交響曲第10番の解説
ベートーベンの交響曲第10番の解説
※お読みになる前に
内容はお読み頂ければすぐにお分かりの様に、
アナリーゼをしている訳ではありません。
単なる「事実の羅列」ですから、「曲の解説」と言う程でもありません。
2013年2月にこの曲の第1楽章がイタリアで初演された後、
あるイタリアの方から
「あなたの補筆完成版を解説しているサイトはないか」
と尋ねるメールが送られてきました。そこで
この曲はまだまだ一般的には知られていませんが、
研究したい人が事実関係を調べるのには大変手間がかかると思い、
その時間を少しでも短縮できる様にこの文章を書きました。
しかし全てを列挙するには枚挙に遑がありませんので、
代表例を示すだけにとどめております。どうかこの点ご理解下さい。
どうしても詳しく知りたければメールでお尋ね下さい、お答えします。
引き合いに出したベートーヴェンの作品は小節数まで明記しましたから、
すぐに確認できるはずです。
しかし参考文献は絶版であったり、入手困難かもしれませんので、
音楽大学の図書館で閲覧するか、大きな図書館で調べて下さい、
もしそこになくても、図書館によってはリクエストを出せば別の図書館を探して、
取り寄せてもらえる場合があるので試してみて下さい。
参考文献のどこを使用したかすぐ分かる様に、ページ数等示しております。
また、もしあなたの身近にベートーヴェンの作品を
スケッチにまで遡って研究している方がいらっしゃれば、
とても幸運と言えるでしょう。
私が使用したベートーヴェン自身によるモチーフは、
その様な研究者にとってはあたりまえの様に知られていますので、
すぐに説明してくれるはずです。
※内容は以前ウキぺディアに投稿した文章とほぼ同じです。
補筆完成版交響曲第10番ハ短調 は2011年4月に
IMSLP国際楽譜ライブラリープロジェクトにアップロードしました。
概要
バリー・クーパー博士の版と同様、
ボンのベートーベンハウスとベルリン国立図書館 が所蔵しているスケッチをもとに
復元しました。
但しベルリン国立図書館は第10交響曲のスケッチをインターネット上に
公開していない様です。
以前テレビで放送された第10交響曲のスケッチについての譜例解説は
JY’s homepage「ベートーヴェン第10交響曲スケッチ」を参照して下さい。
参考文献として 属啓成著「ベートーヴェン 作品篇」
「第10シンフォニーの計画」の項を挙げておきます(第542~543ページ)
以下ここで示す七田英明版第10交響曲のページ数は
IMSLPにアップロードされているファイルのページ数です。
初演
第1楽章のみが2013年2月23日にイタリアで初演されました。
その様子を伝える記事二つを以下に示します。
英語の記事
イタリア語の記事
You Tube
場所in Como, Italy, at Cantù – Teatro Comunale San Teodoro.
指揮者Pierangelo Gelmini
オーケストラthe Orchestra Sinfonica del Lario
また2014年3月15日にも
ベートーヴェン第10交響曲 第1楽章が演奏されたようです。(未確認)
指揮 Zach Tay
オーケストラ orchestre nouveau
場所 オーストラリア、メルボルン
orchestre nouvea
Orchestre Nouveau - Enigma
各楽章の接続
第10交響曲の序文(Preface)で述べた様に、ベートーヴェンは
前の楽章の最後の音(または和音)から
次の楽章の冒頭の音(または和音)へ移行する際
同じにするか、或いは短2下降(時に短2度上降)して接続する事を好んだと思われる。
実際に第10交響曲では
第1楽章終止音 ”ハ”→第2楽章開始音”ハ”(同音)
第2楽章終止音 ”変イ”(変イ長調主音)→
第3楽章開始音”ト”(ハ短調属音)(短2下降)
ベートーヴェンの作品におけるその代表例として
ピアノソナタ第29番変ロ長調作品106がある。この曲においては、
第1楽章終止音 ”変ロ”(変ロ長調主音)→第2楽章開始音 変ロ長調主和音(同和音)
第2楽章終止音 変ロ長調主和音(主音変ロ)→第3楽章開始音”イ”(短2下降)
第3楽章終止音 嬰へ長調主和音(主音嬰へ)→第4楽章開始音”へ”(変ロ長調属音)
(短2下降)となっている。
編成
フルート2、オーボエ2、クラリネット2、ファゴット2
ホルン4、トランペット2(当時の習慣に従い “Clarini”と表記)
ティンパニー、第1バイオリン、第2バイオリン、ビオラ、チェロ、コントラバス
第4楽章(第1稿のみ)
コントラファゴットとトロンボーン(ソプラノ、アルト、テナー)が加わる。
第1楽章 Adagio sostenuto-Allegroソナタ形式
主にボンのベートーベンハウス所蔵のスケッチ
をもとに復元したが、すべてを使用している訳ではない。
またベートーベン自身が書いたものから少し変化しているが、
序文(Preface)で書き記しているように、推敲した後に使用した。
尚 バリー・クーパー氏の版でも指摘される様に、
序奏の主題が悲愴ソナタ第2楽章と酷似しているが、(初出第2ページ クラリネット)
これはそもそもベートーベン自身のスケッチが酷似しているので当然と言える。
ベートーヴェンハウス・デジタルアーカイブス
( 1ページ目 上から6段目の左の方を参照)
むしろベートーベンのこの時期に残したスケッチが、
なぜ以前使ったモチーフに似ているのかに疑問がある。
(ただ単に好んでいたのかも知れない)
あるいは「悲愴ソナタ」の主題を転用したと見るべきか?
