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擬ポテンシャル 理解への道

 ここでは擬ポテンシャルの情報について纏める。
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■ 擬ポテンシャルの利点[13]
・ 価電子の状態に関する限り、精度は振るポテンシャルの全電子計算にほぼ匹敵する。擬ポテンシャルの精度は擬ポテンシャルの作成方法に大きく依存するが、精度を上げるための工夫がなされ、最近では物質の価電子の状態や安定構造などに関してはFLAPWに匹敵する精度をもつ擬ポテンシャルが開発されている。
・ 内殻電子を取り扱わない分、計算が軽く、より複雑な物質への適用が可能となる。
・ 価電子の結合エネルギーは数 eVからせいぜい数十 eVであるが、内殻電子は数百から数万 eVと非常に大きく、内殻電子を取り扱うと、取り扱うエネルギーの桁が小さくなるので、数値計算の必要な有効桁数が少なくてすむ。
・ 擬ポテンシャルおよび擬波動関数を充分滑らかにしておけば、平面波基底で容易に展開可能になる。
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◆ ノルム保存型擬ポテンシャル
・擬ポテンシャルを導入する原子と比較して、原子の中心からある距離r内で電荷量が一致(ノルム保存)し、ある距離rc以上でポテンシャルが一致するようにしたもの。
・全体的に滑らかなポテンシャルとなるようにしている。そのため、原子の中心からある距離R内で複雑な内殻のポテンシャルが再現されない。
・ノルム保存条件を満たすことで、擬ポテンシャルは非常に精度よく真の原子ポテンシャルの散乱(位相シフトをエネルギーの一回微分まで)を再現できるようになる(ノルム保存条件を変形することにより、波動関数の対数微分のエネルギーに関する一次微分と対応する{シュレーディンガー方程式の動径部分をエネルギー微分する。文献[13]のP.59の式(10)の最右辺。式の導出はMartinの教科書を見ると良い}。波動関数の対数微分は、球対称ポテンシャルの散乱の性質を決定する)。対数微分(波動関数の微分/波動関数)とエネルギーの関係を見ると、ノルム保存条件が満たされた擬ポテンシャルは、真のポテンシャルで見られる内殻状態によって発散する部分を除いて、よく一致していることが分かる。
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◆ ウルトラソフト擬ポテンシャル
・原子の中心からある距離rc以上で正しい波動関数を再現するようにしたポテンシャルで、ノルム保存条件を外して、ノルム保存型擬ポテンシャルよりも非常に滑らかな擬波動関数となるようにしている。このため、ノルム保存型擬ポテンシャルに比べて使用する平面波を少なく出来る。
・原子の中心からある距離r内で擬波動関数によるノルムが保存しないが、擬波動関数に双対な基底を導入することで、距離rよりも少し外側のrcでノルムが保存するようにした一般化ノルム保存条件を課している。
・一般化ノルム保存条件を課すことで、擬ポテンシャルの波動関数の対数微分は、内殻状態{発散する}を除いて真のポテンシャルによる波動関数の対数微分の結果とよく一致するようになる(ノルム保存型擬ポテンシャルと同じように計算できる。P.67の式(31)の最右辺)。これにより、真のポテンシャルの位相シフトが擬ポテンシャルで再現できるようになる。
・多参照エネルギーを複数取ることが可能であることから、より広い範囲で散乱の性質をあわせることが可能となる。
・多参照エネルギーにより、従来のノルム保存擬ポテンシャルよりもさらに精度のよい擬ポテンシャルにすることが可能である。
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◆ PAW(Projector Augmented Wave)法 [14]
・擬ポテンシャルを導入する原子と比較して、原子の中心からある距離r以上で正しい波動関数を再現するようにしたポテンシャル。一方、原子の中心からある距離r内で、対象となる原子の内殻のポテンシャルを導入している。
・原子の中心からある距離r内で複雑な内殻のポテンシャルが再現されているが、FLAPW法と異なり、原子の中心からある距離R内でのポテンシャルがSCF毎に更新されない。
・計算コストはウルトラソフト擬ポテンシャルとほぼ等しい。
・PAWの擬ポテンシャル = 全体的に滑らかなポテンシャル + 対象となる原子の内殻のポテンシャル − 対象となる原子のポテンシャルに合わせるのに必用な全体的に滑らかなポテンシャル
