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ロウは水がニガテ。

2010年8月17日 9時13分38秒 (Tue)

ロウは水がニガテ。

「何を忙しなく探してるのさ?ティア」

 屋内を行ったり来たりするティアを眺めること小1時間、ゼレセスはティアが何をしているのか分かっているにもかかわらずいつものようにそう声を掛けた。
「ゼレセスさん、実は…」

 そして返ってきたのは予想通りいつもと同じ答えだった。
「で?何処を探しても見つからないリーダーを探している、と。
 しかも一緒にラークの姿も見当たらないとか?」
「えぇ」
「それじゃあ外にいるとしか考えられないね」
 突如ゼレセスの後ろから声を発したのはリディ。
 ゼレセスの腰掛けているイスの後ろから姿を現したリディはあきれた顔でティアを見る。
「だいたい、ローちゃんはラーくんと一緒にいる時が一番安心してる時なんだから、邪魔するなんて野暮じゃない」
「とか言いつつ今からリーダーを探しに行くつもりだろ、リディ」
「もちろん。
 さぁっすがエロセスは女心が分かってるぅ♪」
「エロセスゆうな」
「と、とにかく、探すなら人では多い方がいいわよね?」


 ティアの言葉に全員一致で2人を本格的に探し始めた。
 ……ティア以外は面白半分で。


 その頃2人は。

「ばぁーか、顔を水につけることぐらいできらぁ」
 半分やけになっているオレの声が辺りに響く。
「大体膝上くらいまでなら問題ない」
「膝上までしかダメな時点で十分問題だと思うけど」
「うっ」
 ラークに言い返す言葉がないオレは足元の水面を睨む。
 
 オレ達は今、砦からさほど離れていない泉に来ていた。
 泳ぐのに十分すぎる広さと透明度。
 本日は晴天高気温、絶好の遊泳日和だ、つまりオレ達は遊泳に来ている。

 ………わけではない。

「隊のリーダーが1メートルも泳げないでどうするんだ、水上戦になった時にひどく不利に…」
「わーーってる!
 だから今日もこうしてラークに頼んでここに来てるじゃないか」
 そう、万が一オレが溺れた時の救助員としてラークを連れて。
「くそぅ、泳げる奴には分からないんだ~」
「運動神経は良いのにどうして泳ぎだけはダメなんだか」
 不思議そうにオレを見るラークにオレは不満たっぷりの視線を送る。
「浮かないんだよ、どーやっても沈むんだ、体が」
 だから溺れる。
 まったく水に浮かないこの体が恨めしい。
「れんしゅうあるのみ」
 沈むオレにラークのりのエールを送ってよこす。
 確かに、どうこう言ったところで始まらない。なんとしてでも泳げるようにならなければこの先戦況が不利に働きかねない。
「とにかく肩まで水につからなきゃ、いざって時は助けるからさ」
 いざがあっちゃ困るんだがなぁ…。
 オレは思い切って泉の中をずんずんと歩き進める。
 水が踝から膝、腿へと上がってくる。
 水に対する恐怖心はない、腰、腹と水の中に沈んでいく。
「あーー、つめたいなぁ~」
 水が胸の辺りに来たところでオレは振り返りラークに向かったそう言った。
「水が?」
「ちがうわ、水泳訓練ていったら泳げる奴がちょーっとコツを教えてくれたりとかだなぁ」
 どうにも一人で水につかっているだけでは上達しないと今になって思いラークにそんなことを言ってみる。
「なんだ、手伝って欲しいなら早く言えばいいのに」

 そう言うとラークはすっと立ち上がり靴を脱ぐと、傍観をやめて泉の中に入ってきた。
 ゆっくりと歩いてオレの方に近づいてくる。
 水はオレの胸の辺りまであるから、ラークがオレのそばまで来るとラークは顎の辺りまで水に沈んでいる。
「意識したことはないけど、基本的に水に浮くには体に無駄に力を入れないこと。これが一番だと思う。
 後は…ロウは水は怖くないから問題ないね。
 足のつくところで泳ぐならこのくらいかな。
 足の届かないところで浮く時は手と足を動かし続けるんだけど……そこはまず泳げるようになってからだね」
 そこまで一気に言い終わるとラークはオレの両手を握りぐっと引っ張ってきた。
「先導するから顔を水につけないようにした上でバタ足してみて」
「お、おう」
 とりあえず言われるがままにしてみるが……。

