小説:アクレニア戦記 ~二つの決意~ (完結)
二章 遥かなる旅
「ふわー……。豪華なお屋敷ですねー」
「ふふ……。ありがとうございます。あのハーキュリー家の人間に出会えるとは思っても見ませんでした」
赤を基調とした豪華な廊下を、四人が静かに歩く。
一度地下にもぐった後、すぐにこの廊下に出てきたため、三人としてはこの変化に驚いていた。
それも一瞬で、すぐにリィナ以外は平静を取り戻していた。
「あれ? ユフィー、あんまり驚いてないんだね」
「……あんな王宮なんか見た後で、あんまり驚けないわよ。それに、毎回毎回驚いてたらついていけないわ」
「そっか。あの面白いユフィーが見れないとなると、残念」
そんな会話がなされているうちに、とある部屋の前にたどり着く四人。
一際装飾の成された、豪華な大きな扉。
その扉を、メアは一息に開け放った。
「ここが先代、旦那様と奥様がおられた部屋です」
「先代? さっきも何か言ってたけど、なにがあったの? 遺児とか何とか……」
案内された部屋の説明に不可解な事があったのか、ユフィーがそんな事を口にする。
その質問に、答えたのはシオンだった。
「……トベルスティア家は大地主なんだ。ここ一帯のほとんどの土地を所有してる。でも、つい二年前だったかな。事故があったんだ」
そこまでシオンが言った後、メアが続ける。
「その事故で姫は大きな悲しみに暮れ、感情を失いました。親や親戚、家族と呼べるものを亡くしたのですから、それも当然と言えば当然なのでしょうが…」
そう言うメアの表情は暗かった。
仕えるべき主の悲しみを一心に背負ったような、そんな表情だった。
だが、そんな表情のメアに対し、ユフィーはこんな言葉を言い放った。
「……家族と呼べるものを亡くした、ねぇ。……ここにも家族がいるのに、なんてバカな子なの? コロナって子は」
「……ここにも家族がいる? それはどういう……」
「あんたもたいがいのバカね。あの子を大切に思ってるなら、あの子は家族でしょう? そうじゃないの?」
さも当然かのように自らの持論を披露するユフィー。
その言葉の意味に、メアは黙り込んで考えてしまう。
しかし、その答えは出ていたのだ。メアがコロナに、トベルスティア家に仕え始めた、その日から。
「……はい、そうですね。姫は、私の『護るべき者』なんですから」
・・・
・・
・
一方その頃。
自らの部屋へと戻っていたコロナは、壁にかけられている一枚の絵をただ眺めていた。
何の変哲もない、ただ一組の男女が描かれた絵。だが、その絵はコロナにとって唯一の両親の形見であった。
周囲の人間は事故として断定しているが、トベルスティア家を襲ったのは事故ではなく襲撃である。
大地主であることを快く思わない者たちの、心のない襲撃。
その襲撃に巻き込まれ、コロナ自身も大怪我をおった。その怪我が回復した頃、目を覚ました彼女が見たのは、遺産や大地主の権利を得ようとする薄汚い大人の策略の渦。
両親や親戚を一斉に失った悲しみと、その見たくもなかった陰謀に、彼女は感情を失くしてしまったのだ。
「…………」
ただ、眺める。
飽きもせずただひたすらに。
だが、そんな彼女の耳にある言葉が入ってきた。
『……家族と呼べるものを亡くした、ねぇ。……ここにも家族がいるのに、なんてバカな子なの? コロナって子は』
『……ここにも家族がいる? それはどういう……』
『あんたもたいがいのバカね。あの子を大切に思ってるなら、あの子は家族でしょう? そうじゃないの?』
自らの従者と、先ほど出会った三人のうちの一人の台詞。
その台詞は、本来建物の関係上聞こえるはずが無かった物だが、そんな事は今のコロナには関係なかった。
「…………家族」
「…………メアが」
「…………家族」
その言葉を噛み締めるかのように、ゆっくりと区切りながら言葉にしていくコロナ。
少しだけ生気の宿った目を前にしっかりと向け、歩き出した。そして、不意にくるりと後ろを向くとこう呟いた。
「…………ありがとう、聖霊さん」
それだけを呟くと、コロナは踵を返して部屋から出て行った。
「──ありゃりゃりゃ、バレてたのかー♪ これはさっさと挨拶にいこっかなー? でもま、楽しそうだしいっか♪」
・
・・
・・・
「さてと……。あんたの思いも聞けたし、さっさと放蕩娘さんに会いにいかない?」
「姫にですか? 今はどこにいるかなんて分からないですよ」
「なんでよ。部屋にでも行けばいいんじゃないの?」
「鍵がかかってるんですよ。かなり大きめの鍵なので、そう簡単には……」
「あれ? 従者をやってるんなら、リサーナさんから何か教わらなかったの?」
肩を落としかけるメアに、シオンがそんな事を言い出す。
確かにシオンが言うことはもっともで、この国の従者、メイドは一旦王宮にてその術を学ぶことになる。
その時の教官役がメイド長であるリサーナだった事を思い出し、シオンはそう聞いたのだ。
しかし、メアから返ってきた台詞は予想の斜め上を行くものだった。
「アレは犬じゃありません。狼です」
「え? いや、だから解錠の術とか……」
「アレは犬じゃありません。狼です」
「いや、それは分かるけどさ……」
「アレは犬じゃありません。狼です」
「……もういいや」
根負けしたように、メアの怒涛の台詞を回避するシオン。
そしてこの時固く誓った。メアにリサーナの話は禁句だと。
「でも、ほんとにどうするんですか? 部屋が開いてないんなら、強行突破もできませんよ?」
止まってしまった話を続けようと、リィナがそう話を持ちかける。
「そうですね……姫の事ですから、食事の時間になれば下りて……」
バリィィン!!
