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USO TWITTER Part 1

執筆者から:

このツイッタ―の内容は全て作り話です。
もちろん登場人物を誹謗中傷しているつもりは毛頭ありません。
「ただ単に楽しく読んで頂ければ嬉しい」と言うつもりで書きました。
どうかご理解下さい」

Part 1

「皆さんこんばんは!
「U!  うらみ、 
  S ! そねみ、 
  O ! お構いなしよ、 
今夜も始まりました 本音ト―クUSO TWITTER!
司会の 大根畠男(おおねはたお)です。(拍手)
いつもは霊界のみで放送しておりますこの『USOツイッタ―』
今宵は特番ですので、現世の方々のお耳にも届いているはずです。
ですから皆さん、今宵は『パレストリーナとストラビンスキーの対談』なんてのも
お聴き頂けるかもしれませんよ。お楽しみに!」
 
「この番組の提供は、
『生前の あなたの悪事 映します』でおなじみ 鏡専門店『浄玻璃』と
『いつでも新鮮で上質な極上の人の『タン』をご賞味下さい』皆さん、
このキャッチコピーはご存じですね!
焼き肉専門店『味の閻魔大王』以上いつもの2社がお送り致します。そして
今回は特別にサービスエリアを拡大して現世の皆さんにもお聴き頂いておりますので、
『一寸法師製薬』様と『渡し船の“sons”』様も
スポンサーとして参加して下さってます。
『渡し船の“sons”』では只今キャンペーン中につき、今回特別に
現世の皆さまにリーゾナブルなお値段での片道ツアーを御用意致しております。
尚『オプショナル体験ツアー』として『冥土喫茶を巡る旅』も
ご用意しておりますので、
特に男性の方、どうぞ積極的にご参加下さい。
中でも『喫茶引きずり女』は、若くして図らずもこちらの世界へ来た 
訳わけあり美女が総出でお出迎えの上 皆様を接待致しますので、
現在大人気です。
彼女たちの生前から引きずっている愚痴や遺恨を心行くまでご堪能下さい。
皆さまにとって心地よい最高のおつまみとなるでしょう
詳細は『渡し船の“sons”』のホームページをご覧下さい。URLは
今回のキャンペーンのキャッチコピー『格安は冥土の旅の一里塚』
をキーワードとして検索できます。

