第2章。
2010年8月17日 10時46分55秒 (Tue)
第2章。
今日もオレはゼレセスの報告書を眺めながら眉間に皴を寄せていた。
ゼレセスは性格こそアレだが参謀としては実に優秀だ、そのゼレセスの集めた情報だ、8割以上の確率でこれらの報告書に上げられている情報は事実なのだ。
「敵国へメディアによる侵略は深刻だ、昨日届いた我が国の王都アラザ・ロ・エンの報告書より3箇所も多く侵略、制圧されている。
もう世界全土の半分以上がヘメディアによる完全制圧下に置かれている」
オレは後ろ延べ度でくつろいでいるラークに聞こえるように少し大きめの声でそういう。
「………うん、現在交戦中の地域も多い、でも大半は時間の問題だ時が経てば経つほどへメディアに制圧されるところは増える」
オレの声にラークが静かにそう応える。
「現状を見て気ばかり焦らせてもオレ達に出来る事は今は限られている」
「しかし確実に一歩を踏み出し続ける」
そう、それは日頃からオレが自分に、そしてラークに言い聞かせてきた言葉。
あの人の……師匠の口癖。
立ち止って考えているだけじゃ“今”は変えられない、と。
「今の部隊人数で敵勢力のどこを崩しにかかるかがポイントだ」
雑魚兵ばかり相手にしていても始まらない、しかしいきなり敵勢力の主力部に突入することだって出来ない。
奴らの主力部隊隊長格の所有する兵士は千、万単位だ、比べてこちらは数人程度の小隊。
オレ達に死は許されない。
「まずは順を追って考えていこう、1番にこの第3大陸アラザ・ロエンの完全解放をなして王都にしっかりとした対ヘメディア部隊編成をしてもらう、今の現状は部隊はあっても世界的混乱が起きすぎて部隊はほとんど機能していない」
ラークの言葉にオレの考えを続ける。
「且つ、その上で引き続き、この第3大陸と陸続きになっている第2大陸の戦力支援と、深刻な侵略被害を受けている第6大陸アスベリア・テムの戦力支援も視野に入れなければ為らない、だが同時に複数のことが出来るほどこの国にもこの部隊にも戦力はない」
「だったら今とる最善の行動は?」
「………オレが戦略に疎いの知ってて聞いてきてるな?何時からラークはそんなひねくれた子になったんだか、オレは悲しいぞ」
オレは振り向いてベッドの上のラークに視線を向ける。
「王都アラザ・ロ・エンに隣接している第2大陸の小都市シュロシティがヘメディアによる侵略を受け制圧されたとセレゼスの報告書に記載されていた。
真相を確かめにシュロシティへ向かう、目的は制圧の事実確認、制圧の事実確認が取れ次第我が隊を編成しシュロシティ奪還に行動を移す。
王都に近い町の制圧にあたり少尉格の兵が現場指揮にあたっている、もしかすると別に大尉格の兵もいると推測されるためシュロシティ奪還の際は奇襲を行うため、出来るだけ騒ぎを大きくしないよう心がける」
作戦決行は明日の方がいいな今日はもう遅い、何よりここからシュロシティまで遠くないとはいってもそれなりに時間がかかる。
それに、もしも奪還作戦に移行することになれば作戦実行は日が暮れてからの方が好ましい、ならば明るいうちにシュロシティの現状を把握し、奪還作戦に移るのであればそのまま日が堕ちてからにすればいい。
時間は有限だ、効率よく行かなくては。
明日は朝一で作戦内容を仲間に伝え順部を整え次第出発だ、となれば明日に向けて今日はそろそろ休んだ方がいいな……。
そこで何時までもオレのベッドでごろごろしているラークと目が合う。

「…………」
「……………」
ラークは枕を抱えてオレを見つめるがベッドから降りる気配なしっ!
「………」
「……………」
気配なしっ!!
