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会わせて、D.J.


 そうは言っても、篠原さんって律儀だよな。
 クスッと思い出し笑いをしながら、圭太は手を洗った。
 クラブのトイレは薄暗く、煙草の匂いに満ちていた。少し呑み過ぎたのか、足元がふわふわしているけど、気分はいい。
 篠原はあれだけ文句を言いつつも、引き受けた仕事はきっちりとこなしている。
 誤解だったとは言え、一度切れかけたヴェルニ社との関係も、押し寄せるオファーを退け、恒久的な独占契約に変えてくれた。永住権(グリーンカード)まで取っていた米国からの引き上げの手続きも、全て篠原の事務所が請け負っている。
 俺も頑張らないと。
 圭太は鏡の前で、ウシッと気合を入れた。
 恋人と言う関係に甘えるだけではなく、画商としても杜吾をサポートしていきたい。
 それが「圭の傍なら、いくらでも描きたいものがある」と言ってくれる杜吾に、圭太が返せるただ一つのものなのだから。
「おい「本物」。何、気張っているんだ?」
 バタンッと無遠慮に扉が開いて、高梨が勢いよく入って来た。
「一人なのに鏡の前でそんなに力んでいると、アホみたいだぞ」
 アホ…。
 この毒舌にも大分慣れたなと思いつつ、圭太は口を開いた。
「あの高梨さん…その本物と言う呼び方は―」
「いいじゃねーか。似たような声なんだ、その方が分かり易いだろ?」
 ったく、ここは空気が悪ぃな…とぼやきながら、高梨は蛇口から直接ザバザバと水を掬ってうがいを始めた。仕草は乱暴なのに、細い腕を伝って落ちる水滴が妙に艶めかしい。
 思わず見惚れてしまった圭太に、高梨は「あん?」と濡れた顔を上げた。
「あ、いや。何でもありません」
 圭太は慌てて目を逸らす。
 そのまま高梨はゴシゴシと口許を拭って、雫が光る掌をペロッと無造作に舐めた。横目で見るそんな姿も扇情的で、圭太はドキリと心臓を躍らせる。
 なのにこの外見で、何でこんなに口汚いんだろう? ホトトギスだって、蜥蜴を喰うとは言うけれど…。
 でもそれでいて、印象は悪くないのだ。
 乱暴な物言いでも、高梨の言葉にはごまかしや駆け引きがない。初対面で、しかもマスコミの有名人に会うと少し緊張気味だった圭太の遠慮を、見事に吹き飛ばしてしまった。
 ここまで構えもなく本音で話して貰えたら、むしろ気持ちが良い位だ。…思わず頬を緩めた圭太を、高梨は怪訝そうに見た。
 そして次の瞬間、にっこりと花のように美しい笑顔を見せると「あまり遅ぇと、クソしてると思われるぞ」そう言い捨てて、スタスタと先にトイレを出て行ってしまった。


 

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アマネ ニコ
こんにちは。のんびりオリジナルBL小説を書いています。マイペースですが、よろしくお願いします。

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