簡明論文

資本主義を自由主義的乗り越える!!

1 現状の経済システムの問題点

現在、社会には貧困・財政難、環境問題、労働問題など様々な問題が存在しています。これらの問題が生じるのは、けして偶然ではなく社会構造上必然的に生じています。

この世に存在する物は有限です。物を交換するための媒体であるおカネも、際限なく発行するわけにはいかずやはり有限です。企業や人が有限である物やおカネを際限なく求める行動をとれば、総量が足りていたとしても、有限である限り、部分的に足りなくなるのは当然です。

企業が儲け続け、かつ社会の部分的不足を防ぐためには、全体の消費・生産を増やすこと(経済成長)が不可欠となり、必然的に資源・環境問題と衝突します。ところが経済成長には、人間の生理的限度や環境の限界があるので、永遠に成長し続けるわけにもいきません。その結果現在の世界、特に成熟した先進国は思うように経済成長できなくなっています。

おカネや物の偏りは貧困や財政難をもたらし、近年ではそれらを解消するための税金の徴収も、国際競争や不景気から難しくなっています。一方、経済成長は過剰消費・過剰労働・環境問題をひきおこします。現在の経済システム下においては、これらの問題を統合的に解決できる方策はありません。これらの問題を根本的に解決する理論である使用経済システムの説明を当論文では行いたいと思います。

2 人間の使用の限界、所有の無限界

一人の人間は、ものを使うのに生理的・物理的な限度があります。例えば一人で一トンもの米を食べることはできませんし、5箇所の家に同時に住むこともできません。しかしながら、人間は際限なく自分が使う以上に所有し、物やおカネを求めます。

なぜでしょうか。それは、物やおカネがあれば自分が使わなくても交換などの道具として用いることができ、必要なときに必要な物やサービスを得るのに役にたつからです。

しかし物やおカネは有限です。人が物やおカネをむやみにため込んでしまうと、他の人が有効に使えなくなってしまいます。社会資源が有効に活用されなかったり、カネ回りが悪いといった不景気は、これが原因の一つです。もちろんため込む人が悪いわけではありません。ため込むのは、現在の経済制度ではルールにのっとった当然の利益行動だからです。

ですが、人間の使用には限界があり、使用する以上に貯めこむ目的は、必要なときに必要な物やサービスを得るためです。とすれば貯めこむ目的である物やサービスを入手できる可能性の拡大を達成できる別の方法があれば、むやみに貯めこまなくてもよいのではないでしょうか。

3 不必要な争いが現在の社会では生じている

同じものに二つ以上の用い方があると、それを求める人たちが、それぞれ違った目的で用いようとしているにも関わらず、それをめぐった争いが生じてしまいます。

一個のおまけつきのチョコ(ビックリマンチョコ)をめぐる争いについて考えてみます。

A君はビックリマンチョコを、お腹が減ったのでチョコを食べる目的で欲しいと思い、おまけのシールには興味がありません。一方B君はチョコは欲しくなく、シールにのみ興味があります。二人が求めているものは違うのですが、結果としてどちらかがビックリマンチョコを入手できなくなってしまいます。

このようなことがおこらないようにするためには、チョコが欲しい人はチョコだけ、シールが欲しい人はシールだけを得られるようにすれば争わなくてすみます。抱き合わせになっていることが不要な争いが生じる原因なのです。

ところで人間は昔から、社会資源(社会に存在する有用なもの)についてなるべく争うことなく、ルールを作ることで、平和で生産的な営みを可能にしてきました。もし動物であれば、このようなルールなどなく、肉体的に強いものがどんどん奪い取るだけの弱肉強食の世界になってしまいます。このルールの一つのあり方が所有権に基づく社会資源の利用関係の調整という方法です。
(これに対し使用権で調整する経済とは、使用権に基づく社会資源の利用関係を調整する経済システムのことです。)

 