「…………ぐぅ」
「!!………」
こいつ…ぐぅ。なんてわざとらしい声上げて寝やがった。
しかもシングルベッドのど真ん中で。
………あーぁ、オレ今日も床寝か。
「これは酷いな……」
次の日、オレ達はシュロシティの現状を目の当たりにした。
オレ達は2手に分かれ茂みの影から、建物の影から大方街の中を見てまわっていた。
オレと一緒に行動しているのはティア、後の3人は別行動。
倒壊した家屋、未だ残る血臭、徘徊するヘメディア兵以外人の気配のしない町中。
日の傾きかけた今町は淡い夕陽を浴びてまるで火災の後のように見えた。
「奪還作戦決行できまりかな」
3人と合流後ポツリとゼレセスがそう漏らした。
「あぁ」
これまで町中を見てきたオレの情報とゼレセスたちの情報を合わせるとシュロシティには現在約50人編成のヘメディア兵小隊が駐留しておりその指揮を執っているのが一人だけ違う色の鎧を着ているヤツ、隊の規模から言って大尉以下数人の雑魚兵士上の兵士がいるだろう。少なくとも大尉含め3人。
こちらの戦力は総勢5人、正攻法で行ったなら間違いなく大敗するだろう。
「みんな良く聞いてくれ、敵戦力は1個小隊、総数50人以上奪還作戦bを行使する」
オレは予め全員に奪還作戦の数通りの手順を教えておいた、シュロシティの現状、駐留兵の数などその時々の状況に合わせてた作戦を。
今オレが指示した作戦bは奇襲作戦。
オレ達の今の状況は敵戦力の大体の予想とシュロシティの被害状況しか分かっていない。
敵小隊の隊長、副官、現場指揮官の実力もその拠点も町の人の居所安否さえも。
まずは探りを入れる。
第一に拠点及び隊長等の確認、出来るなら町人の確認も。
敵隊長の確認が取れ状況がオレの方に向いていれば即戦闘に入る。
オレ以外の隊員が敵隊長及び副官らを発見した場合速やかにオレに報告。
この作戦に囮はいない。
オレ達の隊の存在に気づいていないヘメディア兵にわざわざオレ達の存在を教えたところで何の徳もない。
単純に数の問題から言って50人対5人、10倍の数だ。
もっともこれは一般兵士を基本とした場合だけど、ここに方術使いがいたらこの人数の計算式か戦闘状況や術者の腕前で大きく変わる、それは剣士の比ではない。
それはともかく、故にオレ達はただ一人の敵兵に発見されてはならない、万が一雑兵に発見されたなら速やかに以下の対処をすること。
1、声を出される前に敵兵の息を止める。
2、もしも声を上げられ、仲間を呼ばれたなら速やかにその場を離脱し仲間と合流。
その後完全撤退か強行突破に踏み切る。
3、もしも雑兵ではなく隊長以下自分の手に負えない敵兵と遭遇した場合、速やかにその場を離脱、かなわない場合には声をあげるなど危険を伴う手段を用いても他の仲間に合図を送ること。
仲間の誰の命も落とさないことを前提に組み立てた作戦だから至る所に奪還作戦としての穴を抱えている、本来作戦決行にあたって味方の命を落とさないことはもちろん大切だが時に自らの手を汚して味方の命を奪おうとも作戦成功をもたらさなければならない、そう教えられたのに。
ダメだよ師匠。
オレまだそんなにオトナじゃないみたいだ、教えられたあの時は最悪の場合はそうなるのかな、とも思ったけど戦場を目の当たりにしてそんな考えはどこかに消えたみたいだ。
オレはすべてを守りたいんだから、不可能でも、オレは欲張りだから諦められない。
二手に分かれる編成はさっきと同じメンツで行く。
オレはティアと、後3人は別働隊。
この編成が一番戦力的に半々だ。
この隊の中で一番剣技に秀でたオレとサポートがメインだが多少の攻撃法術を使えるティア。
オレには劣るが並みのヤツなら剣技でまけることのないラーク、法術に関してはトップクラスのリディ、戦力的には当てにならないゼレセス。
なんかこう考えるとゼレセス(お荷物)をラークの方に預けてしまった気分になるのは何故だろう?
やっぱゼレセスはこっちに入れようか?
オレは茂みの中で仲間たちに目で合図を送り、陽の完全に傾いたシュロシティをそれぞれの場所に散っていく。
暗くなった町中には灯りを持った雑兵が複数屯している、声も上げず、ただひっそりと。
近いうちにここを拠点に王都へ攻め込むつもりなのだろう、シュロシティ制圧を知らぬ王都に奇襲をかける。
残念だがそれはオレ達が阻止する。
しばらく町中を屯する兵士を眺めていたその時、一人の兵士に向かって別の兵士が歩み寄ってきた。
暫くなにやら話し入れ替わるように今歩いてきた兵士がその場にとどまり、今その場にいた兵士はどこかへと歩み去っていく。
よし。
オレは素早くティアに眼で合図を送り歩み去っていった兵士の後を着ける。
持ち場交代の時間なのだと踏んだ。
このまま後をつければ高い確率で敵の拠点に着くだろう。
そう、もしオレ達の存在がバレていて逆にオレ達が誘導されているのでなければ……。
「あたりか?」
「たぶん当たり」
「雰囲気がそんな感じ?」
ちょうど同じころ別働隊3人。
夜目の利くラークが100メートルほど離れたところから敵拠点を見つめていた。
「しかしよくこんなところから確認できるもんだ」
「明かりが見えるし」
「そりゃ確かに見えなくはないが…」
シュロシティ郊外にある貴族の別荘だろうか?ヘメディア兵が拠点としている建物はそんな感じだった。
「しっ!だれかくる」
後ろで小声ながらもあーだこうだいっているゼレセスとラークにリディが注意を促す。
(こんなろくに明かりもない場所に?ヘメディア兵か?)
