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EPMA用の試料準備方法

 EPMAを行うなら”福島啓義「電子線マイクロアナリシス」日刊工業新聞社”と”木ノ内嗣郎「新訂版 EPMA 電子プローブ・マイクロアナライザー」技術書院”、装置のマニュアルは絶対に読んでおく必要がある。
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◆ 樹脂埋め
・熱間埋込樹脂ポリファスト(丸本ストルアス株式会社)をスプーン一杯
・180℃、圧力25-30、3分
・水道水を流して1分間冷却
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◆ 切断

 試料が大きすぎて試料ホルダに取り付けられない、あるいは試料室に入らないときには必要十分な大きさに切断しなければならない。ナイフで切れるようなときや、たとえば硬質塩ビのように金鋸で簡単に切れる場合、あるいは切り出した試料をあらためて研磨して分析面を露出させるようなときは問題ない。
 切断のときの熱で材料変化を起こさないように注意する程度でよい。しかし、金属破面試料の切り出しなどには種々の問題がある。すなわち、複雑な形状をした破面を保存したままで切断できるか、である。きりこが破面に付着する程度ならあとで洗浄できるが、切断時の発熱焼き付きを防ぐために油や水をかけながら切断すると、破面に油や水が付いて、切断中に油焼けや腐食が起きる可能性がある。バネ材のように、非常に硬いため分析室で手持ちの金鋸くらいでは切れないので、機械加工部門に依頼したところ、EPMAの心得のない作業者が汚れた手や作業手袋で破面をいじってしまうというようなこともあり得る。このような場合の切断法として完全なものはないので、
@油や水を使わず、しかも蒸発させず、きりこも飛び散らないよう、ゆっくり時間をかけて切る
A油を用いて切断し、あとで洗浄する
B水で腐食しない材料なら水をかけながら切る
Cグリースあるいはグリース様のもので破面を保護して切断し、洗浄する
Dそっくり樹脂モールドし、モールドとともに切断し(このときは油、水の使用はかまわない)、あとで樹脂を溶かしてしまう
といったいくつかの方法を注意深く判断しながら用いることになる。

福島啓義「電子線マイクロアナリシス」日刊工業新聞社
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◆ 分析面の露出

 分析精度を高めるには、試料の分析面をなるべく平滑・水平にする必要があるのはいうまでもない。
 金属試料や鉱物試料のように、機械研磨の技術がほぼ確立されていて、光学顕微鏡で観察される組織と対応させて分析する場合は、基本的には光顕用研磨法がそのまま使える。軟質プラスチック、ゴムといったものは研磨は普通できないので、切断面で分析することが多い。生体軟組織も研磨ができないの断面や割面を用いる。露出した面は、特別な目的がない限り試料を代表する普通の面であること、研磨材などのコンタミネーションがないこと、刃跡がないこと、特定の試料成分が脱落していないこと、などの条件を満足しているべきである。

◇ 割る
 破断面を観察・分析するのが主目的ではない場合でも、研磨や刃物による切断の代わりに割面を出すことがある。研磨や切断が困難な場合にも利用されるが、試料内部組織に対応した面が露出する可能性が大きいという特徴を有するので、生体組織内部の立体構造を露出にしばしば利用される。ガラスやプラスチックの最表面から内部への組織変化を調べるとき、断面研磨すると肝心のエッジの部分(すなわち表面層)がダレてしまうが、このようなときにも有効である。形成された割面はなるべく平らであることが望ましいし、先のガラス、プラスチックの例では表面に直角な断面がでることが必要である。試料にねばりがあると平坦に割れにくいので凍結して割るのがよい。液体窒素に直接付けて割っても成功することとがあるが、試料が小さいと割りにくい、粉々に割れることがある、直角に割れることが少ない、などの欠点がある。そこで樹脂などにモールドしてノッチを付けて一緒に凍結し割るとか、刃を当ててたたくとかするのが良い。
 硬化させてから凍結(冷凍)させる場合の樹脂は、一応何でも利用できる。常温で重合させるエポキシ系でも加熱加圧硬化のアクリル系でもかまわない。市販の5分間硬化の2液性接着剤(エポキシ系)が手ごろである。割面を得たあとで樹脂を除きたい場合はスチレン樹脂を用いるとよい。
 酢酸イソアルミやプロプレンオキサイドに浸けておけば溶ける。常温で液状のものを用いる場合は、2液性接着剤(エポキシ系)の主剤のみの利用や酢酸イソアルミやエタノールなど有機溶剤を利用する方法がある。これらの液の中で試料をゼラチンカプセルに入れ、取り出して凍結させる。割ったのち、前者の場合はプロピレンオキサイドに浸けて溶かし、洗浄する。後者の場合は、常温に戻れば自然に液体に戻って流れてしまう。

◇ 磨く
 一般に、金属顕微鏡や偏光顕微鏡のための研磨法に準じてよい。ただ、観るだけではなく分析するわけであるので、研磨くずや研磨材が残留すると分析結果に悪影響がでる点に注意する。分析対象元素と同じ元素で構成される研磨材は原則的には用いないほうが無難である。研磨後の洗浄も重要で、たとえば鋼中カーボンの定量などは洗浄が精度に大きく影響する。
研磨には、
@エメリーペーパー、サンドペーパーによる研磨
A砥石研磨
B上板と研磨粉による研磨
C研磨布と研磨粉による研磨
などがある。それぞれに多種の材料や研磨機器がある。
 EPMA分野では、エメリーペーパーとバフ研磨の組み合わせが最も普通である。手順を次に示す。

[研磨のための試料前準備]
@)指でしっかり持てる大きさで、研磨面の中央部が分析位置なら、そのまま研磨
A)小さすぎて持ちにくいなら樹脂モールドする。どんな樹脂でもかまわないが、硬いほうが望ましい。加熱加圧で硬化するベークライトは非常に硬く、分析中に電子線が当たってもあまり傷まない。研磨後試料を取り出したいならスチレン樹脂を用いるとよい。また、低融合金(Bi50-Pb26-Sn13-Cd11)を用いる方法もある。これは70℃くらいで融けるので熱湯中で処理できる。
B)試料のエッジ付近が分析対象のときは研磨によるダレが問題になる。上記のベークライトは硬いので比較的ダレは少ないが、下記のような方法もある。
a) 厚い保護メッキをしてから研磨する
b) 同じ試料を背中合わせに密着させて研磨する
c) 堅いもので挟んで一緒に研磨する