序奏はホルツの証言に倣い変ホ長調で開始され主部はハ短調である。
属啓成著 ベートーヴェン 作品篇 「第10シンフォニーの計画」
第542ページ を参照
バリー・クーパー版とは違い、
曲名の第10交響曲“ハ短調”は第1主題の調性に基づいている。
第2主題は変イ長調、(第23ページ)これは
第1主題の長3度下、つまり下属調の平行調(或いは平行調の下属調)をとっている。
提示部は第2主題が主和音(主音)で終わるので(変イ)、これを下行(性)導音
として短2度下がれば主調の属音“ト”が得られるので、
提示部冒頭への繰り返しが容易で自然に行えるからだと考えられる。(第30ページ)
ピアノソナタ32番ハ短調作品111の第1楽章提示部と同様で、
ベートーヴェンが晩年に用いた手法である。
またソナタ形式ではないが同様の例として、
6つのバガテル作品126第4曲ロ短調がある。この曲は
冒頭音嬰へ(ロ短調属音)→第8小節 ト長調で終止 主音“ト”
(短二度下降して冒頭へ戻る)となっている。
第2楽章 Andante 変奏曲
ベルリン国立図書館にあるスケッチをもとに復元した。(第2〰3ページ)
ここでもベートーヴェン第10交響曲スケッチを参照されたい。また
第ニベート―ヴェニアーナ グスタフ・ノッテボーム著(ドイツ語)の
第12ページ譜例の上から3段目。
日本語版の第14ページに紹介されている。
たった一つのスケッチがもとになっているため殆ど私の創作と捉える事もできる。
これを「復元」とみなして良いかは、今後の音楽学者の研究に委ねる。
またこの楽章は概ねで性格変奏で構成されている。
ベートーヴェンが交響曲において性格変奏を採用したのは。
交響曲第9番ニ短調作品125の第4楽章のみである。
主題 Andante 4分の2拍子(第4ページ)
第1変奏 Poco piu mosso 4分の2拍子(第11ページ)
第2変奏 Adagio ma non troppo 4分の2拍子(第18ページ)
第3変奏 Andante 8分の6拍子(第23ページ)
第4変奏 Allegro moderato 4分の2拍子(第33ページ)
第5変奏 Moderato 4分の2拍子(第41ページ)
第6変奏 Adagio ma non troppo 4分の2拍子(第47ページ)
イ長調による主題の再現 Andante 4分の2拍子(第55ページ)
変イ長調による主題の再現 4分の2拍子(第57ページ)
各変奏は主題の小節数や和声進行を必ずしも厳密に守ってはいないので、
かなり自由な変奏曲である。
第3楽章 スケルツォ
「ベートーヴェン第10交響曲スケッチ」でも説明されている通り、
ここで使用されている二つの主題はいずれもベルリン国立図書館が所蔵しており、
スケルツオの主題は「第ニベート―ヴェニアーナ」 の第11ページ下。
日本語版の第13ページに紹介されている。
スケルツォ(ハ短調)第1ページ の主題はそのまま手を加えずに使用したが、
トリオ(ハ長調)第25ページ の主題は少し変更した。
第1稿 Presto-Vivace ma non troppo
ベートーヴェンが中期以降好んで用いたABABAの5部で構成される形式
(一例として交響曲第7番イ長調作品92第3楽章)を用いているが、
やはりこれは長すぎるため、短縮版(ABA)もアップロードした。
第2稿 Presto-Prestissimo
主にトリオ (第23ページから)と最後の第4楽章への接続部分
(第111ページから)を変更した。
またトリオの途中ホ長調の部分で対旋律的に現れるモチーフは
(初出第26ページ第1及び第2バイオリン)
前奏曲作品39の第2曲の主題を使用している。
ベートーヴェンはその晩年、過去に作曲した作品の主題や一部を
時々転用しているので、これもそれに倣った方法である。よく知られた