(私じゃよく見えないよ、みえる?ラーくん)
(うん、長身に露出の多い女物の服を着たポニーテールの人がいる)
(ひとり?)
(うん)
(女?そんな気配は感じないんだけどな………って、なんか変な水音がしないか?)
(うん)
(雨だれの音みたいな?)
リディいのその一言を聞いた瞬間セレゼスの脳裏に一瞬あるものが過った。
次の瞬間頬を伝う冷たいいやな汗。
(………)
条件はそろった。
女の格好をしてこんな暗い中水音を立てるやつの正体が。
(あ、音きこえなくなったよセイちゃん)
(くっ!もよおしたなら他所でやりやがれカマ野郎)
「潜入成功」
しかしこの拠点の中どこに主力兵がいるのか。
「ロウさん、偉い方がいるところの定番といえば最深部か最上階じゃないですか?」
「うんまぁたしかに」
とりあえず上行っとこうか。
通路の死角の回りこみ兵士をやり過ごすこと数回、今までの扉とは仕様の異なる扉を見つけた。
「どう思うティア」
「可能性は高いと思います、一般兵にも見分けがつくように極端に仕様を変える、一目見て一目瞭然な程に。
その位していて普通じゃないかと」
そう、大半はそうだろう特にこんな小隊の拠点なら。
慎重に気配を探ってみる、扉の向こうには2つの気配。
いくか?
「あ」
木の上から敵の拠点を見ていたラークが突然声を発した。
「なにかあったの?」
「ロウとティアが灯りのついた部屋の一つに入ってきた。
その部屋には……後姿しか見えないけど体格の良い軍人2人とその二人とは違う色の鎧を着た軍人がいる」
「オレ達も現場に急行しよう、リーダーのサポートに回らないと。
この場合部屋にいる誰かが窓ガラスを割ったりしたら盛大な音が鳴る、こんな夜の深けた時間に響くその音に不信感を持った兵が現場に集まってくる可能性は高い。
何より援軍を呼び集められたらまずい」
「私たちがその場に行ってロウちゃん達のいる所に行こうとする雑兵を片付ければいいのよね」
「物騒な言い方だけどその通りさ」
「だったら急ごう」
敵拠点に雑兵が集まってくる気配は一向に訪れない。
あれから30分は経っただろうか、ラークが敵兵の部屋に突入したロウ達を確認し、別働隊であるラーク、リディ、ゼレセスが木陰に隠れながら敵拠点正門前を見張る。
物騒な物音一つしない。
静まり返る木立に囲まれた敵拠点は不気味なほどに静かだった。
ヘメディア兵と対峙する事数分、微動だにしない兵士3人を目の前にオレはティアに合図を送る。
ティアを一つ頷き法術の呪文を口にする。
それと同時に部屋全体に今まで以上の静寂が訪れた。
空間隔離の法。
限られた狭い空間にしか使えないが使い方次第ではとても勝手の良い法術だとオレは思う。
現に今この場も空間が隔離され、この部屋のすべてが外に漏れることはない、それと同時に外の何者もこの部屋に干渉することは出来ない。
オレは3人の兵士のうち格が高そうな鎧をまとっている兵士を警戒しつつ徐々に間合いを詰めていく。
感だが、この3人の兵士全員雑魚だ。
―――オレに比べたらな。
オレを警戒して動けないでいた兵士の一人が口を開いた。
「貴様、何者だ!ここはヘメディア兵第3機動部隊所属小隊セイエ少尉の軍事基地と知っての進入か!!」
何て意味不明な台詞だ、オレが通りすがりの迷子でここにいるとでも言いたいんだろうか?この兵隊は。
「知っての進入だよ、単刀直入に言う、投降しろ。
オレはお前らよりも強い、そこにいるのが隊長なら首を取ってこの拠点を制圧する。
月並みな台詞だからこれ以上言わなくても大体分かるだろ?