メアがリィナの台詞に答えているとき、突然ガラスの割れる音が響いた。
「「「「っ」」」」
「キャァァーーー!!」
甲高い声が、ひるんだ四人の耳に入る。
聞き慣れないその声に、シオンたち三人は反応できなかったが、メアだけは違った。
「姫!」
その声を聞き届けたメアは、血相を買えて声の元へと走り出していく。
「え? さっきのがコロナちゃんの声?」
「まったく分からなかったわ……」
「あんなに高い声が出るんですねー……。ビックリしましたよ」
一人呑気な事を言っているが、三人は走り出したメアの後を追いかけて行った。
・・・
・・
・
「ふふ……。ありがとうございます。あのハーキュリー家の人間に出会えるとは思っても見ませんでした」
赤を基調とした豪華な廊下を、四人が静かに歩く。
一度地下にもぐった後、すぐにこの廊下に出てきたため、三人としてはこの変化に驚いていた。
それも一瞬で、すぐにリィナ以外は平静を取り戻していた。
「あれ? ユフィー、あんまり驚いてないんだね」
「……あんな王宮なんか見た後で、あんまり驚けないわよ。それに、毎回毎回驚いてたらついていけないわ」
「そっか。あの面白いユフィーが見れないとなると、残念」
そんな会話がなされているうちに、とある部屋の前にたどり着く四人。
一際装飾の成された、豪華な大きな扉。
その扉を、メアは一息に開け放った。
「ここが先代、旦那様と奥様がおられた部屋です」
「先代? さっきも何か言ってたけど、なにがあったの? 遺児とか何とか……」
案内された部屋の説明に不可解な事があったのか、ユフィーがそんな事を口にする。
その質問に、答えたのはシオンだった。
「……トベルスティア家は大地主なんだ。ここ一帯のほとんどの土地を所有してる。でも、つい二年前だったかな。事故があったんだ」
そこまでシオンが言った後、メアが続ける。
「その事故で姫は大きな悲しみに暮れ、感情を失いました。親や親戚、家族と呼べるものを亡くしたのですから、それも当然と言えば当然なのでしょうが…」
そう言うメアの表情は暗かった。
仕えるべき主の悲しみを一心に背負ったような、そんな表情だった。
だが、そんな表情のメアに対し、ユフィーはこんな言葉を言い放った。
「……家族と呼べるものを亡くした、ねぇ。……ここにも家族がいるのに、なんてバカな子なの? コロナって子は」
「……ここにも家族がいる? それはどういう……」
「あんたもたいがいのバカね。あの子を大切に思ってるなら、あの子は家族でしょう? そうじゃないの?」
さも当然かのように自らの持論を披露するユフィー。
その言葉の意味に、メアは黙り込んで考えてしまう。
しかし、その答えは出ていたのだ。メアがコロナに、トベルスティア家に仕え始めた、その日から。
「……はい、そうですね。姫は、私の『護るべき者』なんですから」
・・・
・・
・
一方その頃。
自らの部屋へと戻っていたコロナは、壁にかけられている一枚の絵をただ眺めていた。
何の変哲もない、ただ一組の男女が描かれた絵。だが、その絵はコロナにとって唯一の両親の形見であった。
周囲の人間は事故として断定しているが、トベルスティア家を襲ったのは事故ではなく襲撃である。
大地主であることを快く思わない者たちの、心のない襲撃。
その襲撃に巻き込まれ、コロナ自身も大怪我をおった。その怪我が回復した頃、目を覚ました彼女が見たのは、遺産や大地主の権利を得ようとする薄汚い大人の策略の渦。
両親や親戚を一斉に失った悲しみと、その見たくもなかった陰謀に、彼女は感情を失くしてしまったのだ。
「…………」
ただ、眺める。
飽きもせずただひたすらに。
だが、そんな彼女の耳にある言葉が入ってきた。
『……家族と呼べるものを亡くした、ねぇ。……ここにも家族がいるのに、なんてバカな子なの? コロナって子は』