交響曲第3番変ホ長調『英雄』作品55第4楽章以外では、例えば
アルマンドWoO81冒頭部の主題を
弦楽四重奏曲第15番イ短調作品132第2楽章中間部(初出第141小節)に転用している。
第4楽章 Allegro assai-Prestoソナタ形式
ベートーヴェンが第10交響曲のために残したとされるスケッチは、
その多くが非常に断片的である。従って
明らかに第4楽章のために残したとされるスケッチを特定するのは
確かに非常に困難である。
第1稿
ここでは属啓成著「ベートーヴェン 作品篇」の「第10シンフォニ―の計画」
の章543ページに掲載されている、
マルクスが終楽章主題だと述べている一つないしは二つのスケッチその他を使用した。
(第2〰第3ページ第1及び第2バイオリン、第11ページ第1バイオリン)
尚これらのスケッチはベルリン国立図書館が所蔵している。
しかし問題はむしろ調設定で 第1楽章が短調である場合
第4楽章は通常同じ調か同主調(同主長調)であるが、
(第5及び第9交響曲が良い例)ここでは変ホ長調である。
この様な調関係はベートーヴェンの作品の中には現れないと思われるが、
先に述べたベートーヴェン「作品篇」の「第10シンフォニ―の計画」の章の中で
マルクスが終楽章主題だと述べているスケッチが変ホ長調と述べられているため
それをそのまま踏襲した。
また第1楽章の序奏部は第4楽章と同じ変ホ長調であり、しかも
第1主題のハ短調と変ホ長調は平行調の関係で近親調である。
従ってこの方法は古典的な作曲法の範囲内だと言って良いと私は信じる。
再現部第二主題は一旦異なる調で再現し、続いて主調(または同主調)で再現する。
(第44〰48ページ)これはベートーヴェンが晩年弦楽四重奏曲等で用いた手法を
参考にしている。
以下にその例をいくつか示す。
弦楽四重奏曲第11番へ短調作品95第1楽章第89〰98小節
弦楽四重奏曲第13番変ロ長調作品130第1楽章 第2主題 第160〰183小節
弦楽四重奏曲第14番嬰ハ短調作品131第7楽章 第2主題 第216〰259小節
コーダにおけるそれまでの主題(第1、2楽章を含め)の回想(第57~59ページ)も
ベートーヴェンが晩年得意とした手法で
交響曲第9番ニ短調作品125の第4楽章冒頭以外の参考例として
ピアノソナタ第28番イ長調作品101第3楽章 序奏部の最後 と
大フーガ変ロ長調作品133 第657〰662小節に用例がある。
第2稿 執筆中(今回の追加記事)
ハ長調なので第5交響曲と同様の調設定となった。
明らかに古典的な手法の範囲内である。
もとになったモチーフはベートーヴェンハウスが公開している。
第2ページ上から5及び6段目
これらのモチーフを第4楽章のためのものだとする証拠も確証もないが、
少なくともベートーヴェン自身が書いた事は確実である。
変ロ長調 またはト短調と読めるが、
ここでは第1楽章からの調設定を考え、ハ長調に移調して使用した。
総括
この補筆完成版全4楽章の本格的なオーケストラによる初演はまだ行われていない。
この交響曲全曲を聴く手段は現在のところシンセサイザーによる演奏のみである。
従ってこの作品に対する私以外の専門家の批評等は現段階では全く公表されていないと
推測される。以上の理由から この作品の正しい評価 つまり
ベートーヴェンが生きていれば完成させていたであろう「交響曲第10番」
にどの程度近い復元であるかは、ここでは言及せずに確実に事実と認識されうる
事例の解説にとどめておく。
尚 私は弦楽五重奏曲ハ長調] (第2楽章に「最期の楽想」WoO62を用いた)
も復元している。
参考文献
ベートーヴェン 作品篇 音楽の友社 属啓成 著
グスタフ・ノッテボーム著
第ニベート―ヴェニアーナ(ドイツ語)]
山根銀二 日本語訳(上巻Ⅰ〰ⅩⅩⅩⅠ)第ニベート―ヴェニアーナ(絶版)
参考サイト! 必読です!