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■ 浅い内殻状態と非線形内殻補正[13]
 擬ポテンシャル法では、原則として最外殻にある価電子のみを計算するが、実際にはしばしば浅い内殻状態もあらわに計算に取り入れる必要が出てくる。例えば、アルカリ金属、アルカリ土類金属は最外殻のns電子の下の比較的浅いところに(n-1)p状態があり、周りの原子の環境によって容易に分極を起こしたり、弱いながらも結合に影響を及ぼすことが知られている。そのような場合はあらわに(n-1)p状態についても価電子と同様に計算する必要が出てくる。浅い内殻状態は価電子に比較してかなり局在しているので、平面波基底で計算するのは困難になるが、ウルトラソフト擬ポテンシャル法を用いると比較的容易に取り扱うことが可能であり、また、参照エネルギーも複数とることができるので、内殻準位付近と価電子付近の2つを参照エネルギーにとれば、浅い内殻電子と価電子の両方を精度よく計算することが可能になる。
 しかしながら、それでもなお内殻準位を計算するには負担が大きくなり、できればあらわに計算しなくても済ませる方法が望ましい。交換相関エネルギーを計算する際に内殻電子の影響を取り入れるだけでかなり精度のよい計算が可能になる場合も多い。これは非線形内殻補正(Non-linear core correction)と呼ばれる方法である。固体のアルカリ金属などは、浅い内殻準位を非線形内殻補正の範囲内で取り扱って充分な精度が出る。しかし、アルカリ金属酸化物のようにアルカリ金属から他の原子に大きな電子移動が起こる系では浅い内殻準位の緩和の影響が大きく、計算が重くなるがあらわに内殻準位を計算する必要がある。これらの選択は計算したい系について両者の取り扱いで比較し、精度に違いがあるかチェックして判断する必要がある。
※ Coreとvalenceの波動関数の分布が離れているときは問題がない。しかし、そうではない場合には、交換相関ポテンシャルが非線形の性質を持っているために、補正を導入することが必要となる。
 簡単な概念として、Xaポテンシャルで考えると下記のようになる。
Vxc[ρcore + ρvalence](4/3) ∝[ρcore + ρvalence]^(4/3) ≠ρcore(4/3) + ρvalence(4/3) であり、Vxcは線形でないため、最右辺は=で結べないことが分かる。非線形内殻補正はこれを補正するものである。
 全電子ではE = ∫dr {(n(r)*e[n(r)]} となるが、擬ポテンシャルでは{(n(r)*e[n(r)]} がn(r)に対して線形ではない。そのため擬ポテンシャルではE = ∫dr {(nc(r)+nv(r))*e[nc(r)+nv(r)] - nc(r)*e(nc(r))}が正しい。ここでnc(r)は内殻の電子密度である。実際の計算ではカットオフ半径より内側で滑らかにした部分内殻電子密度npc(r)を用いてnc(r)をnpc(r)とする。全エネルギーの寄与はE = ∫dr {(npc(r)*e[npc(r)]} となる。[4]
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■ 擬ポテンシャルにおける全エネルギー[13]
 PAWは分からないが、擬ポテンシャル法でいう全エネルギーは、価電子に関する全エネルギーとなる。「価電子の全エネルギー」として実験と比較可能な量である。孤立原子や小さな分子とことなり、固体では1つ1つ電子を抜き去ることは不可能に近いので、通常いわれるように相対的な変化だけが実験と比較できる量となる。
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■ 擬ポテンシャルの作成
・ d log φ(r) / dr は位相シフトに対応。
・ 遠心力項 l(l+1)/r^2のために、lが大きいとその電子は原点付近に近づけない。
・ rcは約原子間の半分程度
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■ 重要なポイント[13]
