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小説:―Legurus―

1章 これが日常。普通の生活。






ピッピッピピ……

カチャカチャカチャ……

カチカチ……カシン……

「うーにゃー! できたぞついにできたーー!!」

薄暗い部屋の中、一つだけ灯りのついたパソコン画面に向かっていた妙齢の女性は、叫びながら大きく背伸びをした。

そして、見事に座っていた椅子から見事に床に転げ落ちる。

「ふぎゃ!」

尻尾を踏まれた猫のような声を出しながら、女性は床をのた打ち回る。

強かに打ち付けた腰を抑えていると、先ほどまで向かっていたパソコンから音声が聞こえてくる。

《システムオールコンプリート。設定を初期化、登録者名を入力してください》

機械的なにごった音声がパソコンから響き、画面には簡潔すぎる説明文と登録者名を入力するであろう空欄。

それを見た女性は、その空欄にとある人物の名前を入力する。

「ふっふっふー、ここは当ったり前にこの子の名前♪ おかーさんの可愛い可愛い息子の名前ー♪」

どこかノリノリな音階を口ずさみながら女性は入力を完了する。

入力された文字はローマ字表記で『KEIYATOBARI』。

その入力された名前が正しいことなのかどうか聞く画面が現れた瞬間、女性は威勢よくキーボードを叩いた。

《登録を完了しました。以後、登録者以外が触れる事を拒絶。自己防衛プログラム発動》

どこか物騒な事が聞こえてきた気もするが、女性は全くその事を気にしなかった。

「にゅふふー。これで圭(けい)君も仲間入りだよ。おかーさんからの、ささやかなるプレゼント。喜んでくれるかなー?」

女性の脳裏に浮かぶのは、最愛の息子の姿。

少し切れ長の目を持った、多少親のひいき目で見ても充分にカッコいい部類に入るであろう少年の姿を思い浮かべて、女性は軽く身動ぎする。

そして、女性は両腕を大きく天井に向かって伸ばしながら言った。

「……世界はね、変わるんだよ。絶対にね。今のこの世界から、絶対にいい方向に」
どこか憂いを持った声で、女性は続ける。

「だから、覚悟を決めてね? 圭君が、圭君のために。誰のためでもない、自分のために生きれる人間になる覚悟を。そして、心の底から笑って? ……おかーさんには、これぐらいしか出来ないから」

薄暗い部屋の中、パソコンの駆動音だけが響く状態で女性は呟いた。

愛する息子のために、自らのその手を赤に染めて。

「圭君をさらに生かすためには、これしかないんだ。禁忌を犯したおかーさんには、さらなる禁忌しか犯せない」

薄暗い部屋の中で椅子にもたれかかり、天井を見つめて言う女性。

「……最初で最後の贈り物。気に入ってくれると、嬉しいな♪」

パソコンからもれ出る淡い光に照らされる画面に向き直っていた女性の顔。

知的な銀色のフレームの眼鏡が似合う女性の顔は、笑っていた。だが、だからこそその右手に持つ黒光りするものの異様さが際立っていた。

「サヨナラ……圭君♪」

こめかみに向かって向けていた拳銃の引き金を、女性は笑顔で引いた。




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