教育指導論

 ここではまずはじめに論文執筆に役に立つ情報をまとめる。しっかりとした指導教官の下で教育されていれば、日本語で論文(3枚程度)を執筆後、それを英語に訳すのに2〜4日(最速1日、長くて1週間)あれば大丈夫だろう(ただし、英語に自信がない場合は、勉学も含めて、余裕を持った日程で取り組んで貰いたい)。<旧帝などで論文を多く出している研究室は、学生が論文の原案を教官に渡すと、1週間以内に返事を出す。加えて、プロシーディングスは0.5点、投稿論文は1点として、1点で学生用にPCを買うという方針にしているところもある>
「講師コラム」も面白い: http://www.johokiko.co.jp/column/column.php
http://panoramic-view.info/pdf/Stylebook.pdf も読んでおくとよいだろう。
※ 西出利一『理系のための文章術入門』化学同人も読んでおくとよいだろう。
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池谷祐二『記憶力を強くする』講談社
 私は東京大学の教職員という立場として毎日のように東大生に接しています。ここの学生たちは、確かに、厳しい受験勉強を通過してきた強者ですが、それでも天才的に頭がよいという学生はそれほどいません。たまにいたとしても、それは例外中の例外です。たいていの人は一見抜群の記憶力を誇る頭脳をもっているように見えても、それは単に記憶するコツを心得ているにすぎません。要領よく記憶しているだけなのです。もちろん、そのコツとは「(記憶する対象の)法則性をつかむ」こと、そして「理解して覚える」ことにほかなりません。つまり、記憶力とは本人の心がけ次第なのです。
 語呂あわせもまた、そうした記憶のコツのひとつとしてしばしば用いられます。語呂あわせにもコツがあります。ただ見て覚えるのではなく声に出してみるということです。なぜなら、目の記憶より耳の記憶の方が心に残るからです。
 さらに、語呂あわせを言葉の音声のリズムだけで覚えるのではなく、言葉の意味していることをきちんと「想像」することもまた大切です。そうすることによって、記憶はさらに補強されます。そのために多少の時間がかかっても、やはり語呂合わせを自分で作るのがよい方法です。そして、できる限り語呂合わせの意味している状況を具体的に想像するのです。想像すれば想像しただけ、はるかに記憶に残りやすくなります。「想像は知識よりも重要である」とは天才アインシュタインの言葉です。もちろん、これがシナプス可塑性の「連合性」を活用した記憶術であることはいうまでもありません。
 すでに述べたように、ものごとを理解し連合させると、その分覚えやすくなりますから、単一のことを記憶するときでも、できるだけ多くのことを連合させたほうがよいということになります。このように事象の内容を連合させて、より豊富にさせることを「精緻化」といいます。常に精緻化を心がけていれば、記憶がたやすくなり、かつ、その記憶も有用なものになります。
 そして、さらに重要なことは、ただ単に知識的な連合に努めるより、自分の「経験」に結び付けて記憶した方がよいということです。なぜなら、自分の体験が関連してくれば、その記憶は「エピソード記憶」となるからです。エピソード記憶には意味記憶より優れた点があります。それは、初めから意味記憶として覚えるよりも「忘れにくい」ということ、そして、いつでも「思い出す」ことができるということです。
 エピソード記憶を簡単に作る方法は、覚えた知識(意味記憶)を、友達なり家族なりに説明してみることです。すると「あのとき教えたところだ」「そういえば、こういう図を描いて説明したかな」といった具合にエピソード記憶になります。 
(省略)
 じつは、忘却を早める方法があります。それは他のことを追加して記憶することです。たとえば、エピングハウスの実験で三文字の羅列を二十個記憶させたとします。忘却曲線によると、翌日まで覚えている数は八個(40%)程度になるはずなのですが、それまでの間に、さらに別の文字列を10個追して覚えさせると、初めの20個を覚えていられる割合はかなり減ってしまいます。
(省略)
 エピングハウスはさらに、どれほどの間隔を空けて復習するのがもっとも効率的なのかということを調べています。彼の実験によると、1ヶ月以上空けてしまうと、二回目のテストを行っても記憶力はほとんど増強されません。どうやら、無意識の記憶の保存期限は1ヶ月程度のようです。(省略)つまり、この1ヶ月こそが復習の絶好のチャンスなのです。このタイミングを逃すと、復習の効果は得られません。効率のよい復習とは、以前の記憶が海馬に保管されているうちに、覚えたい情報をもう一度、海馬に送信してやることです。そうすれば、海馬はこの情報を「必要」な情報であると判断して、側頭葉に「これを記憶せよ」と送り返すのです。すると、側頭葉は、海馬の指図どおり、その記憶を保存してくれます。
