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粉末X線回折(XRD)

 ここではX線結晶構造解析の関連情報について記述する。
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■ XRD 測定のポイント
A. 集中法(一般的な実験室光源を用いた装置)は試料の高さが変わると焦点位置が変わる。低角で影響が大きい。そのため、試料の高さには注意し、凸凹も可能な限り無いようにする(試料ホルダーを1mmズラすと低角または高角方向に大きくピーク位置がずれる)。
B. ステップ幅は、半値幅の1/5〜1/10程度にする(半値幅が 0.10 の場合、ステップは0.02°程度。結晶性が低くブロードな場合は大きなステップサイズにして、計数時間を延ばすのも良いだろう)。
C. 重元素の場合はX線の吸収が大きくて侵入深さが短くなる。0.3 mmφのキャピラリーだと透過しない場合は 0.1 mmφにしたりする。
D. イオン結合が大きい材料だと、XRD測定後に色が付く。サンプルホルダーなどに跡が付くのはセンターカラーと呼ばれ、年月が経つと元に戻ると言われている。測定には問題ない。
E. 格子定数の計算には高角(2θ=80°以上)でピークトップが5000 cpsのスペクトルを用いる(2dsinθ=nλをθで微分したもの、すなわちΔd/Δθ=-d・cotθ=-d/tanθから、θ=80〜90°になると角度におけるdの変化Δdがかなり小さくなることが分かる)。
F. 結晶子径の評価は数nm〜100 nm程度で可能(200 nmは苦しい)。
G. 結晶子径の評価で用いるシェラー式でのKの値は、K=0.94, K=0.89 などが使われる。論文で用いられているK=0.94, K=0.89 の頻度はほぼ等しい。K=0.9 とした場合も同程度の採用率。
H. 結晶子径の評価で用いるKは半値幅の場合0.9、積分幅の場合1とする文献もある。
I. 積分幅(半値幅×(ピークの高さ - バックグラウンド))の計算は、バックグラウンドが傾いていると計算するのが難しい。
J. 結晶子径の評価には、Williamson-Hall 法があることも知っておくとよいだろう。
K. X線管球が古い場合、コンタミでW(タングステン)が出てくることがある。
L. 半導体検出器を用いた実験室系のXRD装置で100時間測定すれば、シンクロトンを用いた数分の測定と互角以上の結果を得ることができる場合がある。
M.  試料面と平行に配置している結晶が回折するため、結晶の配向きには注意が必要。場合によっては高角側(20度を超えた辺りから)で強度差が大きく現れる。
N. 発散スリットを1°から1/4°にすると高角領域でのX線強度が減少する。数倍の強度差がでることもあるので注意しておくと良い。
O. 試料からの蛍光X線のために一定量のバックグラウンドが発生することがある。Cu 球管では、V, Cr, Mn, Fe, Co, Ni, Cu, Zn, Gaで注意(バックグラウンドが高くなることを理解しておくこと)が必要。モノクロメーターを用いると蛍光X線をカットできる。
P. バックグラウンドが上昇している場合は、低角度領域の測定で、X線が試料からはみ出していないかチェックしてみることも大切。
Q. 結晶粒が球形でない場合や結晶の形状が反映された状態でサンプルホルダーに詰めた場合は、選択配向の問題が生じる。結晶がランダムになるように工夫が必要となる。
R. もし測定に問題が無ければ、試料作製方法によってピーク位置は同じでもピーク強度が異なることがありえる。この場合、強度が増えたピークの面が多くなるように結晶が成長している(低いミラー指数が成長しやすいので注意してみるとよい)ことが考えられる。
S. 最近は少なくなったが、サンプルホルダーが縦置きの場合は、ガラスではなくAlのサンプルホルダーを用いる(私の試料はサラサラで無理だったのでガラス試料板にし、エタノールを掛けて直ぐに測定させる)と言われている。でも、私は通常のガラス試料板を使っていますけどね。サンプルホルダーへの試料の詰め方は下記が詳しい。ただ、ガラスのサンプルホルダーで試料を均すときに強く抑えすぎると割れるので、光学顕微鏡用のガラスがある場合はそれを用いて試料を均すとよいだろう。
T. NISTのSiは角度標準にはなるが、強度標準ではないことに注意する。
U. 粉末(X線)では、事実上、非調和熱振動の計算は難しい。
V. デバイワラー因子:高角で強度が弱くなる効果。
W. 2θ= 35.1°と 37.5°、43.38°などに構造がある場合は、Al2O3の可能性がある。アルミナ乳鉢を用いて試料を砕いている場合にはチェックしておくと良い。
X. 2θ= 25°から低角側まで滑らかに立ち上がっていくバックグラウンドが見える場合にはダイレクトピークによるものである。この他、2θ= 23°近傍はガラス板による回折ピーク[8]である。私の場合は、エタノールやガラス板による回折ピークがあるかどうかを目視で判断できないほどダイレクトピークによるバックグラウンドが強かった。

下記の参考文献が参考になる。
[M1] http://www.crl.nitech.ac.jp/~ida/research/preprints/how_to_use_pxrd_1.pdf
[M2] http://www.crl.nitech.ac.jp/~ida/research/preprints/how_to_use_pxrd_2.pdf