[研磨用具・材料]
・研磨機
 エメリーペーパーを張り付けるための平盤式(3種以上のエメリーペーパーが同時に貼れるもの)および回転式(2連式あるいは少なくとも回転盤が簡単に交換できるもの)
・エメリーペーパー
 180番、240番、400番、600番、800番の中から3種以上、ただし、[180番か240番]と[600番か800番]は含むこと。
・研磨布
 一般にバフと呼ばれる細かい毛が密集した布(酸化アルミ、ダイヤモンドペースト用である)。なお、バフというのは本来は鹿、水牛などのなめした軟皮であるが、高価であり使わない。ナイロン織布または絹織布(ダイヤモンドペースト用)
・研磨剤
 酸化アルミ:5-3μm, 0.5-0.3μm, 0.05μm。ただし普通の場合は0.05μmは不要。
 ダイヤモンドペースト:-3μm、-1μm, 1/4μm。ただし1/4μmは不要の場合が多い。
 ダイヤモンドペーストを用いるときはラッピングオイルも必要。
 酸化アルミとダイヤモンドペーストのどちらで研磨するかは試料によっても変わる。
 ダイヤモンドペーストは一番硬い研磨材であるので、硬さの異なる組織があっても”段”が付きにくいので優れているが、一般に酸化アルミのほうが扱いやすい。金属試料はだいたい酸化アルミで十分である。鉱物、超硬合金などはダイヤモンドペーストのほうが良好である。
 非金属介在物・析出物が分析対象の金属や粉末試料を樹脂モールドしたものなどにもダイヤモンドペーストのほうが良好なことが多い。
 研磨材の粒度の種類の数だけ研磨布を用意する。同じ研磨布に異なった種類あるいは異なった粒度の研磨材を用いるのは厳禁である。したがって、回転盤もそれだけの数を用意しておくと便利である。

[手順1. 酸化アルミ]
@)エメリーペーパーを平盤に貼り付ける(エメリーペーパー裏面には接着剤が付いている)。平板上のゴミはていねいに取っておく。使用済みのペーパーを剥がしたあとに接着剤が残っていることがあるので、このような場合はシンナーなどでふき取っておくこと。
A)水を流しながら180番または240番から順次600番または800番まで磨く。試料の研磨方法を一定にして、すべての条痕が平行に揃ったら次の段階に入る。試料の方向を90°回転させて、前段階の条痕に対して垂直の条痕が付くように研磨をする。各段1分程度であるが、前段(すなわちより粗い研磨)での研磨キズがなくなるまで磨く。粗い研磨のうちに面取りをしておくこと。各段ごとに水洗いして研磨くず、研磨材が残っていないようにしてから、より細かい研磨に移る。粗い研磨のときの研磨くず、研磨材が細かい研磨面に残ると、試料面にもエメリーペーパー面にもキズが付く。
B)研磨布を回転盤に貼り付ける(研磨布には接着剤が付いているものと付いていないもんがあるがどちらでもよい)。
回転盤上のゴミや接着剤を除き、研磨布のしわなどがないように張る。
C)酸化アルミの水濁液を滴下しながら粒度の大きい方から小さい方へ順次研磨していく。エメリーペーパーでの研磨くずは十分洗っておくこと。指先に付いた研磨くずも洗い流して、バフに研磨くずが移らないように注意する。粒度の細かい研磨に移るときも十分洗浄すること。回転盤の回転方向に対して試料を自転させて研磨方向が片寄らないようにする。こうしないと析出物などからすい星状に凹凸の尾を引く。ただし、組織に直線状の境界があり、境界層での濃度分布をμm単位あるいはこれ以下の寸法単位で分析したいときは、研磨の最終段階では研磨方向を境界に平行に保つ。
 各段階での研磨時間は5-30分でケースバイケースである。時々顕微鏡で観察しながら完了時を決める。EPMAの立場では、細かい研磨キズが一面にあるほうが問題で、大きなキズが2-3本あってもキズの場所が指定された分析位置でなければかまわない。
D)上記の[b)同じ試料を背中合わせに密着させて研磨する]や[c)堅いもので挟んで一緒に研磨する]の場合は試料を外す。
E)洗浄
 まず流水で研磨面、側面、手などを十分洗浄する。水を流しただけでは研磨材が取れないときは、流水中で脱脂綿で軽くふく。仕上げ洗浄は熱湯、無水アルコール、アセトンなどで行う。熱湯以外は脱脂綿にたっぷり付けて軽くふく。たっぷり付けてふかないと、脱脂綿の繊維でキズが付くことがある。洗浄ののちすみやかに乾燥させるために熱風を吹き付けるとよい。石油エーテルのように、揮発性の強い洗浄液で何度もふくと、気化熱を奪われて試料温度が下がり霜が付くことがあるので注意する(※手の油などを除くためにアセトンで拭い油を除去する場合、アセトンでもアセトンの気化熱によって試料の温度が下がり、大気中の水分が試料につくことがある。その場合にはエタノールで拭いて水分を減らしたりする)。
 乾燥したあとにシミが残らないことを確認すること。
F)試料がポーラスであったり、クラックがあったり、モールドしたときモールド材との間にすき間があったりすると、研磨材や研磨液がしみ込んでいて分析中にしみ出てくることがあるので、超音波洗浄していったん真空容器(コーティング装置のベルジャ)に入れて吸出しする必要がある。
 顕微鏡で調べてしみでているなら軽くふき、再び真空容器に入れるという作業を繰り返す。
※ アルミナは、結晶にα型とγ型がある。α型は六方晶系で硬度が約9、粒度によって約1μm, 0.5μm, 0.3μmのものがある。γ型は薄い板状結晶で研磨時に割れやすい性質を持っているので、α型による研後の仕上げ研磨に適している。粒度は0.06μmがある。
※ 余談であるが、乾式研磨用のアルミナ質の研磨材には、SiO2, Fe2O3, Ti2, CaO, MgO, ZrO2, Na2O, Cr2O3など多くの不純物が含まれている。これらの不純物は、研磨時に多孔質の試料などに埋没して汚染することがあるので注意が必要である。(私のCuをEPMAで測定した経験では、表面が孔の空いたものでなく、綺麗な面を観察すればC以外は検出されなかった)