 原子内に強く結合している内殻電子は、ほとんど1つの原子核付近に局在していて、隣の原子位置にまで出てくることはない。そのため、隣にどのような原子が来ようとその状態はほとんど影響を受けないはずである。※ 隣に来る原子によって大きく影響を受けるのは、原子の最外殻にある価電子と呼ばれる電子である。価電子は主として原子と原子の間に分布しているので、物質の組成や構造によって大きく変化する。つまり、物質の構造や反応性、さらには電気的、磁気的、光学的特性といったほとんどの物理的・化学的性質は価電子の状態によって支配されるということである。このことにより、内殻電子の状態をいちいち解かなくとも、価電子の状態さえ正しく再現できれば物質の性質は高い精度で予想可能なはずである。このことより、内殻の電子状態を孤立原子で一度求めておいて、物質の構造が変わっても同じ内殻の電子状態を用いるフローズンコア近似はたいていの場合よい近似となる。
※ 内殻光電子分光(XPS)で内殻準位を測定すると、周りに存在する原子の種類によって結合エネルギーが変化する(化学シフト)。これは原子核付近の静電ポテンシャルが周りの原子に依存するマーデルングポテンシャルの変化によって一様にシフトする効果と、光電子が抜けた正孔が周りの電子によって遮蔽される効果に違いがあることが原因となっており、内殻電子の状態そのものが変わったためではない。
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■ トランスファーラビリティ(transferability)[4]
・ transferability とは、擬ポテンシャル(PP)が結晶中のどの場所にあっても全電子(AE)ポテンシャルと同じ働きをすること。
・ transferability を満足する条件は、波動関数の対数微分が全電子と擬ポテンシャルで一致することである。
・ 散乱による位相のズレがPPとAEと同じになるには、各角運動量においてエネルギーの関数として一致することが必要となる。
※ 文献[4]の(4.1)と(4.2)を見れば、位相が対数微分の関数になっており、対数微分が一致すれば、PPとAEで位相が同じになることが分かる。
※ ウルトラソフトポテンシャルでは、ノルムを保存せずに、ディフィシット電荷関数を導入して、対数微分が一致するようにしている。用いた参照エネルギー(固有準位に一致する必要はない)において対数微分が一致することが保証されるため、参照エネルギーの数を増やすことで一致するエネルギー範囲を"任意に"広げることができる。
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■ 局所ポテンシャル[4]
・ 擬ポテンシャルは方位量子数lに依存する。擬ポテンシャルは本質的に非局所でrとr'の関数V(r,r')となる。バンド計算では、短距離と長距離に分ける。球対称の長距離ポテンシャルは局所ポテンシャルと呼ばれ、短距離ポテンシャルが局所ポテンシャルと呼ばれる。
・ 局所ポテンシャルの形状は、カットオフ半径より外側で-(全電子の数-コア電子の数)/r=-(価電子の数)/rになめらかに接続するものであればなんでもよい。
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■ 分離型ポテンシャル[4]
・ 計算速度を上げるために、非局所ポテンシャルに対して、分離型ポテンシャルが用いられる。
・ 非局所ポテンシャルを射影関数と係数行列の掛け算を各量子数で和したもにする。こうした形式にすることで、基底関数の数がNであれば、NxNの行列要素の計算をN回にすることができる。この方法はノルム保存型で提案された。ウルトラソフトはそれ自体が分離型ポテンシャルとなる。
・ 分離型ポテンシャルは、ゴースト状態(本来存在しない深いエネルギー準位にバンド)が生じることがある。分離型にすると、ハミルトニアンが満たすべきロンスキアン定理を満足しなくなるためである。ゴースト状態の出現は、局所ポテンシャルの取り方に依存する。(経験的には、ノルム保存でゴーストが生じなければ、ウルトラソフトでも生じない)。
・ ウルトラソフトでは対数微分のエネルギー変化を調べることでゴースト状態の有無が判定できる。固有エネルギー準位付近で対数微分が発散するという性質があるので、価電子準位より内殻側で発散している部分があればゴーストである。
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■ Kleinman-Bylander Approximation
 擬ポテンシャルの非局所部分の計算量をNの2乗のオーダーからNのオーダーまで減らす近似。しかし、バンド計算においてゴーストバンドが生じる危険がある。
[1] L. Kleinman and D. M. Bylander, Phys. Rev. Lett., 48 (1982) 1425.