参考サイト①
参考サイト②
参考サイト③
以下続々登場の予定!お楽しみに!
外部リンク(外国語による七田英明版第10交響曲の紹介)
TheUnheard Beethoven(英語)
Eroika Klassikforum(ドイツ語)
Melomanos Locos (スペイン語)
Beethoven Symphony No.10(フランス語)
韓国語による紹介
ベトナム語による紹介
2014年5月2日
Wikipedia Quality
この曲の全4楽章のフルスコアと全パート譜が
日本国内で、レンタル譜として出版されました。
詳しくはM2Planのこの曲のサイトをご覧ください。
2014年12月30日
第4楽章 第2稿をアップロードしました。どうぞご覧下さい。
2015年5月
第10交響曲その他 スペイン語
さてここで 特別コーナー!!!!!!!
見~ちゃった 見~ちゃった
参考サイト③の執筆者N様への メッセージよ届け~!
参考サイト③の執筆者N様へ
あれからもう1年以上が過ぎました。月日の経つのがまことに速く感じられる今日この頃
いかがお過ごしでしょうか?
私 弦楽五重奏曲も復元致しましたので、そのうち、この曲にも
御講評を、いや御高評を仰げるものと思いお待ちしておりましたが、
いっこうにN様のサイトに掲載されません。どうなさったのですか?だって…
弦楽五重奏曲ハ長調?
ベートーヴェンは最晩年、ハ長調の弦楽五重奏曲を作曲しようとして、
スケッチを残している事は「第2ベート―ヴェ二アーナ」を読めば載っていますから、
ベートーヴェン好きの間では常識になっている知識なので、当然御存知ですよね?
お待ちしてま~す。
2017年9月3日
※お読みになる前に
内容はお読み頂ければすぐにお分かりの様に、
アナリーゼをしている訳ではありません。
単なる「事実の羅列」ですから、「曲の解説」と言う程でもありません。
2013年2月にこの曲の第1楽章がイタリアで初演された後、
あるイタリアの方から
「あなたの補筆完成版を解説しているサイトはないか」
と尋ねるメールが送られてきました。そこで
この曲はまだまだ一般的には知られていませんが、
研究したい人が事実関係を調べるのには大変手間がかかると思い、
その時間を少しでも短縮できる様にこの文章を書きました。
しかし全てを列挙するには枚挙に遑がありませんので、
代表例を示すだけにとどめております。どうかこの点ご理解下さい。
どうしても詳しく知りたければメールでお尋ね下さい、お答えします。
引き合いに出したベートーヴェンの作品は小節数まで明記しましたから、
すぐに確認できるはずです。
しかし参考文献は絶版であったり、入手困難かもしれませんので、
音楽大学の図書館で閲覧するか、大きな図書館で調べて下さい、
もしそこになくても、図書館によってはリクエストを出せば別の図書館を探して、
取り寄せてもらえる場合があるので試してみて下さい。
参考文献のどこを使用したかすぐ分かる様に、ページ数等示しております。
また、もしあなたの身近にベートーヴェンの作品を
スケッチにまで遡って研究している方がいらっしゃれば、
とても幸運と言えるでしょう。
私が使用したベートーヴェン自身によるモチーフは、
その様な研究者にとってはあたりまえの様に知られていますので、
すぐに説明してくれるはずです。
※内容は以前ウキぺディアに投稿した文章とほぼ同じです。
補筆完成版交響曲第10番ハ短調 は2011年4月に
IMSLP国際楽譜ライブラリープロジェクトにアップロードしました。
概要
バリー・クーパー博士の版と同様、
ボンのベートーベンハウスとベルリン国立図書館 が所蔵しているスケッチをもとに
復元しました。
但しベルリン国立図書館は第10交響曲のスケッチをインターネット上に
公開していない様です。
以前テレビで放送された第10交響曲のスケッチについての譜例解説は
JY’s homepage「ベートーヴェン第10交響曲スケッチ」を参照して下さい。
参考文献として 属啓成著「ベートーヴェン 作品篇」
「第10シンフォニーの計画」の項を挙げておきます(第542~543ページ)
以下ここで示す七田英明版第10交響曲のページ数は
IMSLPにアップロードされているファイルのページ数です。
初演
第1楽章のみが2013年2月23日にイタリアで初演されました。
その様子を伝える記事二つを以下に示します。
英語の記事
イタリア語の記事
You Tube
場所in Como, Italy, at Cantù – Teatro Comunale San Teodoro.