[M3] http://www.crl.nitech.ac.jp/~ida/research/preprints/how_to_use_pxrd_3.pdf
[M4] http://www.crl.nitech.ac.jp/~ida/research/preprints/how_to_use_pxrd_4.pdf
[M5] http://www.crl.nitech.ac.jp/~ida/research/preprints/how_to_use_pxrd_5.pdf 
[M6] http://martens.pse.tut.ac.jp/tsuchiya/zaibutsu/kouzou3-H17.pdf
[M7] X線小角散乱入門: http://www.nims.go.jp/apfim/SAXS_tutorial.html
[M8] http://www.oxs.co.jp/SampleHolder1.htm
[M9] http://www.catvy.ne.jp/~t_sato/noeri_chem/kaisetsu/xrd.html
http://www.rigaku.com/ja/webinars も見てみると良い。
※ もし、帯電して粉が飛ぶ場合は、アスクルなどで買える除電してくれるグッズを用いてみる。
http://cmrc.kek.jp/beamlines/bl-8b/powder/index.html (キャピラリーへの試料の詰め方)
※ エタノールとメタノール混合溶液での回折パターン: https://staff.aist.go.jp/h.yamawaki/Nakayama/mediabkg.pdf ; Cu Ka であると 0.55 GPa の場合には 2θ=25.7°近辺にブロードなピークが見えることになる。常圧は1013 hPa = 0.1 MPa であるので、圧力が低くなれば低角度側にブロードな構造が出ると仮定すると、常圧での測定では2θ=20°から測定を始めても20°〜25°程度までブロードな構造が見えるかもしれない。バックグラウンドを上手く引けば問題無いと思っている。
石英ガラスのピーク: http://homepage3.nifty.com/agnesokutei/pag82005.htm
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■ リートベルト解析とXRD測定のポイント(上記とほぼ同じだが、下記でもよい)
1. 試料は手で触ってごりごりしていない様にする。
・粒径は0.5μm〜数μm(大きくなると再現性が無くなる。3μmが最適と聞く。教科書によっては10μmの記述もある)。どうしてもこの条件にできない場合は、平行ビーム光学系でさらに非対称法で透過法であるデバイシェーラー法(放射光)を用いる(この測定では内径0.1〜1.0mmφのガラスキャピラリーに試料を詰める。”透過法”で測定が行われるため、選択配向が緩和される。また、普通は試料軸を中心に回転させながら測定するので選択配向の影響がさらに小さくなる)。
2. 凸凹が無いようにし、高さも一定にする。
3. ステップ幅 0.1°
4. 測定範囲
・室内系(RIGAKUなど):3〜150°
・放射光:波長 0.4Å、3〜70°
・有機物質:105°以上のデータがノイズに隠れた場合にはカットしたりすることがある。
・構造解析:無機物(120°以上)、有機物(70°以上)
5. ピーク面積1%の精度が必要であれば、1万カウント必要。
6. 温度依存での格子定数を調べる場合には 最低 500 カウントでよい。
7. スキャン速度
・一般的には20〜30分程度(封入管)であるが、装置によってはそれが難しいこともある。
・室内系のXRDで測定する場合、リートベルト法では、最低限、最大強度が5000〜10000 カウントとなるようにするのが良いだろう。
※ 有機物の粉末試料を作製する場合は、乳棒を優しく摘んで 1h 程度する。このとき、問題がなければエタノールやアセトンなどを入れて粉砕する(湿式と呼ばれる)。
※ 選択配向の影響が出てしまう場合には下記の対処方法もある。
1. ガラス粉などの非晶質を試料に混入する
2. スプレーコート
3. キャピラリーに充填、またはフィルムに挟み透過法で測定する
※ リートベルト解析を行ったときに高角側の反射強度が強い場合は、粒径が30 μm以上になっていないかをチェックする。粒径が30 μm以上になると、消衰効果によって低角領域の強い反射の回折強度が減少する。このため、粉砕可能な試料は、乳鉢や自動粉砕機などを用いて粉砕することが望ましい。ただし、結晶構造の変化、ひずみの発生、非晶質化などのメカノケミカルな変化を起こす試料もあるので、慎重に調製する必要がある。有機溶媒などに浸せきした状態で粉砕するのも一法である。(中井泉ら著、粉末X線解析の実際 第二版、朝倉書店より)
※ L21の構造のような、粉砕をして壊れてしまうものは、もう一度、真空状態でアニールする必要がある(歪取 1000℃ 1h後、規則化 400℃ 4hなど)。この場合、アニールする前の粉砕では、コロイド(墨汁のような感じ)に近い状態になるまで細かくする。アルミナ乳鉢を用いている場合は、アルミナ乳鉢でキュッキュッとなる程度まで磨る。
※ 一般的に実験室系で用いられるブラッグ・ブレンターノ法は集中型光学系で擬似集中法、対称法で、反射法に属し、分解能と強度のバランスが良い光学系である。