所有権とは物に対する権利の概念ですが、これはある意味チョコとシールに分離できないビックリマンチョコのようなものです。所有権は物を使うことのみならず、交換することによって物やサービスの入手手段としても用いることができます。だから、前述のような使うつもりがないのに(チョコを食べるつもりがないのに)使いたい人(チョコを食べたい人)の使用を妨げるという不必要な争いが生じてしまいます。物を使いたい人は、物を使うためだけの権利を用い、物を入手する可能性が欲しい人は、入手のためのみの権利を用いるようにしたらよいのではないでしょうか。

つまり所有権に換わって、所有権の「使う」機能のみを持った権利と、所有権の「入手」するためだけの機能を持った権利の二つを用いる経済システムにしたらよいのではないでしょうか。

具体的には、使用権すなわち使うために物を支配するだけで、売ったり・賃貸できない権利(レンタルではありません、売ることができない代わりに不用品を回収する別の制度が使用経済システムではあります。)と、使用優先権(おカネのように譲渡できない、数値で表された物を入手するためだけの権利)です。使用優先権は、正確には使用権優先設定権としたほうがわかりやすいかもしれませんが、長いので使用優先権とします。(土地など使いたい物が他者と競合したときに、競売の要領でより多くの使用優先権を消滅させた者が、その物に使用権を設定でき、その物を使うことができます。)

使用権は交換や利息入手ができないので、所有権のようにあればあるほど有利ではありません。使用もしないのに、使用権設定をすることは使用優先権が失われるという代償をともなうので、現実に使うだけ使用権を設定するのが最も賢明な行動となります。これは単なる交換目的のために囲い込まれ、有効に使用されていなかった社会資源(社会に存在する役に立つ物など)が開放され、使用可能な社会資源が増えることを意味します。

使用優先権とは、社会資源(社会にある役立つもの)に使用権を設定し、優先的に使うことができるための数値で表された権利です。この権利は所有権や使用権のような物に対する直接的な支配権ではありません(すなわち使用優先権を保有しているだけでは物は使えません)。したがって、単に使用優先権の数値を積み上げるだけでは、他者の物の使用を妨げません。(おカネを貯め込んだ場合は、そのおカネを他の人が使えなくなることで、他の人の物の使用を妨げてしまいます。)
そして、使用優先権はおカネのような交換媒介ではないので、投機されて物に対する価値の低下を招くことがないため、おカネのように総量の心配をする必要がありません。総量を保つために、ある者におカネを与えるためには他の者からおカネを持ってくるようにするといった必要がないのです。よって使用優先権の保有は他者が使用優先権を付与されることの妨げになりません。貯めこみがおカネの場合のように、経済全体の悪影響を招かないのです。おカネは物の交換媒介であるため、持っているだけで、他の人がそのおカネを借金以外の形で使えなくしてしまうのとは対照的です。
さらに使用優先権を行使した場合の他者の使用を妨げる度合いは、所有権制度のもとに比べてとても少なくてすみます。なぜならこの権利は使用権を優先的に設定するための権利なので、使用権の性質に従属した権利です。そして使用権は使用という人間の生理的・物理的な利用の限界の範囲内に閉じ込められるので、使用優先権行使による他者の使用排除の可能性も、人間の生理的・物理的限界の範囲内に閉じ込められることになるからです。この権利を用いると、いくら積み上げても他者の使用を過剰に妨げることなく、その個人にとっての有益な優先的入手の可能性だけを拡大できます。