指揮者Pierangelo Gelmini
オーケストラthe Orchestra Sinfonica del Lario
また2014年3月15日にも
ベートーヴェン第10交響曲 第1楽章が演奏されたようです。(未確認)
指揮 Zach Tay
オーケストラ orchestre nouveau
場所 オーストラリア、メルボルン
orchestre nouvea
Orchestre Nouveau - Enigma
各楽章の接続
第10交響曲の序文(Preface)で述べた様に、ベートーヴェンは
前の楽章の最後の音(または和音)から
次の楽章の冒頭の音(または和音)へ移行する際
同じにするか、或いは短2下降(時に短2度上降)して接続する事を好んだと思われる。
実際に第10交響曲では
第1楽章終止音 ”ハ”→第2楽章開始音”ハ”(同音)
第2楽章終止音 ”変イ”(変イ長調主音)→
第3楽章開始音”ト”(ハ短調属音)(短2下降)
ベートーヴェンの作品におけるその代表例として
ピアノソナタ第29番変ロ長調作品106がある。この曲においては、
第1楽章終止音 ”変ロ”(変ロ長調主音)→第2楽章開始音 変ロ長調主和音(同和音)
第2楽章終止音 変ロ長調主和音(主音変ロ)→第3楽章開始音”イ”(短2下降)
第3楽章終止音 嬰へ長調主和音(主音嬰へ)→第4楽章開始音”へ”(変ロ長調属音)
(短2下降)となっている。
編成
フルート2、オーボエ2、クラリネット2、ファゴット2
ホルン4、トランペット2(当時の習慣に従い “Clarini”と表記)
ティンパニー、第1バイオリン、第2バイオリン、ビオラ、チェロ、コントラバス
第4楽章(第1稿のみ)
コントラファゴットとトロンボーン(ソプラノ、アルト、テナー)が加わる。
第1楽章 Adagio sostenuto-Allegroソナタ形式
主にボンのベートーベンハウス所蔵のスケッチ
をもとに復元したが、すべてを使用している訳ではない。
またベートーベン自身が書いたものから少し変化しているが、
序文(Preface)で書き記しているように、推敲した後に使用した。
尚 バリー・クーパー氏の版でも指摘される様に、
序奏の主題が悲愴ソナタ第2楽章と酷似しているが、(初出第2ページ クラリネット)
これはそもそもベートーベン自身のスケッチが酷似しているので当然と言える。
ベートーヴェンハウス・デジタルアーカイブス
( 1ページ目 上から6段目の左の方を参照)
むしろベートーベンのこの時期に残したスケッチが、
なぜ以前使ったモチーフに似ているのかに疑問がある。
(ただ単に好んでいたのかも知れない)
あるいは「悲愴ソナタ」の主題を転用したと見るべきか?
