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電子顕微鏡を扱う方向け(SEM, TEM, STEM, EDS)

 ここでは電子顕微鏡を用いて材料の分析をされている方に適した第一原理計算コード及びフリーソフトを紹介します。電子顕微鏡に関する関連情報も記載していきます。
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◆ TEMを行う方に適した参考書
 奥健夫「これならわかる電子顕微鏡」化学同人 を読み、今野豊彦「物質からの回折と結像」共立出版の"10.3.4 焦点あわせと非点補正"と"12.4.1 非点収差がない場合"を読んでフォーカスと像の関係を理解しておくとよい。
 続いて、進藤大輔ら「材料評価のための高分解能電子顕微鏡法」共立出版株式会社 の第1章から2章を読んで、これから測定する試料に近い例に目を通しておけば良い。もし、第1章から2章で分からない部分が出た場合には、田中信夫「電子線ナノイメージング」内田老鶴圃で類似の部分を見るとよい。

◆ EPMAおよび検出器・真空装置を行う方に適した参考書
 木ノ内嗣郎「新訂版 EPMA 電子プローブ・マイクロアナライザー」技術書院

◆ SEMを行う方に適したHP
簡単!SEM入門(山形大学工学部技術部):http://tech-staff3.yz.yamagata-u.ac.jp/kyozai/gakunai/semnyumon.htm
SEM のEDX 装置による定性・定量分析の技術向上と分析精度の検証: http://etech.engg.nagoya-u.ac.jp/gihou/v14/020.pdf

※ 例えば、オーバーフォーカスとアンダーフォーカスでのコントラスト伝達関数の違いや、コントラスト伝達関数に色収差による包絡関数を掛けた時に1に近い値でのd(横軸の値)程度の大きさの試料が最大の黒いコントラストで結像されることを理解しておけばよい。進藤大輔らの文献ではnm^-1になっているので、「1/横軸の数値」でnm単位にすればよい。例えば、2.5 nm^-1なら、1/2.5=0.4 nm程度の大きさの試料が最大の黒いコントラストで結像されることを示している。

※ 電子回折のパターンの解釈の仕方が、進藤大輔ら「材料評価のための高分解能電子顕微鏡法」共立出版株式会社 に記述されているので、この本は手元にあった方が良いと思う。
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 金属材料を扱う方々では、第一原理分子動力学法や第一原理バンド計算法などによる構造最適化の後に、EELS / ELNESやTEM像のシミュレーションを行われるかと思います。下記には参考となるHPのアドレスを記しておきます。これらを参考にして、色々な材料でのシミュレーションを行ってみて下さい。

a) 構造最適化
ABINIT : http://www.abinit.org/ 
PWscf : http://www.quantum-espresso.org/ 
CPMD : http://www.cpmd.org/ 
Phase : http://www.ciss.iis.u-tokyo.ac.jp/dl/ 
BigDFT : http://inac.cea.fr/L_Sim/BigDFT/ 
GPAW : https://wiki.fysik.dtu.dk/gpaw/

b) EELS / ELNESの計算
DV-X alpha法 SCAT : http://www.sci.hyogo-u.ac.jp/ykowada/ 
 http://www.kobelcokaken.co.jp/zigyou/kadaikaiketsu/it/pdf/k/22_e.pdf
  http://www.nims.go.jp/AEMG/research/eels-j.html 
PWscf : http://www.quantum-espresso.org/ 
WIEN2k : http://www.wien2k.at/ 
  http://msc.psu.edu/events/2007wien2kworkshop/Jorissen-ws07-eels.pdf
  http://interface.t.u-tokyo.ac.jp/home/teru/wien2k.html
  http://www.edge.iis.u-tokyo.ac.jp/j/index.php?wien2k-elnes-xanes
ELK : http://elk.sourceforge.net/
exciting : http://exciting-code.org/ 
  http://amadm.unileoben.ac.at/codes_exciting.html 
Yambo : http://www.yambo-code.org/ 
  (ABINIT or PWscfの結果が必要、Optical absorption)
BigDFT : http://inac.cea.fr/L_Sim/BigDFT/
   XANESの計算が可能。ただし、計算はZ+1近似でのものとなる。
GPAW : https://wiki.fysik.dtu.dk/gpaw/ 
APE : http://www.tddft.org/programs/APE/node/5
EXC : http://theory.polytechnique.fr/codes/exc/ (ABINITの結果が必要)
DP : http://dp-code.org/  (ABINITの結果が必要)
CASTEP : http://www.castep.org/

初学者が、上記のソフトを利用する場合には、下記のHPが参考になる
用語集 : http://www.geocities.co.jp/Technopolis/4765/INTRO/yogo.html 
解説 : http://www.nims.go.jp/cmsc/staff/kobayak/INFO/metal.html
上記のコードの実行ファイルは下記のHPから取得すると少し楽になる場合がある。
ETSF Software Suite : http://www.etsf.eu/resources/software/codes

c) TEM像のシミュレーションソフト
 QSTEM (Quantitative TEM/STEM simulations):
  http://www.christophtkoch.com/stem/index.html
  東北大学 金属材料研究所の学生様方も利用されているとの報告あり

d) HREM像, CBED パターン
 EDM (Electron Direct Methods) :
  http://www.numis.northwestern.edu/edm/ 

※ TEM像で仕込組成よりも析出が少なく見える場合、試料の厚みとそれに試料の厚みに対する最適なフォーカスがあっていないために析出が見える数が少なくなっていることがある。TEMのシミュレーションソフトなどで色々と調べてみるとよい。

e) 参考になる文献
初学者が、上記 c), d) のコードを利用する場合には、下記のHPが参考になる
基本用語集 : http://www.jeol.co.jp/words/semterms/index_search.html?word=R
透過電顕 用語集: http://www.jeol.co.jp/words/emterms/
走査電顕 用語集: http://www.jeol.co.jp/words/semterms/ 
走査電子顕微鏡 基本用語集: http://www.jeol.co.jp/words/semterms/contents_list.html?category=51
http://www.aichidenki.jp/report/29/29_31.pdf
オススメのHP: http://tech-staff.yz.yamagata-u.ac.jp/kyozai/gakunai/semnyumon.htm 
図解 簡単SEM入門 :http://www.mm.kyushu-u.ac.jp/lab_02/Documents/SEM_introduction.pdf
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■ 付録
オススメのHP: http://tech-staff.yz.yamagata-u.ac.jp/kyozai/gakunai/semnyumon.htm

□ SEMの原理
 試料への電子線照射により試料から二次電子や反射電子等が放出される。二次電子は検出器に印加された15 kVの正の電位に引かれ、また反射電子は、検出器表面に塗布された蛍光面に衝突して光に変換される。
 二次電子は傾斜角効果とエッジ効果と呼ばれる試料表面の形態に依存して、その放出が増減する減少があるため、得られる二次電子増においては試料表面の凹凸に依存するコントラストがつき立体感のある像になる。このコントラストは、試料の構成元素によっても変わる。ただし、反射電子の放出は原子番号が大きくなるにしたがい増大するが、二次電子の放出は必ずしも原子番号の順ではないため、二次電子像で明るい部位が暗い部位に比べて平均原子番号が一概に大きいとは言えない。試料表面の凹凸や組成によらない二次電子像のコントラストを形成する他の要因としては、試料表面の電位差に依存するものがある。例えば、生物試料などの非導電性試料を観察する時に、試料表面が電子線照射により帯電すること等が挙げられる。
 一般のSEMの二次電子検出器では、特に試料からの反射電子を除く手段を持たないため、検出器には二次電子だけではく反射電子も捕捉されている。反射電子は入射電子とほぼ同程度のエネルギーであり、試料から放出した方向へ直進するため、検出器に向かって放出された反射電子のみが検出器に捕捉される。このようにして得られた反射電子は二次電子像とは異なり、試料の凹凸に対応した情報影響が出る。
※ 試料がチャージアップしていると、その部分の像が白くなったり、画像が歪んだりする。

□ EDS(EDX)の原理
 SEMまたはTEMの励起源である電子線を試料表面に照射すると、種々の信号が発生する。その中で、主に特性X線をSi(Li)半導体検出器で検出し、そのエネルギーに比例した数の電子-正孔対を半導体中に作り、電気信号を発生させ、増幅、アナログ・デジタル変換後、マルチチャンエルアナライザを用いて識別することにより、X線スペクトルを得て、そのピークエネルギーから元素の同定を、そのピーク量から定量する方法をエネルギー分散法(EDS)またはエネルギー分散型X線分光法(EDX)と呼ぶ。
 エネルギー分散法は、特に凹凸の激しい試料を対象とするSEMにも、また、検出感度の必要なTEMにも相性がよく、X線エネルギーの広い範囲を同時に測定して定性・定量が可能である。波長分散法(WDS)を用いたEPMA(電子マイクロプローブ微小部分析装置)にも結合されている。
※ JEOLの[Energy table for EDS analysis]が便利。(2016年、本家で見つからないので困っている)上記の文献によると、 Castaing's forumla から検出深さZm(μm単位)は下記のようになる。
 Zm = 0.033*(E01.7 - EC1.7)*A/(ρ*Z)
ここでE0は加速電圧(kV)、ECは最小発光電圧(keV)、Aは原子の質量、ρは密度(kg/m3)、Zは原子番号である。
 例えば、Feであれば、加速電圧20kVで、表面から約1.3μmの深さまでの蛍光が検出される。密度が高くなる(重元素になる)ほど表面近傍の蛍光が検出されることになる。表面近傍を見たければ加速電圧を(15kVにするなど)小さくしたりする(フォーカスの位置は装置{INCAなどの検出器と}の配置から決まるので、例えばZ=10.0mmであれば、それに合うように電子線フォーカスと試料の高さを調節する)。

□ TEM
◇ 焦点あわせと非点補正
 ナイフエッジや散乱体の近くにスクリーンを置くと、いくつかのフレネルゾーンからの波の足し合わせにより干渉模様が生じ、またナイフエッジの裏側にまで光が回り込むことを学んだ。これがフレンル回折だが、電子顕微鏡の試料端部でも同様のことが起こる。
 レンズを通してスクリーン上に現れるフリンジコントラストの計算は、電子顕微鏡の分野では部分的に電子線が透過することなどもあって本書の守備範囲をはるかに超えている。詳細は参考文献に任せることとして、ここでは我々は正焦点(ジャストフォーカス)でフリンジがほとんど消え、アンダーフォーカス(試料の下部側にビームが収束している)で試料の外側(真空側)に、過焦点(オーバーフォーカス、試料の上部側にビームが収束している)で試料端の内側に、フリンジが観測されることを認め、先に進むこととしよう。(アンダーフォーカスとするにはフォーカスノブを左に回し、対物レンズの電流値を低める)
 アンダーフォーカスでは試料端部に白い縁が現れるのでコントラストが強調され、慣れないうちは焦点を合わせてとったつもりでの写真がアンダー側にずれていることが多い(最近のTEMは液晶モニタで見ている像をデータとして保存できるため、この問題を回避できる)。
 完全なレンズでは非点収差は軸外収差であるが、電子顕微鏡ではレンズの不完全さから生じる非点収差があるので、軸上でも非点収差が現れるから、写真を撮る前にこれを取り除かなくてはならない。これも最初の段階(低い倍率)ではフレネルフリンジを利用して行う。
 互いに直交する方向で焦点距離がアンダーとオーバー側にずれている状態から、非点補正コイルを用いて両者の焦点距離を等しくする。このとき補正コイルと同時に対物レンズの焦点距離を振りながら行って、最終的に”同心円状”にフリンジがアンダー側からオーバー側に推移するようにする(焦点が合うようになると同心円の明瞭な濃淡が消えて滑らかな濃淡の同心円が見える。その時、アモルファスカーボンの像は、大きく豆粒状でぼやけている状態から、非常に細かい像になる)。
 高倍率ではアモルファスカーボン薄膜や試料端部のアモルファス形状の領域で非点収差の除去を行う。
今野豊彦、『物質からの回折と結像』、共立出版
http://www.nims.go.jp/tem/download/pre_use_lecture_JPN20130520.pdf
http://www.tsd.titech.ac.jp/~cama/suzu/gTF/2014roadmap.pdf 
最新の装置では球面収差補正が可能なものがある: http://www.toray-research.co.jp/kinougenri/keitai/kei_007.html

□ 電子線により放出される信号の例
 試料に電子線を照射すると、入射電子の一部は試料中の原子と衝突し、原子中の電子を励起し、一部の電子は試料中で散乱され、試料外へ飛び出す。試料から放出される信号には、反射電子、二次電子、オージェ電子、特性X線、燐光などがある。また入射電子の一部は試料中で吸収され、もし試料が薄ければ他の一部は透過する。
http://www.toray-research.co.jp/kinougenri/keitai/kei_002.html
二次電子 入射線の一部が試料中で弾性、あるいは非弾性で散乱し、電子の入射した試料面へ飛び出した電子のこと。ほぼ、入射電子のエネルギーと同じエネルギーを持つ。
反射電子 入射線の一部が試料中の原子に衝突する際、原子中の電子にエネルギーを与え、与えたエネルギーがある値以上であるとき、原子中の電子が試料から飛び出してくる。このような電子を二次電子と呼ぶ。SEMの像観察には最も多く利用される。
特性X線 上で述べたように、遷移エネルギー放出されたのが特性X線である。
オージェ電子 入射電子が、例えばK殻の電子を励起したとき、その場所に空孔が生じ不安定になる。そこでK殻に生じた穴に、L1殻の電子が遷移する。この遷移エネルギーは、通常は特性X線として放出されるが、場合によっては、同じ原子内のL2, L3の電子のイオン化(励起)に使われる。このようにして放出される電子をオージェ電子と呼ぶ。
燐光 カソードルミネセンス。試料に入射線を照射すると試料から光が発する。この光を燐光と呼ぶ。
透過電子 試料が薄い場合に、入射線の一部が試料を透過する。この電子を透過電子と呼ぶ。

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◆ 基本事項
・高分解能電子顕微鏡像は、透過波と弾性散乱波の干渉像である。
・一般的な高分解能電子顕微鏡像を撮影しようと思えば、約10nm以下の非常に薄い試料が必要となってくる。
(試料の厚さが例えば数10nm以上になれば、多重散乱が起こり、散乱波の位相は運動学的理論での位相からずれてくる。その場合は厚さにも関係した格子像観察条件となり、複雑なことになる)
・一段のレンズ(磁界を利用した磁界レンズが使われる)で得られる倍率は高々数10倍であり、実際のTEM装置では磁界レンズをいくつも組み合わせて高い倍率を得ている。
・EDS(まはたEDX)の定量分析では、多くの場合±1%から±5%程度の誤差を伴うことを理解しておく必要がある。
・200kVの装置の格子分解能は0.1nmに達しており、点分解能は非晶質ゲルマニウム(Ge)薄膜の像のフーリエ変換図から決定される位相コントラスト伝達関数から求められ、0.19〜0.20nmが実現している。加速電圧を上げると点分解能が向上するが、機械的、電気的安定度の問題から、300〜400kVの装置の点分解能としては0.12〜0.13nmが現在の到達点である。
・NBD:ナノビーム回折(TEM像の局所的な領域での電子回折を得ることができる)