使用経済システムの3大メリット

・ 社会資源の有効活用:使用の限度で物理的排除をするのが合理行動になるため。

・ 財政の量的意味の無制約:報酬が社会資源の使用に関する相対的な権利である使用優先権なので、物の交換媒介であるおカネのように徴税による回収が不要、インフレにならない。貢献に応じた分だけ報酬を付与でき、財源不足によって貢献に見合わない報酬しか付与できないということはない。
<使用優先権はおカネのように原料などに投機されることがないため、仮に大量に付与されても非競合品である日用品の値上がりにつながらない(コストプッシュインフレにならない)。非競合品は供給力が需要を上回っているため、価格競争は供給側に生じるため値上がりしない。(ディマンドプルインフレにもならない。)したがって、一般生活者の困窮を招くことにはならない。競合品については、インフレになりうるがその範囲および価格のつき方は所有経済のものとはまるで違う。実需の衝突がある物件などに限定され、投機的価格がつかないためインフレの範囲・程度ともに所有経済のものより大幅に小さい。したがって、一般生活者の困窮を招くことがないので、財政は量的意味において心配せずに使用優先権を付与可能。>
このメリットの恩恵は大きく、カネの財政難(資源不足ではない)が原因の問題は全て解決できる。環境問題も含め統合的解決が可能となる。

・ 企業行動・存在のコントロール:企業経営者個人(企業そのものには使用優先権たる法点は付与されない。ポイント評価されるだけ。)に付与される使用優先権は、交換媒介であるおカネのように取引相手から受け取るのではなく、社会貢献を擬制される数値に基づいて企業が評価され、社会全体(国家)から付与されるため。評価基準次第で企業を真に社会貢献するよう誘導可能である。外国との貿易にも有利で、企業評価基準の設定次第で不当な国際競争による国内企業の消滅を防止できる。

4 使用経済システムは行動学・社会学的必然として成立する

使用経済システムとは、物を直接に支配するだけの権利である使用権で物を支配し、物を入手するためだけの権利である使用優先権で物を入手し、その使用優先権を貨幣にかわる社会の一般的な報酬として用いるシステムです。このシステムが成立することを、論証したいと思います。

少し突飛と思われるかもしれませんが、ミツバチの巣を例に考えてみたいと思います。ミツバチの巣が営まれる様子は、所有権も交換も貨幣もないため、既存経済学が想定する狭い意味での経済には当たりませんが、生きるための集団的な富を作り出す営みという意味では、広い意味での経済といえます。

このミツバチの巣の分業が成功しているのはなぜでしょうか。答えは単純です。ミツバチがミツバチの社会のためにしっかり働くからです。ミツバチがしっかり働けば、社会学的必然として蜜や巣が入手・生産でき広義の経済として成立するのです(花の蜜がとれるなどの外的環境もありますがこれは整っているものとします)。これは行動学的・社会学的論証といえるでしょう。細かい数的説明は不要なのです。地球に重力があるので、物は放置しておけば原則的に地面などに接するという説明に近いと思います。ちなみになぜ報酬も受け取らずにミツバチが一生賢明働くのかというと、ミツバチの本能にそれが植えつけられているからです。

社会の構成員が他人・社会のために適切にしっかり働くことがおこなわれれば、これは人間社会においても同様に分業社会として成立します。確かに人間は利己的な存在なのでミツバチのように、何の文句も言わずに働くわけではありません。しかし利己的な存在であったとしても、他者のために提供することが自分にとって有利になる環境ならば、全体のために結果として働き、ミツバチの巣の営み同様に分業生産・提供システムとして成立することになります。

現代の社会は分業社会です。分業社会は、需要あるかぎり自分が提供できる物・サービスは提供したほうが有利となります。なぜなら自分だけで生産できるものはほとんどなく、自分が提供できるものを提供し、必要なものを他から入手する必要があるからです。自分が提供できるものは、自分だけで使うには不要だったり、多すぎたりして、出し惜しみしてもしょうがありません。需要がある限りは、提供するほうが基本的に賢明なのです。提供の見返り(必要なときに必要な使用ができるための利益)が安心して入手できる制度があれば、行動学・社会学的必然に需要は満たされていきます。

現在のように所有権制度を用い、その交換媒介であるおカネを用いる社会では、おカネの信用力が他者のために提供することが自分にとって有利になる状況を保証し作りあげています。おカネに信用があるので取引相手からおカネを受け取ることで、自分もまた提供されうることが保証されるため、安心して提供できるようになっているのです。しかしながら、前述のように所有権社会は、貯めこみ・寡占の弊害が行動学的・社会学的必然として生じてしまいます。