※ 中性子回折も選択配向の影響を避けるのに有効であることは覚えておきたい。
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■ 混晶 ABxC1-xの原子間距離とVegard則
□ Vegard(ベガード則): virtual crystal approximation
・混晶の格子定数は成分平均
・a0VCA(x) = x*a0AB + (1-x)*a0AC
ここで、a0VCA(x) は混晶 ABxC1-xの格子定数、a0AB は純物質ABの格子定数、a0AC は純物質ACの格子定数。

□ CuBrxCl1-x (ZnS型構造)
・Cu-Br間距離はVegard則による格子定数からの予測と大きく異なり、純物質CuBrの原子間距離に近い。

□ RbBrvCl1-x (NaCl型構造)
・CuBrxCl1-x と比べてRb-Br間距離はVegard則による格子定数からの予測に近づくが、まだVegard則の予測とは大きくことなる結果。
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■ 元素置換を行った場合の格子定数の変化
・元素置換を行った場合、問題なく置換(元素が固溶)していれば置換前とピークの本数は変わらず、ピーク位置だけがわずかにシフトする。
・金属の場合は原子半径、酸化物の場合はイオン半径で格子定数の変化を議論する。
・置換した元素が固溶している場合、置換する原子の半径が置換前より大きければピーク位置は低角側にシフトする。
・置換した元素が固溶している場合、置換する原子の半径が置換前より小さければピーク位置は高角側にシフトする。
・置換した元素が固溶しなくなれば(別の相が析出すれば)、格子定数は変化せず、析出した相のピークが現れる。
・固溶していれば上記のVegard則(ベガード則)のように格子定数が直線的に変化する。そうでない場合は、固溶の限界(つまり、固溶限)を過ぎており、析出が起こっていることを示している。
・格子定数の変化は、析出(固溶限)後から格子定数が一定の値になるのではなく、直線から外れて徐々に滑らかな曲線を描きながら一定の値になるように変化していくこともある。この場合は、析出しつつもまだ少しずつ固溶していると解釈できる(固溶量は分からないのでリートベルトでなどで確認すること!)。
・元素置換によるピーク位置は、格子定数が大きくなれば低角側へ、格子定数が小さくなれば高角側へシフトする。
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■ 最強回折線のカウントと議論できる物性
・格子定数の決定:最強回折線の強度は500カウント以上
・リートベルト用のXRD:最強回折線の強度は5千から1万カウント程度以上
・MEM用のXRD:リートベルト用のXRDよりもさらに長時間測定したもの。
  放射光だと1回の測定5分程度で30万カウント程度(放射光は一回の測定で済む)。
  例として、放射光と同じ程度の精度で測定しようとすると実験室の装置では2から3日測定が必要
  私の経験だと、実験室の装置では4.5万カウントあたりから理論値と近い結果が得られるようになってくる(私の使っている実験室の装置だと、計数時間が10.0sで測定時間は18時間程度となり最強回折線の強度は4.5万カウント程度)。
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■ MEM測定の注意点
・低角度の回折が全て必要(その部分が結合に重要なところになる。それが無いと原子の間が平らになる)
・高角度側は熱などの影響(熱散漫散乱?)を考えて必要であれば除く。私の場合は2θ=20-120で理論値と整合性のある結果が得られた。
・信号/雑音比=S/N比が悪いとぼやけた像しか得られない。S/N比を高くして、ようやく結合の状態が議論できる。
・選択配向が無いこと。それがあると解析できない。
・出来るだけ単体(リートベルト解析したときに成分を指定して、MEMに持っていくことはできますが……)
・議論をしやすくするために可能な限り低温で(といっても、実験室で低い温度にすることは難しい。液体窒素の温度にできれば、放射光と温度に関して同等になる。放射光の場合はHeガス(気体)(液体窒素ではなくHeガスでした)を吹き付けているだけですけど。それで77 K程度まで冷えます)
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■ リートベルト解析
  私はリートベルトを相の同定と、置換元素のサイト選択性、占有率を調べるために用いている。
  置換したときのXRDからの(Vegard則からの)原子間距離とXAFSでの局所的な原子間距離が一致しないことがあるのは当然なので、そこを指摘するレフェリーがいたら丁寧に答えてあげよう。H. Sato et al., Jpn. J. Appl. Phys. 31 (1992) 1118.を読んでください。
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■ 薄膜で基板を保持するために粘土を使っているとき
 粘土の回折ピークが出ることがあるので注意。XRDで分析をするときは、まず使用しているものそれぞれのXRDを測定して、それぞれのピークが現れていないかをチェックすること!