[2] Kleinman-Bylander 近似、wikiepdia
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■ 擬波動関数 [4]
 擬ポテンシャル法では、カットオフ半径より内側での擬波動関数(電子密度も同様)の形状に意味はない。それよりも対数微分が一致していることが大事である。
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■ Basis Set Superposition Error (BSSE)
 平面波基底では全空間を同等の精度で展開するため、局在関数基底系がもつBSSEの問題が無い。ガウス関数などを用いた局在基底系では、原子同士が離れている場合は空間的な互いの波動関数の重なりが小さいが、原子同士が近い場合には互いの波動関数が重なる。そのため、原子同士が近づいたときには、より多くの局在基底の波動関数が原子に用いられていると見ることも出来ることから、原子間の距離で計算精度が異なってくることが理解できる。平面波基底では全空間を同等の精度で展開することから原子間の距離による波動関数の重なりによる精度の問題が回避されることが分かる。詳細は参考文献[13]を読むと良い。
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■ 擬ポテンシャル[15]
 平面波基底を用いた計算で、擬ポテンシャルを使用する大きな理由の一つは、できる限り滑らかで正確な擬波動関数を作ることによって、擬波動関数の展開に必要な基底関数の数を減らすことである。しかし、ノルム保存擬ポテンシャルは高い精度を保証するために、擬波動関数が滑らかであることを犠牲にしている。
 滑らかな擬波動関数を作成するときに困難な状態は、1s, 2p, 3dなどのそれぞれの各運動量を持つ最低エネルギーの価電子である。このような状態では、内殻に同じ各運動量を持つ波動関数が存在しないので、波動関数に節がなく、内殻にまで広がることになる。その結果として、ノルム保存擬ポテンシャルでは、擬波動関数は真の全電子波動関数からわずかに滑らかになるだけとなる。VanderbiltとBlochlは、非局所ポテンシャルをノルムが保存しない滑らかな関数に置き換えることを提案した。ノルム保存波動関数(全電子波動関数または擬波動関数)からの差分を補助関数として定義する。このようにノルム保存条件を考慮せずに作成した擬ポテンシャルをウルトラソフト擬ポテンシャルという。
 擬ポテンシャルを用いた電子状態計算は価電子のみを扱う手法であるので、内殻励起や内殻準位シフトのような内殻電子を扱わなければならない問題には適応できない。また、高圧のように内殻電子が物性に影響を与える(内殻電子の価電子化)のような条件下では擬ポテンシャルは無力である。
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■ 擬ポテンシャル作成のポイント
・通常、projectorの数は2つまでで十分な精度が得られる。多くの擬ポテンシャルでprojectorが2つまでなのはそのため。しかし、GW計算用では、最低でも3のprojectorが必要になる。
・全電子軌道とNC擬化半径rcはr=rcで連続的な一次微分でマッチする。よりrcが大きくなれば、ポテンシャル(計算でより少ないPW)はより柔らかくなる。しかし、トランスファービリティが小さくなる。rcは異なったlで異なる。規則として、rc間の大きな差は避ける。しかし、これは常に可能ではない。rcは最外の節よりも小さくなることが出来ない。
・NCの大きな問題はどのようにソフト化とトランスファーラビリティの妥協するかである。異なった元素についての最外の最大値でのrcの選択:典型的に 0.7-0.8 a.u.は(4f元素では十分ではない)非常に硬いPPを生じる(実際の計算で100 Ry以上が要求される)。経験として、第二周期(2p)元素は、rc=1.1-1.2で、50-70 RyのPW運動エネルギーカットオフで合理的な良い結果を生じる。3d遷移金属については、同様なrcで>80 Ryが求められる(最も高いlは同様のrcでより遅い収束)。
・UPの半径はNCよりももっと大きな値が選択される。例えば、第二周期 2p元素について1.3-1.5 a.u.、3d遷移金属で1.7-2.2 a.u.)。しかし、2つの原子のrcの合計はそれらの原子の典型的な結合長さを超えてはならないことを忘れてはならない。
・rc, rcore, rvol, rshape, rpawは基本的に同じ値にする。ベッセル関数を用いる場合などは同じにならない。
・RRKJ法は擬軌道で3または4つのベッセル関数を内殻領域で用いる。ベッセル関数を用いる場合には、rvolのみ0.6*rpawから0.8*rpawの値にする。エラーが起こる場合は、ρ(r=0)を小さな値にする。例えば、rho0=0.001。
・トランスファービリティのチェックは、電子配置や電子の数を変えたときにAEとPPでどこまで一致するか調べればよい。AEとPPでエネルギー差が0.001 Ryであればよい。どうしても上手くいかない場合、0.01 Ryまでには収める。対数微分がAEとPPでどの程度違うかもチェックしておく。PPのみに発散部分があればゴーストが存在。
・Tiであれば準内殻(semi-core)と記載のあるものを使えばよい。多くの場合、semi-coreが導入されていないものはトランスファービリティが悪く、擬ポテンシャル内に書かれている電子配置から大きくズレる系だと精度の悪い結果となる(DOSも良くない結果になる)。
