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小説:短編集


とある二人の恋愛模様

春奈 宵-haruna yoi-様との相互記念に捧げたファンタジー文。 R-17になっておりますが、ご容赦ください。

ズルズルズル…

「おら!とっとと歩きやがれ!」

「あ~う~あ~…」

なにかが引きずられる音と共に、男の怒号とそれに比べれば若干高い、少年の情けない声が聞こえてくる。

「ちっ!もっと強いやつかと思ったら、ザルじゃねーか」

「う~あ~…引き摺られる~」

悪態をつく男に対し、少年は今の状況を的確に言葉にする。

引き摺られる音の正体、それは少年が引き摺られているから出る音なのだ。

襟元、所謂首根っこを掴まれ、言葉通りに引き摺られる少年。

そんな状況下にあると言うのに、少年は笑っている。

―――バカなのだろうか。

「ねーねーお兄さん」

「あ?てめぇ、よくこの状況で平気だな?拐われてるんだぜ?てめぇは」

「うん、平気も平気だよ?だって―――」

シュタッ

「―――僕には、僕の『剣と盾』がいるから」

「ご主人様!ご無事ですか!!?」

凄まれてもなおニヘラと笑う少年の後ろ、つまり男の目の前に、一人の女性が現れる。

凛とした佇まい。この国ではありふれた真っ黒な髪を、肩口でバッサリと切った少年と同じ年の頃の少女は、淡い灰色の瞳で少年を見据えた。

涙を一杯に溜めながら。

「な、なんだてめぇ、まさかこのガキ―――」

「ご主人様ぁ!!」

「ふげらっ!」

男の台詞など耳に入らないようで、少女は男を投げ飛ばして少年に抱きついた。

ちなみに、背中から。

「…ご主人様…良かった…!お怪我はありませんか?」

「ないよ。もう、夕凪(ゆうな)は心配性だなー」

「心配せずにはいられません!ご主人様の身に何かあったら、私は…」

背中から抱きつかれたまま、少年は泣きじゃくる少女をあやすように肩を叩く。

「まー、無事だったからいいじゃん。で、『お掃除』よろしくね」

投げ飛ばされ、一連の流れを見ていることしかできなかった男に、ようやく少年が視線を向ける。

「てめぇら…ガキが粋がるなよ!」

ちゃっかりキレていた男は、怒号を上げながら突進していく。

懐に忍ばせていたであろう短剣を抜き放ちながら、自らを投げ飛ばした少女に向かってその短剣を閃かせる。

その凶刃を、少女はただ冷めた目で見据え、いい放つ。

「和が主に代わり、制裁を下す。その身を持って特と味わえ、我が剣閃を!」

なにかに願うように目を閉じ、何もない虚空に向かって手を突き出す少女。

そして、突如起こった光と共に、なにも握られていなかった手には、あるものがしっかりと握られていた。

長い。その一言で十分なほどの形。

長すぎる剣が、少女の手には握られていたのだ。

「巻き上がれ、剣閃。『楼閣・朧』」

居合いのように剣を構え、鞘がない状態にも関わらず、かなりの速度を持ってそれを振るう。

剣の重みに引っ張られる体をそのままに、強引に一斬、二斬と重ねていく少女。
それを積み重ねて出来上がったのは、剣閃の楼閣。

堅牢に造り上げられた楼閣は、まるで朧の月のように霞み、意思を持ったように動く。

「な、なんだよこりゃあ!」

目の前に現れた剣閃で出来た楼閣に、男が狼狽するが、それは致命的な隙となった。

「瓦解せよ。…道ずれと共に」

「なっ!ぎゃぁぁ!!」

積み重ねられた楼閣が、少女の呟きと共に崩れ去っていく。

無数の剣閃に巻き込まれ、男は断末魔の叫び声をあげ、呑まれていった。

「お疲れー夕凪」

「ありがとうございますご主人様」

「…二人きりの時には、その言葉遣いは禁止って言わなかった?」

「っ///!も、申し訳ありませんごしゅっ―――!」

いたずらを思い付いたような表情を作る少年に、少女は若干赤くなりながら弁解の言葉をのべる。

だが、その言葉は途中で遮られることになった。

―――少年の、唇によって。

「…ん…んむ…ちゅっ…」

「んはっ…!ご、ごごごご主人様///!い、いいいいきなりなにを///!」

「んー?ご褒美だよ、守ってくれてありがとうってね?」

「で、ですが…///!」

キスされたことにより、少女の顔は耳で真っ赤に染まる。

だが、少年はそんなことはお構いなしにニヘラと笑った。

「言葉遣い」

「うぐ…」

笑ってはいるが、その後ろに隠された気迫に、少女は抗う術を持たなかった。

「…晶(あきら)…もっと、キスして?…こ、これでいい///?」

「ん、百点だよ」

顔を真っ赤に染めて言う少女に、少年は満足そうに頷いた後、再びその唇を少女の唇と触れ合わせた。

今度は、もっと深く。

「…ちゅっ…んはっ…れろぉ…」

「あ、あきらぁ…はげしっ…」

「でも、好きでしょ?」

「……うん///」

「なら、問題なし」

舌を絡ませ、お互いの唾液を交換していく。

そして、再び唇が離れたときには銀色の糸が、お互いの口と口を繋いでいた。

「…美味しかった。ご馳走さま」

「…お、おしょまつしゃまでひたぁ…」

もはや呂律が回っていないが、それでも礼を言う少女を愛しく思い、少年は額にキスを落とした。
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