奥健夫「これならわかる電子顕微鏡」化学同人
金属材料研究所夏季講習会資料
宝野和博ら「金属ナノ組織解析法」アグネ技術センター
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◆ シミュレーション
 高分解能電子顕微鏡像を解釈する際、とくに原子レベルの構造を詳細に議論する際には、高分解能電子顕微鏡像が撮影条件に非常に敏感なため、コンピューターで計算した像(シミュレーション像)と実際の実験で得られた像の対応が必要不可欠になってくる。
 シミュレーション像とは、自分で構築した原子配列モデル(もしくは既知の原子配列モデル)に電子線が入射して、電子が散乱し電子顕微鏡の収差の影響などをうけながら像が形成されるまでを、コンピューター中で計算するものである。最近では、以下に示すような、電子顕微鏡像や電子回折パターンなどを計算するためのさまざまな優れたソフトウェアやフリーウェアが市販・配布されているので、それらを使用すればよい。
・MacTempas (Total Resolution)
・Cerius2 (アクセルリス)
・EMS (Center Interdisciplinaire de Microscopie Electronique)
・NCEM Image Processing Extension Package
 (The National Center for Electron Microscopy)
もちろん、基本的な像計算の原理は参考書などにより理解していることが望まれる。
 マルチスライス法と呼ばれる、計算機中で試料を電子線方向に0.5 nm程度以下まで薄くスライスし、各スライスでの電子波の伝搬を計算する方法がしばしば使用される。
 コンピューターで計算するには、空間群、格子定数、原子座標、原子占有率、温度因子、電子顕微鏡観察時のさまざまなパラメータ(フォーカス、試料の厚さ、観察方位、加速電圧、対物絞りのサイズ、球面収差係数、照射角、色収差)など、多くの情報が必要である。
 これらの情報は、既知の物質であればデータベースや論文の値を代入すればよいが、未知の結晶構造の場合は、自分で構造解析して構造モデルを構築し、空間群、パラメーター、格子定数などを求めて、実験結果と構造モデルが一致するように、ある程度の試行錯誤が必要となる。
 結晶構造として空間群を導けない場合、たとえば、一分子やクラスターなどのように孤立した構造を計算する場合には、空間群を1として、あとはすべて原子の座標を導入して計算する。シミュレーションのパラメーターとして、例えば焦点(フォーカス)と結晶の厚さをパラメーターとして変化させながら計算し、実際の観察像との比較を行う。
奥健夫「これならわかる電子顕微鏡」化学同人
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◆マルチスライス法
 スライスした第1層目の散乱振幅ψ1=q*p
ここで、qは透過関数、pは伝搬関数、*はコンボリューション(畳込み)の演算である。
 スライスした第2層目の散乱振幅ψ2=(q*ψ1)*p
 スライスした第N層目の散乱振幅ψN=(q*ψN-1)*p
スライスの厚みは、単位胞の長さに対応する0.2-0.5nm程度厚さがとられる。
厚い試料の高分解能電子顕微鏡については、薄膜試料に適用した実効的なレンズの伝搬関数を用いて結像を議論するのは不適当である。
 厚い結晶性の試料では、透過波の散乱振幅が、回折波の散乱振幅に比べ充分大きいという仮定は成立でず、回折波間の干渉も充分に考慮したより厳密な結像理論に基づいた解釈が必要となる。
 試料が薄い場合について、色収差や電子の収束角によって電子顕微鏡の分解能が制限を受ける(部分干渉性と呼ばれる)。そこでは、色収差や電子の集束角の高分解能電子顕微鏡への影響が、コントラスト伝達関数に対する包絡関数として記述できる。しかし、試料が厚く、透過波の振幅に対して散乱波の振幅の大きさが無視できない場合には、電子波の干渉度を示す相互透過係数について、より高い近似を用いた結像過程を考える必要がある。
 厚い領域での高分解能電子顕微鏡像の計算には、相互透過係数を用いなければならない。
進藤大輔ら「材料評価のための高分解能電子顕微鏡法」共立出版株式会社
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◆ 幾何光学的な分解能
 電子顕微鏡で用いる静磁場レンズには単一の光学レンズと同様に球面収差や色収差が存在する。色収差は電子銃から放出される電子のエネルギー分布やレンズ電流の変動により起こるが、球面収差は静磁場の軸対称レンズでは避けられないもので、その大小はレンズ設計に依存する。
 透過型電子顕微鏡像では第1段拡大像の分解能が最終像の分解能を左右するため、対物レンズの球面収差と色収差は特に重要である。その理由は、これより下の中間、投影レンズは対物レンズで作った像を単に拡大するだけだからである。
 球面収差により高角で散乱された波は像面方向で収束する。このために高角散乱波による像は像面ではδのボケを生じ、この量は球面収差係数をCsとするとほぼCs*α^3となる。
 ここでαは散乱角、βは像面側での散乱波の入射角で、β=α/M(倍率)である。像面でのこのボケを少なくするには高角散乱波を絞りによってカットすればよい。
 一方、絞りのサイズを10μm程度に小さくすると今度は絞り孔によるフラウンフォーファー回折現象に起因した収差(回折収差)が生じ分解能が低下する。この二つの収差のバランスで電子顕微鏡の分解能が決まってくる。
 幾何光学的に考えると、像の分解能は対物レンズの球面収差と回折収差の単純和で表される。
 球面収差と回折収差による像のボケをそれぞれδ3, δdとすると、これらはδ3=Cs*α^3, δd=0.61*(λ/α)となり、最適な対物レンズ開口角αoptが存在する。dδ/dα=d(δ3+δd)/dα=0より、その最適開口角は次式のようになる。
 αopt=0.68*(λ/Cs)^(1/4)
この角度に対応する分解能は以下のようになる。
 δ = 1.2 * Cs^(1/4) * λ^(3/4)

 原子面を結像する高分解能観察法では、中心の透過波と複数の回折波を取り入れることが必要である。
 これは、回折波は試料中の原子面間隔のの情報を持っているからである。ここで回折波ので得る方向を2Θ(=α)、原子面間隔をdとすると2dsinΘ=λのブラッグの式が成り立つ。200kVの装置では、λ=0.0025nmであり、d=0.2〜0.3nmなのでsinΘ〜Θの式が成立し、d〜λ/2Θ=λ/αとなる。
 この式は電子顕微鏡像と回折斑点の関係を考えるときに基本となる大事な式である。

宝野和博ら「金属ナノ組織解析法」アグネ技術センター
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◆ 分解能
 二つの原子が並んでいるときに、それらを別々の点として認識でる最小の距離を点分解能と呼ぶ。
 例えば、「ある電子顕微鏡の点分解能が0.20nm」ということは、0.2nm離れた距離にある原子は個別の点として認識できるが、0.19nmの距離に原子がある場合には、この電子顕微鏡では認識できないことを意味している。
 これ以外に線分解能と呼ばれるものがあり、これは高分解能電子顕微鏡像の格子縞の感覚を見分けられる距離をいう。線分解能は点分解能よりも小さいが、実際に電子顕微鏡の性能を議論するときには、点分解能で議論した方が条件が厳しいので確実である。点分解能d[nm](シェルツァー分解能)は次式(シェルツァーの式)で表される。
 d = 0.65 * (Cs/10^6)^(1/4) * λ^(3/4) * 1000
ここで、Csは球面収差係数[mm]、λは電子の波長[nm]である。
 実際の電子顕微鏡では、電子顕微鏡の電子線エネルギーのゆらぎによる色収差、試料に入射する電子の収束角の影響などのために、分解能は低下する。
 実際の電子顕微鏡の分解能は、アモルファス構造の薄膜などを撮影し、フーリエ変換することによって知ることができる。
 走査型電子顕微鏡の分解能は透過型電子顕微鏡と同様に加速電圧に依存しているが、電子ビームの直径にも依存しているので、細く輝度の高い電子ビームを試料に照射すると分解能が高くなる。

・色収差
 加速電圧不安定性やレンズ電流変動などにより、電子線のエネルギー(波長)が広がり、像がぼやける現象。厚い試料においても生じる。

奥健夫「これならわかる電子顕微鏡」化学同人

200 kVだと、d=0.23 nm (JEM-2100{HR構成, AHR version}の値)

加速電圧
kV
波長
λ[nm]
球面収差係数
Cs[mm]
点分解能
d[nm]
シェルツァー・フォーカス
ε [nm]
200 0.00251 1.0 0.230 60.1
400 0.001644 1.0 0.168 48.7
1250 0.0007357 1.65 0.104 41.8

 進藤大輔ら「材料評価のための高分解能電子顕微鏡法」共立出版株式会社では200kV電子顕微鏡(球面収差係数 Cs=0.80mm)と記述されている。200 kV = 0.00251 nm, Cs 0.80 mm, d = 0.218 nm, ε = 53.8 nm)。
 田中信夫「電子線ナノイメージング」内田老鶴圃では200kV電子顕微鏡(球面収差係数 Cs=1.0mm)と記述されている(200 kV = 0.00251 nm, Cs 1.00 mm, ε = 60.1 nm)。
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◆ 電子の波長
 電子顕微鏡の電子の波長は、ド・ブロイの関係式と相対論補正から計算される。
 200 kV: 0.00251 nm
 300 kV: 0.00197 nm
 400 kV: 0.00164 nm
 1250 kV: 0.000736 nm
奥健夫「これならわかる電子顕微鏡」化学同人
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◆ ディフォーカスと分解能
 一般に、構造解析に適した、結晶中のポテンシャルがきれいに投影される構造像が観察できるのは、結像に寄与する波のうち、最も強い波が、極大となる前までの厚さである。
 結晶によっては、試料が厚くなっても周期的な白黒コントラストが観察され、格子像としての使用が可能な場合もある。
 構造像に大きな影響を与えるもう一つの因子として、対物レンズのディフォーカス量がある。
 レンズの焦点を原子にきっちりあわせてしまうと、透過した電子と散乱された電子の波の位相がちょうどπだけずれて、お互いの波が完全に打ち消し合い、高分解能電子顕微鏡像のコントラストが0となる。焦点を少し下側(アンダーフォーカス側)にずらすと、電子波の位相に差がでてコントラストが現れてくる。装置の条件から、結晶中のポテンシャルがきれいに投影された構造像が理論的に計算できる(このコントラストによる像の現れ方は理論的に計算できる)。
 この、きれいな構造像が得られるときのディフォーカス量はシェルツァー・フォーカスとよばれ、次式で示される。
 ε = 1.2 * √(Cs * λ) * 1000 [nm]
ここで、Csは球面収差係数[mm]、λは電子の波長[nm]である。
 実際には、これに加えて結晶の厚さの効果(動力学的回折効果)などが加わり、少し上側に焦点がずれるので、個々の物質や観察方位による焦点のずれを考慮する必要がある。

  TlBa2Ca3Cu4O11の計算では、結晶の厚さを1.92nmとした場合、アンダーフォーカス側に35 nmの位置で結晶中のポテンシャルが綺麗に投影された構造像が得られており、そこからわずか20 nmずれただけでも大きく像が変化する。
 その他の超電導酸化物の像計算の結果から、対物レンズのディフォーカス量(冉)が35〜45 nmの範囲で、超電導酸化物の構造解析に適した結晶中のポテンシャルが綺麗に投影された構造像が得られることが分かっている。

 実際の高分解能電子顕微鏡像の撮影時には、ほかに次のことも要求される。
1)完全な非点収差補正:電子顕微鏡は磁場レンズを使用しているが、実際の観察中には磁場が完全に中心対称になっていないことが多いので、その対称性を補正することが必要である。とくに高分解能電子顕微鏡像にはこの影響が現れやすい。
 一方向にコントラストが流れているような像になる。コントラストの流れがなくなるようにつまみを調整する。
2)電子ビームの正確な結晶主軸上照射:結晶が傾いていると原子が斜めに重なる状態となり、必要とする正確な投影像が得られないので、電子回折パターンを見ながら、正確に結晶方位を調節していく必要がある。

・球面収差係数
 光軸から発散した電子線がレンズの周辺部を通り、再び像面上で完全に光軸上に来ないでずれ(収差)が生じ、像がぼやけ分解能が低下する。

奥健夫「これならわかる電子顕微鏡」化学同人
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◆ 色収差の問題による像のボケ
 δ = α * Δ, Δ = Cch * √((僞/E)^2 + (僞0/E)^2 + (2僮/I)^2)
ここでαは対物レンズの開口角、Δはディフォーカス幅といい、現代の200 kVの装置では5nm以下になっている。Cchは色収差係数、僞,僮は加速電圧とレンズ電流の揺らぎであり、僞0は電子銃から放出される電子のエネルギー幅である。
宝野和博ら「金属ナノ組織解析法」アグネ技術センター
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◆ 像のコントラスト
TEM(HREM): 黒い部分が原子のあるサイト
 最適な条件で撮影すれば、原子番号が大きいほど、黒さが濃く大きい点として映る

STEM: 白い部分が原子のあるサイト
 原子番号の2乗に比例して白いコントラストを示す。このコントラストは、動力学的効果が小さいため、試料が厚くなってもあまり変化しない。この像では、明るく白い点が一義的に原子位置とみなせるので、高分解能電子顕微鏡(HREM)における位相コントラスト像よりも容易に像解析ができる。
 実際には、高角側には別の種類の非弾性散乱である熱散漫散乱(TDS)が広く分布しており、内角が60mrad以上(200kVの場合)に開いた円環状検出器ではこの強度の方が弾性散乱波より大きく、ZとZ^2の中間の依存性をとるのが普通である。

・明視野像と暗視野像
 電子回折波に対物絞りを使って透過電子のみ(回折指数でいえば000)を選択して撮影した像が明視野像で、回折電子のみを選択して撮影した像が暗視野像。コントラストは吸収・回折コントラストと呼ばれる。暗視野像は析出物の観察などに用いられる。

奥健夫「これならわかる電子顕微鏡」化学同人
(上記の参考文献を見ると像と結晶構造が対応付けられており分かりやすい)
宝野和博ら「金属ナノ組織解析法」アグネ技術センター
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◆ 像強度
 電子回折パターンにおける回折スポットからさらに下の方へ電子波が進み、それらが干渉し、波の位相差によって位相コントラストを主とする高分解能電子顕微鏡像を形成する。
 ここでは簡単のため、観察する試料は十分薄く、動力学的回折効果D(試料が厚いために生じる効果)が十分小さいものとする。このとき、高分解能電子顕微鏡像の像強度は次式で与えられる。
 像強度 I 〜 1 - 2*σ*V
 σ = π/(λ*E) * 2/(1+√(1-(v/c)^2))
ここで、σは相互作用定数、Vは投影ポテンシャル、λは電子の波長、vは電子の速度、cは光速である。
 この近似を弱位相物体近似という。相互作用定数σは、電子顕微鏡の加速電圧E(V)によって決まる値であり、電子顕微鏡の加速電圧が高くなればなるほどσが小さくなり、像強度Iは大きくなる。
 試料中のポテンシャルは三次元的に分布しているが、電子顕微鏡像は試料をある特定方向から観察して得られる二次元の投影像となっている。これを投影ポテンシャルVで表す。
 高分解能電子顕微鏡像は、電子回折パターンをフーリエ変換したものであり、実空間でのポテンシャル分布Vが再び現れてくる。この式からもわかるように、ポテンシャル分布Vの値が大きい位置(例えば金属の位置)は暗いコントラスト(黒点)を、一方、Vの値が小さい位置(原子の存在しない位置)は明るいコントラスト(白点)を呈する。
 つまり、結晶内のポテンシャルの高い部分(すなわち、原子番号の大きい重原子の存在する位置)は、黒さが濃く大きいコントラストを示すわけである。高分解能電子顕微鏡像は、中心波と回折波の干渉で強度が0になるところ(位相差がπ)から、わざと焦点をずらしているため、回折波の振幅に加えて位置に関する情報も含まれている。
 したがって、原子の絶対位置に関する情報を得ることができ、このことが高分解能電子顕微鏡像の非常に大きな利点なのである。
奥健夫「これならわかる電子顕微鏡」化学同人
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◆ 試料の作成法
 試料の大きさは各電子顕微鏡メーカーの試料ホルダーの大きさに依存するが、透過型電子顕微鏡用試料の一般的なサイズは直径3 mmの薄い(0.1μm)円板である。