・少ないカットオフで高い精度を示す擬ポテンシャル:RRKJ (=polynom2{14 Ha以下のとき}) ≒ > vanderbilt = polynom2 >> bloechl
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■ 擬ポテンシャル

◇ 転用可能性と硬さ
「硬さ」という言葉には2通りの意味がある。
 1つ目の意味は実空間での変化の尺度があり、それはFourier空間におけるポテンシャルの広がりで定量化される。一般に「硬い」ポテンシャルは局在した硬いイオン芯の性質を表しており、1つの物質から他の物質へ転用しやすい。ポテンシャルを「柔らかく」(すなわち、滑らかに)しようとすると転用性を悪くする傾向がある。しかし、正確で転用性があり、しかもFourier空間であまり広がらない、つまり、「最適化された」擬ポテンシャルを作るべく、現在相当な努力が払われている。
 2つ目の意味は、系の環境の変化に対する応答を、擬ポテンシャルを使って適切に記述する能力の尺度である。ノルム保存は原子の電子状態がエネルギーの変化に対して正しい1次の微分を持つことを保証している。「硬さ」のこのひょうな意味はポテンシャルの変化に対する応答の忠実さの尺度である。ポテンシャルは球対称の摂動(電荷、状態、動径ポテンシャルの変化)に対して通常の球対称原子のコードを使ってテストすることができる。GoedeckerとMaschkeは内殻領域の電荷密度の応答を使って洞察力豊かな解析を行っている。これは密度が密度汎関数論の中心的な量であり、積分された密度はノルム保存の条件と深く係わっているので、当を得たことである。球対称ではない摂動を使ったテストでもまた、特に電界中の分極率に関する性能を確認している。

◇ 最良の擬ポテンシャル
 どのような元素に対しても唯一の最良の擬ポテンシャルというものは存在しない。あるのは沢山の「最良の選択」であって、それぞれは擬ポテンシャルを特定の使用に最適化したものである。
 一般には、以下のような2つの競合する要素がある。
・精度と転用性の良さを求める場合には、一般に小さな切断半径Rcとなり、「硬い」ポテンシャルを選ぶことになる。というのは、原子の近傍でできる限り波動関数を正確に記述したいからである。
・擬ポテンシャルの滑らかさを重視すると、一般に大きい切断半径Rcとなり、「柔らかい」ポテンシャルを選ぶことになる。というのは、波動関数をできる限り少数の基底関数(例えば平面波)で記述したいからです。

◇ ウルトラソフト擬ポテンシャル
 擬ポテンシャルの1つの目標は、できる限り滑らかでしかも正確な擬波動関数を作ることである。
 例えば、平面波の計算では、価電子関数がFourier成分で展開され、計算の負荷はその計算で必要なFourier成分の数のべきで増大する。従って滑らかさを最大にするということの1つの意味のある定義は、決められた精度で価電子の特性を記述するために必要なFourier空間の範囲を最小化するということである。
「ノルム保存」擬ポテンシャルは、通常「滑らかさ」をある程度犠牲にして精度という目的を果たしている。これまでとは違う「ウルトラソフト擬ポテンシャル」と呼ばれる方法は、正確な計算という目標を、滑らかな関数と各イオン芯の周りの補助関数を使って問題を再表現するという変換によって達成している。この補助関数は密度が激しく変化する部分を表す。

◇ 射影演算子補強波(PAW)法:全電子波動関数の使用
 射影演算子補強波(PAW)法は、電子構造問題の解を求める一般的な方法であり、OPW法を再定式化して、全エネルギー、力、応力の計算の最新技術に適応させたものである。「ウルトラソフト」擬ポテンシャル法と同様に、これは射影演算子と補助局在関数を導入している。PAW法はまた全エネルギーに対する補助関数を含む汎関数を定義し、一般的な固有値方程式の解を効率良く求めるアルゴリズムの進歩を取り入れている。しかし、PAW法は、一般的なOPW表示と類似の形式で、全電子波動関数を保持しているという違いがある。全電子波動関数は核の近くで急激に変化するので、すべての積分は全空間に広がる滑らかな関数の積分と補強平面波(APW)法と同様にマフィンティン球における動径方向の積分で求められる局在した量の寄与とを組み合わせたものとして計算される。

◇ OPW
 価電子に対する内殻の影響を取り入れている。局在関数を上手に選べば、価電子状態に対する基底関数を滑らかな部分と局在部分に分けることができる。結晶中では滑らかな関数は平面波で表現するのが都合が良い。
 内殻の状態は、分子や固体中でも原子におけるものと同じであると仮定できることも多く、これがOPW法の実際の計算における基礎になっている。
 擬ポテンシャル変換の最大の利点は、擬ポテンシャルの形式的な特性と、同じ散乱特性が、違うポテンシャルからでも得られるという両方の事実を利用できることである。従って、擬ポテンシャルの一義性がないことを利用して、もとのポテンシャルより滑らかでかつ弱く選ぶことができる。たとえポテンシャルの演算子が簡単な局所ポテンシャルより複雑であったとしても、それが弱くて滑らか(すなわち、より少ないFourier成分で表現できる)であれば、論理的にも計算する上からも大変便利である。特に、波動関数は内殻の波動関数と直交していなければならないので、自由電子とは程遠いものであるにも関わらず、多くの物質で価電子バンドがほとんど自由電子に近いバンドになっているという見かけ上の矛盾