使用経済システムもまた、使用優先権を提供者に付与することで、所有権社会と同様に他者のために提供することが自分にとって有利になる状況を保証し作りあげることができるため、行動学的・社会学的必然として経済システムとして成立します。そして所有権社会のようなため込みの弊害がないため、そこから生じる様々な問題が必然的に消滅します。

社会科学である経済システムの成立に関する論証としては、これで必要十分であると断言いたします。

5 使用経済システムの具体的仕組み(法点)

(1)使用優先権すなわち法点の本質及び使い道
使用経済システムでいう使用優先権とは、複数の人が同じ土地などを使いたい場合に、使える人を決定するための権利です。使用優先権は数値で表され、競合するものに関し、より多くの使用優先権を費した者が優先的に使用できます。なお使用優先権は、電磁的に記録される数値で表される法的権利なので、法点と名づけます。法点は数値で表され前述のようにかさばることもなくあればあるほど有益な権利であるため、人々は通常、法点を誰もが欲しがります。したがって、社会の一般的報酬としての機能を果たします。なお法点は国家が認めた個人に専属する経済上の権利であり、他者に譲渡することはできません。またその保有主体は自然人(生物として実在する人間)に限定されます。

ところで、量産可能な日用品のように物理的に競合しない物品についてはどのようにして入手するのでしょうか。実はこの場合も法点を用います。使用経済システムにおいても企業が存在しますが、企業の製品を入手する際に法点を消滅させることで入手します。使用経済における企業がなぜ、消費者に喜んで製品を提供するのかというと、評価を得られるからです。評価によって、経営者の報酬や企業の存続や権限枠の拡大が決定されるからです。なお、評価は評価する側にとって痛みを伴うものでなければ意味がありません。代償を払うという障壁を乗り越えてでも入手したいと思えるものを生産して、はじめて評価に値するので、その代償の役目を法点の消滅が負うのです。

このように法点は実質的に、使用優先権としての本質に加え、製品入手・評価権の機能を持つことになり、実質的には生活者にとっては万能の機能を持つことになります。ここで忘れてはならないのは、非競合品についての法点消滅の目的は、製品評価及び過剰入手の防止であり、競合品の場合のように使用者の決定が目的ではありません。非競合品は法点をある絶対量与えれば、全ての人が入手しうるのです。

<解説:十分に生産できる物は、法点さえ付与されれば誰でも入手できます。ベーシックインカム(最低所得保障制度、使用経済下では財源不足の問題がないため導入は極めて容易)など、政策次第では働けない者なども入手でき、一見働きが良い者はただ働きをして損に思えますが、本人にとってはけして損ではありません。使用優先権が得られるため、土地などの非生産物や数量が足りないものなど競合するものについて優先的に使用できるからです。使用優先による格差が生じることで、最終的な調整がなされるのです。>

(2)法点の与えられ方

法点を与えるルールは、生産物の社会への提供など、社会貢献の度合いによるべきですが、その評価は事前に定めた客観的な数値に基づいたルールに基づかねばなりません。
経営者については、企業が製品を提供した際に消費者が法点を消滅させることによって加算される実績ポイントなどの各種の企業実績を示すポイントを基に、事前に定められた評価基準に基づいて評価され、経営者への法点付与が決定されます。この評価は主観の入る余地のない機械的・自動的なものです。そして評価対象事実も、社会貢献や社会負荷が擬制できる客観的数値のみを対象とします。評価といっても、コンピュータが不正の疑いを認めるような場合を除いては、人間は個別に評価せず、コンピュータにより機械的・自動的に処理されるにすぎません。解説:法点は使うとおカネのように相手に渡らずに消滅してしまいます。経営者が評価されて法点の付与を受けるためには、消費者の法点消滅を得たことに対する評価のルールを定める必要があります。評価しなければならないので定めるだけで、評価のありかたそのものは、実は決定的に重要なものではありません。使用経済の肝は、入手手段を物・カネの囲い込みではなく使用優先権たる法点にすることであり、評価基準の設定の細部はよりよい企業行動を促すためのオプションにすぎません。>