大人しく投降するなら命はとらない、悪あがきするならかかって来い……命を賭けて」
オレは抜き身の剣を握り締め兵士の動きに構える。
「っっああああ!」
先に動いたのは隊長……セイエ少尉とかいうヤツの左隣にいた兵士が動いた。
オレに向かって大降りの剣を上段から愚鈍な振り下ろしで切りかかってきた。
避けるのは容易い、しかしこの狭い部屋の中で背にティアを守りながらの戦い方としてはいいものではないだろう。
オレは兵士の一撃を自らの剣で受け止めそのまま兵士の大剣の刃を根元から切断し、その勢いに乗って兵士に当身を食らわせダウンさせる。
兵士はオレの当身を避けることもできずその場にぶっ倒れる。
「っなめやがって族があぁぁ!!」
「まっ!」
セイエ少尉の右側に身を置いていたもう一人の兵士も動きオレに切りかかってくる……今のオレの動きを見てまだかかってくるなど実力の差も推し量れないような雑魚だということか……。
地を蹴りだした兵士の背中に制止の声だろうか?発したセイエ少尉の声は兵士には届かず兵士の剣はオレに振り下ろされた。
この兵士を殺さずに捕らえることは簡単だ、さっきの兵士同様当身を食らわせれば良い。
オレにはそれだけの余裕がある、それがこの兵士とオレとの実力の差…だが、それではぬるいだろう。
振り下ろされる兵士の大剣、それをオレの剣で受け止め勢いを殺さずに右へと流しそのまま剣を切り返して兵士の顎の裏目掛けて剣を突き出し鎧兜ごと兵士の脳天を貫き、軽く手前に引いた後さっき当身を食らわせ突っ伏したまま気を失っている兵士の上へ投げる、そしてその反射行動で脳天を貫いたままの剣を引き抜いた。
息を呑む音が後ろと前から聞こえる。
「隊長殿、もう一度言おう総員投降しろ、オレとて殺しは好きじゃない」
返り血を浴びてヘメディア兵隊長を睨みつけていたオレは一体どんな顔をしていたのだろう。
血の気の引いた顔をした隊長がすぐさまその場で投降したのだった。
シュロシティを制圧していたヘメディア兵小隊隊長セイエ少尉を縄にかけ生け捕りにして2階バルコニーにオレとティアとで隊長を連れてでた。
気配がする。
木立に紛れて3人、よく知った敵意のない気配だ。
「ラーク、王都に向かえ。
シュロシティ奪還成功にあたり敵拠点及び敵へメディア兵の管理部隊をよこしてほしと」
オレのその声がちゃんと聞こえたのだろう、木立から1つ気配が消える。
一呼吸置いてオレはセイエ少尉を軽く小突く。
「全兵士をこの場に集合させろもちろん副官どもも」
明け方、拠点に集められたヘメディア兵は意外なほど無抵抗だった、その理由は分からないが王都から派遣されてきた部隊がヘメディア兵の取調べから町人の捜索、町の復興まであたってくれているので何か情報がえられたなら追って王都から報告があるだろう。
砦に戻ったオレ達は徹夜での作戦実行もあって帰って早々全員が部屋に戻って休息をとったのだった。
「まぁ、今回は意外なほど敵が弱かったんでオレ達の隊にも被害は出なかったんだが、次も同じとは限らない、曰く、勝って兜の緒を締めよ。だ、心してくれ」
朝食の……いや、時間からしたら夕食なんだが今が今日起きてからの最初のご飯なんだから朝食なんだ。
の、席でオレは昨日の作戦の戦果をまとめた。
「大勝利ね、ロウちゃん」
「私も少しでもお役に立てたなら嬉しいです」
「あぁ、みんな大活躍だったよ」
「リーダー?オレはお褒めの言葉より今は飯が欲しいかな」
「正面に同じく」
「右にだろ?ラーク」
「ゼレセスからしたら正面だよこの席は」
「………はいはい、それじゃいただきます!」
『いただきます』
一つの目的を無事達成した安堵感と満足感で食卓を囲うみんなの表情は緩んでいた。