大根畠男「さて、それでは誰に口火を切って頂きましょうか?
 やはりこの人でしょう、古今東西の音楽の歴史の中でも最高と言われる作曲家
 ルートヴィヒ・ファン・ベート―ヴェンさんです」
―(聴衆から大拍手が起こる)―
ベート―ヴェン「やれやれ、現世では嫌な事ばかりだったので、こちらの世界で
ずっと静かにしていようと思ったんだが、こんな所に引っ張り出されるとはな、
まあ、今は耳が聞こえるか良いけど、で 一体何から話せば良い?」
大根畠男「現世でやり残した事などありませんか、または
今生きている音楽家に対する不満でも結構ですよ。
せっかくの良い機会だからこの際、全部ぶちまけちゃって下さい」
ベート―ヴェン「うむ、色々あるが、全部言う訳にもいかないだろうから、そうだな、
まずメトロオームの指示だな。」
大根畠男「メトロノームの指示ですか?」
ベート―ヴェン「そうだ、今は皆異口同音に私が残した指示は『速すぎる』と言うのだ」
大根畠男「私も確かに速すぎると思います」
ベート―ヴェン「あれはわざと速めに設定したのだよ」
大根畠男「と、言いますと」
ベート―ヴェン「ウィーンの連中の演奏ときたら、放っておくと、すぐに遅くなる、
この悠長な雰囲気は200年経った今でも大して変わらないそうじゃないか。
だから極端に速いテンポにした、そうすれば、それを見た人は、少なくとも
『遅く弾いちゃいけない』と思うだろう?
例えば ピアノの練習を1時間して欲しい子供に対して。
『1時間練習しなさい』と言うのかね?
『2時間練習しなさい』と言えば1時間くらいは練習してくれると思うんじゃないか?
それと同じ理屈さ。
しかし学者の中には 作曲家が頭で考えたテンポより 実際に演奏してみた時の
適切なテンポの方が遅い事が理由だ、と言う連中がいる」
大根畠男「確かにそれは事実じゃないんですか」
ベート―ヴェン「おいおい、良く考えてくれ、私は晩年の作品にも
メトロノーム記号を記しているのだよ、
私が頭で考えたテンポと実際に演奏してみた時の適切なテンポの違いに
死ぬまで気が付かなかったと言うのかね?40年以上もかい?
私を馬鹿にしすぎちゃいないか?
それにメトロノーム記号を印刷したのは出版社だ。
あの頃は私の書いた音符を出版社は平気で勝手に変更していた時代だぞ。
そんな時代にメトロノーム記号だけは現実離れしていたにも拘わらず、
律儀に私の指示通りに印刷したと言いたいのかね?
そう考える方が不自然じゃないか?」
カール・ツェル二―「その通りですよ、ベートーヴェン先生。
実は私も自作の練習曲にテンポの指示を記入しました」
ベート―ヴェン「そうだ、私も見た。あれも確かに速すぎるな」
カール・ツェル二―「その通りです。確かに仕上げのテンポとしても
明らかに速すぎます。
もちろん、非常に優れたテクニシャンであれば、
あのテンポで弾く事は可能かも知れません、
しかしそんな生徒はそうざらに居るわけではありませんから、少なくとも
一般向けでは無いと言えます。つまり私が速すぎるテンポを楽譜に記したのは、
ベートーヴェン先生の場合と同じ理由なのです。
何せ先生と同じ時期に私もウィーンに住んでいましたからね。
同様の事情があったのですよ。でも寂しいなあ。
もし僕がベートーヴェン先生の様に優れた作品をたくさん残していたら、
当然学者の目に留まって私が記した速すぎるメトロノーム記号の事も
気付いてくれただろうに…。
確かにごく一部の作品は残ったけれど、
練習曲の作曲者としての印象ばかりが強く残って、
ピアノを習う生徒に嫌われる事もしばしばですよ。あーあ がっかり」
ベート―ヴェン「そんな風に思う必要はない、
君は著書で私のクラヴィ―ア作品の正しい解釈を、
後世に伝える事ができたじゃないか。感謝しているよ。
それにな、人間と言うのは、現世ではそれぞれ色んな役割がある。
歴史に名前が残ったから尊い仕事をした。名前が残らなった者は、情けない、
やれ勉強不足だ努力不足だと軽侮するきらいがあるが、決してそう考える必要もない。
人には生来得手不得手がある。だから現世での役割も様々なのだ。
と言えば君も納得できるだろう?」
カール・ツェル二―「そうか、そうですよね、何も悲観する必要は無いんだ!
ありがとうございます、これですっきりしました。今日ここに来て良かった。