粘土(使用している粘土にも寄る): 20.3, 22.6, 26.2, 30.2, 35.5, 40°付近にあらわれたりする。
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■ Pawley法とLe-Bail法
空間群と格子定数の初期値だけで、格子定数と結晶子サイズを算出する方法
(原子座標、温度因子、スケール因子などは精密化しない)
粗大粒子の影響がある試料や選択配向性のある試料、配向薄膜、バルク試料の解析に有効である。

■ Rietveld解析ができないデータ
・選択配向の影響が強く出ているデータ
・粗大粒子の影響が強く出ているデータ
・反射法測定(通常のXRD装置)で入射X線が試料からはみ出しているデータ
(低角では照射面積が広がる。通常の試料ホルダーに充填しているなら大丈夫でしょう)
・反射法測定で試料が薄いため、入射X線が試料ホルダーや基板まで突き抜けている場合

■ X線吸収係数が非常に小さい試料の場合
入射X線が試料の奥深くまで侵入し、角度シフトと回折プロファイルに非対称性が生じる。
(有機物、 炭素、MgO、BNなど)
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■ X線の波長 λ[Å]
Cu Kα1 1.54056, 1.54058 [L1]
Cu Kα 1.54184
Cr Kα 2.28970, 2.28964 [L1]
Fe Kα 1.93604, 1.93597 [L1]
Co Kα 1.78897, 1.78892 [L1]
Mo Kα 0.70930, 0.70926 [L1]
Ag Kα 0.55941
d = n λ / 2sinθ 
[L1] 中井泉ら著、粉末X線解析の実際 第二版、朝倉書店

  波長[Å] 波長[Å] 波長[Å]  
アノード Kα1 Kα2 Kβフィルタ
Cr 2.28970 2.29361 2.08487 V
Fe 1.93604 1.93998 1.75661 Mn
Co 1.78897 1.79285 1.62079 Fe
Cu 1.54056 1.54439 1.39222 Ni
Mo 0.70930 0.71359 0.63229 Zr

強度;Kα1:Kα2:Kβ〜100:50:25
(Reference; PANalytical)

W Lα 1.4767 (8.396 ke:特性X線励起電圧から算出)
波長:Cu Kβ < W Lα < Cu Kα
※ X線管球の強度は時間とともに低下します。強度低下の主な原因は、タングステンフィラメント(カソード)が蒸発し、タングステンがアノードとBeウィンドウに付着するためです。タングステンがアノードに付着すると、回折データに別の線が現れるようになります。(「XRD分析入門 動作原理の解説」PANalytical)

※ X線管球の運用 (Reference; PANalytical)
・X線管球の負荷推奨値
 測定:45kV, 40mA
 待機:45kV, 20mA
 冷却:15kV, 5mA (2分間保持後、高圧OFF、水停止)
・運用上の注意点
 結露を防ぐ運用
 待機時は余分なW堆積を防ぐため電流値を下げる
 冷却水だけを急に停止しない
http://oshiete.goo.ne.jp/qa/122539.html
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■ Kβフィルター
Cu線源: Niフィルター
Co線源: Feフィルター
上記のフィルターを利用する。
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■ ミラー指数の記号 [M1-M3]
[ ]:方向を表す
< >:対称関係にある方向
( ):面を表す
{ }:対称関係にある面
※ XRDのスペクトル図に指数付けを書き入れるときは()を付けてはいけない。[M4]
※ 英数字を全角としない。数値と単位の間にスペースを入れる。
[M1] http://www16.ocn.ne.jp/~structur/preparation/xrd.html
[M2] http://lecture.khlab.msl.titech.ac.jp/ynu/isc2006/20060616_04_XRD.pdf
[M3] 中井泉ら著、粉末X線解析の実際 第二版、朝倉書店
[M4] International Tables, Vol. A を見よ!
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■ 集中光学系における試料照射X線幅
W=[1/sin(a+b/2)+1/sin(a-b/2)*R*sin(b/2)
a: 入射角(Θ=2Θ/2) [単位°]
b: 発散スリットの発散角 [単位°]
R: ゴニオメーター半径 [単位mm]
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■ 外挿法による格子定数の計算
 縦軸に格子定数、横軸にcosθ * cosθ としてプロットし、縦軸との切片を格子定数とする。
 上記の他にも、横軸の取り方は色々と存在する。有名なのは、Nelson-Riley関数(ネルソン・ライリー関数)である。
 ※話は変わるが、複雑な構造の格子定数を知るために、「CellCalc」(http://www.noelcafe.com/bookmarks/entry_001140.php)というソフトがあった。
■ D=Kλ/βcosθ
・ Scherrerの定数: K=0.94 (ラウエ関数を積分幅の等しいガウス関数で近似)
・ Braggの定数: K=0.89 (ラウエ関数の積分幅Bと半値幅Wの関係)
・ 積分幅を用いる場合 K=1
■ Williamson-Hall plot
 結晶子径による広がりが1/cosθに比例し、歪による広がりがtanθに比例すると仮定。
