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相図 理解への道

 ここでは相図及びTiO2の基本情報について纏める。
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相図の教科書としては、坂公恭『材料系の状態図入門』朝倉書店などがよい。
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TiO2
・アナタース:正方晶系、格子定数 a=3.785, c=9.514、低温安定型、バンドギャップ 3.2 eV (388 nm)、伝導帯の下端は標準水素電極電位に対して-0.2 V
・ルチル:正方晶系、格子定数 a=4.593, c=2.959、高温安定型、バンドギャップ 3.0 eV (412 nm)、伝導帯の下端は標準水素電極電位に対して-0.1 V
・ブルッカイト:斜方晶系、格子定数 a=5.45, b=9.18, c=5.15、中間温度(816~1040度)安定型、バンドギャップ 3.0 eV
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  チタンを加熱すると、ルチル相のTiO2が形成される。またアナタース構造のTiO2を昇温するとルチル構造に相変態することから、一般的には低温安定相がアナタースで、高温安定相がルチルと認識されている。しかし、熱力学平衡では低温でもルチル相が安定に存在し、アナタース相は準安定相である。また平衡状態図では、TiO2は室温では組成幅のない規則相(ダルトナイト型)であるが、温度を上げると組成幅が確認できる(ベルソライド型)。組成幅を持つということは、チタンか酸素かどちらかの元素が化学量論比よりずれた際にもその結晶構造を維持することを意味し、構造的には空孔形成型と過剰な元素が相手サイトを占有する置換型の2種類のどちらかである。どちらの構造であるかは不明だが、酸素欠損型のTiO2は熱処理で比較的容易に形成できることから、筆者はチタン過剰側では酸素空孔側で、酸素過剰側では置換型ではないかと推察する。
  TiO2光触媒の活性に及ぼす因子としては、相、電子構造、形状、組織などがある。相について頻繁に議論されるのは、アナタース相とルチル相のどちらが活性であるかである。両相のバンドギャップエネルギーはそれぞれ3.2 eVと3.0 eVであるが、伝導体の下端の位置は標準水素電極電位に対して、それぞれ-0.2 Vと-0.1 Vであることから、電子を対象物質に移行させて還元反応を起こすことに関して、アナタース相の方が優れていることになる。一方、酸化反応に関しては、両相とも価電子帯の位置が深いことから活性に大差はないと考えられる。
  一般にアナタース相の方がルチル相よりも活性に優れているとされるが、この原因は相というよりも形状や組織に関与するという説がある。すなわち、光触媒の多くは微粒子を元にして作製することが多いことから、アナタースを昇温して生成するルチルの方が粒径は大きくなる。粒径が大きくなると表面積が小さくなるため、対称物質が光触媒に吸着する吸着頻度が相対的に低減し活性が低下する。その他にも、アナタース相はルチル相に比べて有機物の吸着性が高いために触媒活性に優れているという報告や、電子と正孔の再結合反応がアナタース相の方がルチル相よりも小さいために活性に違いが出るという報告もある。
  一方、実用的に多用されるTiO2は、アナタース相にルチル相を含有させた混相である。すなわち単相ではなく、アナタースとルチルの混相である方が活性が高いとする考えがある。この考えでは励起電子がアナタースからルチルに移動することで、アナタース相中での電子と正孔の再結合頻度が抑制されるとしている。構成相と同様に光触媒機能に深く関与するのが触媒の表面積である。光触媒反応により酸化還元される物質のTiO2表面への吸着量が多いほど、光触媒反応は速まることから、TiO2の表面積が大きいほど反応速度の向上が期待できる。
  (省略)励起種の再結合を抑制することも、光触媒性能を高めるためには有効である。再結合サイトがどこに存在するかは解明されていないが、結晶学的な構造欠陥、異種元素などの組成的な欠陥、さらには電気的に電荷が不均一な欠陥、などと考えられている。励起種が再結合しないためには、これらの再結合サイトの濃度減少が必要であるが、濃度が少なくても励起種が反応物質に移行しないことには反応は進行しない。光触媒反応では酸素の存在が不可欠であるが、水中のように溶存酸素量(1cm3の水への常温での酸素の溶解度は0.031cm3)が少ない場合、励起種の行き場がなくなってしまい、仕方なく再結合により消滅するということが起こるかもしれない。