[手順2. ダイヤモンドペースト]
@)-B)[手順1]に同じ
C)ダイヤモンドペーストをラッピングオイルで溶く。注射容器にダイヤモンドペーストが入っている場合(はじめからラッピングオイルに溶いたもの、あるいは水で溶いてしようするものがあるが、筆者は使用経験がない)、直接研磨布に付けるとムラができすぎて良くない。
 ダイヤモンドペーストは一度研磨布に付けたら何度でも使用できるので、ラッピングオイルを多量に使いすぎて流失してしまうような使い方は損である。オイルとダイヤモンドの量比は10:1-20:1程度が目安である。研磨布に点々と付けて
回転盤を回しながら指でのばす。
D)粒度の大きい方から順次細かいほうへ研磨していく。研磨中乾いた感じになったらオイルを滴下するが、回転したとき遠心力でオイルが飛び散るようではオイルが多すぎる。
 各粒度での研磨が終われば、ラッピングオイルのみをたっぷり付けた脱脂綿で研磨くずをふき取ってから次の粒度へ移る。各段階での研磨時間は5-30分であり、どちらかというと粒度の大きいとき(-3μmのとき)に時間をかけたほうが良い。研磨の方向などその他の注意は[手順1]のC)と同様である。
E)洗浄
 オイルを用いているので水洗はできない。アセトンなど有機溶剤を用いる。仕上げ戦場の注意は[手順1]のE)、F)と同様である。

福島啓義「電子線マイクロアナリシス」日刊工業新聞社
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◆ 乾燥

・アセトン乾燥:アセトンは水より表面張力がずっと小さいので、水をアセトンに置換してからアセトンを乾燥させると試料変形が小さいことを利用する方法である。試料を順次濃度の高いアセトンに浸して最後は無水アセトンに浸し、その後空気中に放置して乾燥する。比較的簡便で、一般に自然乾燥よりは変形という点では良好な結果が得られる。

・真空乾燥、加熱乾燥:これらは自然乾燥より時間が短いが、変形が大きくなるのはいうまでもない。特に真空乾燥は変形が大きく、しかも意外と時間がかかる。組織内に取り込まれている水分は、真空にしたからといってそんなに簡単にでていくものではない。加熱といってもヒータであぶったり、熱風や温風を吹き付けたり、赤外線を照射するといった一方向から強制加熱するのは良くない。恒温槽のように高温雰囲気が望ましい。温度は普通40-60度である。うっかり100℃を超えてしまうと、水分が組織内で沸騰してしまうので気をつけること。

福島啓義「電子線マイクロアナリシス」日刊工業新聞社
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◆ 保存

 表面分析・局所分析であるEPMAの試料は分析面に何もふれない状態で保存されるのが理想である。何もふれないということは超高真空を意味するが、これでは保存が大げさで手間もお金もかかるので、ここまでは必要ではない。しかし、水分や腐食性物質、吸収物質(ガス)の少ない雰囲気が望ましい。長期保存には少なくとも乾燥デシケータ、真空デシケータあるいは乾燥N2ガス封入が必要である。N2ガスは吸着しにくい物質で、TrapnellとHaywardの行った実験によると金属元素への幾種かのガスの吸着のしやすさは次の順であった。
 O2 > C2H2 > C2H4 > CO > H2 > CO2 > N2
 O2はもちろん大気中に多いし、水分も多い。塩素Cl(塩素イオンCl-)や硫黄S(たとえば硫酸ミストSO3-)といった腐食性物質も大気中には無視できないほどあるので大気中に試料を放置しておくのは良くない。タイヤゴム(加硫ゴム;多くのゴム製品は加硫ゴムである)を入れてあったボール紙の空箱に部品を保管しておいたら、表面にすっかり硫化物ができてしまったという例もある。
 試料をガーゼや脱脂綿で包んでおくのも望ましいことではない。ガーゼなどは病原菌の有無といった面では比較的きれいなのかもしれないが、分析試料から見ればガーゼなどの繊維自体がゴミなのである。それにこれらの繊維は意外に硬くて、試料面にキズを付けやすい。試料の持ち運びには、名刺の空箱にむき出しの試料を両面テープで接着するなどが案外良い。

福島啓義「電子線マイクロアナリシス」日刊工業新聞社
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◆ 試料セット-保持、ホルダへの取付け-
 試料をホルダにセットするのは、非常に簡単な作業の場合と種々の工夫をしなければならない場合とがある。不定形、薄膜、粉末の試料では保持のやり方に工夫がいる。耐熱性の良くない試料では、セットのやり方により分析結果に大きな差がでる。

◇不定形試料、水平性
 分析面に対して直角な面や平行や面がないと、ホルダに対して水平性を保ったセットがやりにくい。水平性が悪くても少々のことなら定性分析、半定量分析には影響はでないが、定量分析の誤差になる。また長距離線分析でも問題が生ずる。すなわち、ホルダに対して傾斜していると線分析でX・Yが移動したときZがずれてくるので、X線分光器の焦点からずれてくることになりX線強度が狂ってしまう。
a) きれいな平面ガラスの上に分析面を下にして試料をおき、ホルダをかぶせてそのままネジ止めする
b) ネジ止めがしにくいなら真空コンパウンドを利用する。ただし、真空コンパウンド自身がガスを出すこともあるので、なるべく使わないほうが無難である。使用した場合、電子線が照射される恐れのある面には必ず導電塗料を塗っておく。完全な水平性と確実な固定のためには
「窓、押さえ薄板、試料、固定ネジ、ホルダ」
で構成したホルダを用意するとよい。
 分析領域より大きな窓が開いている脱着可能な薄板をホルダに付けて、これに分析面を押し当てて、反対側から何本かのネジで固定する。このホルダだとどのような不定形試料であってもかまわない。この場合もセットするときは
上下逆にして作業するとやりやすい。