1) 粉砕法・粉末法
 固体試料をメノウ乳鉢などで粉砕する。あまり強引に粉砕しすぎると、薄い領域が破壊されるので、柔らかく粉砕する。
 微粉末試料(〜μm)であればそのままでも観察できる。
 得られた粉末・薄片を、その試料とは反応しない有機溶媒(例えば、エタノール、ブタノール、アセトンなど)中に分散させ、ピンセットなどを用いて撹拌し、ピンセットやスポイトを用いてその懸濁液を吸い上げ、ろ紙の上でカーボン補強した電子顕微鏡用マイクログリッド(市販されている)上に滴下する。
 液体はろ紙に吸い上げられるが、粉末試料はグリッド上に分散された状態で残るので、これを電子顕微鏡用試料とする。
 酸化物、セラミックスなど劈開性の高い物質や、微粉末などの観察に広く使用されている。
 非常に簡単な方法であり、試料表面上の汚染も少なく、数nmの非常に薄い領域を見つけられる場合もある。
 ただ、この作成方法は劈開性のある試料にしか使えず、金属など延性のある物質には適用が困難である。
 また、結晶粒界、欠陥、析出物などのさまざまな組織が粉砕によって失われることも多い。
 [進藤大輔ら「材料評価のための高分解能電子顕微鏡法」共立出版株式会社]における第3章の超伝導酸化物のTEM像の多くはこの粉砕法によって得られている。下記のTEM像は粉末法を用いて私が測定したもの(JEM-2100を使用)。参考文献の正しさが良くわかる。

上記はSiとGeをボールミリングして得られた試料を、粉末法を用いてTEM観察した結果(800k倍で撮影, JEM-2100)。スケールなどの詳細情報を記録するのを忘れてしまい横軸の正確な長さは分かりませんが、恐らく横幅は約30nmとなる。ダイヤモンド構造だとすると{100}面が見えていることになる。理論的には、角度や厚みが変わるとコントラストが変わるのでコントラストのムラはそれを反映している可能性がある。3年半もブランクがあり、研究室で一番能力の低い私でも、再度TEMを使い出した初回でこのような像を得ることができる。とはいえ、再測定させて頂くために本当に多くの方々にご協力と援助を頂いている。チャンスを頂けたことを含め感謝したい。
※アモルファスでは黒または白い点がランダムに配置された構造になりボヤけた像ではならない(ボヤけた像の場合は非点補正などの調整が悪い)。

2) イオンミリング法
 数kVの電圧で加速したイオンを試料表面に当てて、試料の原子を表面からはじきだす(スパッタリング)ことにより、薄膜試料を作成する方法である。
 半導体、セラミックス、多層薄膜材料などの電子顕微鏡用試料作成に広く使用されている。
 イオンミリングを行う前に、まず試料をダイヤモンドカッターやエメリーペーパー(紙やすり)により、0.1mm以下の薄い板にする。その後、超音波カッターなどで直径3mmの円板に打ち抜くか、銅などのリングで補強する。さらに試料に応じて、ディンプルグラインダーを使って薄膜の中央に約20μm以下のくぼみをつける。こうしてできた試料をイオンミリング装置にセットする。
 イオンミリングでは、通常はアルゴンがイオン源として使用されているが、試料のダメージを低減させるためにヨウ素や中性原子などが使用される場合もある。
 薄板の試料表面へ5〜30°の角度でイオンを入射させて試料中央付近を薄くしていき、穴が開いたらその周辺が非常に薄くなっているので、そのあたりを観察する。
 この方法は、電解研磨後の電子顕微鏡試料表面に形成されている不純物層の除去のための最終研磨として利用されている。
 イオンミリングでは、元素によりスパッタレート(はじきだされる速度)が異なるため、原子番号が大きく異なる元素を含む試料の場合は、均一な厚さの試料を作成することは難しい。また、イオンビームによる照射損傷によって、表面が数nm程度アモルファス化することも多い。
 これらの防止策として、時間の短縮、低加速電圧、小入射角度、液体窒素による冷却などの方法が使用されている。

3) 集束イオンビーム(FIB)法
 集束したイオンビーム(Gaなど)を用いて、試料の任意の局所領域を微細加工することにより薄膜試料を作成する方法である。
 イオンビームを試料に照射することにより、試料表面から二次電子が発生するので、これを用いて試料表面を観察する。試料作成を行いたい領域を選択後、細かく集束したイオンビームを照射し、スパッタエッチングにより微細加工する。
 この方法を使用すれば、任意の微細領域の試料や異種物質界面など、ほかの方法では均一な厚さの試料を作成できない試料にも適用できる。Gaイオンによる表面ダメージと試料内注入に注意する必要がある。
 通常、Gaイオンが用いられ、30 kV程度の加速電圧で、電流密度約10A/cm^2のイオンビームを数十nmの微小領域に絞り試料を削っていく。

◇ 試料作成法とその特徴

作成方法 試料 特徴 欠点
粉砕法・粉末法 粉末
セラミックス
など
作成が簡単
試料表面が清浄
薄い領域も健在
劈開する試料のみ
粉砕時に機械的に損傷する
広い組織の観察が難しい
イオンミリング法 半導体薄膜
セラミックス
金属など
広い視野で薄い試料
表面が比較的きれい
表面が少し損傷する
装置条件によって結果が左右される
電解研磨法 金属
合金など
比較的簡便で、
多くの金属材料が作成可能
試料表面に酸化膜などが形成される
化学研磨法 半導体など 作成が簡便 特定の試料のみ
集束イオンビーム法 半導体デバイスなど 種物質からなる界面の断面観察等に有効 イオンビームによる試料の損傷
ウルトラミクロトーム法 生物試料
有機物など
化学固定法、凍結法などにより容易に試料切断 切削時の試料の歪みと厚さ作成には技術が必要


・マイクログリッド
 銅などでできたメッシュ状のグリッドに10nm程度の薄いカーボン膜をはったもの。数10ミクロン程度の穴が多数あり、その部分にのっている試料を観察する。

・劈開(へきかい)
 ある特定の結晶面が割れやすく、原子レベルでの平らな表面が形成されること。原子の結合力が小さい面で劈開が生じやすい。


・ディンプルグラインダー
 1cm程度の研磨リングを回転させ、研磨剤を用いながら、電子顕微鏡試料の中心部に滑らかな薄いくぼみをつける装置。

奥健夫「これならわかる電子顕微鏡」化学同人
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◆ マイクログリッド
 国内ではシートメッシュとも言われているが、一般的にはグリッドと呼ばれ、200メッシュのグリッドなどと表現される。この場合は、1インチに200の数のラインがあることを表している。
 外径は国際規格でΦ3mmとされているが、特殊なサイズとしてΦ7mmがある。
 厚さは約4〜50μmで、開孔率を高くするほど厚さは薄くなる。単孔のグリッドの一部には、支持膜を貼りやすくするために70μmや100μmなどの厚めにしたものもある。
 低倍率の観察には視野を広くとるために孔が大きめのグリッドを使用し、高倍率になるに従って孔の小さいものが使用されている。一般的には、150や200メッシュが多く使用されているが、極低倍率では単孔、連続切片にはスリット状のグリットが使用されている。
 材質は、一般に銅製のグリッドを使用しているが、観察目的に応じて特殊な材質もある。免役染色をする場合は耐薬品性の点からニッケル製を使用することが多い。金、白金、チタン、モリブデン、ステンレスなどもある。分析用にはカーボンやカーボンコートしたナイロン製がある。ほかにベリリウムやアルミニウム製などもある。

 グリッドの製造は主として、フォトエッチング法と、エレクトロフォトフォーミング法の二通りの製造方法がある。どちらも写真製版技術を用いた工法で、フォトマスクを作製し転写した後に加工する。
 フォトエッチング法は薬品で溶かす化学研磨処理、エレクトロフォトフォーミング法はメッキ技術を応用したものである。それぞれの工程の違いによりメッシュの形状が異なってくる。
 フォトエッチング法で孔を開ける方法では、孔の角は丸みを帯びて形状は円に近くなり、その形状や大きさにばらつきが出やすい。厚さは厚めで開孔率は悪くなるが、支持膜を貼るのには都合が良い。エレクトロフォトフォーミング法では、形状はスクウェアに近づけられ、開孔率は高くなるが厚くすることは難しい。
 形状を六角形にすると開孔率はさらに高くなる。

朝倉健太郎ら「マクロ観察と新型顕微技法Q&A」アグネ承風社
  強度補強と導電性付与のためにカーボン蒸着されている。
堀内繁雄「高分解能電子顕微鏡」共立出版株式会社
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◆ 粉砕法
1)SEM、TEM共通
 観察したい微粒子をメノウ乳鉢でメタノールを用いてペースト状になるまでよく粉砕する。
 それを10cc程度のビーカーに移し替えさらにメタノールを加えて、メタノールが透き通らない程度の懸濁液を作り、ビーカーごと10分程度超音波洗浄機を用いて分散させる(この時メタノールの懸濁液の色の濃さで分散の程度を変えることが可能)。
2)SEMの場合
 綺麗なろ紙を10mm角程度に切り出し、それに1)の懸濁液をスポイトで吸い取り、静かに垂らす。よく乾燥させて試料ホルダーに貼り付け、ホルダー全体にカーボン蒸着をして観察する。
3)TEMの場合
 白金ループ等で採取した1)の懸濁液を、市販されているマイクログリッド膜貼り付けメッシュまたは自分で作成したコロジオン膜に載せて観察する。
朝倉健太郎ら「マクロ観察と新型顕微技法Q&A」アグネ承風社
※ 私はメタノールではなくエタノールを用いてTEM観察していた。
※ 懸濁液は、ガラス棒やピンセットの先端よりマイクログリッド上に滴下させても良い。
堀内繁雄「高分解能電子顕微鏡」共立出版株式会社
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◆ 電解研磨法
 局所領域をTEM観察したいという要望が増している。
 簡便な方法としてFIB法があるが、装置が高価であり、容易に購入できないケースもある。このような場合は外注で補うことも可能であるが、外注費はけっして安くはない。そこで古くから知られている電解研磨法にマクロ観察手法を適用して組織観察した事例について紹介する。
 試料を10mmx10mmに切り出し、厚さ100μmに調整する。
 材料に適した化学エッチング液を用いて腐食をする。次に光顕下で局所領域を探し、マジックインキを用いてマーキングする。エッチングによる局所領域の選択を必要としない場合は直接マーキングする。試料のエッジ部に絶縁塗料(マニキュア代用も可能)を塗る。
 マーキングした局所領域の付近まで腐食を進める。マーキングは落ちるので注意する。
 1回目の絶縁塗料をアセトン洗浄液中で十分に落とした後、再び化学エッチングする。
 局所領域を(光顕で)確認して、上記の作業を繰り返す。
 得られた薄膜をTEM試料ホルダーに入る大きさに押し切りカットしてTEM観察する。
朝倉健太郎ら「マクロ観察と新型顕微技法Q&A」アグネ承風社
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◆ FIB(集束イオンビーム)
・アパーチャ径とコンデンサレンズの電圧を変化させることでイオンビーム径を変化させることができる。
・プローブ電流
 粗加工:5nA以上
 中加工:5nA〜500pA
 仕上げ加工:100pA以下
・試料厚さをTEM像観察可能な100nm以下にする。
・元素によってエッチングされる深さは大きく異なる。
・イオンの照射角度を変えるとエッチング深さが変化する。照射角度65度付近(法線方向を0度としている)でエッチング深さが最大になる。これはArイオンと同じ傾向。
・加速電圧一定(30kV)でイオンビームの電流を変化させても薄膜両側に形成されるアモルファス層の厚さは変化しない。
・イオンビーム電流一定で加速電圧を減少させるとアモルファス層の厚さが減少する。
 Arイオン 2kV、±6度、30秒程度で、仕上げ加工を行うとアモルファス層の厚みがさらに減少する。
・厚さ1μm程度まで30kVで加工し、5kVで仕上げ加工を行う。
・試料を冷却して低温で加工すると斑点状のムラが減少する。
・薄膜試料の膜厚を薄くすることで拡散の影響は少なくなり、X線分析の分解能は向上する。

◇ピックアップ法(試料が磁性材料の場合は薄膜が観察中に磁場によって外れる危険性があるのでこの手法は用いない)
1)FIB内で薄膜加工を行う
2)薄膜0.5μm程度でステージを傾斜し底部を分離するためのボトムカット加工を行う
3)膜厚を0.1μm以下にする(仕上げ加工)
4)完全に分離するためにサイドカット加工を行う
※ ボトムカットおよびサイドカットともGaイオンビームを用いる
5)作製した薄膜が試料母体より分離したのを確認し、試料をFIBのチャンバー外へ取り出し、マニピュレーターの付いた光学顕微鏡のステージ上に置く。
6)マニピュレーターの油圧ハンドルを操作し、ガラスプローブの先端を薄膜に近づけ接触させる。
7)ガラスプローブの先端に薄膜が接触したことを確認したら、マニピュレーターをZ方向に持ち上げる。
8)薄膜が水平になるようにガラスプローブを回転させる。
9)プローブの直下に支持膜を置き薄膜が付いたガラスプローブを下げて行く。
10)薄膜が支持膜に接触したことを確認したらガラスプローブを退避させる。
※ピックアップされた薄膜はガラスプローブによりカーボン膜など電子ビームを十分に透過する支持膜上に密着するように載せられる。2μm径の孔が2μmピッチで開いたカーボン膜のものがある。

◇バルクピックアップ法(エポキシ樹脂で固定するため磁性材料も測定できる)
1)10μm角程度の試料ブロックを切り出す
2)試料ブロックをガラスプローブでピックアップし、TEM試料ホルダーにセットできるように加工されている試料マウント上に固定する(あらかじめエポキシ樹脂を塗布しておく)。
3)この試料マウントをFIBにセットし、Gaイオンビームによる薄膜加工を行う
JEOL Application Note
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◆ 絞り
・集束(コンデンサー、CL)絞り
 電子ビームの輝度を調整するために使用する。ビームの輝度が明るければ観察しやすいが、その分試料の電子線照射損傷が激しくなり分解能も低下するので、試料や目的により集束絞りを入れてビーム量を調整する。

・対物絞り
 電子回折パターン観察時に、目的とする回折スポットを選択するために使用する。
 絞りの大きさが小さいほど、TEM像のコントラストは強くなるが、分解能が低下する。

・制限視野絞り
 TEM像観察時に、試料の目的とする領域に電子ビームを制限するために使用する。
 制限された領域から電子回折パターンが得られる。

奥健夫「これならわかる電子顕微鏡」化学同人
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◆ 使用する絞り(JEM-2100)
 制限視野: SA絞り
 暗視野: 対物絞り
 STEM: 対物絞り
絞りは上から、CL(一番上)、対物(二番目)、SA絞り(三番目)
奥健夫「これならわかる電子顕微鏡」化学同人に配置が書かれている(JEM-2100も同様の配置)。
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◆ 電子源
 鏡体上部には電子銃(電子源)があり、ここから電子が飛び出してくる。
 電子銃には、多数の電子を放出し、電子の位相を揃えるために光源が小さいことが求められる。そのため最近は、高輝度の点源である電界放出型(フィールドエミッション)の電子銃を持つ電子顕微鏡が多くなっており、タングステン〔W(100)〕などが使用されている。ただし、電界放出型ではない通常の電子顕微鏡には、LaB6などが使用される。そして、電子銃の下の加速管によって電子が加速される。
奥健夫「これならわかる電子顕微鏡」化学同人
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◆ 原子の大きさ
 原子の大きさは電子雲が平均的に存在する0.2nm程度となっている。
奥健夫「これならわかる電子顕微鏡」化学同人
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◆ 電子顕微鏡によってわかること
・試料の概観:大きさ、形、個数、結晶方位など
・結晶構造:原子配列、空間群など
・微細構造の乱れ:欠陥、転位、表面、界面など
・電子状態:原子と原子の結合状態
・組成:試料中の原子の組成比
・磁束:磁束・磁力線の存在状態
奥健夫「これならわかる電子顕微鏡」化学同人
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◆ ゴニオメーター
 試料ホルダーのところに付属しているゴニオメーターは、試料を傾斜させるための装置であり、傾斜調節スイッチは足元にある。
 ホルダーによって傾斜可能な角度が異なるが、一般的には20〜30°の傾斜が可能である。