一方労働者の報酬は、企業が法点付与権限に基づき裁量で労働者に付与されます。そして労働者に法点を付与すると、その量に応じて企業はマイナス評価を受けるというルールが設定されます。したがって、むやみに報酬が付与されることにはなりません。

(3)もう一つの法点すなわち無形法点

法点には主に労働によって付与される普通法点と、主に使用権を放棄したときに付与される無形法点があります。普通法点はあらゆる物・サービスの利用が可能ですが、無形法点はサービスの利用に用いることしかできません。仮に個人が転売利益を目的として、個人的使用の必要以上に物品を購入したとしても、その物品を普通法点に変えることはできず、無形法点になってしまうため得になりません。物品のやりとりをするだけで利益を得る行為を防止する効果を持ちます。また無形法点はサービスのみ(映画、遊園地、音楽会、乗り物の利用など)の利用となるので社会への負担は小さく(例えばガラガラの映画館にタダで入場しても全く社会的損失はない)比較的高額の付与が可能です。資源を回収し再利用していくには非常に有益な制度です。

6 法点を社会の一般的報酬とした場合の社会生産システム(企業について)

(1)企業権限について

法点を社会の一般的報酬とした場合、資本主義とは全く異なった生産の仕組みが必要となります。使用経済システムにおける企業が資源を入手するためには、資本主義下の企業のように交換による入手を行わないため、資源を入手するための権限を与える必要があります。なお権限を行使した場合、資源の入手と引き換えに自らは不利になり、取引の相手方は有利となるいわゆる利益相反性が必要となります。例えば買い物は利益相反関係です。店にお金を払えば自分のお金は減るので、店の儲けようとする動機と、お金を出すまいとする消費者の動機がせめぎあい、安くてよいものを生産者に作らせ、資源の使い方や業務効率の向上につながります。

1)資源利用権について
この権限は行使すると社会資源(土地、原料・半製品、製品)が利用できます。その見返りに、企業の評価としては利用ポイントが計上されマイナスとなります。製品を提供した企業は、相手の利用ポイント計上の量に応じて実績ポイントが計上されプラス評価となります。このようにすることで、利益相反関係が生じ、無駄な資源利用を防止し、提供側を客観的に評価することができます。なお資源利用権は、企業の業態に応じて、その企業に必要なもの以外は入手することができません。例えばコンピュータソフト会社が鉄鉱石1トンを仕入れることは許されません。これは投機したり、会社の金で飲み食いするといった公私混同はできないことも意味します。
2)法点付与権について
法点を労働者に付与することで労働報酬とすることができます。この権限も行使すると労働力が利用できる見返りに、企業の評価としては付与ポイントが計上されマイナスとなります。このようにすることで利益相反関係が生じ、むやみな労働者への法点付与を防止し、労働を評価しその質を維持・向上することができます。
3)資源利用権と法点付与権を分ける意味
資源利用権と法点付与権が別個の権能とされているのは、物と労働には本質的な大きな違いがあるためです。物は効率的に使用すればするほど社会のためになりますが、労働力への報酬は少なければ少ないほど社会にとって利益になるというものではなく中立的事象です。労働報酬は、社会の構成員である生活者の生きる糧ともなっています。労働は使うことで減るものではなく、過剰な労働でなければむしろ人々に生きがいを与えたり、能力を維持向上させるものです。とすれば社会は労働を、適度に使うことで一石三鳥の効果が得られます。物と労働を単純に同一直線上に並べると、労働力が不当に傷つけられたり、資源が不当に無駄になったりしてしまいます。両者ともマイナス評価項目ですが、付与ポイントについては労働者の生活のため、マイナスの程度を低目に評価すべきでしょう。