β=Kλ/Dcosθ + 2εtanθ
ここで、βは半値幅、Dはサイズ、εは歪となる。これを下記のように書き変える。
βcosθ/λ = 2εsinθ/λ + K/D
ここで、縦軸をβcosθ/λ とし、横軸を2sinθ/λ としてグラフを描くと、切片の逆数がサイズで、傾きが歪として評価できる。
・ 複数ピークのプロファイルフィット
・ サイズと歪みを同時に評価できる
・ 等方的なサイズ・微小歪みを仮定している
・ 異方的なサイズの解析も可能
・ 微小構造の優れた診断ツールとなる
・ 直線となる結果が得られるのは稀である。下に凸となる結果もある。低角側は誤差を含んでいるので、低角側は除いて直線を引くことを考えてみる。
■ Halder-Wagner plot
・ 縦軸に β* / (d*)^2、横軸に (β*/d*)^2としてプロットする。
"The slope gives the mean apparent crystallite size and the y intercept of the straight line yields the microstrain." (Reference: http://www.sciencedirect.com/science/article/pii/S0925838800012214 )
※ Halder-Wanger plotの方がよいとの話も聞くが、Williamson-Hall plotとの特性の違いは分からない。
・縦軸に β2 / (tanθ)2、横軸にβ / (tanθ * sinθ)としてプロットする。βは積分幅 (rad)。
  Scherrer定数 K = 0.94, 傾き=0.94 * 波長 / 結晶子サイズ、縦軸の切片 16*不均一格子歪2
http://support.spring8.or.jp/Report_JSR/PDF_JSR_24B/2012B1323.pdf
・RITAN-FP だと「縦軸の切片値/1000 = 16 * 歪み * 歪み」から歪の値を算出し、得られた歪み*100とすると、単位は%となる。実験室光源だと「傾き/1000 = 0.94 * 1.5401(Å) / 10 / 結晶子サイズ(nm)」から結晶子サイズを算出する。
■ Hermans法
 結晶散乱強度と非晶散乱強度を求め、単純にその強度比により結晶化度を求める方法。
■ リートベルト解析
・ 等方的なサイズ・微小歪みを仮定している
 ※ 縦軸をFWHM(半値全幅)とし、横軸をd*とすると、サイズ効果の場合はFWHMに変化は無いが、サイズと歪みの効果があるとFWHMはある傾きを示すプロットになる。
 下記の文献が詳しいので一読しておくと良い。Kの値をどれにするかも良く分かる。
 http://www.crl.nitech.ac.jp/~ida/research/memo/ConfusedScherrer.pdf
 http://www.osaka-kyoiku.ac.jp/~rck/kandori.pdf
・ 吸収補正因子(μR)の計算方法
 放射光を用いた場合には、吸収補正因子を計算して、1%未満の吸収に収める必要がある。
 Rietan-FPでは XMUR2 で μR = 線吸収係数μ * 試料の半径(キャピラリー半径) R を入力する必要がある。XMUR2 < 0.1 であれば、XMUR2 = 0.0 として差し支えない(0.1でも0.0でも結果はほとんど変わらない)。
 円柱状の試料形状の場合には、吸収係数は回折角2θの関数になることが知られているので、測定する回折角範囲内で吸収の割合を考慮することが必要となる。多くの場合、放射光では2θ=数°〜 80°程度であるので、この範囲内でX線の吸収による影響が無視できなければならない。吸収係数は、波長(各原子の吸収端は避けることが必要)、線吸収係数、キャピラリー半径に依存する。これらを小さくすれば吸収の影響は小さくなる。2θ= 0°と 80°での吸収係数を計算して、その差が1%未満に収まる波長を選択する。計算をしてみると0.5 Å以下の波長を選択すればよかったりする(各自一度は調べてみて欲しい)。計算ソフトとしては「apt」「XTrans」が知られている。
 具体的な線吸収係数の計算方法は Rietanのmanual にある 「7.2 Correction for Microabsorption」 を見るか、”坪田 雅己、伊藤 孝憲  著、「RIETAN‐FPで学ぶリートベルト解析」”を読むと良い。
◇計算式
 μ = (Z値 * ΣX線吸収係数) / ( 体積[Å3] * 10-24 ) [cm-1]
 X線吸収係数(または原子吸収係数): http://lipro.msl.titech.ac.jp/abcoeff/abcoeff2.html
 Z値 = ρ * V * NA / M = 密度 * 単位胞の体積 * NA / 化学式単位での質量
 ここで、NA = 単位胞中にある原子数(質量) / 化学式単位での原子数(質量)である。理想的な試料であれば、Z値=NAである。Z値は、有機結晶(1.0〜2.0程度)、錯体結晶(〜2.0程度)、軽元素からなる無機結晶(〜3.0程度)、重元素を含む無機結晶(5.0〜6.0程度)の傾向がある。定比組成の結晶であればZ値は必ず整数になる。六方晶以外では Z=1, 2, 4, 8, 12などの値、六方晶ではZ=1, 3, 6, 12などの値になることが多い。
  リンデマンガラスのキャピラリーφ0.3 [mm] であれば、r = 0.3 / 2 / 10 = 0.015 [cm] であるので、これをμに掛ければよい。
 実際のμrは充填率が低い(100%充填できないのはキャピラリーに試料を詰めてみれば感覚的に理解できる)ために小さな値になる。デバイ・ワーラー因子をしっかりと決めたい場合は上記の計算をして大丈夫か調べておくことが重要である。
・ 位相角と対称心とフリーデル対[P1-P4]