・平均ポテンシャル
 結晶のなかの原子配列の分布によりポテンシャルの分布も場所によって変化するわけであるが、その場所による変化を無視した結晶全体の平均的なポテンシャル。無機結晶の場合、数〜30V程度。

奥健夫「これならわかる電子顕微鏡」化学同人
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◆ 逆空間と実空間
〔試料から透過電子と散乱電子が干渉し、試料の下方で電子回折パターンができる。さらに下方に進むと像が形成される〕
 透過電子と散乱電子はそれぞれ進み、電子波の波長の整数倍の距離の差がある位置では波がお互いに強調しあい明るくなる。この明るくなった領域が電子回折スポットであり、逆空間と呼ばれる。
 このような、実空間にある試料から電子レンズを通過して逆空間に変化していく様子は、数学的にはフーリエ変換に対応している。
 透過電子と散乱電子が逆空間を通過して、さらに下方に移動していくと、電子の進む経路が異なるために進んだ距離に差がでて、ある位置で二つの波が干渉し、その位相差によって像を形成する。
 この像が電子顕微鏡像であり、このコントラストは位相コントラストと呼ばれ実空間に対応し、この逆空間から実空間への変換もフーリエ変換に対応している。
 この位相コントラストで注意しなければならない点は、レンズの焦点を原子にきっちりあわせてしまうと、透過電子と散乱電子の波の位相がちょうどπだけずれてしまい、お互いの波が完全に打ち消しあってコントラストがでてこないことである。
 焦点を少し下側にずらすと、電子波の位相に差がでてコントラストが現れてくるのである。
 以上のように、高分解能電子顕微鏡で撮影されたこの微妙な位相コントラストのなかに原子配列が見えてくるのである。
奥健夫「これならわかる電子顕微鏡」化学同人
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◆ 二次電子
 二次電子とは、試料中の電子が、電子顕微鏡からの電子により内殻準位から真空準位より高いエネルギーまで励起されて、放出されたものである。
 ただ単に表面から反射しただけの反射電子も多少は検出されるが、SEM画像に使用するのは二次電子がメインである。
 二次電子は、試料表面10nm以内の領域から放出されるため、試料の表面だけでなく、表面近傍の内部情報も含んでいる。そのため加速電圧を高くすると(たとえば10kV以上)、内部情報が強くですぎて、表面形状観察の像がぼやけてしまう問題がある。加速電圧を数kV以下にして観察を行うと微細構造がはっきり観察でき、また試料のチャージアップ(絶縁体などの試料が帯電して像が乱れる現象)なども抑えることができる。しかし加速電圧を低くすると分解能も落ちるので、試料に応じて加速電圧を調節することが必要である。
奥健夫「これならわかる電子顕微鏡」化学同人
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◆ EBSD
 SEMでは、電子ビームが結晶試料表面で回折現象を起こし、回折パターンとしてでてくる場合があり、これを電子チャンネリングパターンと呼ぶ。
 この回折現象を利用した表面結晶解析手法が電子後方散乱回折(EBSD)である。
 EBSD法では、結晶試料に照射された電子は試料内で散乱し、反射電子として試料から放出される。その際に電子回折が生じ、その回折パターンを検出器で検出し、得られた回折パターンから結晶方位を解析する。
 EBSDの回折は、試料表面から数10nm程度といわれているため、高精度のデータを得るには、試料表面をできるだけ滑らかな状態にすることが必要である。
 EBSD法を使えば、TEMのように薄膜試料を作成しなくても、バルク試料のまま結晶粒の方位関係などが調べられる。
奥健夫「これならわかる電子顕微鏡」化学同人
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◆ EELS
 原子番号が大きくなるほどピークが弱くなるので、軽元素を含む物質などがとくにEELS分析には有効である。
 ホウ素など特定の元素に対応するピークが得られた場合、そのピークのエネルギーを持つ電子のみを用いてフィルターをかけ(エネルギーフィルター)、その元素が存在する領域が明るく現れるTEM像を得ることができ、これを元素マッピングと呼んでいる。
 また、電子回折実験における定量解析では、非弾性散乱電子によるバックグラウンドのために解析が困難になるが、このエネルギーフィルターを用いることによって、非弾性散乱を除いた弾性散乱電子のみを用いて、バックグラウンドを減少させた実験を行うことができる。
奥健夫「これならわかる電子顕微鏡」化学同人
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◆ EELSの分解能
 200kV級の汎用の分析電子顕微鏡のエネルギー損失スペクトルの分解能は約1eV程度である。
宝野和博ら「金属ナノ組織解析法」アグネ技術センター
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◆ プラズモン励起スペクトルの評価
 エネルギー損失スペクトルの左端には、ゼロ・ロスと呼ばれるエネルギー損失ゼロの電子に対応するシャープなピークが現れている。そのそばには、プラズモン励起によってエネルギーを損失した電子のピークが現れている。さらに、高いエネルギー側には、(グラファイトの例では)炭素のK殻電子励起に伴うエネルギー損失ピークが観測される。
 内殻電子励起スペクトルのうち、エッジの立ち上がりから約50eVの領域は、非占有状態密度が強く反映された領域であり、特にエルネス(ELNES)とよばれている。
 これに対して、各エッジの立ち上がりより50eV以上の高エネルギー領域は、このエッジに対応する原子の周りの環境、つまり原子間距離などの情報が強く反映されるという特徴を持っており、イグゼルフス(EXELFS)と呼ばれ区別される。
このように、プラズモン励起と内殻電子励起のエネルギー損失過程は、スペクトル上に明瞭なピークを形成し、そのエネルギー値や強度分布を用いて、元素の同定や、組成・状態分析ができる。また、バンド間遷移はエネルギー損失スペクトルに明瞭なピークは示さないが、低エネルギー側のスペクトルに大きな影響を及ぼし、スペクトルの数値解析によって得られる情報である。
 この他、格子振動によるエネルギー損失(フォノン励起)過程はエネルギー損失量(<0.1eV)が小さく、汎用のEELSの分解能では検出できない。また、制動放射X線の放出による電子のエネルギー損失は、一般にエネルギー損失スペクトルのバックグラウンドを形成し、有用な分析情報は得られない。
 一般に、非弾性散乱電子の主要な成分は、プラズモン励起によりエネルギー損失した電子である。
このプラズモン励起スペクトルのピーク位置は、各物質固有の値(プラズマエネルギーと呼ばれる)を示す。したがって、このプラズマエネルギーを知ることにより、物質の同定が行える。
 また、試料の厚みが増大するとプラズモン励起によって生じる非弾性散乱電子の数は増大し、相補的にゼロ・ロス強度は減少する。
 一般的に、試料厚さtの試料でのゼロ・ロスの強度I0は、全電子線強度ITを用いて、
 I0 = IT * exp(-t/λP)
と書くことができる。λPは非弾性散乱平均自由行程と呼ばれる定数で、入射電子がプラズモン励起を起こす場合の平均自由行程がその主な成分となる。上式より、試料厚さtは
 t = λP * ln(IT/I0)
と書ける。ITとI0は、EELSより容易に評価することができるから、λPを決定することができれば、EELSから試料厚さが精度よく求められることになる。λPは収束電子回折法などを用いて評価することが可能であり、上記の非弾性散乱平均自由行程が一旦求められれば、試料厚みの決定法としては、結晶性の良否や方位、格子欠陥の存在の有無によって精度が左右されないEELSが極めて有効であると言える。
宝野和博ら「金属ナノ組織解析法」アグネ技術センター
※ フォノンは0.01 eVオーダーといわれる。
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◆ EDX
 EDXにおいてもEELS同様、特定の元素マッピングが可能である。
 分析場所によっては、電子ビームを照射している周囲の領域にある元素のピークがでることもあるので、注意を要する。
 EDXとEELSのエネルギー分解能は、それぞれ約150eV, 1eVと大きく異なる。そのため、EELSでは得られていた電子構造に関する情報は、EDXでは分解能が低くて得られない。
 一方、EDXはバックグラウンドが小さいので、重元素を含む物質の組成分析の定量解析に適している。
 実際に分析したい試料において予想される組成と目的に応じて、EELSとEDXを使い分ければよい。

・エネルギー分解能
 EDXやEELSなどの分光分析において、スペクトル判別可能な最小エネルギー。
 検出器によって分解能が決まるが、EELSでは入射電子線のエネルギー幅によってエネルギー分解能が大きく左右される。

・バックグラウンド
 目的とする信号以外のノイズ、EELSやEDX分析において定量測定などを行う際には、ローレンツ関数やガウス関数などでスペクトルを近似して、バックグラウンド除去を行う必要がある。

奥健夫「これならわかる電子顕微鏡」化学同人
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◆ デットタイム
 放射線のエネルギーがフィルムのような媒体に「焼き付け」られる検出方法以外の「単位時間あたりの放射線の量」を検出するほとんどの手法では、検出器が外部からの放射線に反応している最中とその直後のわずかな時間、次の放射線に対して不感となる時間がある。これをデットタイムと呼ぶ。
 たとえば比例計数管であれば放射線の突入により計数管内にアバランシュが発生している間は次の放射線を検出できないから、これがデットタイムの一因となる。
 半導体検出器においてもFETが信号を積分しているわけだが、これがある値に達するとリセットをかけなければならず、不感時間が生じる。
 デットタイムはこのように電気回路を含む検出装置全体が持つ放射線に対して検出不可能な時間だ。通常、この値はモニターに表示され、検出器に突入するX線の量の目安となる(これに対し、検出に有効な時間をライブタイム、検出器の状況に関係なく流れていく時間をリアルタイムと呼ぶ)。
金属材料研究所夏季講習会資料
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◆ サムピークとエスケープピーク
 検出器の計数率(単位時間あたりのシグナル検出量)は、X線強度とともにまず増加していくが、あるところで最大となり、それ以上のX線強度の増加は逆に計数率の低下を招く。検出器がX線パルスを信号に処理している時間の割合はデットタイムと呼ばれており、それもX線強度とともに増加する。
 最近の検出器はデットタイムが50〜60%付近に計数率のピークを持っており、それを超えるようであれば、電子線の電流値あるいは試料の場所を調整するなどして発生X線強度を抑え、デットタイムが30〜50%の範囲になるようにして測定を行う。
 単位時間あたりのX線の発生量が多い場合には、この他に、ほぼ同時に検出器に入った特性X線の分別ができずに、それらのX線のエネルギー和の位置にサムピークとよばれる見かけ上の強度ピークが現れる確率が高くなる。例えば、エネルギーがE1,E2の強いX線が検出器に入ったことにより、実際には存在しない2E1, 2E2,E1+E2の位置にサムピークがみられる場合がある。
 X線検出の動作原理も電子励起であり、生成された電子-正孔対の一部は検出器の中で再結合して蛍光X線へと変換されてしまう。この発生した蛍光X線が検出器の外へ抜け出してしまうと、そのエネルギーは検出器系から失われるために、見かけ上、その分だけ低いエネルギーのX線が検出器に届いたこととなって強度ピークがスペクトル中に現れる。このピークはエスケープピークと呼ばれている。Si(Li)検出器では、SiのKα線によるエスケープピークが、実際のX線より1.74keV低い値に見られる。
 このようなエスケープピークや前述のサムピークは実体のないX線ピークであり、X線スペクトルから試料に存在する元素を同定する際に注意深く識別する必要がある。
宝野和博ら「金属ナノ組織解析法」アグネ技術センター
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◆ 真空度
 電子顕微鏡内部は、電子ビーム照射のために10-5Pa程度の高真空になっているので、試料は真空中に入れても水分などのガスを放出しないように加工して電子顕微鏡内に設置する必要がある。
 最近の電子顕微鏡は、ガスがでて真空が悪くなると、自動的に電子ビームがストップするようになっている。
 生体の場合は水分を含んでいるため、凍結などの特殊な処理をしたり、極低温で観察したりする必要がある。
奥健夫「これならわかる電子顕微鏡」化学同人
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◆ 振動
 原子レベルの高分解能観察を行うには、電子顕微鏡の高圧中心軸の調整や非点収差補正を行わなければならない。これらの調整方法は電子顕微鏡のマニュアルに掲載されているが、微妙な調整なので慣れが必要である。
 最後に、高分解能電子顕微鏡像の焦点(ディフォーカス)を適度に調整して写真を撮影する。高分解能電子顕微鏡像の観察中に注意しておくべきことに、振動がある。電子顕微鏡外部からの振動に、近くの道路からの車や電車の振動や電磁波の影響が挙げられる。
 もう一つは電子顕微鏡室内における振動である。特に300kV以上の大型電子顕微鏡や超高圧電子顕微鏡などは、鏡体が大きく、人間の声程度の振動でも鏡体が共振してしまい、高分解能電子顕微鏡像が撮影できなくなる。
 撮影中にちょっとでも声をだしたりすれば、鏡体が振動して、原子が振動してしまうのがはっきり観察できるので注意を要する。また、エアコンやロータリーポンプなどの振動も高分解能電子顕微鏡像に悪影響を及ぼすので注意しなければならない。
奥健夫「これならわかる電子顕微鏡」化学同人
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◆ 液体窒素で真空度を上げる理由
 生物系や有機系の試料では、電子線損傷があるので通常の観察は困難であるが、試料を液体窒素(またはヘリウム)温度まで冷却して、試料の損傷を防止するという方法がある。
 専用の冷却ホルダーも市販されている。ただ、冷却ホルダーを使用する場合、通常の室温で使用するホルダーと比較して、分解能や振動の問題で、高分解能電子顕微鏡像は撮影しにくくなる。
 目的に応じてホルダーを選択しよう。
 もう一つの問題として、観察中の試料汚染がある。これは、電子顕微鏡の鏡体内の真空度が10-2〜10-3Paまで低下してくることに原因がある。
 このような真空度で電子ビームを試料に照射すると、真空中に残存する大気中分子が、照射部分付近にアモルファス状物質として、みるみる形成されていく。
 このようなアモルファス物質形成は、とくに高分解能電子顕微鏡観察のときに悪影響を及ぼす。
 対策としては、鏡体に付属している液体窒素トラップなどに液体窒素を補充することにより、電子顕微鏡内を高い真空度に保つことが挙げられる。
奥健夫「これならわかる電子顕微鏡」化学同人
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◆ 画像処理
 画像処理法の一つであるフーリエ変換と逆フーリエ変換によるフィルタリング処理は、画像中のノイズの除去に有効な方法であり、最近ではいくつかのソフトウェアが市販されれている。
 基本格子反射による回折スポットに加えて、リング状のほんやりとしたノイズが観察される場合、これが電顕用試料作成時に使用したアルゴンイオンミリングによる表面損傷でのアモルファス層に対応したりする。
 コンピューター上で、この分解能以内の基本格子反射のみを選択し、あとのノイズを削除する。アモルファス層の影響が消え、非常にクリアな像が得られる。
 フーリエ変換によるノイズ除去は、アモルファス層の影響を除去は、アモルファス層の影響を除去したいときなどに有効である。フーリエ変換によるフィルタリング処理を行うときは、高い強度の基本格子反射が必要なので、できるだけ広い視野(単位胞の数)が必要となる。
 もしそれが得られない場合は、並進操作による平均化処理を適用してみるとよいだろう。
奥健夫「これならわかる電子顕微鏡」化学同人
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◆ 画像処理2
 並進操作による平均化処理は、周期性を持つ結晶の高分解能電子顕微鏡像に対して適用できる。
 像のなかの単位胞の数が少ないと、フーリエ変換では十分な反射強度が得られないためにフーリエフィルタリングを適用することが難しくなる。そういう場合、単位胞をある一つの方向に単位胞の距離だけずらしながら写真焼き付けまたは画像重ねを行い、画像を平均化するのが並進操作による平均化処理である。
 空間群によっては並進操作だけでなく、回転操作を行って平均化処理を行える場合がある。
 6回対称構造であれば、6回軸を中心として60°ずつ画像を回転して重ねればよい。
 フィルムから印画紙に焼き付ける場合は、まず最適露光時間の5分の1だけ露光し、次に特定軸方向に単位胞の値だけずらしてまた露光する。この操作を5回繰り返し、5回焼き付けた部分のみ画像処理として使用する。コンピューターを使用する場合もまったく同様で、Adobe社のPhotoshopなどの画像ソフトを使用して、特定軸方向に単位胞の値だけずらしながら5枚重ねればよい。この方法により、ノイズや個々の原子位置のばらつきなどを平均化することができる。
奥健夫「これならわかる電子顕微鏡」化学同人
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◆ 面群
 空間群に基づく結晶学的画像処理を行うための市販のソフトとしては、SEMPERやCRISPなどがある。
 それぞれの回折スポットの位相情報をフーリエ変換パターン中の格子点から抽出する。
 一方、強度はスポット周囲のたとえば3x3ピクセルの合計として得る。
 すべての回折点の位相と強度から計算される逆フーリエ変換は格子平均した像を示すが、結晶の傾き、ビームの傾き、多重散乱などによるさまざまな歪みによって、構造が綺麗に投影されていない。これらの歪みを除去するために、像から抽出した強度と位相の対称関係に、空間群を適用して補正するのである。
 空間群は230種類存在するが、これらの構造を二次元的に投影した場合には17種類のみの面群となるので、実験から得られた位相とこれらの17種類の面群を対応させて、最もよく一致する対称性(最も低い平均位相エラー)を求めれば、
どの面群が適用できるかが直接的に決定できる。
 17種類の面群については、International Tables for Crystallograpy:Space-Group Symmetry, (kluwer Academic pub., 2002)などを、計算方法については, Nature, 311, 238 (1984)やSEMPER、CRISPなどのソフトウェアの説明書を参照してほしい。
 実際には、実験でえられた位相は0からπの中間になることが多いが、適切な面群を決定し、その面群を適用すれば、各反射の位相を0かπに補正することができる。さらに、反射強度については、面群に対応するように強度補正を行う。