序奏はホルツの証言に倣い変ホ長調で開始され主部はハ短調である。
属啓成著 ベートーヴェン 作品篇 「第10シンフォニーの計画」
第542ページ を参照
バリー・クーパー版とは違い、
曲名の第10交響曲“ハ短調”は第1主題の調性に基づいている。
第2主題は変イ長調、(第23ページ)これは
第1主題の長3度下、つまり下属調の平行調(或いは平行調の下属調)をとっている。
提示部は第2主題が主和音(主音)で終わるので(変イ)、これを下行(性)導音
として短2度下がれば主調の属音“ト”が得られるので、
提示部冒頭への繰り返しが容易で自然に行えるからだと考えられる。(第30ページ)
ピアノソナタ32番ハ短調作品111の第1楽章提示部と同様で、
ベートーヴェンが晩年に用いた手法である。
またソナタ形式ではないが同様の例として、
6つのバガテル作品126第4曲ロ短調がある。この曲は
冒頭音嬰へ(ロ短調属音)→第8小節 ト長調で終止 主音“ト”
(短二度下降して冒頭へ戻る)となっている。
第2楽章 Andante 変奏曲
ベルリン国立図書館にあるスケッチをもとに復元した。(第2〰3ページ)
ここでもベートーヴェン第10交響曲スケッチを参照されたい。また
第ニベート―ヴェニアーナ グスタフ・ノッテボーム著(ドイツ語)の
第12ページ譜例の上から3段目。
日本語版の第14ページに紹介されている。
たった一つのスケッチがもとになっているため殆ど私の創作と捉える事もできる。
これを「復元」とみなして良いかは、今後の音楽学者の研究に委ねる。
またこの楽章は概ねで性格変奏で構成されている。
ベートーヴェンが交響曲において性格変奏を採用したのは。
交響曲第9番ニ短調作品125の第4楽章のみである。
主題 Andante 4分の2拍子(第4ページ)
第1変奏 Poco piu mosso 4分の2拍子(第11ページ)
第2変奏 Adagio ma non troppo 4分の2拍子(第18ページ)
第3変奏 Andante 8分の6拍子(第23ページ)
第4変奏 Allegro moderato 4分の2拍子(第33ページ)
第5変奏 Moderato 4分の2拍子(第41ページ)
第6変奏 Adagio ma non troppo 4分の2拍子(第47ページ)
イ長調による主題の再現 Andante 4分の2拍子(第55ページ)
変イ長調による主題の再現 4分の2拍子(第57ページ)
各変奏は主題の小節数や和声進行を必ずしも厳密に守ってはいないので、
かなり自由な変奏曲である。
第3楽章 スケルツォ
「ベートーヴェン第10交響曲スケッチ」でも説明されている通り、
ここで使用されている二つの主題はいずれもベルリン国立図書館が所蔵しており、
スケルツオの主題は「第ニベート―ヴェニアーナ」 の第11ページ下。
日本語版の第13ページに紹介されている。
スケルツォ(ハ短調)第1ページ の主題はそのまま手を加えずに使用したが、
トリオ(ハ長調)第25ページ の主題は少し変更した。
第1稿 Presto-Vivace ma non troppo
ベートーヴェンが中期以降好んで用いたABABAの5部で構成される形式
(一例として交響曲第7番イ長調作品92第3楽章)を用いているが、
やはりこれは長すぎるため、短縮版(ABA)もアップロードした。
第2稿 Presto-Prestissimo
主にトリオ (第23ページから)と最後の第4楽章への接続部分
(第111ページから)を変更した。
またトリオの途中ホ長調の部分で対旋律的に現れるモチーフは
(初出第26ページ第1及び第2バイオリン)
前奏曲作品39の第2曲の主題を使用している。
ベートーヴェンはその晩年、過去に作曲した作品の主題や一部を
時々転用しているので、これもそれに倣った方法である。よく知られた
交響曲第3番変ホ長調『英雄』作品55第4楽章以外では、例えば
アルマンドWoO81冒頭部の主題を
弦楽四重奏曲第15番イ短調作品132第2楽章中間部(初出第141小節)に転用している。
第4楽章 Allegro assai-Prestoソナタ形式
ベートーヴェンが第10交響曲のために残したとされるスケッチは、
その多くが非常に断片的である。従って
明らかに第4楽章のために残したとされるスケッチを特定するのは
確かに非常に困難である。
第1稿
ここでは属啓成著「ベートーヴェン 作品篇」の「第10シンフォニ―の計画」
の章543ページに掲載されている、
マルクスが終楽章主題だと述べている一つないしは二つのスケッチその他を使用した。
(第2〰第3ページ第1及び第2バイオリン、第11ページ第1バイオリン)
尚これらのスケッチはベルリン国立図書館が所蔵している。
しかし問題はむしろ調設定で 第1楽章が短調である場合
