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2011年07月 のアーカイブ

2011年7月9日 12時05分36秒 (Sat)

二子玉川再開発説明会で住民の懸念続出=東京・世田谷

二子玉川再開発説明会で住民の懸念続出=東京・世田谷画像 二子玉川東第二地区市街地再開発組合が二子玉川東第二地区第一種市街地再開発事業の説明会を2011年5月12日に高島屋アレーナホールで開催した。この再開発事業はオフィスなどの高層ビル建設を中心とする計画であるが、住環境の悪化を憂える住民の声が多数寄せられた。
説明会は「世田谷区環境基本条例」(開発事業等に係る環境配慮制度)、「世田谷区風景づくり条例」、「東京都中高層建築物の建設に係る紛争の予防と調整に関する条例」に基づくもので、5月15日にも開催される。計画建物高さの2倍(敷地境界線より約274メートル)の地域の住民に案内されたが、成城や尾山台など区内各地から集まり、関心の高さを示した。
説明会は川邉義高・理事長の挨拶で始まった。川邉氏は東京の西の玄関にふさわしい安心・安全の街にすると挨拶した。続いて映像による説明である。そこでは二子玉川ライズが新たな都市のスカイラインを形成すると述べる。二子玉川は景勝地、行楽地として発展してきた。かつては桃の畑で桃源郷と呼ばれてきた。この歴史を尊重し、人工地盤上の豊かな自然を配置した。高層建物を多摩川側、低層建物を国分寺崖線側に配置し、崖線のスカイラインに配慮したとする。
この説明に対しては周辺住民からは異論の出るところである。実際、世田谷区長に対しうる二子玉川ライズへの公金支出差止訴訟の控訴審の「準備書面(1)」で住民側は以下のように主張する。
「これまで風致地区に指定され、建築制限等住民の権利を規制することによって自然環境や景観を保全してきた地域に、超高層建築を乱立させるものであって、到底『水と緑の豊かな自然環境と調和し』ているなどとは言い得ない。」
また、高層建物を多摩川側に配置したことは、再開発地域と多摩川の間にある玉川1丁目の二子玉川南地区の圧迫感や風害を大きくする結果になった。この風害については説明会でも住民側から多数の問題提起が出された。
映像説明や配布資料では第二地区再開発(2期事業)が二子玉川東地区第一種市街地再開発事業(1期事業)と一体であると述べている。これは裁判での二子玉川東地区第一種市街地再開発組合(理事長は同じ川邉氏)の姿勢とは対照的である。住民側は1期事業の差し止め訴訟控訴審で2期事業の見直しも呼びかけたが、再開発組合は1期と2期は当事者が異なると形式的に拒絶した(林田力「100人以上の市民が二子玉川ライズ行政訴訟提訴(中)」PJニュース2011年1月7日)。
//www.pjnews.net/news/794/20101230_3
続いて映像では電波障害、風害、日影被害という周辺住民の被害について触れる。
第一に電波障害である。配布資料の「テレビ電波障害予測範囲図」ではデジタル放送の電波障害発生予想地域が建設地の南西に広がっている。電波障害地域は多摩川を越え、神奈川県川崎市の二子2丁目、溝口4丁目にも及んでいる。
第二に風害である。風洞実験を行った結果、風環境評価尺度がランク1(住宅地の商店、野外レストラン)及びランク2(住宅街)に収まったとする。しかし、住民の質問によって調査の問題点が明らかになった。
第三に日影被害である。配布資料の「時刻別日影図」では日陰被害が説明会周知範囲を超えて広がっている。8時の日陰は建設地の北西に伸び、玉川3丁目の谷川緑道も日陰になる。配布資料では切れており、どこまで日陰が伸びているか不明である。16時の日陰は建設地の北東に伸び、多摩川美術大学上野毛キャンパスなど隣駅の上野毛駅最寄りの地域まで含まれる。この日陰も、どこまで伸びているかは配布資料では不明である。
最後に質疑応答である。住民からは再開発による住環境の悪化について切実な声が寄せられた。当初の都市計画では二子玉川駅前が公園予定地であった。これが実現したならば、ゆったりした住みよい街であった。ところが二子玉川再開発では公園は駅から離れた場所に移動させられた。
説明会では再開発の内容ばかりで、周辺住民の環境がどうなるかということが脇に追いやられている。現在も渋滞が起きているが、再開発の竣工後は悪化するのではないか。自動車の排気ガスによる大気汚染の懸念がある。空が見えなくなった。国分寺崖線が見えなくなった。富士山が見えなくなった。圧迫感も説明していないと指摘された。
