形成エネルギーの計算法

 ここでは形成エネルギーの計算方法に関する情報について纏める。
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◆ 欠陥形成での形成エネルギー の計算
■ 形成エネルギー = スーパーセルで欠陥を含んだ全エネルギー − 完全結晶の全エネルギー + Σ(欠陥形成のために結晶に出入りする原子種の数(整数)* 化学ポテンシャル) + 点欠陥の持つ有効電荷 * 系のフェルミエネルギー

■ 欠陥形成エネルギーの計算(「アドバンス/スーパーコンピューティング・サービス」より)
僞 = E(欠陥モデル)−{E*(4H-SiC) + nc*E(C) +nsi*E(Si)}}
ここで、E(A) はモデルAの全エネルギー、nc, nsiは欠陥モデル中の欠陥C原子およびSi原子の数
※ E(C)とE(Si)は単体結晶の生成エネルギーより計算

■ スーパーセルで欠陥を含んだ全エネルギー
・スーパーセルを作成して欠陥を含んだ系を計算する(200原子程度)。
・k点は単位胞のときに1000点程度で計算していた場合、2x2x2のスーパーセルでは1000/(2x2x2)のk点を用いる。

■ 化学ポテンシャル (μAl2O3 やμO)の計算方法
・μAl2O3 = Al2O3での全エネルギー または 2 * μAl + 3 * μO
通常は、完全結晶のAl2O3を計算すればよい。
・μO = O2の全エネルギー / 2
真空層を 10オングストローム(1nm)以上入れた酸素分子を計算して、得られたエネルギーを1/2倍すればよい。k点はΓ点の1点のみで良い。

■ 分圧を考慮した場合の化学ポテンシャルの計算方法
・μO =[O2の全エネルギー(0 K) + μO2(T,PO20) + kB * T * ln (PO2/PO20) ] / 2
ここで、kB はボルツマン定数、Tは絶対温度(K)、PO20はO2に対する参照圧力(通常1atm)、PO2はO2に対する分圧。
O2の全エネルギー(0 K)は第一原理計算で求められる。
μO(T,PO20)  はNIST-JANAF Thermochemical Tablesに掲載されている。他の気体についても同様。
佐々木泰造ら「密度汎関数理論入門 理論とその応用」吉岡書店

■ 水溶液中での化学ポテンシャルの計算方法
・μCa = Caの全エネルギー(計算値) + 水和エネルギー等の実験値 + kB * T * ln (Ca{mol/l})
・ln (Ca{mol/l}) は NISTやJANAF の thermochemical table を用いるとよい。

■ 点欠陥
点欠陥の持つ有効電荷 = 0 の場合:系のフェルミエネルギーの計算は必要なし。
点欠陥の持つ有効電荷 ≠ 0 の場合:系のフェルミエネルギーを未知の変数としてx軸にし、形成エネルギーをy軸として、 幾つか想定される点欠陥の有効電荷でグラフを描く。そうして、形成エネルギーが最も小さく、電気的中性条件が満たされる欠陥の組み合わせを採用する。(想定される価数は左欄の「基礎無機化学 理解への道」を参照)

□ 点欠陥の計算での注意事項
・理論計算では、電荷の中性を保つためにバックグラウンドに電荷が充てられます。縦軸にエネルギー、横軸に体積(1/L = (1/V)1/3 ∝ (1/N)1/3 を取って、幾つかのスーパーセルで計算して直線で体積 0 のときのエネルギーを採用するようにします(Makov and Payne, Phys. Rev. B 51 (1995) 4014.: http://journals.aps.org/prb/abstract/10.1103/PhysRevB.51.4014)。この方法を用いないと、200〜300原子を用いたスーパーセルでも大きな誤りを導いてしまいます。
・直線で引いたときの傾きの大きさは、欠陥レベルがどれだけ局在しているか? に寄ります。想像が付くように、局在しているとスーパーセルサイズの依存性が小さくなります。
・ギャップの補正も必要です(S. B. Zhang et al., Phys. Rev. B {1998})。通常、LDAやGGAはギャップを小さく見積るのでギャップ間隔を広げて点欠陥での計算を行う必要がある。
※ 余談:NEBで拡散経路を計算すると、点欠陥など、原子の通り易い経路で活性化エネルギーが小さくなる。原子が通り易そうな空間が出来るモデルが無いかを考えてみることとも大切(複合空孔であるSchottkey空孔も調べてみたりする。バックボンドが強くなって点結果の効果があまり見られないこともあることは知っておくと良い)。(第一原理計算は0 Kの計算となるが、活性化エネルギーをかなりよく再現する。計算と合わなければモデルが間違っている)
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◆ 電気的中性条件を考慮した系のフェルミエネルギーの計算方法
・想定される全ての欠陥のモデルを作り、各モデルに対して全エネルギーを算出する。そして、以下の式で系のフェルミエネルギーを決定する。
Cβ = Nβ * exp(−形成エネルギー / (kB * T))
∑qβ * Cβ= 0 (qβ : 欠陥βの電荷)
ここで、Nβは単位体積あたりに欠陥βが入りることが出来るサイト数。
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◆ 表面・界面エネルギー の計算
■ 表面・界面エネルギー = ( 1/ (2 * 界面面積) ) * (スーパーセルの全エネルギー − ∑(Ni * μi) )
ここで、Ni はスーパーセル内に含まれる各原子iの数、μiは原子iの化学ポテンシャル。
・表面・界面エネルギーの計算は6層〜10層程度で計算する。
・表面エネルギーの計算では、真空層 10オングストローム(1nm)を入れたミラー対称のスーパーセルを作成する。
・界面エネルギーの計算では、真空層 10オングストローム(1nm)の代わりに計算したい構造に替える。
・界面が化学量論比でない場合は、化学ポテンシャルを未知の変数としてx軸にし、表面エネルギーをy軸としてグラフをプロットする。
・界面密着性を計算する場合には、格子定数を少し伸ばした値を入力ファイルに入力し、構造最適化を行う。これを徐々に繰り返して傾向をプロットしていく。
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