賑やかな食卓。
昨日と同じような今日。
オレもまた昨日の作戦でラークの手を血で染めずにすんだ事に安堵していた。
今日もオレはゼレセスの報告書を眺めながら眉間に皴を寄せていた。
ゼレセスは性格こそアレだが参謀としては実に優秀だ、そのゼレセスの集めた情報だ、8割以上の確率でこれらの報告書に上げられている情報は事実なのだ。
「敵国へメディアによる侵略は深刻だ、昨日届いた我が国の王都アラザ・ロ・エンの報告書より3箇所も多く侵略、制圧されている。
もう世界全土の半分以上がヘメディアによる完全制圧下に置かれている」
オレは後ろ延べ度でくつろいでいるラークに聞こえるように少し大きめの声でそういう。
「………うん、現在交戦中の地域も多い、でも大半は時間の問題だ時が経てば経つほどへメディアに制圧されるところは増える」
オレの声にラークが静かにそう応える。
「現状を見て気ばかり焦らせてもオレ達に出来る事は今は限られている」
「しかし確実に一歩を踏み出し続ける」
そう、それは日頃からオレが自分に、そしてラークに言い聞かせてきた言葉。
あの人の……師匠の口癖。
立ち止って考えているだけじゃ“今”は変えられない、と。
「今の部隊人数で敵勢力のどこを崩しにかかるかがポイントだ」
雑魚兵ばかり相手にしていても始まらない、しかしいきなり敵勢力の主力部に突入することだって出来ない。
奴らの主力部隊隊長格の所有する兵士は千、万単位だ、比べてこちらは数人程度の小隊。
オレ達に死は許されない。
「まずは順を追って考えていこう、1番にこの第3大陸アラザ・ロエンの完全解放をなして王都にしっかりとした対ヘメディア部隊編成をしてもらう、今の現状は部隊はあっても世界的混乱が起きすぎて部隊はほとんど機能していない」
ラークの言葉にオレの考えを続ける。
「且つ、その上で引き続き、この第3大陸と陸続きになっている第2大陸の戦力支援と、深刻な侵略被害を受けている第6大陸アスベリア・テムの戦力支援も視野に入れなければ為らない、だが同時に複数のことが出来るほどこの国にもこの部隊にも戦力はない」
「だったら今とる最善の行動は?」
「………オレが戦略に疎いの知ってて聞いてきてるな?何時からラークはそんなひねくれた子になったんだか、オレは悲しいぞ」
オレは振り向いてベッドの上のラークに視線を向ける。
「王都アラザ・ロ・エンに隣接している第2大陸の小都市シュロシティがヘメディアによる侵略を受け制圧されたとセレゼスの報告書に記載されていた。
真相を確かめにシュロシティへ向かう、目的は制圧の事実確認、制圧の事実確認が取れ次第我が隊を編成しシュロシティ奪還に行動を移す。
王都に近い町の制圧にあたり少尉格の兵が現場指揮にあたっている、もしかすると別に大尉格の兵もいると推測されるためシュロシティ奪還の際は奇襲を行うため、出来るだけ騒ぎを大きくしないよう心がける」
作戦決行は明日の方がいいな今日はもう遅い、何よりここからシュロシティまで遠くないとはいってもそれなりに時間がかかる。
それに、もしも奪還作戦に移行することになれば作戦実行は日が暮れてからの方が好ましい、ならば明るいうちにシュロシティの現状を把握し、奪還作戦に移るのであればそのまま日が堕ちてからにすればいい。
時間は有限だ、効率よく行かなくては。
明日は朝一で作戦内容を仲間に伝え順部を整え次第出発だ、となれば明日に向けて今日はそろそろ休んだ方がいいな……。
そこで何時までもオレのベッドでごろごろしているラークと目が合う。
「…………」
「……………」
ラークは枕を抱えてオレを見つめるがベッドから降りる気配なしっ!
「………」
「……………」
気配なしっ!!
