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小説:短編集


君が為、君が故。

春奈 宵-haruna yoi-様から相互記念にいただいた文。 始まる物語、それはお互いがお互いのために選んだ修羅の道――― かっこいいよね!!

――深い闇の王国

騒ぎを沈黙に覆い
軍が鎮圧する民の上で毎夜のように
貴族たちの宴が開かれて
王族たちは贅沢の限りを尽くす

黒国の王宮

下層の民は武力と税の徴収の
二重苦により死に絶える日々
恐怖に耐える日々を送っていた

終焉の見えない闇――





「君が為、君が故。」





下層の町
少女は泣いていた
轢き殺された母の恨み
軍人の嘲笑
差し出された手は灰色の手
「共においで」と誘われ
国に逆らう謀反者に従った
少女の齢はほんの十六

下層の町
少年に届いたのは
押し殺された少女の声
涙色の笑み
差し伸ばした手は真っ白な手
「触らないで」と断られ
少女が国の謀反者と知る由もなく
少年は少女の背中を追った


少年は悪戯に追いかけていた
消えそうで儚い背中に
一目惚れしてしまった
汚れた町を孤独に歩く少女に
強く惹かれた

少女は懸命に逃げていた
いつ滅ぶともしれぬ
組織に生きる自分
そんな自分と
少年を関わらせてはいけないと


――少女の組織は、革命には届かなかった


反抗の宴の終焉が
鎮圧の宴の始まり

血が散り散り
兵は衝突し
少女の小さな世界が
家族たちが消えていく

動乱に紛れ込んだ
少年の白い手に
光る銀の刃と強い意志
泣き崩れた少女をただ想い
少年の手は黒く染まる


少女は嘆く
少年が変わって
いってしまうことに

少年は泣いた
少女の願いに
応えられなかった悔しさに


母の恨みと
国に逆らうことに
生きてきた少女は
いつしか真っ白な
少年の姿に惹かれ
変わらぬ彼を
傍に感じていたいと願った

理由も分からず
物心がついた頃から
孤独だった少年は
初めから儚く
美しかった少女に惹かれ
少女を守れるならと
殺人を拒まなかった


逃げ延びた戦場の外
繋いだ手の冷たさと温もりが
重なり合って
混色した青と赤のように
奇妙な色を作り上げる


変わってしまったことを嘆くより
君と二人だけで先を進み

「君との未来を生きたい」と

「君との居場所に行きたい」と

「君との幸せに逝きたい」と


笑う少年の手は今は黒くとも
笑う少年の心は白いままで

二人で紡ぐ光に満ちた日常
そんな夢を少女に与えた

荒れた廃虚のその上で
少年に強く優しく
抱き締められた少女は
背伸びをして少年に口付け





――笑った。






-fin-
9/10