・強度補正
 得られた反射強度は、結晶やビームの傾きなどにより、空間群を反映した分布から多少ずれてしまうことが多い。そのこで空間群を満たすように強度分布を補正した値を用いる。

奥健夫「これならわかる電子顕微鏡」化学同人
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◆ 酸素原子の位置
 原子番号の大きい金属原子は直接黒い丸として観察されるが、原子番号が小さい酸素原子は、金属原子に対して結晶内のポテンシャルが非常に低く、構造像中では非常に弱いコントラストしか示さない。そのため、金属原子と同じように直接的に原子位置を決定するのは、ある特定の条件を除いては非常に難しい。しかし、構造像および計算像と対応させれば、原子番号の小さい酸素原子の位置も決定できる。それは、次のような手順で行う。
 まず、得られた金属原子位置から結晶化学的考察(妥当な陽イオンー酸素原子間距離の推定)を行い、対称位置と原子座標を推定する。次に、その推定された酸素位置に基づいてコンピューターにより像シミュレーションを行い、観察された構造像と比較検討し、酸素原子位置を決定する。
 酸素と原子番号の近い化合物では、酸素原子の黒いコントラストを写すことも可能である。また超高圧高分分解能電子顕微鏡や球面収差補正した電子顕微鏡法などによっても、酸素原子が直接観察されている。
 コンピューターシミュレーションと観察像を対応させれば、原子がいくつ重なっているかを見積もることができるのである。
奥健夫「これならわかる電子顕微鏡」化学同人
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◆ 残差因子
 残差因子とは、普通の回折法によるものとは異なり、実空間での像強度の差を計算したもので、次の式で与えられる。
 RHREM=Σ|Iobs - Ical|/Ical
ここで、Iobsは実際に電子顕微鏡で観察された像の電子線強度(像のコントラストの強度)、Icalは計算によって求められた電子線強度(像のコントラストの強度)である。
 残差因子は小さければ小さいほどよく、モデルによる計算像と観察した高分解能電子顕微鏡像が完全に一致すればRHREM=0となる。
 実験データと計算像をRHREMを利用して定量的に比較したときに、RHREMが完全に0になれば、実験データと計算像が完全に一致したということになるわけであるが、現実にはそのようなことはほとんど起こらない。実験データから計算像を引くときに、ほぼ必ず、有限の値が生じる。それを二次元的に単位胞でマッピングしたものが差像である。
 この差像のなかで、実験値と計算値の差が大きい領域を見出せば、原子配列の乱れなどが検出できる。
奥健夫「これならわかる電子顕微鏡」化学同人
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◆ 電子回折
 電子回折は位相コントラスト伝達関数に影響されないので、薄い試料で撮影された電子回折から得られた振幅(強度)は、高分解能電子顕微鏡像から得られた強度と比べ、より高い分解能と質を持っている。

・変調構造
 基本となる単位格子に、大きな周期の変調が加わった構造。原子が変位する変位変調と占有率が変化する占有変調がある。

・禁制反射
 結晶構造因子が0になり、現れない反射。ダイヤモンドでは200, 222反射がでないはずであるが、多重回折により、消滅則では現れないはずの禁制反射が現れることがあるので注意する。

・ストリーク
 積層欠陥やマイクロ双晶などによって現れる線状の回折パターンで、欠陥面による回折反射の方向に回折スポットがのびる。

・オイラーの法則
 多面体の面、頂点、辺の数を、F, V, とすると、F + V = E+2がなりたつ。

・ゼオライト
 ゼオライトは電子ビームに対して非常に弱く、一つの視野で高分解能像を撮影できるチャンスはせいぜい数回程度である。観察中にダメージを受けアモルファスになってしまうので注意する。

奥健夫「これならわかる電子顕微鏡」化学同人
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◆ フレネル縞
 レンズに収差が存在したり、焦点を外すと、試料に相当する位置のまわりに、余分な振幅変調ができる。これが位相コントラストである。単原子の像や不透明体の端から真空側に現れるフレネル縞もこの例である。
田中信夫「電子線ナノイメージング」内田老鶴圃
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◆ 最適ディフォーカス(シェルツァーフォーカス)量の設定
 対物レンズの球面収差係数から、薄膜試料における最適ディフォーカス量(シェルツァーフォーカス)が決定される。
 実際の試料においては、試料厚さに伴い、最適ディフォーカス量が、このシェルツァーフォーカスからずれる傾向にあるが、その場合でも、この最適ディフォーカス量はシェルツァーフォーカスの近辺に存在する。したがって、試料端のフレネル縞から正焦点位置を知り、その後シェルツァーフォーカスにセットして、その周辺でフォーカスを変えて(5nmか10nmステップで)数枚写真を撮るのが良い。
 また、フィルムの中に試料端をいれて撮影すると、ディフォーカス量、非点収差、ドリフト、回折条件の不備など、像を乱す原因を知ることができる。高分解能電子顕微鏡像を見ながら最適ディフォーカス量を決定しようとすると、真の像(最適ディフォーカス量に対する像)を知っている場合以外は、多くの場合間違えた像を撮影することになるので注意を要する。種々のディフォーカス量で高分解能電子顕微鏡は撮影できるが、結晶構造を反映する真の像は最適ディフォーカス量でのみ撮影されることを銘記しておきたい。

 電子顕微鏡の軸調整 > 薄い試料、領域の探索 > おおまかな回折条件の設定 > 非点収差の補正 >試料のドリフトのチェック > 回折条件の最終調整 > 撮影倍率の設定 > 最適ディフォーカス量の設定 > 撮影

 結晶試料の高分解能電子顕微鏡像からは非点収差と他の因子を区別することは一般に難しい。
進藤大輔ら「材料評価のための高分解能電子顕微鏡法」共立出版株式会社
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◆ ディフォーカス量
 幾つかのディフォーカス量に対する試料端のフレネル縞および非晶質膜の模様を覚えておくことが大切である。
 たとえば、オーバーフォーカスでは暗いフレネル縞が、またアンダーフォーカスでは明るいフレネル縞が試料端に観察される。
 最適ディフォーカス量での明るいフレネル縞の様子は非晶質膜の厚さによって異なってくる。また、非晶質膜がない場合に、試料端に現れるフレネル縞が最適ディフォーカス量でどのように現れるかは、試料端を常に視野に入れて像を撮影しているとだんだんわかってくる。正焦点あるいはややオーバーフォーカスで撮影すると、最適フォーカスで観察される像と白黒のコントラストが反転した像が得られることに留意したい。特に、構造像は常に最適フォーカス条件で撮影を行う必要がある。

 逆格子原点の近くに存在する回折波と透過波を用いて結像すると、白黒のコントラストの反転が見られる。
 2次元の格子像からは、明るい点が原子位置あるいは原子の存在しない場所のどちらかに対応するかを決めることは難しい。しかし、既に分かっている構造(例えば積層欠陥など)が映っている場合には、そこから明るい点が原子に対応するかどうかを知ることができる。

進藤大輔ら「材料評価のための高分解能電子顕微鏡法」共立出版株式会社
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◆ 試料厚さ
 試料は一般に楔形をしており、試料端で薄く内部に行くほど厚くなる。したがって、試料端近傍での像変化から、試料厚さに対するコントラストの変化を知ることができる。
 また、回折条件の不備による像の歪は、試料が厚くなると強調されることから、像の厚さの変化を調べることによって、回折条件の適性さを判断することができる。
進藤大輔ら「材料評価のための高分解能電子顕微鏡法」共立出版株式会社
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◆ 回折条件の不備
 結晶軸に平行に電子線を入射して撮影したと思っている像でも、多くの場合、試料がわずかであるが傾いている。このような回折条件の不備は、薄い領域の像では気がつかないが、厚い試料でははっきりしてくる。最適条件で撮影した2次元の構造像では、原子位置を示す暗い点の位置から原子位置を0.01nm程度の精度で決定することができるが、最適な回折条件を満足していない像では暗い点が原子位置を正しく反映しなくなる。
 不完全な回折条件による像の歪みは厚い所で撮影された像の非対称性から容易に知ることができる。
 また、観察像のフーリエ変換パターンからも精度よく知ることができる。
進藤大輔ら「材料評価のための高分解能電子顕微鏡法」共立出版株式会社
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◆ 試料ドリフト
 機械的および熱的安定性の悪い電子顕微鏡、特にサイドエントリー型の試料ホルダーを用いて観察する場合、試料ドリフトが大きな問題となる。試料移動後のドリフトの大きさやドリフトが停止するまでの時間など、電子顕微鏡のくせをよく知り撮影することが大切となる。
進藤大輔ら「材料評価のための高分解能電子顕微鏡法」共立出版株式会社
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◆ 欠陥周辺の異常コントラスト
 高分解能電子顕微鏡像において、積層欠陥、粒界、転位および双晶の領域が明るく観察される。
 これは欠陥部から生じた散漫散乱波が、多重散乱の効果によって励起したことによるものである。
 このような異常コントラストは試料が薄くなると目立たなくなる。電子の多重散乱は、弱い反射を強め、強い反射を弱める効果をもたらし、本来は非常に弱いコントラストであっても試料が厚くなるとともに強調されることを知っておけば、像の解釈の間違いの多くは避けられる。
進藤大輔ら「材料評価のための高分解能電子顕微鏡法」共立出版株式会社
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◆ 像コントラストの反転
 非常に薄い試料で最適ディフォーカス量で撮影した構造像では、暗い所が高いポテンシャル領域(原子位置)、明るい所が低いポテンシャル領域(原子のない所)に対応する。しかし、正焦点近くあるいはオーバーフォーカスになると白黒の反転した像が観察される。
 このような混乱はフィルム上に試料端をいれて撮影すれば避けられる。白黒の反転は、2次元の格子像においては試料の厚さの変化に対して周期的に生ずる。このため、格子像では、コントラストと原子位置との対応付けをするときには注意が必要となる。
 このような場合、積層欠陥などの構造の知識と観察された点列の並びなどから、原子位置が暗い点あるいは明るい点に対応するかを判定することができる。
 観察像から欠陥の存在の有無やその種類などの情報を得ようとする場合には、像解釈にそれほど注意を払う必要はないが、原子位置やその配列に関する詳細な情報を得ようとする場合には、細心の注意を払う必要がある。結晶構造に関する知識や回折法など他の実験手段による情報も充分に考慮し、高分解能電子顕微鏡像から正しい構造情報を引き出すことが大切である。

◇ 代表的な物質の平均内部ポテンシャル[単位:V]

C 7.8±0.6
Al 13.0±0.4
  12.4±1
  11.9±0.7
Si 11.5
Cu 23.5±0.6
  20.1±1.0
Ge 15.6±0.8
Au 21.1±2


進藤大輔ら「材料評価のための高分解能電子顕微鏡法」共立出版株式会社
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■ 顕微鏡の分解能
 顕微鏡の分解能は、加速電圧および対物レンズ電流の変動からくる色収差、対物レンズの球面収差、さらに試料ホルダー周辺の機械的、熱的安定性などによって決まる。
 対物レンズの球面収差以外は、ユーザーが常にチェックし、観察時に充分把握しておく必要がある。
 異常がある場合には、管理者とメーカーに改善を要求しなければならない。

◆ 像質のチェック
 非晶質膜の像質を時々自分の目で確認することによって電子顕微鏡の性能をチェックすることができる。
 すなわち、非晶質膜の高分解能電子顕微鏡像がどのくらい細かい所まで見えるか、またそのコントラストがどのくらいシャープであるかによって、加速電圧およびレンズ電流の安定度(特に交流成分)を知ることができる。
 また非晶質膜のフーリエ変換パターンや光回折パターンがどのくらい高い波数領域まで映っているによって定量的に決めることもできる。

◆ フォーカスドリフトのチェック
 非晶質膜のコントラストあるいは試料端のフレネル縞を見ながら、フォーカスドリフト(時間とともにフォーカスがアンダー側、あるいはオーバー側に移動する現象)をチェックし、加速電圧およびレンズ電流の直流成分の安定性を調べる。
特に、高圧を印加後、またレンズ電流を流した後、どの位の時間で安定するかを知り(レンズ電流が安定するには長時間を要する)、高分解能観察のための最適条件を把握しておく。
 また、実験室の温度およびレンズの冷却水の温度の変動はフォーカスドリフトおよび試料ドリフトをもたらす。したがって、空調設備の急激な変動を抑えるとともに、空調設備からの風が直接鏡体に当たらないように注意しなければならない。