「…………ぐぅ」
「!!………」
こいつ…ぐぅ。なんてわざとらしい声上げて寝やがった。
しかもシングルベッドのど真ん中で。
………あーぁ、オレ今日も床寝か。
「これは酷いな……」
次の日、オレ達はシュロシティの現状を目の当たりにした。
オレ達は2手に分かれ茂みの影から、建物の影から大方街の中を見てまわっていた。
オレと一緒に行動しているのはティア、後の3人は別行動。
倒壊した家屋、未だ残る血臭、徘徊するヘメディア兵以外人の気配のしない町中。
日の傾きかけた今町は淡い夕陽を浴びてまるで火災の後のように見えた。
「奪還作戦決行できまりかな」
3人と合流後ポツリとゼレセスがそう漏らした。
「あぁ」
これまで町中を見てきたオレの情報とゼレセスたちの情報を合わせるとシュロシティには現在約50人編成のヘメディア兵小隊が駐留しておりその指揮を執っているのが一人だけ違う色の鎧を着ているヤツ、隊の規模から言って大尉以下数人の雑魚兵士上の兵士がいるだろう。少なくとも大尉含め3人。
こちらの戦力は総勢5人、正攻法で行ったなら間違いなく大敗するだろう。
「みんな良く聞いてくれ、敵戦力は1個小隊、総数50人以上奪還作戦bを行使する」
オレは予め全員に奪還作戦の数通りの手順を教えておいた、シュロシティの現状、駐留兵の数などその時々の状況に合わせてた作戦を。
今オレが指示した作戦bは奇襲作戦。
オレ達の今の状況は敵戦力の大体の予想とシュロシティの被害状況しか分かっていない。
敵小隊の隊長、副官、現場指揮官の実力もその拠点も町の人の居所安否さえも。
まずは探りを入れる。
第一に拠点及び隊長等の確認、出来るなら町人の確認も。
敵隊長の確認が取れ状況がオレの方に向いていれば即戦闘に入る。
オレ以外の隊員が敵隊長及び副官らを発見した場合速やかにオレに報告。
この作戦に囮はいない。
オレ達の隊の存在に気づいていないヘメディア兵にわざわざオレ達の存在を教えたところで何の徳もない。
単純に数の問題から言って50人対5人、10倍の数だ。
もっともこれは一般兵士を基本とした場合だけど、ここに方術使いがいたらこの人数の計算式か戦闘状況や術者の腕前で大きく変わる、それは剣士の比ではない。
それはともかく、故にオレ達はただ一人の敵兵に発見されてはならない、万が一雑兵に発見されたなら速やかに以下の対処をすること。
1、声を出される前に敵兵の息を止める。
2、もしも声を上げられ、仲間を呼ばれたなら速やかにその場を離脱し仲間と合流。
その後完全撤退か強行突破に踏み切る。
3、もしも雑兵ではなく隊長以下自分の手に負えない敵兵と遭遇した場合、速やかにその場を離脱、かなわない場合には声をあげるなど危険を伴う手段を用いても他の仲間に合図を送ること。
仲間の誰の命も落とさないことを前提に組み立てた作戦だから至る所に奪還作戦としての穴を抱えている、本来作戦決行にあたって味方の命を落とさないことはもちろん大切だが時に自らの手を汚して味方の命を奪おうとも作戦成功をもたらさなければならない、そう教えられたのに。
ダメだよ師匠。
オレまだそんなにオトナじゃないみたいだ、教えられたあの時は最悪の場合はそうなるのかな、とも思ったけど戦場を目の当たりにしてそんな考えはどこかに消えたみたいだ。
オレはすべてを守りたいんだから、不可能でも、オレは欲張りだから諦められない。
二手に分かれる編成はさっきと同じメンツで行く。
オレはティアと、後3人は別働隊。
この編成が一番戦力的に半々だ。
この隊の中で一番剣技に秀でたオレとサポートがメインだが多少の攻撃法術を使えるティア。
オレには劣るが並みのヤツなら剣技でまけることのないラーク、法術に関してはトップクラスのリディ、戦力的には当てにならないゼレセス。
なんかこう考えるとゼレセス(お荷物)をラークの方に預けてしまった気分になるのは何故だろう?
やっぱゼレセスはこっちに入れようか?
オレは茂みの中で仲間たちに目で合図を送り、陽の完全に傾いたシュロシティをそれぞれの場所に散っていく。
暗くなった町中には灯りを持った雑兵が複数屯している、声も上げず、ただひっそりと。
近いうちにここを拠点に王都へ攻め込むつもりなのだろう、シュロシティ制圧を知らぬ王都に奇襲をかける。
残念だがそれはオレ達が阻止する。
しばらく町中を屯する兵士を眺めていたその時、一人の兵士に向かって別の兵士が歩み寄ってきた。
暫くなにやら話し入れ替わるように今歩いてきた兵士がその場にとどまり、今その場にいた兵士はどこかへと歩み去っていく。
よし。
オレは素早くティアに眼で合図を送り歩み去っていった兵士の後を着ける。
持ち場交代の時間なのだと踏んだ。
このまま後をつければ高い確率で敵の拠点に着くだろう。
そう、もしオレ達の存在がバレていて逆にオレ達が誘導されているのでなければ……。
「あたりか?」
「たぶん当たり」
「雰囲気がそんな感じ?」
ちょうど同じころ別働隊3人。
夜目の利くラークが100メートルほど離れたところから敵拠点を見つめていた。
「しかしよくこんなところから確認できるもんだ」
「明かりが見えるし」
「そりゃ確かに見えなくはないが…」
シュロシティ郊外にある貴族の別荘だろうか?ヘメディア兵が拠点としている建物はそんな感じだった。
「しっ!だれかくる」
後ろで小声ながらもあーだこうだいっているゼレセスとラークにリディが注意を促す。
(こんなろくに明かりもない場所に?ヘメディア兵か?)