4)資源利用権・法点付与権の限度枠について
資源利用権及び法点付与権には、企業の過去の実績に応じて限度枠が設けられます。(例えば一ヶ月の上限、資源利用権1千万、法点付与権2千万という具合)そもそも使用経済システムは、物的交換によって資源を入手するシステムではありません。したがって、交換価値の塊である資本というものは存在せず、所有する資本の量によって入手できる資源の量が制約されるということはありません。使用経済システムの基本的な理屈の上では、良い製品を大量に社会に提供でき、資源利用権、法点付与権行使によるマイナス評価を、実績ポイントが上回って計上できる見込みがあれば、資源を必要なだけ利用できます。しかし、それでは見込み違いによって、資源が無駄になる可能性があるので、実績に応じて資源・労働利用の限度枠を徐々に拡大するという政策的枠組みを設定するということです。経済現象として、資本の量により資源利用が制限されるのとは異なります

(2) 企業評価について
使用経済システムにおいては、物同様の性質を持ったおカネが存在しないので、企業に生産する動機を持たせるためには、企業評価ということを行わねばなりません。企業評価をする必要がある一方、企業評価をする余地があるともいえ、評価基準しだいで企業に社会にとって良い行動を促すことができます。
企業評価は企業に正しい働きをさせるために非常に重要ですが、企業評価によって決定されるのは、経営者という一個人に付与される法点の量にすぎません。(もっとも企業の存続や権限枠拡大にもかかわります。)したがって、企業評価は企業の行動に大きな影響を及ぼしますが、社会資源の利用関係に及ぼす影響は極めて小さいのです。なぜなら法点は使用優先権に過ぎず、これが仮に多量に付与されたとしても、保有者の潜在的な使用の優先が向上するだけであり、他者の使用を過剰に妨げないからです。経営者の報酬がどの程度になるかは、事前の評価基準により同じ評価対象事実があった場合においても異なります。先に書いたように、他者への生産・提供行為が自己にとって有利になり、働きに応じた報酬が得られ、利益相反関係によるせめぎあいが生じる状況を作出できさえすれば、企業評価基準には大幅な裁量を与えることができます

解説;使用経済における法点付与は、社会資源として在るもの、作れる物に対する潜在的な使用優先の調整である。相対的なものにすぎないので、公平性を損なわない限り、極めて大幅な裁量が利く。

以下に企業を評価するための各企業評価項目をあげます。
各評価項目
1)実績ポイント(プラス評価)
企業が恒常的に提供している物・サービスを消費者に提供する際に、消費者の法点消滅と引き換えに計上されます。物・サービスを評価し、企業が良い製品を作るように促します。

2)利用ポイント(マイナス評価)
企業が生産のために必要な原料、製品などを他企業から入手したり、土地や設備を使用する際に計上されます。取引相手の企業には、実績ポイントなどが計上されます。土地や設備の使用で利用希望企業が複数ある場合には、競売的方法により利用ポイントの計上が決定されることになります。この評価項目は、適正・効率的な資源の利用、良質な製品開発促進が目的です。
)付与ポイント(マイナス評価)
 企業が労働者に対して法点を付与した際に計上されます。効率的な労働を促します。この項目の評価について工夫することで、過剰労働、失業、貧困、ひいては環境問題に対処できます。

他に実績外ポイントや環境負荷ポイント、その他のポイントルールを作れますが、ここでは単純化のために省きます。

 経営者に対する法点付与のための評価方法の一例
 上記にあげた評価項目は、全て客観的数値をもとにします。事前に評価基準さえ設定すれば、自動的に経営者に付与される法点の量は決定されます。以下に具体的評価の一例をあげます。この評価例は無数の可能性の一つにすぎません。
実績ポイント 200万  利用ポイント 80万  付与ポイント 100万

付与ポイントについては、労働者の豊かな生活実現のため、0.5をかけるとします。企業の労務に対する負担が減れば、不当に賃金を低くする必要性はないからです。
200万―80万―100万x0.5=70万
70万分の法点が経営者に報酬として付与されます。この例の評価方法は、一例にすぎません。政策しだいで評価方法は無数にありえます。