を簡単に解くことができる。その理由は、バンドは弱いポテンシャルに関連する滑らかなほとんど自由電子に近い波動関するに対する永年方程式によって決まるためである。

◇ 全電子波動関数の再構成
 擬ポテンシャルを使った計算では、直接求められるのは擬波動関数のみである。しかし、重要な物理的性質、例えば、核磁気共鳴実験におけるKnightシフトや化学シフトなどを求めるためには全電子波動関数が必要である。これらのシフトは核の周囲の状況や価電子状態を知る非常に感度の高いプローブであるが、得られる情報は内殻状態の摂動の影響を大きく受ける。その他の実験、例えば内殻準位の光電子放出と光吸収の実験では、内殻状態が直接関わってくる。OPW法とPAW法では内殻の波動関数が求められる。ところで通常の擬ポテンシャル計算から内殻の波動関数を再現することは可能であろうか? 答えは、ある近似の範囲内であれば可である。その手続きはPAW変換に密接に関係している。滑らかな擬関数を作るどのような「非経験的手法に対しても、分子や固体において滑らかな擬関数が計算されていれば、全電子波動関数を再構成する具体的な方法を定式化することができる。Mauriとその共同研究者たちはこのような再構成法を使って核の化学シフトを計算している。

◇ 非局所Exc汎関数
 Exc汎関数が、Hartree-Fockや厳密交換(EXX)のように本質的に非局所的な場合には価電子からの寄与の除去は複雑になる。一般に、非局所効果は全半径に及ぶので、擬波動関数が内殻半径の外では、ともの全電子問題の波動関数と同じになるように保つポテンシャルを作るのは不可能である。

◇ 球対称境界条件
 固体のいくつかの様相は原子やイオンに異なる球対称の境界条件を課すモデルでよく表現できる。その結果、価電子波動関数は原子のときよりさらに核の近くに集中するという傾向が分かっている。
R. M. マーチンら「物質の電子状態(上)」丸善
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References
[1] http://www.ciss.iis.u-tokyo.ac.jp/fsis/theme/nanoscal/report/ciao.pdf
[2] https://azuma.nims.go.jp/cms/software/ciao/ciao-manuals-folder/uh94hm
[3] https://azuma.nims.go.jp/cms/software/ciao/ciao-manuals-folder/6f57gy
[4] 第一原理シミュレータ入門 PHASE&CIAO
[5] http://ja.wikipedia.org/wiki/%E9%83%A8%E5%88%86%E5%86%85%E6%AE%BB%E8%A3%9C%E6%AD%A3 
[6] http://unit.aist.go.jp/ubiqen/gms/details05.html 又は http://www.aist.go.jp/ONRI/Vl/intface/calculation/mkpseudo.html
[7] http://www.cmp.sanken.osaka-u.ac.jp/~koun/o2knano/docs/user3.pdf
[8] http://www.geocities.co.jp/Technopolis/4765/INTRO/pseudoj.html
[9] http://www.geocities.co.jp/Technopolis/4765/INTRO/best10.html
[10] http://www.cmp.sanken.osaka-u.ac.jp/~koun/o2knano/tnotes/tr30.pdf
[11] http://www.affinity-science.com/siesta/quickstart.html
[12] http://www.cmp.sanken.osaka-u.ac.jp/~koun/o2knano/tnotes/tr34.pdf
[13] 笠井秀明ら著、計算機マテリアルデザイン入門、大阪大学出版会
[14] http://pmt.sakura.ne.jp/wiki/images/Mtopw9j.pdf in http://pmt.sakura.ne.jp/wiki/index.php?title=EcalJ
[15] アドバンスシミュレーション, 20 (2014) 75-85.(情報技術誌アドバンスシミュレーションは、アドバンスソフト株式会社ホームページのシミュレーション図書館からPDF形式がダウンロードできます)
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電子状態計算の教科書
Electronic Structure - Basic Theory and Practical Methods -
Richard M. Martin Cambridge University Press
ISBN: 0-521-78285-6
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固体物理関係の教科書
Condensed Matter Physics
Michael P. Marder Wiley-Interscience
ISBN: 0-471-17779-2
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