◆ 試料ドリフトのチェック
 試料ホルダーを挿入した後あるいは汚染防止用液体窒素を入れた後、どの位の時間が経過すれば試料ドリフトが停止するかを知っておくことは大切である。
 また、試料移動やゴニオメーターによる試料傾斜後は、ドリフトが停止するのに一定の時間を要することも充分配慮する必要がある。
 日頃より、高倍率で像を確認しながら、どの位の時間が経てばドリフトが止まるかをチェックしておくとよい。
 試料を大きく移動させ、直ぐに撮影した非晶質膜の光回折パターンは、リングの一部が消えたりする。これは、その方向への試料のドリフトによるものである。2,3分おけばドリフトの無いパターンになる。
進藤大輔ら「材料評価のための高分解能電子顕微鏡法」共立出版株式会社
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◆ 高分解能電子顕微鏡観察の練習
1)最適フォーカスの決定
 初心者が最初に身につけなければならないのが、いかに正焦点位置を合わせるかである。正焦点位置が決定できれば、
それから対物レンズのノッチ(つまみの刻み)を適当量(1ノッチに対応するフォーカス量の変化は各電子顕微鏡で決まっている)変化させることで最適フォーカスの近傍にもって行くことができる。そして、その周りで5nmあるいは10nmステップで数枚撮れば、その中に最適フォーカスで撮られた写真を見出すことができるはずである。
 正焦点位置は、試料端のフレネル縞と試料端に見られる非晶質膜のコントラストから決定する。
 正焦点ではフレネル縞あるいは非晶質のコントラストが最も弱くなることに注意して、コントラストが見えなくなった所あるいは像コントラストが最も細かくなった所を正焦点とみなせばよい。少なくとも10nmの変化で決定できるようにしたい。
2)非点収差の補正
 非点収差はどんな精度のよいレンズにもあるので、その補正をいかに精度よく行うかが撮影される高分解能電子顕微鏡像の質を大きく左右する。照射系の非点収差はビームの形状から容易に補正できるが、対物レンズの非点収差は像の歪みから補正しなければならない。非点収差があると、ディフォーカス量が方位によって異なることになる。たとえば、ある方向では、ディフォーカス量は10nmであるが、それに垂直方向では30nmであることを意味する。これに伴い、非晶質の像では10nmのディフォーカスによって短い空間周波数が強調されるが、それに垂直方向では長い空間周波数が強調される。その結果、一方向に流れたような像コントラストが現れてくる。
 この非点収差による像の歪みは、正焦点に近いほど敏感である。具体的な非点収差の補正の練習は、次のようにすればよい。
A. わずかに非点収差がある場合
イ)正焦点位置(できるだけ像コントラストのないフォーカス)にする(50万倍以上で行う)
ロ)スディグメーターの微調整つまみ(ファインのノッチ)を、x軸、y軸、別々に動かして、方向性を持ったコントラスト(像の流れ)がないようにする。あるいは、できるだけ非晶質のコントラストが見えないようにする。
ハ)、上記のイ)、ロ)を繰り返して行う
B. 大きな非点収差がある場合
イ)20から30万倍で非晶質膜の粒子が粒状にはっきり見えるようにスティグメーターの粗いノッチで合わせる。
ロ)上記のわずかな非点収差の補正に進む。
進藤大輔ら「材料評価のための高分解能電子顕微鏡法」共立出版株式会社
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◆ 電顕屋さんの影の苦労
「酸素原子や窒素原子を見てくれ」とか、場合によっては「水素を見てくれ」などという無茶な依頼が来たりする。
 まあ、たしかに酸素原子や窒素原子が簡単に見えているようなデータをだしているので仕方がないかもしれない。でも、そういうデータは1年に1回取れればラッキーというレベルのものなのである。
 その人の性格やこだわりにもよるが、焦点がわずかにずれていたり、結晶軸が少し傾いていたり、非点補正が完全ではないというような、完全に綺麗に撮れていない写真は、あまり人に見せたくないという電顕屋さんも多いのではないだろうか。
 皆さんにお見せしている写真は選りすぐったものであり、膨大なデータのほんの一部なのだ。
 また、電顕を実際に扱ったことがない方が、サンプルを見てほしいといって、一度に数十個も送ってきたりする。電顕屋さんにあまり無理な注文をしないように(もっとも、無理な注文のおかげで新しい世界が開けることもあるかもしれないが)。
奥健夫「これならわかる電子顕微鏡」化学同人
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◆ 撮影の心構え
 目的とするデータを得るための労力の違いによっても結果が異なってくる。
 たとえば、同一視野でのデータを撮影するときに、とりあえず2・3枚撮影したものと、微妙に調整を変えながら100枚撮って(同一視野で少しずつアンダーフォーカスとオーバーフォーカスした像も各2枚ずつ撮るなどで)最良の1枚を選び抜いたものでは、データの質がまったく異なってくることは明らかであろう。
 個人的には、最近はあまり多数撮影することはなくなってきたが、100枚ほど撮影するのは当たり前であり、1日で200枚も撮影することもある。
 そのうち、実際に使用できるデータは数枚である。逆に考えれば、数枚でもよいデータが撮れるのであれば、(装置は壊さないで)多少の無理はしかたがないと思うが、いかがであろうか。電子顕微鏡の値段に比べたら安いものである。
 得られた画像データは、そのままで多くの情報を含み、そのまま使用できるものもあるが、画像解析を行うことにより、ある特定の目的に応じた情報が抽出できる。
奥健夫「これならわかる電子顕微鏡」化学同人
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◆ どのくらい訓練が必要
 TEMの場合はとにかく慣れ親しむことである。多少の失敗は仕方がないと割り切って、とにかくいろいろといじってみることである。何を隠そう、筆者も学生時代に電顕を壊してしまったことがあり、先生にご迷惑をかけたことも度々あった。
 ただし、ちょっとしたミスが100万円単位の修理費につながってしまうこともあるので、あまりしょっちゅう壊していると使用させてもらえなくなるから注意しよう。
 それでは、どのくらい訓練すれば電顕が自由に扱えるようになるだろうか。
 これは電顕の種類や必要とするデータによっても異なると思うが、個人の能力にも依存するのではないだろう。ただ一つアドヴァイスするとすれば、とにかく集中的に電顕を使ってコツを飲み込んでしなうということである(アドヴァイスになっていない?)。
 よくあるのが、電顕の講習会で基本的な使い方を習って、あとは1ヵ月に1・2回使用するというパターンであるが、
これだといつまでたってもなかなかうまく扱えるようにならない。
 筆者の場合、基本的な操作は、1ヵ月ほど集中的に使用させていただいて覚えることができた。
 1ヵ月も電顕ばかりやっていれば、たいていの人は覚えることができると思う。ただ、その先の微妙な調整やテクニックの習得には時間がかかえる。
 少しは自信を持って思ったような写真を撮影できるようになったのは、電顕を始めてから10年ほどたって、2万枚くらい撮影してからだと思う。
 それでも、これまでに撮れた納得のいく写真は数えるほど、というのが正直なところである。
奥健夫「これならわかる電子顕微鏡」化学同人
※ 真空を破るなど、トラブルを起こしたらTEMは使わせてもらえなくなりますから、多少の失敗の意味を間違えないこと。ちょっとしたミスで壊れてしまうものだと思った方がよい。
 1ヵ月集中的に使用して訓練しなければいけないという理解が欠けている上司が多すぎる。それでTEMのトラブルが起きていてはなんといえばよいか。
 大学によっては選任のオペレーターが使用することで学生や教員が技術を磨きにくいこともあり、教育的に動けるように何とかならないかと思う。技官の数も足らない。国の偉い人たちにはそれが分かっていない。
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◆ TEMの構造
構成の概略
・電子銃|鏡筒(加速管・偏向系|照射レンズ系|試料ステージ|拡大・結像レンズ系)|観察室とカメラ室

より詳細な構成
・電子銃|加速管|第一集束レンズ(SPOT SIZE)|第二集束レンズ(OBJ FOCUS)|集束絞り|集束レンズ偏向(Bright tilte, Image WOBB)|集束ミニレンズ(α selector)|照射レンズ系|試料ステージ|対物絞り(後焦点面)|対物レンズ|対物レンズ非点補正(OBJ STIG)|制限視野絞り|中間レンズ|投影レンズ偏向(PLA)|投影レンズ|観察室とカメラ室
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■ TEM (JEM-2100)

◆ 開始〜昇圧
1. 真空の確認(3x10-5 Pa以下)
 (イオンポンプに付いているゲージを見る。150 L/Sなので青色の目盛りを見る)
2. 窒素バルブを開ける
3. ログノートに記入
4. 液体窒素を入れる
 1) ビューウインドウにカバーが付いているか確認(鉛ガラス面の保護のため)
 2) 前回使用時のベイク(bake)が終わっているかをPCで確認し、ヒーターを取り外す
 3) 0.5 L 程度液体窒素を入れて冷やし、落ち着いたら追加で 1L 程度入れる(漏斗を使用すること!)
 4) 液体窒素を入れてから 8 h 以上TEMを使用する場合は 8 h 経過前に液体窒素を補充する
5. HT昇圧
 1) High Voltage Control 上の HT で Down/Up の右にある HT を 80 kVにする
  (昨日120kV以上で使用していた場合は、120kVにする)
 2) HT の ON を押す
 3) Auto HT でTagert と Step, Time Step を設定
  ◆ 昇圧のデータ 1
  a. HT 80 kV に設定
  b. 80 kV 〜 120 kV, 1 kV / Step, 6 sec にしてStartを押す(約5 min)
  c. 120 kV 〜 160 kV, 0.5 kV / Step, 6 sec にしてStartを押す(約10 min)
  c. 5分待つ
  d. 160 kV 〜 180 kV, 0.1 kV / Step, 6 sec にしてStartを押す(約20 min)
  e. 180 kV 〜 200 kV, 0.1 kV / Step, 10 sec にしてStartを押す(約30 min)
  ◆ 昇圧のデータ2
  120 kV:  61 〜 62 μA
  140 kV:  71 〜 72 μA
  160 kV:  81 〜 82 μA
  180 kV:  91 〜 92 μA
  200 kV: 101 〜 102 μA
  ◆ 昇圧のデータ 3 (昨日120kV以上で使用していた場合)
  a. HT 120 kV に設定
  b. 120 kV 〜 160 kV, 1 kV / Step, 10 sec にしてStartを押す(約10 min)
  c. 5分待つ
  d. 160 kV 〜 200 kV, 0.1 kV / Step, 5 sec にしてStartを押す(約34 min)
 4) Start で昇圧が開始される
 5) 昇圧したら、Beam Current が範囲内にあるか確認
  ※もし、Beam Current が範囲を超えていたら 10 〜 20 kV 程度 HT を下げる(降圧は 1 kV/Step で 6 time/Step)。そして、Beam Current が安定するまで待つ。それでもダメな場合は管理者に相談する。
 6) 200 kV まで段階的に昇圧させる(上記の昇圧のデータを参照)
 ※ 前日に 200 kV まで上げて使用している場合は 120 kV からHTをON。それ以外はもっと低い80 kV からONする。
 ※ 3x10-5 Paを超えている場合は管理者に報告。ベークすることになる。

◆ Sample ホルダー挿入
1. Sample の取り付け(手袋、ピンセットを使用する。ブロアーでゴミを吹き飛ばす)
2. Filament を OFF
3. Stage Neutral を押し、Sample を原点へ戻す
4. ステージを Single Tilt Holder にする
5. 試料ホルダーを真っ直ぐ入れる.3回音がしてから、AirからPumpにする
6. 緑色のランプが点灯したら手を離し,5分待つ.
7. 真空に引き込まれないように手(親指で支える)で支えながら回転させて入れる
 (時計回り 30°→ 入れる(5mm程度の長さ) → 時計回り 60°→ 入れる)
 ※ 真空ゲージと Status の値を見ながら、慎重かつ適度なスピードで入れる。
8. 最後まで入れたら音がする。15分待つ。
9. ログノートに記入

上記の56は下記のようにできるが、安全のために上記の手法にする。

※ 5. Sampleを真っ直ぐ入れる.2回音がしてから、さらに安全のために3分待つ。AirからPumpにする([トン、ティン、シュー!]と全ての音が鳴って真空が引いている音がしたら手を放して良い。試料ホルダーを保持するのは、試料ホルダーが回転して真空が悪いままになるのを防ぐため).

※ 6. 緑色のランプが点灯するのを確認する。5分待つ.(AirからPumpにした後、合計約10分待つことになる)
※ 
AirからPumpにした後、VACのspecimenのピラニ真空計の電流値が254μA近辺から40μA近辺になると緑色のランプが点灯する。緑色が点灯していないときは管理者に相談する。具体的な手順としては、イオンゲージの真空を確認し、真空度が悪くなっていないのを確認する > 落ち着くために1-2分待つ > PumpからAirにする > 1-2分待つ > 上記の5の手順を行う。

◆ 照準系軸合わせ
1. Filament を ON
2. ログノートに記入
3. STD Focus を押す
 ※ 光が見えない時は Low Mag にして Sample の位置へ移動 → Mag2 にする
 ※ それでも見えない場合は、メッシュがビームを邪魔している可能性があるのでトラックボールを動かして試料位置を変える。そして「MAG/CAM L」を回して倍率をさらに低くする。
 ※ 上記でも上手くいかない場合は、CL絞りの値をメモし、他のコンディションもメモして、担当教員と管理者に報告する。
 ※ STD Focus を押すとフォーカス電圧が基準に戻る。電圧値は、Status > Lens voltageで確認できる。ちなみにStatusの隣にあるVACを押すと排気とバルブの図が示されるValve Statusが表示される。
4. Image WOBB X と Y を押す
 (右操作盤の上段、左から3と4番目のボタン)
5. △と▽でZ軸の高さを調整して、像の変化を小さくする
 (右操作盤の上段、左から1と2番目のボタン)
6. Image WOBB X と Y を消す
7. BRIGHTNESS を回しても像が変化しなくなっていることを確認する
 (時計回り{右側に回して}でビームが拡大する方向で用いる)
 (左操作盤中央の下の方にあるつまみ)
※ ビームが見えない場合は、メッシュがビームを邪魔している可能性があるのでトラックボールを動かして試料位置を変える.CL絞りの値をメモし、他のコンディションもメモして、担当教員と管理者に報告する.
※ BRIGHTNESSなどのつまみのすぐ横にあるCRSを押すと16倍のピッチで変化するようになる.
※LOW MAGは対物ミニレンズを使用し、8k以上の倍率でMAG1とMAG2は対物レンズを用いる。そのため、LOW MAGと”MAG1とMAG2”とではビームの収束状況が変わるのが実感できる。
※Image WOBB Xは集束レンズ偏向コイルのX電流に搖動電流が重畳され、電子ビームの傾斜角度が周期的に変動する。TEM像の焦点が合っていれば像の位置は一定になる。ずれていれば像がX方向に振動する。Yも同様でY方向に振動する。

◆ CL(集束レンズ)絞りのセンタリング
1. BRIGHTNESS でビーム径を最小にする
 (ビーム径を最小にするときは試料から離れるようにする。収束したビームを試料に当たると微小放電が起こることがあり、トラブル原因となる)
2. SHIFT X と Y を用いてビームを小蛍光板の中心に合わせる
 (左操作盤の中央右端のSHIFTがX, 右操作盤の中央左端にあるSHIFTがY)
3. BRIGHTNESS でビーム径を広げ、中心から同心円状にビームが広がるように、CL(集束レンズ)絞りのつまみ(一番上にある)を回して調整する(蛍光版の円とほぼ同じ大きさのビームにしておくと調整しやすい
※ 一番上はCL(コンデンサレンズ=収束レンズ)、(まっすぐ下に降りて)二番目は対物、対物のさらに下の右側にあるのが制限視野
※ CLは手前のつまみを左に限界まで回した後に右2回半、側面にあるつまみを左に限界まで回した後に右1回転と少しでビームが中心に来る。装置により詳細は異なるので、ビームの中心が得られる条件を明らかにしておくこと!