第4楽章は通常同じ調か同主調(同主長調)であるが、
(第5及び第9交響曲が良い例)ここでは変ホ長調である。
この様な調関係はベートーヴェンの作品の中には現れないと思われるが、
先に述べたベートーヴェン「作品篇」の「第10シンフォニ―の計画」の章の中で
マルクスが終楽章主題だと述べているスケッチが変ホ長調と述べられているため
それをそのまま踏襲した。
また第1楽章の序奏部は第4楽章と同じ変ホ長調であり、しかも
第1主題のハ短調と変ホ長調は平行調の関係で近親調である。
従ってこの方法は古典的な作曲法の範囲内だと言って良いと私は信じる。
再現部第二主題は一旦異なる調で再現し、続いて主調(または同主調)で再現する。
(第44〰48ページ)これはベートーヴェンが晩年弦楽四重奏曲等で用いた手法を
参考にしている。
以下にその例をいくつか示す。
弦楽四重奏曲第11番へ短調作品95第1楽章第89〰98小節
弦楽四重奏曲第13番変ロ長調作品130第1楽章 第2主題 第160〰183小節
弦楽四重奏曲第14番嬰ハ短調作品131第7楽章 第2主題 第216〰259小節
コーダにおけるそれまでの主題(第1、2楽章を含め)の回想(第57~59ページ)も
ベートーヴェンが晩年得意とした手法で
交響曲第9番ニ短調作品125の第4楽章冒頭以外の参考例として
ピアノソナタ第28番イ長調作品101第3楽章 序奏部の最後 と
大フーガ変ロ長調作品133 第657〰662小節に用例がある。
第2稿 執筆中(今回の追加記事)
ハ長調なので第5交響曲と同様の調設定となった。
明らかに古典的な手法の範囲内である。
もとになったモチーフはベートーヴェンハウスが公開している。
第2ページ上から5及び6段目
これらのモチーフを第4楽章のためのものだとする証拠も確証もないが、
少なくともベートーヴェン自身が書いた事は確実である。
変ロ長調 またはト短調と読めるが、
ここでは第1楽章からの調設定を考え、ハ長調に移調して使用した。
総括
この補筆完成版全4楽章の本格的なオーケストラによる初演はまだ行われていない。
この交響曲全曲を聴く手段は現在のところシンセサイザーによる演奏のみである。
従ってこの作品に対する私以外の専門家の批評等は現段階では全く公表されていないと
推測される。以上の理由から この作品の正しい評価 つまり
ベートーヴェンが生きていれば完成させていたであろう「交響曲第10番」
にどの程度近い復元であるかは、ここでは言及せずに確実に事実と認識されうる
事例の解説にとどめておく。
尚 私は弦楽五重奏曲ハ長調] (第2楽章に「最期の楽想」WoO62を用いた)
も復元している。
参考文献
ベートーヴェン 作品篇 音楽の友社 属啓成 著
グスタフ・ノッテボーム著
第ニベート―ヴェニアーナ(ドイツ語)]
山根銀二 日本語訳(上巻Ⅰ〰ⅩⅩⅩⅠ)第ニベート―ヴェニアーナ(絶版)
参考サイト! 必読です!
参考サイト①
参考サイト②
参考サイト③
以下続々登場の予定!お楽しみに!
外部リンク(外国語による七田英明版第10交響曲の紹介)
TheUnheard Beethoven(英語)
Eroika Klassikforum(ドイツ語)
Melomanos Locos (スペイン語)
Beethoven Symphony No.10(フランス語)
韓国語による紹介
ベトナム語による紹介
2014年5月2日
Wikipedia Quality
この曲の全4楽章のフルスコアと全パート譜が
日本国内で、レンタル譜として出版されました。
詳しくはM2Planのこの曲のサイトをご覧ください。
2014年12月30日
第4楽章 第2稿をアップロードしました。どうぞご覧下さい。
2015年5月
第10交響曲その他 スペイン語
さてここで 特別コーナー!!!!!!!
見~ちゃった 見~ちゃった
参考サイト③の執筆者N様への メッセージよ届け~!
参考サイト③の執筆者N様へ
あれからもう1年以上が過ぎました。月日の経つのがまことに速く感じられる今日この頃
いかがお過ごしでしょうか?
私 弦楽五重奏曲も復元致しましたので、そのうち、この曲にも
御講評を、いや御高評を仰げるものと思いお待ちしておりましたが、
いっこうにN様のサイトに掲載されません。どうなさったのですか?だって…
弦楽五重奏曲ハ長調?
ベートーヴェンは最晩年、ハ長調の弦楽五重奏曲を作曲しようとして、
スケッチを残している事は「第2ベート―ヴェ二アーナ」を読めば載っていますから、
ベートーヴェン好きの間では常識になっている知識なので、当然御存知ですよね?
お待ちしてま~す。
2017年9月3日
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