小説:真・恋姫無双 双璧の番
序章
その三
討伐戦 本番
時は少し遡り―――
「ねぇねぇ、早く殺しに行こうよー」
「…ちょっとぐらい待とうよ」
ここは砦の前。螢と嵐の二人は、姿も隠さずに堂々と歩いていた。
そして、案の定門番に見つかってしまう。
「おい! てめぇら、ここに何の用だ! 死にてぇのか!?」
門番の一人が、螢達に怒鳴る。
その言葉が、人生最後の言葉だとは思いもせずに。
「何って…ねぇ?」
「ねー…えい♪」
ドシュッ!
嵐の無邪気としか言いようがない掛け声と共に、門番の首が胴体とお別れする。
「なっ!」
「ま、こう言う事だから」
ザンッ!
「ぐぁぁーー!! あ、足がぁぁーー!」
軽く答えた螢の言葉と共に、こちらは両足が膝下からおさらばする。
「…行こうか、嵐」
のたうち回る門番を尻目に、螢と嵐は砦の中へと足を踏み入れる。
「もー、何で殺さないの? 態々生かしておく必要なんか無いのに」
「いいんだよ。あんまり殺しなんかしたくないし」
「さっすが螢。優しいね♪」
そう満面の笑みで微笑み、螢へと抱きつく嵐。
「こら。身動きできなくなるだろ」
「いいのいいの。螢の代わりに、私がみーんな殺してあげるから」
楽しそうに言う嵐。
その目線の先には、怒号をあげながら群がる賊達。
「…みーんな、殺してあげる♪」
そこからは、彼女の名前『嵐』の名の通り、嵐が現れたようだった。
両手に持つ斧で、竜巻のように敵を切り刻み、遠くの敵には斧を投げ飛ばす。
まさに、鬼神の名に相応しい闘いである。
否。鬼神と言うにはあまりにも足りない。
嵐が通り去った後の生き物は、その身に生と言う単語が見つからないほどに切られ、潰され、貫かれていた。
「あら? もう終わっちゃった? あっけなーい、あははは♪」
愉快に、本当に楽しそうに笑う嵐。
その様は正に『死神』だった。
「ふぅ…。嵐、もう少し落ち着け」
ため息を吐きながら、剣に着いた血糊を払っている螢。
落ち着いた表情の螢だが、その後ろには嵐以上の死体の山が築かれていた。
「ぶー。また負けたー」
「勝ち負けなんかじゃないよ。ただ、俺の剣じゃ二~三人纏めて切っちゃうからさ」
そう言って自らの両刃の長剣『朧月夜(おぼろづきや)』を掲げる螢。
それを見て、嵐も自らの戦斧『双頭龍・顎(そうとうりゅう・あぎと)』を掲げる。
「だよねー。ま、別に気にしてないんだけどね。ただ、いつまでも負けてるのはちょっと…」
悔しそうに、その手に握った戦斧を弄ぶ嵐。
「と言うか、こんな話なんてしてる暇無いって」
「あ、そうか。まだ殺せるんだった。たった二~三百人しか殺ってないもん♪」
「そう言うこと。だから……」
悪戯を思い付いた子供のような笑みを浮かべると、目を閉じて意識を集中させる螢。
その螢の動きに、嵐は目を輝かせながら見守る。
そして、不意に瞑想していた螢が、ある地点を指差す。
「……そこ。嵐の右斜め辺り…」
螢が指差したのは、なにもないただの壁。
だが、そんな言葉を嵐は素早く理解し、斧を構える。
そして、自らの意識を武器のみに集中させていく。
見つめるのは、前。螢が指差した壁を、ただ睨み付ける。
「じゃあ……。どーーん!!」
武器を大きく振りかぶると、力をためて一気に降り下ろす。
嵐の放った一撃は、紅い気の刃となり、地面を抉りながら壁に迫る。
ドガン!
壁に気の刃が衝突し、轟音と共に壁が消し飛ぶ。
「な、なんだぁ!?」
「おー、いるよいるよ。…クズどもが」
「あは♪ どうやって殺してあげよっかなー♪」
土煙の晴れた後、螢は心底ウザそうに、嵐は心底楽しそうに立っていた。
「さて…。死ぬ覚悟は、できてるか?」
頭と思われる禿頭の男に、剣を突きつける。
「くそ…。おい、おめぇら殺っちまえ!」
螢の気配に怯える頭であったが、すぐに気を取り直して手下に命令する。
その言葉により、頭の後ろに控えていたであろう男達が、螢と嵐に襲いかかる。
襲い来る人の波をかわすため、二人は一旦外へと逃げる。
「ふっ!」
「やっ!」
追ってくる人の波を螢は剣を真横に一閃させて切り裂き、嵐は二本の斧を回転させて投げ飛ばして粉砕する。
その攻撃によって、中央辺りの敵が百人ほど吹き飛んだ。
中央が陥没した人の波は、統制を失って流れていくが、素早く両翼から二人を追い抜き、反転して二人を取り囲む。
「あら? 囲まれちゃったよ? 螢?」
「分かってる。…よく訓練されてるよな。ただの賊だとは思えないよ…」
周囲を敵に囲まれ、背中を合わせながら思案する。
すると、敵の少しだけ空いた隙間から、頭の余裕の表情が覗いた。
それを見た螢は、納得の表情を浮かべる。
「あー、なるほど。あの禿げ頭、多分どっかの軍上がりだよ」
「え? じゃあ、たいして成績よくなくて、しかも敵前逃亡とかしちゃった人?」
少し話が飛躍しすぎている気がするが、嵐が補足を入れる。
「さぁ? そこまでは知らないよ。でも、この状況……どうする?」
話している間にも、敵はじわじわとその距離を縮めてくる。
だが、二人の表情は曇らなかった。
むしろ、獰猛な笑みを浮かべて楽しんでいる。
「ねぇねぇ、どっちが多く殺せるか勝負しない?」
「お。いいな、それ。なら、負けたら飯を奢ると言うことで」
「いいよー。じゃ、行くよ!」
一気に嵐が駆け出す。
一転突破のようで、目の前の一人を刺し殺した後、斧を抜かずに器用に盾にしながら突っ込んでいく。
円から抜け出した後、追ってくる賊に向かって死体を投げつける。
「ぐぁ!」
「ま、前が!」
混乱する賊の声をよそに、自分の両脇にいる敵に斧を三本立て続けに投げる。そして、手元に残った最後の一本を握りしめ
、再度突進していく。
「てやぁぁーー!!」
加速した体を捻り、砲弾のように突っ込んでいく嵐。その動きについていけなかった賊は、胴から真っ二つにされていた。
「あっははは! まだまだいくよー!」
楽しそうに笑う嵐。
殺戮の宴は、まだ始まったばかりだった。
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