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小説:獣達の舞踏会1~目覚める狼~ (完結)

エピローグ






ギィ…

「ただ今戻りました、フレリックさん」

「おお、よく戻ってきてくれた……って、これはどういう事だい?」

「あははは…」

理事長室のドアを開け、報告に戻ったユーブメルトたちは、いきなりフレリックを驚かせることになった。

フレリックを驚かせることになった理由、それはユーブメルトの周りにあった。

「…ふー!」

「……?」

ユーブメルトの右にいるのは白の少女。腕ごと抱き着く形でユーブメルトに引っ付いている。そして、その反対側にいるのはユミナ。かんっぜんに対抗意識を燃やしまくりの図だ。

生える2本の尻尾の毛が威嚇のために逆立ってしまっている。

そんな二人に挟まれたユーブメルトは、両側から腕を綺麗に抑えつけられているために、頭をガシガシと掻くこともなく苦笑いしか浮かべられない。

「えーと、幸せ者は放って置いて報告です。すいません、『黒』は逃がしました」

とても受け答えなどできる状態ではないユーブメルトに変わり、セリスクが報告を肩代わりする。

普通なら突っ込まれている所だが、あいにくユーブメルトにはその手段がない。口を出そうとしても報告の邪魔になるからだ。

「そうか。なら、こちらで引き続き捜索は続けるよ。皆、ご苦労だったね。後、エンディー君はどこに?」

「それなら、いろいろと調べる物が出来たから、申し訳ないけど報告は頼みますねって言ってました」

スフィアがセリスクの隣に立ちながら、レオリスの動向を伝える。

ユーブメルトたちが連絡通路を出た辺りで、一応合流はしたのだ。だが、ユーブメルトの今の状況を見て呆れでもしたのか、そう言ってそそくさと退散してしまった。

「ふむ、なら構わないか。それと、ユーブメルト君。その子は、どうするんだい?」

まるで蓑虫のように引っ付いて離れない少女を指さしながら、フレリックはユーブメルトに質問を投げかける。

「…どうするも何も…保護って言うか、俺はただ仲間として迎えたいんですけど…」

「…なら転入手続きでもしようか。えーと、書類はどこにやったかな…」

とんでもない爆弾発言をしながら、フレリックはごそごそと棚の中身を探していく。

あまりにも普通にしゃべった事柄だったため、誰もその行動に反応が出来ていなかった。

そして―――

「「「「えええぇぇぇ!!!」」」」

案の定、そんな声が木霊した。

「フレリックさん、それ職権乱用ですよね!?」

「構わないさ、それぐらい。あー、そうそう。転入するんだったらユーブメルト君の家名を使わせてもらうよ。君に懐いているんだろう?」

「それぐらいは構わないですけど…って、え?」

「だから、便宜上は君の親戚と言う事にするって言ってるんだ。それなら僕でも面倒が見れるし、なんたって楽だろう?」

「…そんな簡単に…」

フレリックの考えに、ユーブメルトは項垂れてしまう。

だが、項垂れた先にあったのはユーブメルトを見つめていた少女の真っ赤な瞳。

上目づかいで見つめられては、断ることなどできるはずがない。

「……?」

「ったく…。なら、それで行きましょう。こいつには名前もないし…あ、そうだ」

手を叩くことはできないが、何かを思いついたかのように言葉を口にするユーブメルト。

「お前の名前、決めてなかったな」

「それもそうだな、なににするんだ?」

「やっぱりかわいい名前がいいですよ!」

「ふー!」

約1名、人間としての言語を喋れていない輩がいるが、そこはまああまり気にしてはいけない所だろう。

セリスクとスフィアもユーブメルトの言葉には賛同したようで、少しだけ悩むそぶりを見せるが、実際の所はユーブメルトに任せていた。

「そうだな……よし、決めた。お前の名前はイネージュだ。お前の白い髪見てたら、そう思ったんだよ。安易な考えだけどな」

「ふむ…雪の違う言い名か…いいんじゃないかな? なら、イネージュ・レディナスで進めておくよ。それでいいかい?」

「……うんっ///」

よほど嬉しいのか、首を千切れんばかりに縦に振るイネージュ。

そして、イネージュはユーブメルトの方を向きこう言った。

「…ありがとう」

初めて見せる満面の笑顔で、イネージュは笑った。

その笑顔を向けられてユーブメルトはつられて、本当に久しぶりに心の底から笑った。

「ああ、これからよろしくな、イネージュ!」


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