◇粉末試料
1.粒子を一粒一粒分離して分析する場合
@)比較的大きな粉末(1mm程度)
 金属ブロックに導電性塗料(たとえばカーボンドータイト)を塗り試料をふりまく。試料に水平面を出させるには十分きれいな平面ガラスの上に試料をふりまき、上から導電性塗料を塗った半乾きの状態の金属ブロックを押し付ける。
構成(上から)[金属ブロック(ブラス)|半乾き導電性塗料(ドータイト)|試料|ガラス]となる
A)比較的小さな粉末(数10-数100μm)
 ほぼ@)に準ずるが、試料面にドータイトがにじんでしまうときは、エポキシ系5分間接着剤を薄く塗り、半硬化してから粉末試料をひっ付ける。、このときは試料自体が導電性があっても導電コーティングが必要である。
B)小さな粉末(数μm以下)
 分析元素に関係のない金属ブロックの表面を研磨し、エポキシ系5分間接着剤を新しいカミソリの刃を使ってできるだけ薄く塗り、半硬化してから試料をふりかけ、完全硬化してから導電コーティングする。
 なお、1μm以下の粒子で、かつ2次電子による表面観察のみのときは、水やアルコールで薄い水濁液(0.1%以下くらい)にして金属面に滴下し、自然乾燥させるだけでよい。
2. たくさんの非常に小さい粒子を平均化して分析する場合
@)金属ブロックにドータイトを塗り、半乾きの状態で粉末試料を粒子が何層も重なり合う量を乗せ、十分綺麗な平面ガラスを押し付け、指で圧力をかける。
A)水やアルコールで濃い水濁液にして金属面に塗り付けて乾燥する。厚さ10-20μmが理想的である。導電性のある試料であっても押さえのためにカーボンやアルミのコーティングをするとよい。
B)プレス器を利用する。
 加熱加圧成形機を用いて加圧すると、かなり安定した粉末成形ができる。

◇薄膜試料
 試料が厚く熱にも強いなら、金属ブロックに導電塗料で周辺をひっ付けるだけで十分である。薄くて軟らかい、耐熱性が良くない、研磨したい、研磨後あるいは分析後剥がしたい、透過法で分析したい、といった場合にはそれぞれ工夫が必要である。
1)導電塗料による接着
 薄くて軟らかい試料を導電塗料で接着しようとすると、塗料が乾く途中で試料が丸まってしまったりしわができたりすることがある。このときは、測定する部分を切り抜いたアルミ箔を押さえに用いるとよい。
構成(上から)[重し|ガラス板|アルミ箔|試料|カーボンドータイト|金属ブロック]

乾燥後
構成[アルミ箔|(切り抜いたアルミ箔の部分と試料の境界にカーボンドータイを塗る)|試料|カーボンドータイト|金属ブロック]
 試料に導電性が無いときは、乾いてひっ付いたのち、アルミ箔と試料の境界付近に導電塗料を塗ることを忘れてはいけない。なお、高分子フィルムの材質によっては導電塗料に含まれる溶媒により試料が溶けることがあるので、あらかじめ分析に関係ない部分で試みて、溶けるような試料の縁にのみ塗るようにする。
2)接着剤による接着
 導電塗料は接着力が弱いので分析後試料を剥がすことができるが、反面、接着したままで研磨などはもちろんできない。金属・ガラス・鉱物試料であとで剥がす必要がないならエポキシ系5分間接着剤を用いる。あとで剥がすなら、スチレン系(酢酸イソアルミ、プロピレンオキサイドで溶ける)やグリコールフタレート(アセトンで溶ける)を用いる。
 試料が比較的硬く厚いなら、金属ブロック(ガラスでも可)に接着剤を塗り、試料を載せて少し押さえるだけでよいが、薄く曲がりやすくしわになりやすいなら、下記のように接着する。
1. 鏡面あるいはそれに近く面仕上げした金属ブロックにカミソリ刃で接着剤を薄くのばして塗る。
2. 試料を載せ、アルミ箔または薬包紙をかぶせ、ガラス板、重しを載せる。
構成(上から)[重し|ガラス板|アルミ箔または薬包紙|試料|接着剤|金属ブロック]
3. 硬化後試料面のアルミ箔または薬包紙をはぐ(はぎ残ったアルミ箔や薬包紙が試料の外側に多少は残る)試料と押さえのガラス板の間には必ずアルミ箔か薬包紙を挟むこと。こうしないと、試料の周辺の接着剤でガラス板がくっ付いてしまう。硬化後、このアルミ箔を剥がすわけだが、試料の上の部分は接着していないので、簡単に切り取るあるいは破り取ることができる。試料の周辺で接着してしまったアルミ箔や包紙は、はげないならはげなくても分析上困らない。
3)透過型
 薄膜試料を透過型セットで分析することがある。STEMとして透過電子像を観察したいときもそうであるが、空間分解能の向上のためや微細析出物に対するマトリックス効果の低減、X線強度を密度変化に対応するものとして検出したいときにも透過法が採用される。
 試料を透過した電子が下方で反射されて再び試料を励起することのないように、あるいは下方でホルダ・試料微動系の材料を励起した散乱X線が検出器に到達しないように各装置、ステージ構成に見合った工夫が必要である。この意味で、分析のためだけなら、ファラデーゲージ様の試料ホルダーを用意しておくと便利である。
透過型用試料ホルダーの構成
[試料の載せる孔、試料支持板、、金属円筒(内側にカーボン導電塗料)、金属板で底を付ける]

福島啓義「電子線マイクロアナリシス」日刊工業新聞社
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◆ コーティング・イオンエッチング
 コーティングには大別して、真空蒸着法、イオンスパッタ法(スパッタコートともいう)、イオンプレイティング法の3種類がある。真空蒸着法は歴史が古く、各種元素のコーティングやシャドーイングが可能であるが、キメが荒くなりがちで、まわり込みが良くない。イオンスパッタ法は元素が限られるが、キメが細かくまわり込みはかなり良い。イオンプレーティング法は各種元素が可能で、まわり込みはたいへん良いが、装置は3者の中で一番高価である。