 構造因子 F = A + i*B という関係になる。ここで、対称心のある結晶であればA のみになる。そのため、虚数の影響がなく(ただし、Aか-Aかの問題があるため、対称心のある結晶でもフーリエ合成やMEMでは幾つかの情報が必要となることに注意)、フリーデル対を考慮しなくてもよくなる。異常(分散原子)散乱因子は虚数を含むので、異常(異常分散)散乱因子の影響がなければと考えてしまうが、比較的重い原子(第3周期以降[P1])ではこの効果が大きくなるため、常に対称心に注意を払っておく方が安全である。フリーデル対の具体的な図はRietanのmanual にある「Friedel pair」を参照するとよい(International Tables Vol. Aを見て、一般等価位置(一番上の対称性)、x, y, z の組で、上にすべてバーのついたものがあれば原点に対称心が存在する)。
 または LPAIR を十分に収束させた後に LPAIR 1 とするのもよい。
 [P1] http://www.chem.chuo-u.ac.jp/~element/PDFs/OrgChem4/OrgChem4-13.pdf
 [P2] http://pharm.ph.sojo-u.ac.jp/~kumayaku/KH/X-ray_append.pdf 
 [P3] http://www.chem.chuo-u.ac.jp/~element/PDFs/OrgChem4/OrgChem4-12.pdf
 [P4] http://www.polyoxo.cms.titech.ac.jp/crystallography/orthorhombic-space-groups.html 
 [P5] http://www.google.co.jp/url?sa=t&rct=j&q=&esrc=s&source=web&cd=2&cad=rja&uact=8&ved=0CDIQFjAB&url=http%3A%2F%2Flecture.khlab.msl.titech.ac.jp%2Fynu%2Fisc2006%2FHowToReadInternationalTables.doc&ei=onF9U4KXGIa58gWAh4K4Bw&usg=AFQjCNFfOjdXOrW40UMtD8i4tQVms1ghuQ&sig2=FMH3-uQmYkLIjR8haccrlg
・ 非線形最小二乗法[M1]
 幾つかの方法があるが、一般的には、Taylor 展開した一次の項までを用いて、それをまとめて行列を作り、その差 Δx を求める(ここで、xはユーザーが初期値を入力するような未知のパラメーターである)。初見でRietan の manual にある「Nonlinear Least-Squares Methods」が分からなかった場合は、この一般論を頭に入れて、それを読み返すと良い。
 [M1] http://mukiken.eng.niigata-u.ac.jp/satokougi/daigakuin/powderX-ray.pdf
■ 準結晶におけるXRDでの解析(下記のHPを参照すると良いだろう)
http://wcp-ap.eng.hokudai.ac.jp/yamamoto/
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■ 格子定数の計算方法とエラーバー
A. 各2θでの格子定数を求めて、その平均を格子定数、不偏標準偏差をエラーバーにする。[E1]
B. BGを除いて、Kα2を除き、Savitzky-Golay法で9点から13点でスムージングしてピークの位置を決定する。理想的には全ての反射ピーク(現実的には代表的な強い回折ピーク)を用いて、縦軸に格子定数、横軸を ((cosθ)^2/sinθ + (cosθ)^2/θ )として最小二乗法で求める。格子定数と最小二乗法の差分から不偏分散と不偏標準偏差を求め、±2*不偏標準偏差を信頼区間 95.44%、±3*不偏標準偏差を信頼区間 99.73%としてエラーバーとして記述する。最小二乗法でのy軸の切片を格子定数とする。ここでθは、2θで得られている値を2で割ったものである。
 (一応注意点として書いておくと、完全パターン分解やリートベルト法ではスムージングしたデータを用いてはいけない)
 Δθhkl = 0.02°の範囲でピーク位置を決定できれば、2θ=θhkl = 30°以上で誤差が10-3 Åになる。
 Δd = λ* cosθhkl*Δθhkl / (2*sinθhkl* sinθhkl
※ この他の格子定数に関する情報は、中井泉ら著、粉末X線解析の実際 第二版、朝倉書店 に簡単にまとめられている。
[E1] http://www.scn.tv/user/m-yamada/report/25.pdf
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■ 結晶子径・歪み測定での注意点
1. 高分解能測定(ゴニオ半径、受光スリットに注意を払う)
2. 装置による広がりの補正
 結晶子径が大きく(25μm程度)、歪みが無い標準試料測定
 NIST640(Si)、NIST660(LaB6)
3. 試料厚みよるピークの広がりにも注意が必要(軽元素試料のX線浸入深さもチェック)
4. 重なりの無いピークを選択
5. X線強度は 10,000 count 以上
6. 角度範囲は 半値幅の5倍
7. データ処理として、バックグラウンドの選択、α2除去、プロファイルフィットに注意を払う
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■ XRDによるその他の分析方法
◇ ロッキングカーブ測定
 Bragg角度のまわりでサンプルを回折面内で回転させることで、結晶の結晶性(配向度)を評価できる。
 滑らかな曲線が得られるのが良い。粗大粒子や選択配向があると滑らかにならない。
◇ 薄膜測定
 試料に対するX線入射角を小さな角度で固定し、X線の浸入深さを浅くした状態で検出器のみを動かす.