『……ここにも家族がいる? それはどういう……』
『あんたもたいがいのバカね。あの子を大切に思ってるなら、あの子は家族でしょう? そうじゃないの?』
自らの従者と、先ほど出会った三人のうちの一人の台詞。
その台詞は、本来建物の関係上聞こえるはずが無かった物だが、そんな事は今のコロナには関係なかった。
「…………家族」
「…………メアが」
「…………家族」
その言葉を噛み締めるかのように、ゆっくりと区切りながら言葉にしていくコロナ。
少しだけ生気の宿った目を前にしっかりと向け、歩き出した。そして、不意にくるりと後ろを向くとこう呟いた。
「…………ありがとう、聖霊さん」
それだけを呟くと、コロナは踵を返して部屋から出て行った。
「──ありゃりゃりゃ、バレてたのかー♪ これはさっさと挨拶にいこっかなー? でもま、楽しそうだしいっか♪」
・
・・
・・・
「さてと……。あんたの思いも聞けたし、さっさと放蕩娘さんに会いにいかない?」
「姫にですか? 今はどこにいるかなんて分からないですよ」
「なんでよ。部屋にでも行けばいいんじゃないの?」
「鍵がかかってるんですよ。かなり大きめの鍵なので、そう簡単には……」
「あれ? 従者をやってるんなら、リサーナさんから何か教わらなかったの?」
肩を落としかけるメアに、シオンがそんな事を言い出す。
確かにシオンが言うことはもっともで、この国の従者、メイドは一旦王宮にてその術を学ぶことになる。
その時の教官役がメイド長であるリサーナだった事を思い出し、シオンはそう聞いたのだ。
しかし、メアから返ってきた台詞は予想の斜め上を行くものだった。
「アレは犬じゃありません。狼です」
「え? いや、だから解錠の術とか……」
「アレは犬じゃありません。狼です」
「いや、それは分かるけどさ……」
「アレは犬じゃありません。狼です」
「……もういいや」
根負けしたように、メアの怒涛の台詞を回避するシオン。
そしてこの時固く誓った。メアにリサーナの話は禁句だと。
「でも、ほんとにどうするんですか? 部屋が開いてないんなら、強行突破もできませんよ?」
止まってしまった話を続けようと、リィナがそう話を持ちかける。
「そうですね……姫の事ですから、食事の時間になれば下りて……」
バリィィン!!
メアがリィナの台詞に答えているとき、突然ガラスの割れる音が響いた。
「「「「っ」」」」
「キャァァーーー!!」
甲高い声が、ひるんだ四人の耳に入る。
聞き慣れないその声に、シオンたち三人は反応できなかったが、メアだけは違った。
「姫!」
その声を聞き届けたメアは、血相を買えて声の元へと走り出していく。
「え? さっきのがコロナちゃんの声?」
「まったく分からなかったわ……」
「あんなに高い声が出るんですねー……。ビックリしましたよ」
一人呑気な事を言っているが、三人は走り出したメアの後を追いかけて行った。
・・・
・・
・
13/40
- 柳の硫流TOP
- 管理人の?
- 日記帳
- 小説:アクレニア戦記2 ~叶えた夢の終わり~
- 小説:焔 凉華の五つの約束
- 小説:猫の恩返し~取り憑いたのは猫の神様!?~
- 小説:フェデルフィア国物語
- 小説:獣たちの舞踏会2~拾い者と捜し者~
- 小説:守護霊は神様!?
- 小説:―Legurus―
- 小説:アクレニア戦記 ~二つの決意~ (完結)
- 小説:獣達の舞踏会1~目覚める狼~ (完結)
- 小説:あの虹の麓で
- 小説:真・恋姫無双 白の銀紅
- 小説:真・恋姫無双 双璧の番
- 小説:短編集
- 詩:思いつき
- オリジナルキャラクター紹介
- アルバム
- リンク集
- 要望、感想掲示板
- メールBOX
携帯用QRコード
- アクセス数

- ページビュー数