◇ 真空蒸着
 ヒータにより加熱蒸発したコーティング物質は、原子・分子状あるいは微粒子となって、ほぼ直線的に試料に到達する。このとき試料と蒸着源の方向を一定に保ち、かつ比較的高真空(10^-5 Torr程度より高真空)としておくと、シャドーイングをともなったコーティング膜が得られる。また、試料を回転・傾斜させて蒸着中に方向を変化させたり、比較的低真空にして蒸着物質を残留ガスで散乱させてやると、シャドーの少ない比較的まわり込みの良いコートができる。
 真空蒸着法は短時間に容易にコーティングできるが、まわり込みは良くなく、粒子性が大きくなりがちな膜なので、SEM像がチャージアップのために異常コントラストを起こしたり、試料表面の微細構造と蒸着粒子との区別に問題が生じたりする。しかし、シャドーイング効果は場合によっては非常に有用である。
 この真空蒸着には次のような長所がある。
@)試料面の微細構造が損なわれない。つまり、蒸着物質は試料面にふり注ぐようにして試料面上をコーティングしていくので、衝突・衝撃による破損がない。
A)試料面の微細な凹凸が蒸着面上に再現する。一般に、表面に満遍なく蒸着物質が付くので、100Å程度の蒸着なら100Å低尾dの凹凸はかくれずに蒸着面上に再現する。
B)シャドーイング効果をだすことができる。組織変化も凹凸変化も少ない微細構造の場合、電子線像のコントラストは得にくいが、試料に対し蒸着方向を傾斜させることにより、蒸着物質が付くところと付かないところができ、微細構造にほぼ対応したコントラストが得られる。また、シャドーの付き方により凹凸の判定ができる。
 しかしながら、これらの長所に対して短所も次のように存在している。
C)真空蒸着では、いわゆるまわり込みが良くないので、凹凸がはげしい試料の場合は、蒸着がつながらず、全体の導電性が取りにくい。たとえば、試料の凹部内面には蒸着されず、凸部のみに蒸着物質が付くことになり、凹部内部に島があるような場合には、凹部と島のコーティングが繋がっておらず、電気的に浮いている状態になってしまう。

◇ イオンエッチング・クリーニング・シンニング
 陽極−陰極間に500V-3kV程度の電圧を印加し、アルゴンガスをリークして、10^-2 Torr程度の雰囲気にすると、グロー放電が生じ、イオン化したアルゴンが陰極に到達する。陰極面に設置された試料はこのアルゴンイオンにより表面層がスパッタされ、多くの場合、試料組織に対応したエッチングパターンが現れる。化学薬品でのエッチングが困難な材料(貴金属、生体など)でもエッチングできる。研磨試料面で研磨による表層移動で乱れている結晶面を露出させて、チャンネリング現象の観察を可能にする。また、生物組織において、内部の立体構造のSEM観察が可能となる。
 短時間のエッチングでは表面の汚れ、吸着物質のみがスパッタされ、クリーニング効果がある。また、エッチングパターンが生じないように(すなわち、組織の如何にかかわらず均一にエッチングされるように)、試料は回転・傾斜運動し、試料へのアルゴンイオンの衝突方向が常に変化するように工夫しながら長時間スパッタすると、シンニングができる。
 なお、試料が導電体でない場合は、試料が陰極にならずアルゴンイオンが試料に到達しなくなるので、試料より十分大きな陰極板の中心におき、試料を電界で囲むようにする。しかし、このようにしても正イオンが試料面に正電荷を供給することになり、後続の正イオンが反発を受けてそれ以上のエッチングが進まなくなる。したがって、直流印加のイオンエッチングでは絶縁物の効率は悪い。このような場合、高周波印加という手法がある。高周波(たとえば工業用周波数13.56MHz)電圧500V程度以上印加すると、試料表面が交互にプラス・マイナスになり、電子とイオンが交互に流入するが、電子のほうが移動度が大きいので電子注入が過剰になり、結局試料面では負電位になり、イオンエッチングが進行する。

◇ イオンスパッタリング(スパッタコートあるいはスパッタコーティング)
 イオンエッチングの構成において、試料の位置(すなわち陰極)に試料の代わりにコーティング物質をおくと、アルゴンイオンによりコーティング物質が原子状になってスパッタされる。
 被コーティング試料を近傍におくと、きめ細かくコートされる。このとき試料は陽極におくか、アルゴンイオン流の外におく(こうしないと、試料面がエッチングされたり、せっかくコートされるそばからコーティング膜がスパッタされてしまう)。イオンスパッタリング膜はコーティング物質の大半が原子状であるのできめ細かく、またコーティング物質がアルゴンイオンやアルゴンガスで散乱されて多方面から試料に到達するので、まわり込みもかなり良い。しかし、スパッタリング速度やスパッタ量は一般に小さいので、コーティングにはかなり時間がかかる。

◇ イオンプレーティング
 グロー放電雰囲気中において、コーティング物質が加熱蒸発すると、アルゴンイオンと電子のプラズマ状態雰囲気によりイオン化される。イオン化されたコーティング物質は電界に引かれて陰極の試料に到達する。このとき、アルゴンイオンやアルゴンガスで散乱されるので、電界による引力と相まって非常にまわり込みの良い均一なコーティング膜が形成される。
 真空蒸着に比べて均一性・まわり込みのいずれもが優れており、特にまわり込みは、試料を静止させておいても凹凸の大きな試料のすべての面に瞬時にコートされる。
 スパッタコーティングに比べても効率やまわり込みがずっと良い。原理上エッチングが同時に起きるが、コーティング時間が数秒程度なので、エッチングの影響はほとんど問題にならない。
 コーティング物質が加熱蒸発されるので、真空蒸着法のようにコーティング膜の粒子性が問題になるが、イオン化したコーティング物質が優先的に試料に到達するので、真空蒸着より微粒子である。また、試料を蒸発源が見えない方向に向けたり、試料と蒸発源の間にシャッタを挿入すると、アルゴンイオンやアルゴンガスで散乱されて電解に引かれる比較的微粒子のみ試料に到達するので、きめ細かいコーティング膜が得られる。このシャッタによりヒータからの輻射熱をカットできる。