(3) 企業の存続・廃止について
 企業の社会への貢献、負荷は企業評価により相当程度明らかになります。企業の社会に対する貢献の度合いよりも、負荷の度合いが強い場合には廃止したほうが社会の利益となります。いかなる条件で企業を廃止するかは、政策裁量が認めらます。使用経済システムにおいては、社会に貢献していると認められるだけの業績があれば企業はその権限を剥奪されず、存続可能です。資本主義下の企業のように、貨幣を稼げなければ社会的に貢献している企業であっても即倒産してしまうということはありません。業績不振が一定限度を超えると役員報酬の減少にとどまらず、不振の理由が吟味され、時代的に必要ないなど真に不要な企業ならば廃止されます。単なる手腕の問題であれば、強制的役員交代がなされます。
(4) 企業の立ち上げ、権限の制限・増加
使用経済システムにおいては、貨幣を用いることはないため、銀行は不要です。その代わりに、国家に代わって企業の設立を許可する指導企業が設置されます。指導企業は、起業家の事業計画を精査・検討した上で、一定の限度枠を設けた企業権限を与えて設立を認めることができます。また指導企業は、その責任において普通企業が有する資源利用権および法点付与権の限度枠を拡大することができます。指導企業は、企業設立や権限の拡大を認めた際に、マイナス評価を受けます。そのマイナス評価を超えて指導された企業が業績を伸ばせば、指導企業は評価されます。なお指導企業によらずに、業績がよければ自動的に企業権限の限度枠が拡大する場合があるというルールを定めても良いでしょう。

7 使用経済における権利のありかたなど

(1) 使用権について

使用経済システムにおいて用いる使用権は所有権と異なり、「使用」はできますが、「収益」(賃料や利息をとること)や「処分」(売ること)ができません。所有権のように、あればあるほど有利な権利ではないため、現実の使用の限度で主張するのが合理的な行動となります。このため、必要以上に社会資源の利用が妨げられることが極めて少なくなります。
不動産使用権については有限期間の使用が認められます。期間終了後は使用の更新が可能ですが、他に使用したい人が新たに現れ競合するときは、より多くの法点を負担する者がその不動産を使用することもありえます。動産使用権については無期限の使用が認められますが、売却や賃貸をすることはできません。動産は売却できないが、供出することで無形法点が得られます。無形法点はサービスの利用しかできません。
(2) 管理権(国・企業の物品に対する、経営者の企業自体に対する支配の法的根拠)
企業は土地や設備、原料などを入手して製品を生産しますが、これら社会資源を排他的に支配する必要があります。この企業の排他的支配の法的根拠を管理権と名づけます。管理権の目的は、社会資源の管理であり、最終的な目的は国民への提供ないし奉仕にあります。この目的に沿う範囲内において、排他的支配が認められます。例えば生産と関係ない物品を入手し、そのままもしくはそれに近い状態で他者に提供し評価を得ることはできません。なお生産されて提供されるまでの待機状態にある製品も、管理権によって支配されています。なお経営者の企業自体に対する支配根拠は管理権です。

