべべ、別に構わないわよ///!?」
顔を赤くしながら猛然と真後ろに動くユフィー。
そして、その先には扉が。
ゴンッ。
「っつ!!」
ギギィ……。
当然後ろを見ていないユフィーは綺麗にぶつかり、門に体を強かに打ち付ける。
だが、怪我の功名とでも言うべきか、その人の背丈を優に越える門はゆっくりと開いていった。
「……絞まらないけど、入ろうか」
「それが私たちですよ!」
「リィナちゃん、それ意味ないから」
「…………///」
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