入射角度が浅いほど表面の構造が見える。
◇ X線反射率測定
 2θ= 0 から 4°程度までを測定。0°からフラットな部分が終わって勾配が始まる角度が密度ρ全反射角。勾配が表面粗さ。周期的な凸凹の構造が膜厚(1/T)を示す。測定膜厚範囲は数nmから400 nm まで。金属薄膜、透明薄膜、超格子構造の解析が可能で、膜厚、表面ラ粗さ、密度解析が可能。
◇ 残留応力測定
◇ 極点図測定(配向解析が可能)
◇ 小角散乱(調査中)
 2θ= -0.1 から 5°まで検出器を動かして測定し、吸収補正及びバックグラウンド補正をして、フーリエ変換を行う。試料は透過法になる。
[O1] http://www.spring8.or.jp/ext/ja/iuss/htm/text/06file/sp8_indu_appl_mtg-26/ohnuma.pdf
[O2] http://www.jssrr.jp/journal/pdf/19/p338.pdf
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■ XRDでのピークが非対称になる理由
・ X軸の軸発散
・ 試料の幾何学的配置
・ デバイ環の非ゼロ曲率(デバイシェーラーリングが曲がっているために非対称になる)
・ アンブレラ効果(2θ角度における非対称成分)←X線の発散制限{横方向}をするためにソーラースリットが用いられている。予算があればソーラースリットをより良いものにすることも考慮してみると良い。(多結晶体の各回折線は"ring"状になる。ラインフォーカスからのX線は照射幅が広がり、ピークの対称性が悪くなる。これをソーラースリットでいくらか防いでいる)
etc
[AS1] http://mukiken.eng.niigata-u.ac.jp/satokougi/daigakuin/powderX-ray.pdf
[AS2] http://homepage3.nifty.com/mnakayama/research/tips4/xrd.htm
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■ 析出物の同定
名古屋工業大学図書館には自由に使えるPDFが存在する。
1. 2θをd値に変換する(そういうプログラムが付属している)
2. PDFでのX-searchでd値を入力する。
3. X-searchの上の方にある欄を選んでいくと、元素を指定できるウインドウを見つけることができる。
4. 元素を幾つか限定して、ピークに対する析出物の候補を調べていく。
5. Allpy Phase Diagram DatabaseTM (http://www1.asminternational.org/asmenterprise/apd/default.aspx)やMaterial Projectで構成元素での相図(三角図など)を得て、そこから結晶構造に必要なデータを得る。
6. Prototypeに書かれている構造をNIMSのデータベースからcifのデータをダウンロードする。
7. VESTAで開いて格子定数と元素をAllpy Phase Diagram DatabaseTMに記載されているものに書き換える。
 Formulaを参考に占有率も書き換える。
8. VESTAの粉末回折のシミュレーションを走らせて、VESTAのtemのフォルダにあるlstを見る。
 (結晶構造の入力が間違っていないかチェックすること)
9. lstに羅列されている2θと強度の関係をテキストにコピー&ペストし、excelで呼び出して、グラフ描画ソフト(igor)などにコピー&ペーストする。
10. 相図での安定な組成の範囲や温度、第一原理計算による形成エネルギーなどから候補をさらに絞り込む。
11. 多相でのリートベルト解析を行って、成分量を±3%範囲内で同定する。
※ VESTAのシミュレーションにおいて、結晶構造の入力が間違っていないかチェックすること。最近、学生と一緒にシミュレーションを行なって、違う結果が出たので何故かが分からず{RIETANのヴァージョンが違っていたのでそのせいだと思って}泉先生に相談したのですが、、入力が一部一桁間違っているということが分かって、泉先生にご迷惑をお掛けしてしまいました。
※ PDFでも不明なものもあるのでその場合は候補がどれかを示す。
※ アルミナ坩堝で砕いている場合は、アルミナ(Al2O3)が現れる可能性があることにも注意。
※ 5x10^-5 Torrで試料を作製していても酸化物が見られる試料もあるので注意。
※ ピーク位置は近いが強度が合わない場合は、選択配向の影響が考えられる。
※ 格子定数の歪みは0.数%程度(高圧の分野でもこれだけ歪ませるのは大変)。数%ある場合は他の構造も考える。
※ ヒューム・ロザリーは溶質原子の原子サイズがホスト原子のそれよりおよそ15%以上大きいと一次固溶体の固溶範囲が狭まることを指摘している。
※ 選択配向以外で強度が変わる場合には、強度が強くなっている場合は電子数の多い原子番号の多い原子の占有率が特定サイトで増している可能性を考える。その逆もしかり。
※ ピークは強いもの3本を指定できれば最も良いが、そうでない場合は1本ででも調べる。構成元素を絞って検索すれば、十数程度の候補になるだろう。無機物で窒化物が候補に挙がることがあるが、窒化物は特殊な作り方をしないと作れないことが多いので優先順位は低め。酸化物は中真空でも見られることがあるので判断が難しい。
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■ X線と中性子回折
1) La, Bi, Pb, O は中性子が有利。
2) 中性子では(例えば、直径0.5cm で均一の試料が必要になり)粉末X線回折よりも測定用の試料作製が難しい。