 通常、イオンスパッタリングとイオンプレーティングは数10Åでよく、また試料回転などの工夫により粒状化はほとんど問題にならない。

福島啓義「電子線マイクロアナリシス」日刊工業新聞社
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◆ 主なコーティング装置の取扱とコーティング手順
 具体的なコーティングの手順は、それぞれの試料に対して、それぞれの人が、それぞれの工夫のもとで行っており、唯一ベストというものは必ずしもない。以下の手順は、少なくともこのようにすれば良好な結果が得られたという方法の具体例である。Au, Al, Cの真空蒸着、Auのスパッタコート、Au, Alのイオンプレーティングについて述べる。

1) コーティング前の試料セット
 コーティングの目的には信号発生効率(主にSEMのための2次電子)の向上や電子線照射からの試料保護もあるが、何といっても試料表面の導電化が第一目的である。コーティングしてもうまく導通が取れない場合の理由のかなりの割合を占めるものとして、電子線照射部にはコーティングされているのに、アースへうまく接続されていないことがある。コーティングに先立って導電塗料で必要十分な最小限の試料面を残して覆ってしまうことが大切である。コーティングしてから導電塗料を塗るのではたいがい失敗する。なぜなら、コーティングのあとから導電塗料を塗ると、その部分のコーティングがはげてしまい、結局アースとはつながらないことが多いからである。
 導電塗料としては銀ペースト、銀色ペースト(Alペースト)、カーボンタイト、アクアカーボンなどがあるが、カーボンドータイト(藤倉化成)が一番良い。
 銀ペーストは高級品イメージがあるが、乾燥後時間が経つと風化現象を起こして銀粒子が取れてきてコンタミネーションの原因になるし、重金属なので分析面に付くとバックグラウンドや他元素X線ピークに影響を与える恐れがある。
 カーボンドータイトは問題が少なく、また、はるかに安価である。なお、アクアカーボンは乾くとひび割れを起こしやすいのであまり良くないが、カーボンドータイトにはシンナーが入っており、シンナーに溶ける一部の有機物試料には使えないときがあるので、このようなときに限ってアクアカーボンを用いることがある。
※ 導電塗料[試料]|金属(たとえばCu, Al, Brass)ブロック

2)真空蒸着
[用意するもの]
・AuまたはAlのコーティングでは下記の条件
 W線:0.5-0.7mmφ x 100mm程度/数回
 Au線:0.2-0.3mmφ x 20mm程度/1回
  または0.05mmt x 1mm x 20mm程度の箔/1回
 Al線:AuN線に同じ
・カーボンのコーティングでは下記の条件
 カーボン:カーボン電極6mmφ x 30mm以上2本

[手順1]Au, Alの場合
@)W線を[-v-]のように曲げる。
 これは溶けたAuやAlの位置が移動しないようにするためである。
A)電極間距離が6-8CMになるようにW線を電極に取り付けるこのときW線に無理な力がかからないようにすること、すなわちW線形状と電極位置を相互になじませる。そうでないと、応力が残って何回も使用するとき早く切れてしまう。
B)AuやAlを取り付けず試料も入れずに、一度真空を引き(10^-3 Torr程度でよい)、赤熱-白熱状態に短時間通電する。たぶんこのとき少し煙がでるであろう。これにより、W線の表面酸化層や汚れ層が飛んで金属光沢になる。
C)W線にAuやAlを巻き付ける
 AuやAlができるだけW線に密着するように巻くこと。ただし、一度加熱したWはもろくて切れやすいので、W線になるべく力がかからないように注意すること。
D)試料をセットし、排気する(通常10^-5 Torr)
 試料はヒータのの真下に置かないこと(溶けた塊が落ちる恐れがある)。
 蒸着源から試料までの距離は6-8cmである。
 シャドーイング効果をねらうとき以外は試料回転・傾斜が必要である。研磨試料の場合は水平回転のみでよいが、凹凸が大きい場合は傾斜角を変えながら回転することが必要。
 外部からの傾斜角可変機構がない場合は、ある角度(たとえば80°)で半分の厚さ蒸着してから一度真空を落とし、角度を変えて(たとえば30°)残りの蒸着を行うことも必要。
E)徐々にヒータ加熱していくと、赤熱が白熱になる頃Au, Alが解け、中央部に丸まるはずである。ヒータ(蒸着源)と試料の間にシャットが挿入できる場合は、この間はシャッタをしておく。
F)少し加熱温度を高くして試料を回転させながら溶けた塊がなくなるまで飛ばす。
 このとき、時間をかけてゆっくり飛ばしていく方法と、高温(大電流)で短時間で飛ばす方法があるが、結果に大差はない。ただ、短時間の方が粒子が小さいという経験のほうが多いようである。短時間といっても、試料が1回転する以上の時間は少なくともかけなければならない。

[手順2] カーボンの場合
@)カーボン電極棒を鉛筆削りで削ったような形ややミニ旋盤で約1mmφの部分があるように削る。
 鉛筆削りや電極棒削りがあると便利である。なければヤスリと研磨紙で削る。鉛筆削りの形状は1回1回削る必要があるが、蒸着厚みを一定にしやすい。電極棒削りの形状は1回削れば何回か使える。あるいは非常に厚い蒸着に適する。
A)カーボンを電極に取り付ける
 2本のカーボン棒が一直線になるように、また先端の中心同士が接するようにする。カーボン用の支持部はバネの力で2本のカーボン棒が互いに接するようになっているはずであるので、バネが十分きいていることを確かめる。
B)試料をセットし、真空に引く(通常10^-5 Torr)
 試料セットは[手順1]のD)と同様であるが、電極棒の先端が細い方の側に寄せること。太い方の側には先端の影になって
カーボンがあまり飛んでこないからである。
C)電流を流してカーボンを飛ばす
 電流を増していくと、鉛筆削りの形状の場合は20A程度で、ピッ!ピッ!と飛んでいるのが肉眼で見えるはずである。見えるのは粗大粒子であるが、このような状態でないと蒸着はされない。順次電流を増していかないと飛び続けない。蒸着装置によって最大出力が異なるであろうが、50A程度流しても飛ばなくなったら完了である。電極棒削りの形状の場合は細かい側が1.5mm程度短くなったら電流を切る。