(私じゃよく見えないよ、みえる?ラーくん)
(うん、長身に露出の多い女物の服を着たポニーテールの人がいる)
(ひとり?)
(うん)
(女?そんな気配は感じないんだけどな………って、なんか変な水音がしないか?)
(うん)
(雨だれの音みたいな?)
リディいのその一言を聞いた瞬間セレゼスの脳裏に一瞬あるものが過った。
次の瞬間頬を伝う冷たいいやな汗。
(………)
条件はそろった。
女の格好をしてこんな暗い中水音を立てるやつの正体が。
(あ、音きこえなくなったよセイちゃん)
(くっ!もよおしたなら他所でやりやがれカマ野郎)
「潜入成功」
しかしこの拠点の中どこに主力兵がいるのか。
「ロウさん、偉い方がいるところの定番といえば最深部か最上階じゃないですか?」
「うんまぁたしかに」
とりあえず上行っとこうか。
通路の死角の回りこみ兵士をやり過ごすこと数回、今までの扉とは仕様の異なる扉を見つけた。
「どう思うティア」
「可能性は高いと思います、一般兵にも見分けがつくように極端に仕様を変える、一目見て一目瞭然な程に。
その位していて普通じゃないかと」
そう、大半はそうだろう特にこんな小隊の拠点なら。
慎重に気配を探ってみる、扉の向こうには2つの気配。
いくか?
「あ」
木の上から敵の拠点を見ていたラークが突然声を発した。
「なにかあったの?」
「ロウとティアが灯りのついた部屋の一つに入ってきた。
その部屋には……後姿しか見えないけど体格の良い軍人2人とその二人とは違う色の鎧を着た軍人がいる」
「オレ達も現場に急行しよう、リーダーのサポートに回らないと。
この場合部屋にいる誰かが窓ガラスを割ったりしたら盛大な音が鳴る、こんな夜の深けた時間に響くその音に不信感を持った兵が現場に集まってくる可能性は高い。
何より援軍を呼び集められたらまずい」
「私たちがその場に行ってロウちゃん達のいる所に行こうとする雑兵を片付ければいいのよね」
「物騒な言い方だけどその通りさ」
「だったら急ごう」
敵拠点に雑兵が集まってくる気配は一向に訪れない。
あれから30分は経っただろうか、ラークが敵兵の部屋に突入したロウ達を確認し、別働隊であるラーク、リディ、ゼレセスが木陰に隠れながら敵拠点正門前を見張る。
物騒な物音一つしない。
静まり返る木立に囲まれた敵拠点は不気味なほどに静かだった。
ヘメディア兵と対峙する事数分、微動だにしない兵士3人を目の前にオレはティアに合図を送る。
ティアを一つ頷き法術の呪文を口にする。
それと同時に部屋全体に今まで以上の静寂が訪れた。
空間隔離の法。
限られた狭い空間にしか使えないが使い方次第ではとても勝手の良い法術だとオレは思う。
現に今この場も空間が隔離され、この部屋のすべてが外に漏れることはない、それと同時に外の何者もこの部屋に干渉することは出来ない。
オレは3人の兵士のうち格が高そうな鎧をまとっている兵士を警戒しつつ徐々に間合いを詰めていく。
感だが、この3人の兵士全員雑魚だ。
―――オレに比べたらな。
オレを警戒して動けないでいた兵士の一人が口を開いた。
「貴様、何者だ!ここはヘメディア兵第3機動部隊所属小隊セイエ少尉の軍事基地と知っての進入か!!」
何て意味不明な台詞だ、オレが通りすがりの迷子でここにいるとでも言いたいんだろうか?この兵隊は。
「知っての進入だよ、単刀直入に言う、投降しろ。
オレはお前らよりも強い、そこにいるのが隊長なら首を取ってこの拠点を制圧する。
月並みな台詞だからこれ以上言わなくても大体分かるだろ?