では私はこの辺で」
と言ってカール・ツェル二―は退室する。
大根畠男「良いんですか?ベート―ヴェンさん、あんな事言って。
やっぱり後世に残る名曲を書いた人の方が立派だと私は思いますが…」
ベート―ヴェン「君の言う事が正解さ」
大根畠男「ええっ!じゃあなぜ、あんな『心配する必要はない』みたいな事を
仰ったのですか?」
ベート―ヴェン「ツェル二―は生前から、気が弱かった。だからああでも言わないと、
いつまでも愚痴を言い続けるだろうからな」
大根畠男「おおコワ。で、では他に仰りたい事は」
ベート―ヴェン「何と言っても耳の病だろう」
大根畠男「そうです、そうです。ベートーヴェンさんは何と言っても
耳が聞こえなくなったのに作曲した事で有名ですからね」
ベート―ヴェン「だからそこが間違ってるんだって、私は単に他の人に比べて
難聴がひどかっただけなのだ」
大根畠男「でも世間では耳が聴こえないのに名曲をたくさん残した作曲家として
通用していますよ、第一 筆談帳に
『私は耳が聞こえない』と書いていらっしゃるじゃありませんか」
ベート―ヴェン「あれは言葉の『あや』の問題だ。よく考えてみたまえ、
一口に『耳が聞こえない』と言っても色々あるだろう。
人々はなぜか健常者の様に完全に聞こえる状態と、全然耳が聴こえない
完全な聾者(ろうしゃ)つまり全く治療不可能な状態の二つしかない様に
なんとなく錯覚している。
しかし、実際はその中間があり、症状も軽度の難聴から重度の難聴まで様々だ
つまり何パーセントまで聴こえなくなったら『耳が聞こえない』と表現すべきか
その境界線は曖昧で決まりがない、言語にも主観にも依ると言う訳さ」
大根畠男「なるほど、例えるとクリエイティブ・コモンズの様な事ですね!」
ベート―ヴェン「そうだ、上手い例えだな」
大根畠男「と言う事は多少は聴こえていたのですね。
ではなぜあなたは『私は耳が聞こえない』と言う表現を選択したのですか?
『聴き取りにくい』とか『聴こえづらい』とか いくらでも中間の状態を表す
別の正確な表現の方法は有ったんじゃありませんか?」
ベート―ヴェン「そこなんだよ、『あまり良く聴こえない』等と言うと
『ではどれくらい聴こえるのですか、これくらいは聴こえますか』等と
しつこく質問される。
人が変わるたびに、同じ事を訊かれるのだぞ。
また 『あの人はこれくらい聴こえると言っていた』とか
『この人はこんな音も聴こえないと言っていた』等と、
また聞きの情報を信用したりする。
こんなにうっとうしいのだったらいっそ『聴こえない』と言った方が簡単だ。
それに実際より聞きづらいと言っておけば、人の同情をかって
ゆっくりはっきり話してくれるからかえって煩わしさが省けるのさ」
大根畠男「なるほど、メトロノーム記号を書く時
少し速めの数字にしておくのと同じ理屈ですね!」
ベート―ヴェン「その通り、人間の世界は額面通りの数字を正直に人に伝えれば
必ずうまく行くって訳でもない。時には誇張も必要さ。ただし一つ聞いて欲しい。
以前は私が30歳の時に全く耳が聴こえなくなったと書いてある書物もあった。
それなのに名曲を数多く書けたのは、不屈の精神を持っていたからだとか判断される。
そんなに私を悲劇の主人公にしたいのかね。生前はろくな評価をしなかったくせに
評価が決まると都合よく理屈を並べ立てて必要以上に持ち上げる
今も昔も人間の本質は変わらないな。あれから200年位経ったが果たしてこれから
変わるのだろうか。ふん、多分未来永劫無理だろう。
全く持って気に食わないな。頭の悪い奴ばっかりだ。
どうやって誤解を解いたら良いのやら」
大根畠男「まあまあ、ベートーヴェンさん、そんなに怒らずに!」
ベート―ヴェン「何だと、君はさっき不満をぶちまけても良いと言ったではないか」
大根畠男「ええ、確かに申しましたが、それはその、ですから、えーと」
フランツ・リスト「それについては、私に良い考えがあります」
ベート―ヴェン「おおリスト君、久しぶりだね」
フランツ・リスト「先生、ご無沙汰しております、
私が子供の頃先生にお会いした時の事を
覚えていらっしゃいますか?」
ベート―ヴェン「もちろん覚えているとも。あれは確か1822年頃だったな。
フランツ・リスト「そうです。確かあの時私は11歳でした」
