小説:真・恋姫無双 双璧の番
序章
その二
討伐戦 始まり
「…いい加減離してくれたりしないんですかね?」
町から出て少し経った後、いまだに引きずられ続ける螢が嵐に提案を持ちかける。
「いーや。離したら逃げるもん」
「逃げないって。もう町からずいぶん来ちゃってるからさ」
半ば諦めていたようで、気だるそうに主張する螢。それを聞いた嵐は、それもそうかと、掴んでいた螢の腕を離す。
「…もう砦も見えてるしさ」
体に着いた土を払いながら、目標に到着した事を伝える螢。
「あれ? 以外と螢って軽かったんだ。結構引きずったのに全然疲れてないよ?」
「おいおい…」
嬉々とした表情で、腕をぐるぐると回す嵐に、螢の冷静な突っ込みが入る。
「さて、冗談はそこまでにして…」
先程までの表情から一変、狂気にも見える殺気が、体から滲み出ている嵐。
「…今日は何人殺せるかなぁ? ねぇ、螢?」
「分かんないよ。相手が何人いるかも知らないし、逃げられなければ良い方じゃない?」
常人にはなんとも理解しがたい会話だが、これが二人の普通だった。
時折、自らの狂気に体を震わせる嵐を背に、螢は賊の居座る砦へと踏み出した。
「頭ぁー、そろそろまた奪いにいかねぇと、酒が足りなくなりますぜ」
砦の中。小柄な男が、頑丈そうな椅子に座った男に話しかける。
「ん? そうだな。酒も女も足りなくなったか…。おい、外の奴に連絡してこい。明日、奪いに行くとな」
「へい!」
頭と呼ばれた男は、命令を下した後、椅子に改めてふんぞり返る。
その体は、頭らしく他の者よりがっしりとしており、ずいぶんと力があるように見える。頭は見るに耐えない禿げ方をして
いたが。
「ん? 外が騒がしいな…。女でも見つけたか?」
頭の頭に浮かんだ考えは、他の者の声によって遮られた。
「頭ぁ! 大変です!」
「どうしたぁ!」
「そ、それが、二人組の男女に仲間が殺られて…!」
「はぁ!? …他に寝ている奴を叩き起こしてこい! お灸を…」
ドガン!
次の瞬間、頭のいた目の前の壁が、轟音と共に消し飛ぶ。
「な、なんだぁ!?」
「おー、いるよいるよ。…クズどもが」
「あは♪ どうやって殺してあげよっかなー♪」
壁があった向こう側には、長大な剣を肩に担いだ螢と、斧を両手と背中に計四本携えた嵐が立っていた。
「さて…。死ぬ覚悟は、できてるか?」
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