◆ ビームのセンタリング
1. Mag2 を押し、40 k 倍にする。
2. BRIGHTNESS でビーム径を小さくする
(ビーム径を最小にするときは試料から離れるようにする。収束したビームを試料に当たると微小放電が起こることがあり、トラブル原因となる)
3. α SELECTOR と SPOT SIZE を回し、Spot1 - α3にする
 (左操作盤の下段の左から1と2番目のつまみ)
4. GUN を押す(Maintenance → Alignment → GUN)
5. SHIFT X と Y で中心にし、DEF/STIG で輝度を最大にする
 (DEF/STIG は1回だけでよい)
 (DEF/STIGは左操作盤の下段右端、右操作盤の下段左端にある)
6. Spot5 - α3 にし、CLAを押す
 (Maintenance → Alignment → CLA)
7. SHIFT X と Y で中心に合わせる
8. ビームが中心から逃げなくなるまで 上記の3 〜 7の動作を繰り返す
※ビームが楕円の場合は、COND STIGを押して、DEF/STIG x,yで真円にする。そして、ビームのセンタリングの1.から始める。
※SHIFT Xは集束レンズ偏向コイルの電流を変え、電子線をX方向に移動させる。Gunのときは、電子銃第1偏向コイルのX電流を変える。Yも同様、Y方向に移動。
※Maintenance → Alignment →Gun:SHIFTでGun shift, DEF/STIGでGun titleが割り当てられる。
(ちなみに、Maintenance → Alignment →CLではSHIFTでBeam shift, DEF/STIGでBeam titleが割り当てられる)
※CLA:SHIFTで集束レンズ第1偏向コイル調節機能, DEF/STIGで集束レンズ第2偏向コイル調節機能が割り当てられる。
※ちなみに、COND STIGは集束レンズ非点補正コイルの電流が可変でき、電子ビームの形状を補正するときに使用する。

◆ 電圧中心の調整
1. 120 kV 程度で走査し、Sample やカーボンフィルムの接点を中心に持ってくる
2. HT WOBB と BRIGHT TILT を押す
 (HT WOBBは右操作盤の上段中央{左から5つ目、F1の左})
 (BRIGHT TILTは左操作盤の中段右端のボタン)
3. DEF/STIG で同心円状に像が変化するように調整
※ 電圧軸があっているのがBRIGHT TILTでの中心位置。電圧中心を合わせて、試料に対して電子線がまっすぐ入るようにしている。
※上記でどうしても上手くいかない場合は、HT WOBB と BRIGHT TILT を押して、Shift x,yで像が同心円状に広がるようにし、DEF/STIGでビームが円になるようにする(蛍光板の円を参考にするとよい)。
※HT WOBBは周期的な搖動電圧が電子銃の加速電圧に重畳され、電子線のエネルギーに疑似的な変動が発生し、結像系レンズの光軸の電圧中心軸合わせに用いられる。
※BRIGHT TILT は集束レンズ偏向コイルの電流が可変でき、通常の明視野像を観察する際の電子線の光軸合わせに使用される。

◆ 非点補正(OL非点補正)
1. カーボン部分を探す
2. 一番右のモニタiTEM2067 (またはiTEMを起動
 (TEMで使っていたのとは別のもう一つのモニタ)
3. イメージ → 入力チャンネルの切り替えで Search を選択
4. カーボン部分に Focus を合わせる
5. 小蛍光板にビームをのせたままで、Cur Dens: 20 pA/cm2 程度になる様に BRIGHTNESS を変える( Exp Time が 2 sec 以上になる)
6. ビューウィンドウにカバーをし、F1 を押して蛍光板から CCD にする
7. 中央にあるビデオカメラのアイコンを押して画面を表示する
8. OBJSTIG を押し、DEF/STIG で FFT像が真円になるようにする
 (FINE を回して像を変化させると、変化が分かりやすい。円が同じ程度で消えていくようになるとよい)
9. 非晶質補正は 300 k → 600 k → 800 k 倍と進めていくとやりやすい
※ ビームが傾いているときは、Bright titleを押してshift x,yで中心にすると上手くいくことがある。shift x,yでも同様のことができるのでBright titleを押すかどうかはどちらでもよい。
※ CCDでの画面で、FFTのパターンが見えず、砂嵐のような画面の場合(豆粒のようなアモルファスカーボンの像が見えない)は、その部分はアモルファスカーボンが破けた真空の部分の可能性がある。他の場所に移動して、アモルファスカーボンがある場所で非点補正を行う。

◆ 画像取り込み
1. 撮りたい場所、倍率にする
2. BRIGHTNESS を回し、20 pA/cm2 程度になるように調整
3. ビューウィンドウにカバーをし、F1 を押して CCD にする
4. 撮りたい場所に移動、FINE で Focus を合わせる
5. 中央にあるビデオカメラのアイコンを押して画像を取得する
6. 露光時間を500 msまたは1000 ms にする
7. フィルム(カメラマークの横がスナップショット)のアイコンを押して画像を取得する.

8. ビットマップと tiff ファイルで保存する
9. ビデオの停止を確認する
10. F1 を押し、CCDを解除。カバーを外して1に戻る。
※左回しがアンダーフォーカスになる。
※iTEMでXXが白くなるとbmp形式などで顕微鏡側の情報が残らない。薄い黄色の時は情報が残る。

◆ 終了手順
1. F1 で CCD から 蛍光版にする
2. 対物レンズとアパチャーをはずす(一番大きい●の位置にする)
3. Mag2 を押し、倍率を 40 k にする
4. Filament を OFF にする
5. Stage Neutral を押し、Sample を中心に戻す
6. 真空ゲージと Status の値に注意しつつゆっくりサンプルホルダーを抜く
 (引く → 反時計 60 °→ 引く(5mm程度の長さ) → 反時計 30 °ここでストップ)
 (引きながら回さないこと! 引く、その位置を保持、回すはそれぞれ別々に行うこと!)

7. 2回音がした後、さらに安全のために10秒待つ。そして、PUMP→Airにする(「カン!」と音が鳴る)

 (サンプルを掌で握り、親指を曲げて本体に当てて、親指をゆっくりと伸ばして押し出しながらサンプルホルダーを引き抜く)
 ※ 最初に試料ホルダーを引くときに「プシュ」(1つ目)、反時計方向に回転60度、引き(5ミリくらい)、反時計方向に回転30度、「プッ、プシュ―、トン!」(2つ目)となる。

8. 30 秒待つ
9. サンプルホルダーを取り出す(再度測定する場合はサンプルホルダー挿入手順へ)
10. HV降圧 (200 kV → 160 kV, 1 kV / Step, 6 times/step)
 160 kV になったら、HT OFF を押す。80 kV にする。
11. 液体窒素注入口にヒーターをセットする
12. Maintenance → ACD & Bake → ACD Heater を ON (完了すると自動で OFF になる)
13. 窒素のバルブを閉める
※ 本体のPCはそのままにしておく.外に出ているEDXCCDPCはシャットダウンする。

◆ 電子回折
1. Mag モード(Spot1 - α3)での軸合わせを完了させる
2. Sample へ焦点を合わせる
 (SHIFT と焦点絞りで合わせる)
3. BRIGHTNESS でビームを広くする(ビーと音が鳴るまで右に回す)
4. 制限視野絞りで範囲を限定し、位置合わせをする
5. BRIGHTNESS で PAT にする
6. SA DIFF を押す
7. MAG/CAM L で 20 cm へ(CCDの面積が1cmX1cm程度のため)。
8. PLA を押し、DEF X, Y でビームを中心に持ってくる
9. DIFF Focus で透過スポットを最小にする
10. 中心のスポットを針で隠す
11. BRIGHTNESS を最小にする
12. F1 を押し、蛍光板から CCD へ
13. カメラ3を押し、スナップショット3 を押し、直ぐに蛍光板に戻す
14. Mag を押し、TEMに戻る
※ photoでマルチエクスポージョンを選ぶと重ね焼きができる。
※ PLA:投影レンズ偏向コイルの電流が可変でき、回折スポットや透過像を移動するときに使用する。

◆ 暗視野像
1. Mag モード(Spot1 - α3)での軸合わせを完了させる
2. MAG2
3. SA絞りを外しているか確認する。
4. SA DIFFを押す。
5. DIFF:80cmにする。
6. PLAを押して、DEF/SIGでビームを中心に。
7. Maintanace>Alinment>IL STIG (DEF/SIG 補正ができる)で楕円を真円にする。
8. DIFF Focusで回折を小さくする。BRIGHTNESSでスポットを小さくする。
9. Dark tilt(Bright tiltの左側のボタン)を押して、DEF/SIGで欲しい回折を中心にする。
※Dark tiltは電圧軸を調整することでビームを傾斜させて、スポットの位置を変えている。
※Dark tiltのときは高い倍率はできない。(十万から数万倍)
10. 対物絞りで範囲を狭める。
11. Dark tiltとBright tiltのボタンを押して両者を切り替えてもビームが絞りで制限された中にあるようにする。
12. MAG2にする(SA DIFFのボタンの光が消えていることを確認する)
13. SHIFT x,yでビームを中心にする。
14. Dark tiltを押すと暗視野像
15. Bright tiltを押すと明視野像
16. 20pA/cm^2にする(CCDの面積が1cmX1cm程度のため)。
17. F1で蛍光板を上げてCCDにする。
18. Dark tiltも中心に戻す。
19. 対物絞りを抜く。
20. CLも1番(一番大きいものに)か2番に元に戻す
21. ビームを中心に持ってくる。
22. CL絞りの位置もビームが中心になるようにする
※暗視野法で所望の回折スポットのみによる像を得たいときは
@ DIFFモードにし、対物レンズ絞りもしくはハイコントラスト絞りを入れ、DIFF FOCUSつまみで絞りの影が鮮明になるようにする。
A BRIGHTNESSつまみで回折スポットが最も小さくなるようにする。
これらの操作により電子線は平行ビームに近くなるので小さな対物レンズ絞りを用いることができるので像は鮮明になる。

◆ STEM
1. Mag モード(Spot1 - α3)での軸合わせを完了させる
2. BRIGHTNESSでビームを最小にする。
3. CL絞り(一番上)で2番を入れる。
4. BRIGHTNESSゆっくり回してビームを広げた状態でCL絞りの微動つまみを動かしてビームを中心にする。
 (ビームを大きくしたときに同心円状に広がるようにする)
5. BRIGHTNESSでビームを小さくする。
6. STEM用のソフトを起動
7. ファイルの隣のダイアログのASIDコントロールを開き、ASIDへ。
8. Image control > 3か4にしてスポットを押す。Scanが止まる。
9. ASID control > Alignment
10. STD Focusを押す。
11. BRIGHTNESSでビームを広げる。
12. スポットサイズ 5は高分解能。ビームが一番絞れている条件。
(スポットサイズ1にすればビームの絞りが緩くなる)
13. Focusを回すとカウスティックが見える。
14. Bright tiltで中心に合わせる。
15. STD FOCUSを押す。
16. BRIGHTNESSでビームを小さくする。
17. Shiftで中心に持っていく。
18. MAGを押す。
19. CL絞りの微動つまみでビームを蛍光板の中心にする。
20. 対物絞りを3番に。
21. ビームを中心に。
22. STEM用の検出器を時計回りにして入れる(右側にあるのが明視野用、左側にあるのが暗視野用)。
23. 蛍光版にカーバーをする。
24. Image control > Scan
25. ASID control > image select上から2番目のSTEI-BFを選択(STEI-BFは明視野、STEI-DFは暗視野)。
26. 暗ければ、ASID control > BRIGHTNESSの▲を押す。
27. 最初は40k倍で見てみる(対物レンズの絞りが入っている枠が見える)。
28. 絞りを入れるとコントラストがつく。
29. スキャンを早くすると動きが見やすい。中心からずれている場合には対物レンズの微動つまみで中心に。
30. 倍率を上げて、スキャンの3にして、フォーカスを合わせる。
31. スポットS5は高分解の仕様(ビームを細く絞っている分暗くなる)。
32. 試料が厚くて透過する電子線が少ない場合は、スポットを1や2にする。
33. EDSでマッピングするときに出てくる信号が少なくなるので、スポット1や2にする。
34. ASID control > AMAG(アナリティカルマグ)でEDSで信号量を稼げるような電子線の照射量にする。
35. ASID control > コントラストの▲を押すとコントラストが大きくなる。
36. スポットA1やA2にするとCLレンズの値ががらっとかわってしまうので、スキャンを止めて、ビームの中心を合わせなおす。
終了時
37. ASID control > TEMに戻す
38. 絞りを元に戻す
39. ビームをSHIFT x,yで中心に。
40. BRITHGNESSで拡大して、右回しで同心円状に拡大するようにする。
41. CL絞りの微動つまみで中心に戻す。
※ JEOLのサービスが行っているのを見学すると[STD FOCUS > △と▽でZ軸を変える(丸い渦が見えるようにして) > PLA (ロンチを中心にする)> 絞りを入れて > 撮影]としていた(注意:私の理解が足りていないと思われるので、同様の動作をする場合は管理者とも相談してほしい)。
※ 明視野のカメラ長は150cm、暗視野はそれより位置が上(10と返答を頂いた)。

◆ EDS
 大学によっては装置にミニカップを用いているところがある。大学によっては操作用のPCにマニュアルが記載されている場合がある。例えば、PCのディスクトップにある「Analysis station使用前注意、ミニカップ(TMP)取り扱い方法」や「ミニカップ(TMP)取り扱い方法」(←JEOLのサービスの方は装置管理者と共にこの手順書を見ながら装置を終了させていた)を見ながら装置を起動させ(終了手順も記載してある)、2300Tの操作手順書がTEM装置の台の上にある黄色のファイルの中に挟まれていたりする。

■ 測定環境の保存と読み出し(ビームを見失ったときに復帰するための方法)
(操作前に装置管理者に相談すること!)
◇ 簡易的な方法
option > LENS/DEF MEMORY Option > Save > All DEF
option > LENS/DEF MEMORY Option > load > All DEF
 (手動の絞り以外のデータが保存される。そのため完全な復旧のためには、上記でSaveしたときの各種の絞りの状況を記録しておく必要がある{絞りを変えるとつまみの回転数も変化する。同じ絞りにすること! また、Data Setの下に書かれているMAGとSPOTの条件で保存されている点にも注意}。最初は装置管理者と行い、動作をメモっておくこと)
◇ より多くの情報を扱う方法
Maintenance > Save to Alignment File…
Maintenance > Load Alignment File…
※上記の方法でビームが見られない場合は、管理者とJEOLに連絡する。恐らく電子銃の先端形状や方向が変化している可能性がある。大学によっては1年に一度JEOLのサービスの方にチェックをして頂いている体制にしているところもある。そのようなときに作業を見学やマニュアルに記載の無い部分を聞いてみることをさせて頂けるように管理者の先生にお願いして頂いて、正しい使い方や知識を取得することが重要である。


各測定で使用する絞り

制限視野: SA絞り

暗視野: 対物絞り

STEM:対物絞り

絞りは上から、CL(一番上)対物(CLからまっすぐ下)SA絞り(=制限視野絞り、対物からさらに下で右側にある)

◆ フォーカスつまみの1ノッチ
800k倍(80万倍)
COARSE 1ノッチ 44 nm
FINE 1ノッチ 1.4 nm
ディフォーカス量は、PCのパネルのDefocusに記載されている。

◆ 画像の撮影枚数の例
自分がジャストフォーカスだと思ったところから、
2ノッチアンダー、オーバー
4ノッチアンダー、オーバー
で計5枚画像を撮る。

◆ 開口角と倍率
α=1: 200k倍以上 (ビームの収束角度{開口角}と平行照射時の照射領域が小さい)
α=2: 50k-200k倍
α=3: 50k倍以下 (ビームの収束角度{開口角}と平行照射時の照射領域が大きい)
※ Mag1が高倍率

◆ イオンポンプ(銃とカラム)
電圧は、10kVのつまみにして、6k出ていれば正常
電流は、200mAのつまみにして、針が震えていたら異常
真空度が悪くなった時は、プロテクトが働いてイオンポンプが切れて、DPに変わる。
プロテクトは手動で解除が必要。
※ カメラ下、試料ホルダーはDPで引いている。

◆ PC
本体はヒューレッドパッカード(HP)のPC(シャットダウンしない!)
EDXは下記のデル(Dell)のPCの左のPC
カメラ(CCD)はデル(Dell)のPC(右端)

◆ マイクログリッドとサンプルホルダー
・裏がCu(銅)の色。表が少しくすんでいる(アモルファスカーボンを付けてあるため)。
(マイクログリッドを裏表逆に試料を付けると、試料ホルダーに正しくマイクログリッドを付けても正しい像が得られない。アモルファスカーボンの下に試料があるようなコントラストが得られる。当然といえば当然だが、貴重なマシンタイムでそれを行う者がおり、TEM初心者がパニックになって事故発生率が増加するので注意。アモルファスカーボンが破けているとさらに最悪で、初心者だけでは真空とアモルファスカーボンが違うことを経験していない可能性が高いし、たまたま試料がCuのグリットにくっついて周りは真空という場合、非点補正が上手くできないので、試料の像が微妙なぼやけたものになる)
・FIBの試料を載せるメッシュは裏表同じ色をしている。蛍光灯の光にかざして光っている方が表、ちょっとくすんでいる方が裏。
・マイクログリッドを保持するネジは緩められる長さが1.5mmくらい。ネジは3回転くらいで試料を交換できる隙間ができる。