ベート―ヴェン「とすると、ちょうど荘厳ミサを書き終えた頃で、
9番目の交響曲を作曲中だった。
今でも記憶が鮮明に蘇る。君は確かに大変ピアノがうまかった」
フランツ・リスト「そう言って頂けると大変うれしいです。
あの時も同じように褒めて下さいましたね」
ベート―ヴェン「そうだよ、本当にうまかったのだからな」
フランツ・リスト「つまり実際に聴いて下さったのですから、
先生が52歳くらいの時にはピアノの音が聴こえていた事になります」
ベート―ヴェン「そうか、それが証明できれば、
『30歳の頃全く耳が聴こえなくなった』説と
明らかに矛盾する訳だ。しかしどうやって証明する?」
フランツ・リスト「この出来事はツェル二―先生が
ご自身の回想録に書いていらっしゃいます」
ベート―ヴェン「それは有りがたい、でも未だにこの話は
あまり世間に浸透していないみたいだな」
フランツ・リスト「そうなんですよ、やはりツェル二―先生は
ピアノ教師としてのイメージが強すぎて、著書はあんまり顧みられない、
と言うか回想録の存在すら知られていない様なのです」
ベート―ヴェン「やれやれ やはり学者と言う生き物はどうしても
私を悲劇の主人公にしたいらしい。
全く困ったものだな。…でもその分私の評価が上がるから良いか。でも
私はこちらの世界に居る訳だから、それでお金が入る訳でもない。
現世の連中が私を食い物にしていると思うとなんだか癪に触るな。
そんな事追求するよりもっと私の作品を聴いて欲しいものだ」
(執筆者注 もしこの『リストがベートーヴェンに会いに行った話』が仮に
チェル二―の作り話だとしても、回想録を書いた時点で、
ベートーヴェンは1822年頃、リストのピアノ演奏を聴くことができた、
つまり当然のごとく当時明らかにベートーヴェンは
ピアノの音が聴こえていたと言う前提で書いている事に注目して頂きたい)
-ベートーヴェンがそう言い終わると、新たな二人が現れる。
べドルジハ・スメタナとガブリエル・フォーレである。-
ベート―ヴェン「君たちは確かスメタナ君とフォーレ君だな」
スメタナ「はい。私たちも耳の病で生前大変苦労しました」
フォーレ「そうですよ。スメタナ先輩はご自身の弦楽四重奏曲『わが生涯』で
耳鳴りの音を表現していらっしゃいますからまだ良いけど、
私はそんな事 しなかった。だから音楽愛好家の中にも私が耳の病で苦しんだ事を
知らない人も多いのです。ああ 今にして思えば、耳の病気の事を
手紙に書くなり、作品に残すなりしておけば良かったと後悔しています」
ベートーヴェン「そんなに気を落とさないでくれ。
君は素晴らしい曲をたくさん書いたじゃないか
特に『レクイエム』あれは絶品だ。私も精魂こめて『荘厳ミサ』を書いたんだが
あの曲は少々長過ぎたと思っている。
気負いすぎたかな?今にして思えば君の『レクイエム』位がちょうど良い長さだよ。
それにスメタナ君の「我が祖国」あれは素晴らしいね。
私も生きていた時にあの様な 祖国を題材とした曲を書く機会があれば良かったと
つくづく思っているよ」
スメタナ「どうもありがとうございます。
そう言って頂けてなんだか心が晴れ晴れとして来ました」
フォーレ「先輩。考えてみりゃベートーヴェン先生のおっしゃる通りですよ。
作曲家たるもの。良い作品を残すのが本分で、
それ以外の事は結局どうでも良いのですよ」
スメタナ「そうか、どうせ後世の人たちは勝手な事ばかり書きたてる、
良い作品さえ残っていれば、何と言われようと、名前は永遠に語り継がれる」
ベートーヴェン「そうだ、その通り、そこに気が付けば何も問題ない」
フォーレ「ありがとうございます。ここに来た甲斐がありました」
スメタナ「では我々はこの辺で」
と言ってスメタナとフォーレは退室する。
大根畠男「良い事を仰いましたね!まさに芸術の本質を突いていると思いますよ」
ベートーヴェン「でもあの二人より私の作品の方がたくさん残っている。
と言う事は、やっぱり作曲家としては私の方が上かな。ふふふ」
大根畠男「な 何なんだ この人は! この人の自尊心は」

―Part 2へつづく―

2015年8月6日
 
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