[膜厚のコントロール]
 蒸着膜厚をかなり正確に測定しようとすると、たとえば干渉顕微鏡(位相差顕微)などの利用が考えられるが、SEM・EPMAの試料の立場からは膜厚の絶対測定はほとんど必要ない。50-200Å程度であること、だいたいいつも同じであること、定量的に比較したい試料同士が同じであること、といったことのほうが重要である。
 実は、[手順1]、[手順2]で述べた方法では約100Åの蒸着がされることになる。
 膜厚は基本的には、蒸着物質が等方的に飛んだと仮定することによって、蒸発した体積を蒸着源から試料までの距離を半径とする球面積で割ることにより求められる。
 たとえばAu線0.2mmφ x 20mmを距離7cmで全部飛ばすと、π*(0.1)^2*20/(4π*70^2)≒1 x 10^-5 mm = 100Åになる。ただしこの値は蒸着源に対して試料面が直角になってるときであり、傾斜しているときは水平との傾斜角ΘとするとsinΘの割合で薄くなる。また凹凸のある試料を回転しながら蒸着しているときは、凹凸のある斜面が蒸着源を向いているときしかコーティングされないことになるので、膜厚は概略半分ということになる。
 精密な定量分析ではコーティング膜厚の影響が問題であるが、後述するスパッタ―コーティングやイオンプレイティングより膜厚コントロールがやりやすく、この点、真空蒸着法が有利である。精密定量では試料が平面研磨されているのでまわり込みの点は問題にならない。
 以上の計算結果はそこそこ必要な精度で膜厚を与えるが、要は蒸着条件をできるだけいつも一定に保つことが肝心である。
 色で判断するのも実用性がある。白い紙を一緒にコーティングして次のような目安で判断する。もっともこれは膜厚を直接判断するというより、一度コーティングしたのち、同じ厚さになっているかを比べるときに有効である。
カーボンの場合
ごく淡い茶色:50Å
淡い茶色:100Å
淡青色:150Å
濃青色:200Å
濃茶色:250Å

木ノ内嗣郎「新訂版 EPMA 電子プローブ・マイクロアナライザー」技術書院
福島啓義「電子線マイクロアナリシス」日刊工業新聞社
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◆ 低真空蒸着
 10^-5 Torr程度では蒸着物質はほぼ直線で飛んでくるので、いわゆるまわり込みが良くない。低真空のもとでは残留ガスにより蒸発粒子が散乱されてさまざまな方向から試料に到達するはずである。そこで、空気やアルゴンガスをリークしながら蒸着する技術がある。実験によると、1x10^-2 - 5x10^-2 Torrで良好な結果が得られている。一般に真空蒸着装置は油回転ポンプ(RP)と油拡散ポンプ(DP)により排気しているが、わざわざDPを用いて10^-5Torrに排気したうえでガスリークして10^-2Torrにするなら、はじめからRPだけの排気で良いことになる。そこで、RPのみで動作する蒸着装置がある。DPがないので冷却水も不要で、小型で操作が非常に簡単で安価である。ただし厚さコントロールは計算通りにならないので、経験的に、あるいは結果として判断しなければならない。ただし、厚さコントロールは計算どおりにならないので、経験的に、あるいは結果として判断しなければならない。

◇ スパッタコーティング
[用意するもの]
Auターゲット:一般に装置に付属しており、特に用意する必要はない。
試料回転装置:スパッタコーティングは真空蒸着よりまわり込みが良いので、
 試料回転装置が付いていない装置が一般的である。陰極(ターゲット)を陽極(試料)よりかなり大きくして試料へのコーティング物質の到達方向をより広くしている装置もある。しかし、複雑な凹凸形状を有する試料ではまわり込みが不十分な場合が少なくない。そこで、やはり試料を回転しながらコーティングするほうが良い。この回転は陽極と陰極を通る軸に対して30°-40°傾斜した軸のまわりの回転である。水平回転では意味がない。傾斜角を変えながら回転する必要はない。この回転装置は、ゼンマイ仕掛けのオモチャやタイマで数回転/分の速度で10分間程度回り続けるものがあれば、比較的簡単に手作りできる(大きさは陽極より小さいこと、導電性があること)。
[手順]
@)試料をセットする(真空蒸着と同様)
A)回転装置を利用する場合は回転の中心に取り付ける(両面テープで接着してかまわない)
B)陽極の中心に試料がくるようにおく。回転装置がない場合で1回のコーティングでは導通が十分取れないような試料では、わざと傾けておく。この場合、以下の手順によるコーティングを傾斜の向きを2-3通り変えて重ねる
C)真空に引く
 空気雰囲気でコーティングする場合は、10^-1 - 10^-2 Torrの所定の真空に達したら排気は完了である。Ar雰囲気で行う場合は、いったん空気を十分排気してからArリークする必要があるが、油回転ポンプだけの装置では排気能力の関係で残留空気が多いので、ざっと排気してからArを少し多量にリークしてArと一緒に残留空気を排気することを2-3回繰り返すと、純度の高いAr雰囲気になる。
D)電圧をかけ電流(イオン電流)を流す
 ガス圧・電圧・電流は相互に影響を及ぼす。電圧を一定に保てば、ガス圧が上がれば電流が増す。電圧のかけ始めには一時的にガス圧が上がることがある。青紫色のプラズマが試料を取り巻いていることを確認し、たとえば1 kV, 7 mAで5分間コーティングする。上記のB)で述べた重ねコーティングの場合は2分間ほど傾斜の向きを変える。
[膜厚のコントロール]
 真空蒸着のように計算で膜厚を求めることはできない。ガス圧、電圧、電流を毎回なるべく一定に保ち、時間でコントロールするのがよい。Auをスパッタしたとき、わずかに青みがかった淡い金色くらいになるのが標準的である。