(3) 企業と個人の競合について
企業と個人は、求めるものが異なるので、競合することは基本的にありません。(例えば個人は小麦10トンを食べません。)なぜなら、企業は個人に対して必要なものを提供するために存在するからです。すなわち企業は原料を求めるが、個人は原料ではなく製品を求めます。しかしながら、土地の使用については、企業と個人が競合する可能性があります。そこで土地の使用については政府が、競合が生じた事前ないし事後に公的使用(企業などの使用)か私的使用(個人的使用)かを政策的に決定することになります。したがって、個人は個人同士で、企業は企業同士でしか競合することはありません。
(4) 外国との取引
外国との取引は、使用経済系外部との取引です。この取引は、稼いだ外貨を用いたり、対外債務を負担するという形で行います。外国に対して法点を発行するという訳にはいきません。外国との取引は、交換経済であり、資本主義と同じ構造です。もっとも使用経済系のほうが、所有経済系よりも、様々な意味で自国の製品の競争力を高めるための手段を講じやすく、貿易戦争にも勝利しやすいのです。例えば、発明・研究に対する報酬は、財政の原則的無制約から十分にできるし、半導体などの分野で、工場などの生産規模が大きい方が国際競争に有利という場合には、資源・エネルギー・外貨・人材といった物理的制約がない限り、それに必要なだけ応えることができます。また労働報酬は法点によって与えられるため、その労働報酬のための法点付与によって生ずる輸出企業のマイナス評価を割安に設定すれば、賃金の国際格差によるハンディは無くすことができます。また、外貨を稼いで国家に提供する場合に実績ポイントが計上されますが、外貨獲得を重視するならば、この外貨提供による実績ポイントの計上を割高に換算するという方法をとってもよいでしょう。ようは、日本国内の土地や労働力などの社会資源が、一企業からみて多くのコストがかかるために、採算があわないから海外にでるというにすぎません。これの利用に関するマイナス評価を低くしてやればよいのです。これは輸出企業の労働者を低賃金にせずに、国際競争できることを意味します。仮に日本の輸出企業の労働者に多目の法点を付与したところで、彼らが日本国内の資源を優先的に使いやすくなるというだけの話で、国家としてはなんの負担にもなりません。外貨を稼いでくれるいわゆる飯の種を海外に逃す手はありません。

後は、当該輸出企業活動が外貨ベースで黒字になるか否かを検討し(いくら外貨を使い、いくら外貨を儲けたか。)そのレベルの黒字が国内資源の利用を含めてトータルで国家にとって有益と考えたならば、当該企業活動を認めればよいということになります。

8 シンプルに考えると見えてくる

使用経済と資本主義(所有経済)の違いは、入手手段を物やカネなどの物的貯めこみ(所有権)から、法点(社会資源に関する使用優先権)という制度的担保に変えるだけのことです。これ以外のことは、すべて付随的に生ずる制度変更やメリットにすぎません。したがって、資本主義の持つメリットや、自由主義という思想背景も引き継ぐことになります。生産のためのインセンティブも、人間行動学的に考えて維持されるので経済システムとして問題なく成立します。

突然また虫の話になりますが、カブトムシをとるには、「夜に山に行って木などに蜜をぬる」という方法論があります。これはカブトムシの行動から考えて極めて合理的な方法です。しかし、100%カブトムシがとれるという数学的立証はできません。
資本主義を前述の方法とすると、使用経済は、Aという蜜の代わりにBというカブトムシが好きな蜜を使うにすぎません。結果はみるまでもなくカブトムシをとることができます。

いままで経済学は、権威付けのために数学的表現を用いすぎたきらいがあります。また、無意味に数学的表現を求める方も一部に存在します。しかしながら経済学の数学的表現の前提には、人間行動の想定があります。結局それは常識と共感に基づくものになります。
すなわち「自分ならばこういう行動をこういう条件のもとではとるだろう。そしてみなも大体とるだろう。とすれば社会全体としてはこうなるだろう。」というものです。このような考え方は、法制度を作るときと同じといえるでしょう。法制度を作るときに、数学的証明などできないししません。社会科学と数学的証明は、本来あまりなじまないものです。もちろん数学が有効に説明に機能する場合には使えばよいのですが、経済システムの論証には基本的に不要だし使い物になりません。

経済学は難しいものではないことを説明することがこれほど難しいとは、皮肉なものでした。この論文は一般者向けのみのものではなく、学者の方々に説明するものでもあります。このような通常言語のみの説明でも、この論文に基づき使用経済システムを導入することは可能なのです。

終わり


プロフィール

名前
野中 健太郎
性別
男性
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AB型
生年月日
1月13日
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