広大な工事現場での長期に渡る工事にも不安が寄せられた。風が舞うと埃が飛んでくる。街灯が少なく、女性が一人で歩くには物騒である。そのため、地元商店に客が入ってこない。計画通りに工事が行えるのか。1期事業では騒音や振動が酷い業者がおり、家が揺れて何度も苦情を申し立てた経緯がある。
中でも風害が大きな問題として取り上げられた。既に1期事業で建設されたビルによる風害が起きている。再開発地域の南側は南風が吹くと、ビルで反射して北風が吹く。特に「二子玉川ライズ オフィス」の南側が酷い。自転車に乗れないくらい風が強い。現実に事故が起きている。女性がビル風にあおられて顔面から倒れ、肩の骨を骨折した。既に酷い状態であるが、2期事業のビルが建設されたら、生活できなくなると懸念する。
風害対策について事業者側は実態を調査中で、植栽を植えるなどの部分的な対策も取っていると回答した。但し、敷地内での対策には限界があり、道路側でも対策出来ないかと考えているとする。道路は行政の管轄であり、行政と相談していると述べた。
ここには周辺環境に対する事業者の無責任体質が現れている。高層ビルの風害が問題ならば事業者が自らの敷地内で解決することが筋である。行政に対策を求めることは筋違いである(林田力「二子玉川再開発訴訟証人尋問から見えるコンクリと人の対立(下)」PJニュース2010年4月19日)。
//www.pjnews.net/news/794/20100417_2/
住民からの質問によって、風害のアセス方法にも疑問が付される結果になった。風洞実験のための風のデータは東京都千代田区大手町の東京管区気象台のものを利用したとする。このために多摩川沿いで風の強い玉川地域の実情を反映していないのではないかと疑問視された。
また、風環境評価尺度は強風の出現頻度でレベル付けする尺度である。レベルが低ければ強風の頻度が少ないことになるが、強風が吹かないことを意味しない。そのため、住民の立場では低レベルだからといって安心できないことになる。
ビル風で骨折した女性に見舞いにも行かない再開発組合の姿勢も批判された。「見舞いに行くつもりがありますか」との質問には回答せず、他の人の質問を進めようとした。これに対し、「答えなさい」「迷惑な質問には答えないのですか」との声があがり、事業者側は「怪我の事実は把握しているが、原因が分かっていない。」と答えた。担当者の態度は落ち着いていたが、この男の内部に秘められた虚偽が垣間見えた。会場からは「原因を調査して評価することは当然」「犠牲者が何人出れば気が済むのか」との反応が出た。
風害の他には以下のやり取りがなされた。
外環道(東京外かく環状道路)が二子玉川に向かう動きがある。これへの対応を問う質問に対し、事業者側は「把握していない」と回答した。
東日本大震災を踏まえてマグニチュード9.0への対応を問う質問には、免震構造を採用し、耐震基準の1.25倍の強度があるとの回答であった。これに対しては会場から「足りない」「時代遅れ」「こんなレベルなんだよ」との声が出た。
1期事業ではビルのエレベータや階段などに税金が使われている。2期事業にも使われるのかとの質問には、約70億円の補助金が出ると回答した。再開発地域には区民会館や図書館などの公共施設がないとの指摘には、公開空地があると回答した。
最後に再開発事業の必要性を問う根本的な質問が出された。この再開発は商業施設やオフィスなど事業中心である。事業者は自然や空き地をメリットに挙げるが、元々が公園であり、公園のままならば緑地も空地も十分にあった。東日本大震災後に不要不急の再開発事業を行う必要があるのかと尋ねた。
これに対して再開発組合の事務局からは、広域生活拠点などと定めた上位計画に基づくものと回答した。その上で個人的見解として、郊外にサブ的なオフィスを提供することは都心一極集中の是正になると述べた。
この回答は質問者の問題意識に対応していないが、再開発の事業性にも不安を抱かせる。サブ的なオフィスと称することは、都心の利便性に劣ることを認めたようなものである。二子玉川はメインの事業拠点にはならないことになる。この点は二子玉川の街に高層オフィス棟は不適との反対住民の主張と符合する。
東日本大震災で東京に事業拠点を集中するリスクが認識されたことは確かであるが、都心と世田谷では災害対策として事業拠点を分散する需要に応えられない。都心に災害が起きれば二子玉川も無事では済まない。再開発に経済的基礎がないとの主張(林田力『二子玉川ライズ反対運動』マイブックル、2010年、160頁)を裏付ける回答であった。



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