大人しく投降するなら命はとらない、悪あがきするならかかって来い……命を賭けて」
オレは抜き身の剣を握り締め兵士の動きに構える。
「っっああああ!」
先に動いたのは隊長……セイエ少尉とかいうヤツの左隣にいた兵士が動いた。
オレに向かって大降りの剣を上段から愚鈍な振り下ろしで切りかかってきた。
避けるのは容易い、しかしこの狭い部屋の中で背にティアを守りながらの戦い方としてはいいものではないだろう。
オレは兵士の一撃を自らの剣で受け止めそのまま兵士の大剣の刃を根元から切断し、その勢いに乗って兵士に当身を食らわせダウンさせる。
兵士はオレの当身を避けることもできずその場にぶっ倒れる。
「っなめやがって族があぁぁ!!」
「まっ!」
セイエ少尉の右側に身を置いていたもう一人の兵士も動きオレに切りかかってくる……今のオレの動きを見てまだかかってくるなど実力の差も推し量れないような雑魚だということか……。
地を蹴りだした兵士の背中に制止の声だろうか?発したセイエ少尉の声は兵士には届かず兵士の剣はオレに振り下ろされた。
この兵士を殺さずに捕らえることは簡単だ、さっきの兵士同様当身を食らわせれば良い。
オレにはそれだけの余裕がある、それがこの兵士とオレとの実力の差…だが、それではぬるいだろう。
振り下ろされる兵士の大剣、それをオレの剣で受け止め勢いを殺さずに右へと流しそのまま剣を切り返して兵士の顎の裏目掛けて剣を突き出し鎧兜ごと兵士の脳天を貫き、軽く手前に引いた後さっき当身を食らわせ突っ伏したまま気を失っている兵士の上へ投げる、そしてその反射行動で脳天を貫いたままの剣を引き抜いた。
息を呑む音が後ろと前から聞こえる。
「隊長殿、もう一度言おう総員投降しろ、オレとて殺しは好きじゃない」
返り血を浴びてヘメディア兵隊長を睨みつけていたオレは一体どんな顔をしていたのだろう。
血の気の引いた顔をした隊長がすぐさまその場で投降したのだった。
シュロシティを制圧していたヘメディア兵小隊隊長セイエ少尉を縄にかけ生け捕りにして2階バルコニーにオレとティアとで隊長を連れてでた。
気配がする。
木立に紛れて3人、よく知った敵意のない気配だ。
「ラーク、王都に向かえ。
シュロシティ奪還成功にあたり敵拠点及び敵へメディア兵の管理部隊をよこしてほしと」
オレのその声がちゃんと聞こえたのだろう、木立から1つ気配が消える。
一呼吸置いてオレはセイエ少尉を軽く小突く。
「全兵士をこの場に集合させろもちろん副官どもも」
明け方、拠点に集められたヘメディア兵は意外なほど無抵抗だった、その理由は分からないが王都から派遣されてきた部隊がヘメディア兵の取調べから町人の捜索、町の復興まであたってくれているので何か情報がえられたなら追って王都から報告があるだろう。
砦に戻ったオレ達は徹夜での作戦実行もあって帰って早々全員が部屋に戻って休息をとったのだった。
「まぁ、今回は意外なほど敵が弱かったんでオレ達の隊にも被害は出なかったんだが、次も同じとは限らない、曰く、勝って兜の緒を締めよ。だ、心してくれ」
朝食の……いや、時間からしたら夕食なんだが今が今日起きてからの最初のご飯なんだから朝食なんだ。
の、席でオレは昨日の作戦の戦果をまとめた。
「大勝利ね、ロウちゃん」
「私も少しでもお役に立てたなら嬉しいです」
「あぁ、みんな大活躍だったよ」
「リーダー?オレはお褒めの言葉より今は飯が欲しいかな」
「正面に同じく」
「右にだろ?ラーク」
「ゼレセスからしたら正面だよこの席は」
「………はいはい、それじゃいただきます!」
『いただきます』
一つの目的を無事達成した安堵感と満足感で食卓を囲うみんなの表情は緩んでいた。
賑やかな食卓。
昨日と同じような今日。
オレもまた昨日の作戦でラークの手を血で染めずにすんだ事に安堵していた。
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美人さんが大好き!
キレイなお姉さんは好きですか?
なにかのCMのフレーズでありましたね。
大好きですよ!
好きなキャラ見れば傾向が無差別に見えますが
こんな所に大半女性だという大雑把な傾向が見えましたね(笑)
男キャラはVPのレザード
アイツは最高です!!
変態が感染しそうなくらい濃いヤツでした。
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