◆ バシュッと音がしてビームが出なくなったとき
1kV/Stepで6time/Stepの設定で電圧を下げる。
FilamentがONの場合はOFFにする。

他大学での使用方法:http://www.ciaiu.iwate-u.ac.jp/denkenHP/JEM2100Basic.pdf
法政大 精密分析室:http://www.k.hosei.ac.jp/seimitsulab/manual.html
解析に便利なフリーソフト:http://pmsl.planet.sci.kobe-u.ac.jp/~seto/
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◆光学系
熱電子銃:
ウェーネルトカップ、アノード→静電レンズの役割
アノードの前で電子線のクロスオーバー(数10μm)を作る(電界によって電子線を収束し、小さな仮想光源を作る)。
ウェーネルト、アノードの下にある加速管で電子を100-1000kVに加速する

電界放出型電子銃:
真空中で加熱+電界による引き出し
初めから光源が小さいのでクロスオーバーは無くてもよい

・電解放出型電子銃は熱電子放出型電子銃より輝度が約100倍高い

金属材料研究所夏季講習会資料
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◆ レンズの役割
・基本原理は光学レンズの凸レンズと同じ。
・集束レンズ一つ(一段)だけではレンズの励磁(凸レンズの形)を決めると、スポットサイズと照射領域が一義に決まってしまい自由度が無い。
・集束レンズを2つ(二段)にすると、スポットサイズと照射領域を自由に変えられるようになる。
・集束レンズ絞りで収束角αを変えられる。

◇ 集束レンズ(CL=コンデンサレンズ)のまとめ
・第一集束レンズ:スポットサイズ
・第二集束レンズ:照射面積(Brightness)
・集束レンズ絞り:電子線の照射量、収束角
・集束ミニレンズ(CMレンズ):照射領域、収束角の微調整(α selector)

・対物レンズ:電流を稼ぐ。局所分析(分析モード)、収束照射(電流を稼ぐ)

・後焦点面(回折図形)の部分で対物絞りが入る
・像面(像の形成)の部分で制限視野絞りが入る

・中間レンズ:焦点距離を替え、結像と回折図形を瞬時に切り替えることができる。対物レンズの結像と回折図形を拡大する。
・投影レンズ:結像と回折図形を拡大する。
※拡大は1レンズあたり50-100倍

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◆ レンズの種類
・集束レンズ:スポットサイズ、照射面積、照射角
・対物レンズ:結像(ここで電子顕微鏡の性能が決まる)
・中間レンズ:結像/回折図形の切り替えと拡大
・投影レンズ:拡大
照射系:集束レンズ
結像系:対物レンズ、中間レンズ、投影レンズ
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◆ レンズの性能を低下させる主な原因(収差)
レンズに起因する収差(単色収差)
ザイデルの5収差として以下の5つが知られている。
1. 球面収差:レンズへの入射角によって焦点距離が変化
 (像のボケδs = Cs*α^3)
2. 非点収差:レンズの面内方向で焦点距離が変化
3. コマ収差:レンズの中心部と外周部で焦点距離が変化
4. 像面湾曲:像面が平面ではなく湾曲することに起因する歪み
5. 歪曲収差:倍率がレンズ内の位置によって異なる
レンズ以外の要因に起因する収差
6. 色収差:高電圧発生器の電圧変動/入射電子の波長変化
7. 回折収差:レンズまたは対物絞りによって高周波成分がカット
(像のボケδd = 0.61*λ/α)
※像のボケδ
δ^2 = δs^2 + δd^2 =(Cs*α^3)^2 + (0.61*λ/α)^2
最小のδ = 0.66*(Cs*λ^3)^(1/4)
(開き角α=対物絞りの大きさ)

◇ 球面収差
・放物面には焦点が存在するが、球面には焦点が存在しない
・焦点距離がレンズへの入射角に依存するための収差
・レンズの位置によって電子線の焦点距離が異なる
・レンズを通過した位置によって焦点がずれる
・球面収差Csのために焦点距離がCs*α^2だけ短くなる。(α=収束角)
・点であった原子の像が、像面でぼけて円になる
・像面における像のボケ=Cs*α^3。(α=収束角)
※球面収差は装置と収束角αに依存するので、ユーザーが変えられるαを調節する。

◇非点収差
・電子レンズの加工精度や材料の不均質による磁場の非対称性により、レンズ方向によって焦点距離が異なる。
・真円を真円として結像できない(楕円になる)収差
※アモルファスの部分で真円になるように対物レンズ非点補正コイル(OBJ STIGを押して、DEF/STIG x,y)をユーザーが調整します。

◇コマ収差
・レンズの中心(光軸)と外側を通る電子線の焦点距離が異なることに起因する収差
・光軸上から離れた1点が彗星のしっぽのように見える
例えば10倍に拡大したとき、元の像でx=aに点があっても、10倍に拡大した像面ではx=a*10だけでなく、x=a*10+bにも像が見えたりする。そのため、光軸上から離れた1点が彗星のしっぽのように見える。
※コマ収差と色収差は電流や温度が安定するまで待つしかない

◇色収差
・加速電圧の変動によって電子線の速度が変動波長によって屈折率が異なることによる収差
・高圧タンクの加速電圧の変動
→電子の波長(色)の変動
→色収差によって像がぼける
※波長によってレンズからの焦点距離が異なるため、加速電圧の変動により、電子の波長が異なって、焦点距離のことなる像が像面に形成されて像がボケる。
※コマ収差と色収差は電流や温度が安定するまで待つしかない

◇回折収差(絞りによる回折波の打ち切り)
・対物レンズが有限の大きさを持つことや対物絞りにより高次の回折波がカットされるため入射電子の全てを結像できないこと
・高周波成分がカットされることに起因する像のぼけ
※フーリエ変換で一部の周波数をカットすることに相当する。
・中心:長周期成分
・外周:短周期成分
・中心付近のみ結像すると、像の細部が不明瞭になる
※絞りを入れるとコントラストははっきりするが、分解能が下がる

◇磁界レンズ
・軸対称の磁場による電子線の収束作用を利用
(フレミング左手の法則による屈折)
・光学レンズにおける凸レンズと同様の作用を持つ
・凸レンズのみ(収差の存在、像のボケ)
・結像:点を点として対応させること
収差により点が点とならない(ボケる)
レンズの性能を制限、分解能を規定
レンズコイルの下部に水冷の管がある。

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◆コントラストの種類
・対物絞りで回折波/透過波をカットして、振幅/強度によるコントラストをつける(試料が厚い場合)
1. 散乱コントラスト 非晶質(mass-thickness:密度 x 厚さ)
2. 回折コントラスト 結晶質(結晶方位)
・回折波と透過波の干渉でコントラストをつける(試料が薄い場合。厚いと見えない)
3. 位相コントラスト 高分解能観察
モアレ

◇散乱吸収コントラスト
・(mass-thickness:密度 x 厚さ)
・明視野像では緻密な構造(高密度)、重原子、厚い、ものほど暗くなる

◇回折コントラスト
回折波の選択によるコントラスト
明視野像:対物絞りで透過波(000)のみ選択。ブラッグ条件からはずれた部分での像が得られる
暗視野像:対物絞りで一つの回折波のみ選択。ブラッグ条件を満たす部分での像が得られる

◇動力学的回折理論
・透過波と回折波が干渉する。電子線透過方向への強度の振幅が起こる。
・同じ物質・構造でも回折条件によってコントラストが変化する。

◇励起誤差(簡単にはエバルト球からのずれ)

◇転位の解析
・転位の中心付近では結晶面が湾曲している。励起誤差の変化によって転位のコントラストがつく。
ある回折ベクトルに対して、転位のバーガーズベクトル・散乱ベクトル=0を満たす。
つまり、転位のバーガーズベクトルbと散乱ベクトルgが直行する時コントラストが消える。

金属材料研究所夏季講習会資料
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◆位相コントラスト
・原子による電子波の屈折率は、1.0001程度と小さい
・原子に近いほど電子波の位相が進む=電子が原子のポテンシャルで加速される結果、波面が広がる
・原子による位相のずれは、入射波に比べて位相がσVだけ進んだ散乱波になる
 ここで、σは相互作用定数、Vは投影ポテンシャルである。
・この位相が観測できれば原子の存在を最も正確に捉えることができる

量子力学によれば波動関数を観ることはできない。観測できるのは波の強度だけ。
I = Φ x Φ* =exp(iσV) x exp(-iσV) = 1
強度が像面の位置に依らず一定。位相変調を起こすだけではコントラストがつかないことになり、像の存在を確認できない。
散乱の量子論によると、散乱波は入射波より位相がπ/2進む。これは実数が虚数に変換されることを意味する。
exp(iπ/2)=cos(π/2)+i*sin(π/2)=i
だから我々の世界では見えない。そのため、見えるようにするため位相を人為的に変える。

◇Scherzerの理論の要旨
1. 電子レンズ(対物レンズを含む)は必ず収差を持つ
2. 対物レンズのフォーカスをずらす(ディフォーカス)する
以上の2点を逆手にとって、散乱波の位相をさらにπ/2(つまり1/4波長)変調させることによって、散乱波の位相は合計π(半波長)ずれる。よって原子(結晶など)で散乱された波動場の位相変調を強度(コントラスト)として像に変換できる。

◇弱位相物体近似
・原子のポテンシャルが小さいと仮定する(軽元素の薄膜{5nm以下}で成り立つ)。
 σV<<1
 Φ = exp(iσV) 〜 1+iσV
 この仮定は運動学的回折近似が成り立つことを意味する。
・Scherzerの理論によれば、対物レンズによる位相変調として波面収差関数を導入する。それを用いてレンズ伝達関数の形で散乱波の位相変調を行う。
・レンズ伝達関数→対物レンズの収差とディフォーカス冉による位相変化

◇レンズ伝達関数 P = cos(χ) + i*sin(χ)
 ここで、sin(χ)は位相コントラストの付き方を決めるので位相コントラスト伝達関数と呼ばれる。
※まだ確認できていないが、たしか、cos(χ)は振幅コントラスト伝達関数と呼ばれる(透過波あるいは回折波の振幅が、場所によって異なる吸収や散乱を受けることにより生じるコントラスト、吸収・回折コントラストとも呼ばれる。明視野/暗視野像観察)。

◇位相コントラスト関数
・対物レンズの収差とディフォーカス冉による位相変化
・最適焦点(Scherzerフォーカス)にしたときsinが-1に近い値を持つ領域(以後、領域Aと呼ぶ)が最大になる。
・領域Aの面間隔d(Å)のみ正しいコントラストで結像
・位相コントラスト関数が0になる面間隔d(Å)はコントラストがつかない
・フォーカスを変えると領域Aの幅、位置が大きく変化
・特に、領域Aから面間隔d(Å)を減少させて最初に0になる面間隔d以下の周期の格子像は激しく変化
 (像は見えるがコントラストが正しくない)

◇色収差
1. 高圧変動(1ppm程度)に起因する色収差
2. ビームの平行性
3. 機械的振動
4. 電気回路の安定性
などによる電子波の干渉性の低下が起こり、高空間周波数、つまり、小さな面間隔になるほどコントラストが減衰する。
この減衰(色収差等)によって格子分解能が決まる。

◇点分解能
・点分解能(領域Aから面間隔d(Å)を減少させて最初に0になる面間隔d)以下の周期の像のコントラストは周期の大きさによって反転する。
・点分解能は球面収差で決まる

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◆格子像
・結像の前に電子回折が起こっており、動力学的回折を考量する必要がある
・透過波、回折波は試料厚さの影響を強く受ける
・試料が十分に薄い場合(数nm以下)、運動学的回折理論の範疇、つまり、弱位相物体(振幅が不変)で扱うことができる。これが構造像にあたる。
・しかし、多くのTEM試料は10nm以上の厚さであることが多く、動力学的回折理論(試料厚さと共に振幅が増減する)で扱わなければならない。
・結晶中で多重回折が起こり、回折波の位相がπ/2からずれてくる。
・弱位相物体近似が成り立つ厚さ〜5nm

透過波と回折波の2波干渉による格子像を考える
透過波:Φ0 = A0 * exp(i*2π*k0*r)
回折波:Φg = Ag * exp(i*2π*kg*r)
I = |A0|^2 + |Ag|^2 + 2*|A0|*|Ag|* cos(2π(g・r+ε))
・位相2π(g・r+ε)=2πn(nは整数)の時に強め合って干渉縞が生じる
・格子縞が回折波gの面間隔に等しい

◇解釈上の注意
・弱位相近似が成り立たない厚さでは、透過波と回折波の位相差2πεがπ/2からずれてくる。
(試料厚さによって変化)
・原子位置、結晶面と格子縞の位置との対応関係がないことを意味する
・回折に寄与した結晶面の面間隔とその方向は正しく反映されている
・各結晶粒において1方向の干渉縞のみが現れている場合がある

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◆高分解能像の解釈

格子像:像のコントラストと原子(原子核のポテンシャル)位置が対応しない。ただし、面間隔や方位は保存されている。
 格子像を用いた構造解析には構造シミュレーションが必要
 試料厚さとフォーカスを変えて格子像を計算
・格子像の考え方
 ブラッグ回折波を対物レンズに取り入れて結像すると、凸レンズの作用によって、像面で再び1点に集まってくる。このとき像面近傍を見ると、まっすぐ進んできた透過波とその周りの方から少し斜めの角度で来た回折波が重なるので3次元空間中に干渉縞が生成される。この縞の間隔 Dは、
 D〜λ/α〜d
 縞の間隔 Dは、結晶試料中に存在する原子面間隔dと同じになる。すなわち試料中の原子面間隔と同じ間隔の縞が像面上に再生されることになる。倍率を1000万倍にすれば、例えば金の0.20nmの(200)原子面間隔が2mmの間隔の縞となりフィルム面上に記録されることになる。この干渉縞を格子像という。

構造像:結晶中のポテンシャル分布(原子位置)を正確に再現している像(コントラストと原子位置が一致)
 弱位相物体近似が成り立つ試料に対して、Scherzerフォーカス条件で撮影したとき
 原子位置が暗く、原子番号を反映
 薄くてダメージの少ない試料が必要

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◆まとめ
・電子は結晶中の電子雲に遮蔽された原子核のポテンシャルによって散乱される
・弾性散乱は結像(TEM,SEM)に、非弾性散乱は結像(SEM)や分析(EDSやEELS)に用いられる
・TEMでは、実空間の情報(像)と逆空間の情報(回折図形)を同時に得ることができる
・電子はX線と比較して約10^4倍も物質との相互作用(原子散乱因子)が大きいので、試料が極めて薄い場合を除いて運動学的回折理論は成立しない。一般的には多重散乱を考慮した動力学的回折理論を用いる必要がある。
・TEM像のコントラストの付け方には、振幅コントラスト(散乱吸収コントラスト/回折コントラスト)を利用する方法と位相コントラストを利用する方法がある。前者は低倍率での明視野・暗視野像観察に、後者は高分解能(格子像、構造像)観察に用いられる
・TEMの点分解能は主に対物レンズの収差に依存し、0.1-0.2nm程度である
・TEM像は、結晶による電子回折によって位相変調を受けた出射波動場(回折波)が、対物レンズのレンズ伝達関数によってさらに位相変調を受け、スクリーンに投影された強度分布である
・高分解能TEM(HRTEM)像は位相コントラストによる結像である。弱位相物体近似が成立するような極めて薄い試料においてScherzer条件で観察されたとき、原子の位置を正しく投影した構造像が得られる。しかし、弱位相物体近似が成立するのは稀で、原子位置との対応のない格子像であることが多いため、解釈にはシミュレーションが必要である。格子像でも面間隔や結晶方位の情報は得られる。

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