  さらに、光触媒活性に影響を及ぼす因子として吸収波長がある。ルチル相のバンドギャップエネルギーはアナタース相よりも小さいので、ルチル相の方が可視光に近い波長の光を吸収できる。使用する環境において供給される光(太陽光や室内蛍光灯のように特定の光)の波長と、このバンドギャップの波長と大小関係にいよって、光触媒活性も影響を受ける。つまりバンドギャップ相当の光の波長よりも長い波長の光を吸収しても、励起種は生成されず、励起種を生成するためには、バンドギャップ相当の光の波長よりも短い波長の光を吸収する必要がある。
  一方、反応物の吸着が速度的にも量的にも十分あり、光触媒表面が反応物や分解物で被覆されないような環境であれば、理論的には光触媒反応の速度は光の強度に比例して大きくなる。しかし実際にはこのような環境は得られないことが多く、光の強度だけで一元的に反応速度が決まるわけではない。例えば先の水中での光触媒反応では、溶存酸素量が律速するために光の強度を上げても、反応速度の増加は限界がある。励起光である紫外線の強度と波長を人工的にコントロールした環境下では、反応速度をある程度増加させることは期待できるが、生活空間での太陽光下での紫外線強度は、真夏の日差しで3mW/cm2、曇天では0.1mW/cm2程度、さらに室内では1桁小さくなる。このような環境下で効率よく光触媒反応を促進させるためには、反応速度を遅延する因子を可能な限り排除するのが必須であるが、逆に言うとそのような工夫が困難な環境下での光触媒利用は限界がある。
  金属の機能は、強度、加工性、耐食性、磁性など結晶方位依存性を示すものが多いが、光触媒機能についてはどうだろうか? 触媒反応の活性には、特定の格子面が活性であるとする「格子面活性説」と、表面の一部に活性が高いサイトが存在するとして「活性中心説」の2説があり、どちらを支持する実験結果も数多く得られている。TiO2はアナタースもルチルも正方晶であることから、少なからず表面エネルギーの面方位依存性が存在するはずである。また光触媒反応により分解される物質が吸着する際には、エネルギー的に安定な面を指向する可能性があり、吸着量の結晶方位依存性が期待できる。さらに上記のように、光触媒反応が「格子面活性説」に支配されるとすると、結晶方位依存性はさらに強まるはずである。結晶方位依存性の確認には単結晶を用いた実験が有効であるが、TiO2は高温でルチル構造が安定なため、溶液(融点は1840℃)からの結晶成長ではアナタース構造の単結晶の製造は容易ではない。試料作製上このような問題を含んでいるが、ルチル構造のTiO2単結晶についてさえも触媒活性の結晶方位依存性の報告はほとんどない。

参考文献 東北大学金属材料研究所 編著、「金属材料の最前線」、講談社
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■ 三角相図
3成分系平衡状態図の基礎(その1):http://ir.library.osaka-u.ac.jp/dspace/bitstream/11094/26432/1/ferrum10_10_810.pdf
3成分系平衡状態図の基礎(その2): http://ir.library.osaka-u.ac.jp/dspace/bitstream/11094/26434/1/ferrum10_11_855.pdf
合金と平衡状態図: http://www-it.jwes.or.jp/lecture_note/pdf/public/2-2.pdf
第1章 はじめに: http://tkoyama.web.nitech.ac.jp/docs/Lecture_H19/H19_Chapter_1.pdf
2章 熱力学の基礎: http://tkoyama.web.nitech.ac.jp/docs/Lecture_H19/H19_Chapter_2.pdf
第3章 状態図と相変態の基礎: http://tkoyama.web.nitech.ac.jp/docs/Lecture_H19/H19_Chapter_3.pdf
第4章 発展方程式: http://tkoyama.web.nitech.ac.jp/docs/Lecture_H19/H19_Chapter_4.pdf