福島啓義「電子線マイクロアナリシス」日刊工業新聞社
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◆ イオンプレーティング
 イオンプレーティング装置は原理上、真空蒸着とイオンスパッタリングとスパッタコーティングに必要な機構も合わせて備えていて、必要に応じてこれらの機能を単独に、あるいは組み合わせて利用することができる。
 コーティング物質はヒータに巻き付けてある。
 真空蒸着のためには、高圧電源や陽極を用いなければよい。イオンエッチングではヒータが不要である。スパッタコーティングでは、試料の代わりにターゲット(コーティング物質)を置き、陽極やシャッタの点線位置に試料をセットする。あるいは試料台の回転傾斜を有効利用すため、試料はそのまま試料台におき、シャッタの実線位置にターゲット(コーティング物質)をセットし、高圧の印加を入れ替えてシャッタ(ターゲット)が負、試料台が正になるようにすればよい。
以下イオンプレーティングについて手順を述べる。
[用意するもの](真空蒸着の場合と同じ)
W線:ヒータ用
Au線、Al線:コーティング用
[手順]
@)-C)真空蒸着の[手順1]の@)-C)に同じ
D)試料をセットして排気する
 試料とヒータ(コーティング物質)の距離は、真空蒸着の場合と違ってプラズマが試料を取り囲む必要があるので、ガス圧・高圧・イオン電流によって異なるが、通常は6-8cmである。試料は試料台(陰極)の中央におかなければならない。
 イオンプレーティングの場合は油回転ポンプのみで排気すればよい。空気雰囲気でのコーティングでは一度の排気でよいが、Ar雰囲気の場合はスパッタコーティングのC)で述べたように、Arと空気を置換しながらAr雰囲気にしていく。油拡散ポンプも付いている装置では、いったん10^-5 Torrに排気してからArリークする方法もあるが、DPは排気能力が高いのでガス圧を一定に保つのが難しい。
E)シャッタをした状態で、真空蒸着[手順1]のE)と同様にコーティング物質を予備加熱する
F)ヒータをOFFにし、グロー放電(プラズマ)状態にする
 ガス圧10^-2 Torr、電圧500V-1kV、電流2-5mA程度である。このプラズマ状態を設定するのにあまり時間をかけると試料がエッチングされてしまうので、短時間で素早く行わなければならないが、そのためには試料をセットしないで、あらかじめ適正な条件を求めておくとよい。もっとも、このエッチング作用はクリーニング作用でもあるので、逆に積極的に利用することもある
G)ヒータをONにし、コーティングする
 イオンプレーティングは非常にまわり込みが良いので、試料を回転させながら時間をかけてコーティングする必要は全くない。ヒータ電流を多めに流し、一気に(2-3秒)コーティング物質を飛ばしきるとよい。時間をかけると試料温度が上がりかんばしくない。
[膜厚のコントロール]
 イオンプレーティングでは、イオン化されたコーティング物質が電界に引かれて試料に到達するので、真空蒸着より効率が良い。すなわち、蒸発源と試料との距離が同じでも、真空蒸着の場合より厚くなる。また、この厚さは真空蒸着のように球面積として計算するわけにはいかない。
 プラズマ状態が良ければ平面試料では2倍程度の厚さになるので、セットするコーティング物質は半分でよいことになる。同様の理由により凹凸のある試料では、コーティング物質の量を増さなくても必要厚さが得られる。厚さの絶対値を求めることよりも、条件を一定に保ち、厚さを再現させることのほうが重要である。

福島啓義「電子線マイクロアナリシス」日刊工業新聞社
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◆ Au, Al, C以外のコーティング
 コーティングの目的は導電性をもたせることが主で、このほかに耐熱性の向上、信号発生効率(特に2次電子)の向上なども目的となる。SEMの立場では薄く、均一で、ひび割れ現象(島状組織や粒状化)を起こさず、まわり込みが良いことが必要である。真空蒸着だけが行われていた時代にはまわり込みと2次電子発生効率を良くするために、CとAuを2重に施すことも行ったが、Auだけのスパッタコーティングやイオンプレーティングのほうが優れている。Au-PdはAuより粒状かがずっと小さいが、真空蒸着やイオンプレーティングで直接W線に取り付けると、加熱で溶けたときAu-Pd-Wの3元合金ができてW線がもろく切れやすくなる。スパッタコーティングでは、原理上この問題はないが、選択スパッタの問題があり、合金スパッタは要注意である。PtはSEMに良好であるが、融点が高いので真空蒸着やイオンプレーティングでは無理であり、スパッタコーティングでは利用できる。Pt-Pdのスパッタコーティングは良い結果が得られている。Wはさらに薄く均一性も良いコーティングが期待されるが、コーティング技術がまだ一般化していない。高周波スパッタ法では、たいがいの物質をスパッタコーティングできるので、今後種々の試みが可能である。
 次にEPMAの立場からは、均一性、まわり込みのほかにコーティング物質が元素分析に及ぼす影響を考えなければならない。EDXで分析する場合は、Au, Au-Pd, Pt, Pt-Pd, Wなど重元素はいずれも問題になることがある。たとえばAuをコーティングすると、Pの分析においてAu M線がPのK線にぶつかってしまう。WDXでは分析対象元素と同じ元素のコーティングをしない限りは定性的な分離能の点では問題はないが、BGの増大の点から重元素コーティングは望ましいことではない。この点から、Cが多用される。 Beは分析用としてはCよりさらに適しているとも考えられるが、活性が強く、有害元素なのであまり使われていない。Beを使用する場合は、AuやAlのようにW線に巻き付けるわけにはいかないので、Wバスケットを用いる。また、装置からの排気(Be蒸気)を人のいない室外に放出するなり、吸収するなりの配慮が必要である。耐熱性向上のためには一般にAlが用いられるが、Cu, CrあるいはAuなども効果がある。ただし、先に述べた分析への影響度からみてAlのほうが良い。Cは耐熱性に対する効果はほとんど期待できない。結局、種々の物質のコーティングは技術的には可能であるが、とりあえず次のコーティングを基本としておけば無難である。
2次電子(SEM像):AuまたはPt, Pt-PdのスパッタコーティングまたはAuのイオンプレーティング
定量分析とEDXでの分析:Cの真空蒸着
耐熱性:Alの真空蒸着またはイオンプレーティング
WDXでの分析:一応何でもよい

福島啓義「電子線マイクロアナリシス」日刊工業新聞社
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