「なんていうかさー」
「…………」
「顔以外は沈んでる」
 言われなくても分かってるっつーの。
 傍から見たら無様なことこの上ないんだろうな…、何だか涙が出てきそうだぜ。

 この日は昼過ぎまで練習したものの、たいして成果が現れなかったのでオレ達は昼ご飯を食べるため砦に戻った。

「ん?やけに静かだな…リディー?ティア、ゼレセス?誰もいないのか?」
 砦に戻ったオレ達はその静けさに驚いた。
 いつもならこの時間、戦闘訓練や食後の運動などで騒がしくしているはずなのだが……まさかオレ達がいない間に何かあったんじゃぁ…。
「返事が返って来ないね、中を探そう」
 ラークは瞬時に判断し行動する。
 まずは皆の部屋に行くのが妥当か、もしかしたら全員が部屋にいてオレの声が聞こえなくてさっきの呼びかけにも返事を返さなかったのかもしれない。

 1階の広間を抜け2階に上がり一番手前のリディの部屋の扉を叩く。
「リディ?ロウェメルだ、部屋にいるんなら出てきてくれないか?」
 ……………返事はない。

「ロウ、人の気配が複数近づいてくる」
 静かにラークは言った。
 オレも気づいている、ここに複数の気配が近づいている。
 眼でラークに合図を送る。
 軽くうなずいて下に降りていクラーク。
 オレは反対側から気配の方へ向かう。
 固まって動くのはこの場合あまりいい手とはいえないだろう。
 他の仲間の行方も分からない、ラークの実力はオレがよく知っている。
 大丈夫。
 オレが裏から回り込めば直ぐにカタがつくだろう。

気配の裏側に当たる窓から飛び降り、オレは自分の気配を殺してその不審な気配の後を追う。
 ん?ラークの気配が不審な気配の間近で止まったな。
 ……殺気はない、って、ここにいたんじゃ何も分からないか。

 オレは気配の方へと更に近づき……。
 おい。
 見たことのある後姿が3人にラークの姿が見える―――。
 オレはバっと勢いよくそいつらの前に姿を現した。
「こらこらこら、砦空にして3人で何処に行ってたんだよ」
 そう、気配の人物たちは姿が見えなかったリディ、ティア、セレゼスの3人だった。
「う……それは…」
 オレの問いかけに何か言いかけて口ごもるティア。
「リーダーこそ、そんなところに隠れてなーにやってんだよ。
 バリバリ不審者じゃん」
 ニヤニヤと笑みを浮かべながら何気に話をすり替える。
「戻ったら誰もいないし、そうかと思えば複数の気配が砦に近づいてくるわ。
 オレだって警戒するさ」
「あ、それもそうだね」
 と、納得のリディ。
「でも私たちだってローちゃんがいないから探しに行ってたんだよ?」
「そうそう、ラークと一緒に姿が見えなくなったみたいだけど何処へお出かけだったのかな?リーダー?」
「う」
「う?」
 リディとゼレセスに問い詰められ、一瞬答えに詰まったオレをティアの眼が責めるように見る。
 うぅ、こわいな。
「ちょっと離れた所で2人で鍛錬してただけだよ。
 それより、オレを探してたんだろ?何か用があるんじゃないのか?」
 まぁ、嘘は言っていない。
 離れたトコでラークが笑いを堪えているように見えるがとりあえす無視。
「ローちゃんに用事があるのはティアっちだよ、私はお手伝いしてただけだもん。
 それじゃあ私は部屋に戻るね」
「そゆことなんでオレも戻るよ」
 そういうとリディとセレゼスは砦に中へと戻っていった。
 その後に続くラーク。
 なんか、一気に皆いなくなったな。

「ティア?」
「えっと、あの」
「?」
 なんだ?
 何か言い淀んでるティアの顔が心なし赤い気が……。
「ティア、もう中に入ろうか?少し休んだ方がいいよ顔色が良くないしね」
 そう言ってティアの手を引き、砦の中へと戻っていく。

「………ロウのばか…」


「さっすが私のローちゃん♪紳士ね」
「うわ、甲斐性なし」
「あーあ、ティアの気持ちに全然気づいてない、相変わらず鈍いなぁロウは」


 何て、2階の窓から2人を静観している野次馬3人だった。




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大好きですよ!
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こんな所に大半女性だという大雑把な傾向が見えましたね(笑)

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