第5章 化学的自由エネルギー評価法: http://tkoyama.web.nitech.ac.jp/docs/Lecture_H19/H19_Chapter_5.pdf
第6章 勾配エネルギー評価法: http://tkoyama.web.nitech.ac.jp/docs/Lecture_H19/H19_Chapter_6.pdf
第7章 弾性歪エネルギー評価法(1): http://tkoyama.web.nitech.ac.jp/docs/Lecture_H19/H19_Chapter_7.pdf
第8章 弾性歪エネルギー評価法(2): http://tkoyama.web.nitech.ac.jp/docs/Lecture_H19/H19_Chapter_8.pdf
第9章 電磁気エネルギー評価法: http://tkoyama.web.nitech.ac.jp/docs/Lecture_H19/H19_Chapter_9.pdf
第10章 全自由エネルギーと組織安定性: http://tkoyama.web.nitech.ac.jp/docs/Lecture_H19/H19_Chapter_10.pdf
第11章 Phase-field法1(凝固): http://tkoyama.web.nitech.ac.jp/docs/Lecture_H19/H19_Chapter_11.pdf
第12章 Phase-field法2(拡散相分解): http://tkoyama.web.nitech.ac.jp/docs/Lecture_H19/H19_Chapter_12.pdf
第13章 Phase-field法3(結晶変態、ドメイン形成): http://tkoyama.web.nitech.ac.jp/docs/Lecture_H19/H19_Chapter_13.pdf
第14章 Phase-field法4(複合組織形成): http://tkoyama.web.nitech.ac.jp/docs/Lecture_H19/H19_Chapter_14.pdf
第15章 Phase-field法5(組織形成に及ぼす外場の効果): http://tkoyama.web.nitech.ac.jp/docs/Lecture_H19/H19_Chapter_15.pdf
16章 おわりに(材料組織設計へのPhase-field法の効果的活用について): http://tkoyama.web.nitech.ac.jp/docs/Lecture_H19/H19_Chapter_16.pdf
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■ 2元相図
・ 3元系に第4元素をドープするなど、ドープでの固溶を考える場合には、NIMSの2元相図を参考にしてみるのもよい。私の場合には、経験的に600℃近辺での固溶状態となる。ドープする原子とされる原子は近い族のものの可能性が高い。計算状態図で600℃を当てはめると近い傾向になることもある。
・ ときに750℃のときもあるが、それは冷却速度が早くて線が下方に下がるためであると考えている。
・ 空孔は高い温度の場合にエントロピー的に導入される可能性があるのでそれも注意しておく必要がある。
・ 水冷やliquid quenchの場合は、冷却する前の温度での固溶度。
・ 日新技研のアーク溶解炉(真空溶解装置)は純鉄 99.9%を溶かしているので、NIMSの相図から見て、溶解温度は1538℃以上であると思われる。溶解温度は1600-1811℃か? 合金は下から1-2mmは溶けていないように見える。冷却速度は目視での色温度を考えると、12gの合金で、熱伝導率が6 W/mKのとき、400 - 600 K/m か? (通常のAr圧から0.1まで1.5min)。真空炉の炉冷では1000℃から常温まで6-8時間程度。
・ メカニカルアロイングでは、ドープする元素もともと少ない状態となるので、相図からドープする元素が少ない場合での析出物を考えてみると正解の確率が高くなるかもしれない。析出物は相図で見て高い温度まで安定であるものが優先的に析出するかもしれない(高い温度までより安定ということは、その物質がエネルギー的により安定だからか?)。
・ liquid quenchは高い温度まで安定の傾向がある。750℃まで? 固相拡散しにくいためか?
□ 不純物の固溶限
 濃度 = exp(- 生成エンタルピー / kT) から計算できる。
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