3) Li は占有率がほぼ1ならX線、2割程度の占有率なら中性子とするなどを試みてみる。
4) Hは中性子回折でのBGを上げる。Dはそうでない。
5) 中性子回折において、d/mm が小さいところまで取得できる利点があっても、ローレンツ因子が急激に減少し、TDSがd2で増加し、反射が密集してくることは忘れてはいけない。
※ NISTに中性子の散乱・吸収のデータがある。中性子の散乱長は”International Tables for Crystallography Vol. C”、「4.4.4. Scattering lengths for neutrons」(http://it.iucr.org/)に記載がある。
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■ 熱散漫散乱
 原子がその平均位置のまわりで熱振動している。
 熱振動による原子の平均位置rからのゆらぎが回折強度に及ぼす効果を考えます。
 熱振動の振幅数は10^12-10^13/sec程度(赤外線の振動数)です。
 平均位置からの変位をu(uの値は時々刻々と変化する)としますと、ある瞬間での正確な原子位置はr+uとなります。
結晶構造因子にあらわれる位相因子は、
 exp(2πig・(r+u))
となります。平均をとると、
 T = <exp(2πig・(r+u))>
となり、Tをデバイ・ワラ―(Debye-Waller)因子といいます。
 Bragg反射の強度(単純に強度にデバイ・ワラ―因子が掛け算される)が原子の熱振動の影響によって減衰します。
 熱振動のないときにくらべてpeakの強度が減少します。ここで注意することは、peakの幅は影響を受けず変化しないことです。強度の減少分は散漫なバックグラウンド(温度散漫散乱)を作ります。全強度はBragg反射の強度と温度散漫散乱の強度を足したものになります。減衰因子であるデバイ・ワラ―因子にはg^2が含まれるので、次数の高い反射は大きな減衰を受けます。
 熱振動の振幅の2乗平均<u^2>は温度Tに比例するので、温度が高いと反射強度の減衰が大きくなります。
 高次の反射は低次の反射に比べいっそう大きな減衰を受けます(より観察しにくくなります)。逆に温度を下げると高次の反射が明瞭に見えるようになります。絶対零度では減衰がまったくないかといいますと、原子の零点振動のために、10%程度の減衰があります。
 温度因子、デバイ・ワラ―因子、原子変位パラメーターなど、熱振動に関する用語は、いくつかの異なる定義が使われており、注意が必要です。国際結晶学会の推奨する熱振動関係の用語と定義が文献[1]に載っていますので、これに従うことが望ましいです。
[1] K. N. Trueblood et al., Acta Cryst. A52 (1996) 770.: http://ww1.iucr.org/comm/cnom/adp/finrepone/finrepone.html

田中通義ら「やさしい電子回折と初等結晶学」共立出版
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■ 散乱
 電子に対する原子散乱因子fが散乱角とともに単調減少する理由は以下の通りです。
 加速電圧200kVの電子線の波長は0.00251nmです。電子線に対する散乱体(原子核とそれを取り巻く電子による静電ポテンシャル)の大きさを平均的な結晶の原子間距離の半分0.1nmにとることにします。散乱体の大きさは電子線の波長に比べて十分大きいことがわかります。
 電子がこの散乱体によってある角度に散乱される場合を考えます。散乱体の中心を通った電子と端を通った電子の間には光路差による位相差を生じ、散乱角が大きいほど光路差(位相差)は大きくなり干渉性が悪くなり、散乱振幅は減衰します。X線の場合の散乱体は原子の周りの電子雲です(原子核は重すぎてX線では揺り動かすことはできません)。
 X線による散乱振幅も電子線の場合と同様に、散乱角とともに減衰しします。中性子回折の場合は原子核による散乱です。普通使われている中性子の波長は0.1nm程度で、原子核の大きさは原子の大きさの10^-4倍です。
 波長に比べて散乱体は十分小さいので、散乱角が大きくても回折波同士の位相差は小さく干渉の度合いは下がりません。
 したがって中性子に対する核散乱因子は散乱角に対して減衰しません。
電子線:静電ポテンシャル:散乱への影響範囲(大)
X線:電子雲:散乱への影響範囲(中)
中性子線:原子核:散乱への影響範囲(小)
 特定の形状の結晶が逆格子点付近でどのような回折強度分布を与えるかは、ラウエ関数によってわかります。ラウエ関数の式は数学的には結晶の形状にフーリエ変換を施したものです(結晶構造因子の式も単位格子内の結晶ポテンシャル分布のフーリエ変換です)。したがって、フーリエ変換の性質を知っておくと、逆に、回折強度の分布から実際の結晶の形状が推定できます。
 原子散乱因子の角度変化は、散乱体の広がりに対するフーリエ変換の性質から理解できます。
 波長に比べて散乱体が十分小さい場合は、散乱体をデルタ関数と考えれば、そのフーリエ変換は角度に対してフラットになります。散乱体がガウス関数のように広がりを持てばそのフーリエ変換は角度とともに減衰するものになります。
田中通義ら「やさしい電子回折と初等結晶学」共立出版
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[1] 化学 Vol.65 No.9 (2010).
[2] 化学 Vol.66 No.12 (2012).
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