(省略)
 忘却曲線を考慮に入れると、科学的にもっとも能率的な復習スケジュールは、まず1週間後に1回目、つぎにこの復習から2週慣後に2回目、そして、最後に2回目の復習から1ヵ月後に3回目、というように1回の学習と3回の復習を少しずつ間隔を広くしながら2ヶ月かけて行うことです。そうすれば、海馬はその情報を必要な記憶と判断してくれます。
(省略)
 米国の神経医学者スティックゴールドは2000年の認知神経科学雑誌に、何か新しい知識や技法を身につけるためには、覚えたその日に6時間以上眠ることが欠かせないという研究結果を発表しました。
(省略)
 また、レミニセンス現象は「勉強時間」についても大切なことを教えてくれます。それは、1日に6時間まとめて勉強するくらいなら、2時間ずつ三日に分けて勉強した方が、途中に睡眠が入るため能率的に習得できるということです。毎日コツコツと少しずつ勉強したいものです。
(省略)
 一見、遠回りに感じるかもしれませんが、しっかりと学習手順を踏んだほうが失敗の数も少なくてすみます。ですから、いきなり高度なことに手を出すよりも、基礎を身につけてから少しずつ難易度を上げていったほうが、結果的には早く取得できるのです。
(省略)
 手続き記憶が天才を作るわけです。
 いま、皆さんがAという事象を覚えたとします。このとき同時に、Aという事象の「理解の仕方」も、気付かないうちに手続き記憶によって脳に保存されます。したがって、次にBという事象をおぼえようとしたとき、Aの手続き記憶が、無意識にBの理解を助けて、容易にBを記憶できるようになります。もちろん、同時にBの手続き記憶もまた自動的に記憶されます。しかし、このとき脳で起こる現象はそれだけではありません。新しく覚えたBの手続き記憶もまた自動的に記憶されます。新しく覚えたBの手続き記憶が、すでに記憶しているAの理解をさらに深めてくれるのです。
 つまり、AとBの二つの事象を覚えると、「A」、「B」「Aから見たB」、「Bから見たA」というように、「事象」と「事象の連合」が生まれ、記憶した内容に、四つ(2の2乗)の効果が生まれるわけです。このように、記憶力の相乗作用には、一般的に「累積(べき乗)の効果」があります。したがって、勉学の効果は幾何学的なカーブを描いて上昇します。
 たとえば、いま皆さんは成績が1のところにいるとします。そして、勉強の目標達成を1000に定めます。勉強してランクが上がると、成績は2になります。さらに猛勉強をして、もう1ランク上がると、成績は4になります。こうして、努力を続けていくと、成績は8、16、32、64と少しずつ累積効果を示してきます。
 しかし、こんなに努力したにもかかわらず、現在の成績は64です。目標の1000に比べれば、スタートの成績からほとんど上昇していないかのように思えます。ですから、皆さんの多くは、この時点で「なんでこんなに猛勉強をしているのに自分の成績は上がらないのだろうか」「私は本当に才能がないのかもしれない」と真剣に悩んでしまうことでしょう。そして、1000の成績をもった人を見れば「とてもかなわない」「ああいう人を天才というのだおる」「まさに別の人種だな」と思うはずです。たいていの人は、この時点で、自分の才能のなさに落胆して、勉強をあきらめてしまいます。そこで、成績1000を超えた人を便宜的に「天才」とよぶことにしましょう。
 しかし、さらに忍耐づよく勉強を繰り返すことのできる人ならば、その後、成績は128、256、512と上昇していきます。じつは、ここまで努力して、ようやく勉強の効果が目に見えて確認できるようになります。これが勉強と成績の関係の本質です。そして、もう一息の努力をすれば、ついに成績が1024となり、目標に達成できるのです。勉強を続けていると、突然の目の前に大海がひろがるように急に視界が開かれて、ものごとがよく理解できるようになったと感じる瞬間があります。ある意味「悟り」にも似た体験ですが、こうした現象はまさに勉学の累積効果によるものなのです。
 ここまで到達できれば、成績を2048に伸ばすことも、あと少しの努力で可能です。これが勉強の相乗効果の実体なのです。そして、2048に到達した人は、さんざん努力してようやく64にまでたどり着いた人から見れば、まさに大天才のように見えるのです。
 勉強の効果に関して、もうひとつ言えることがあります。それは、天才と凡人の能力の差は確かに大きいけれども、天才どうしの能力の差はさらに大きいということです。成績が1024と2048の両者はともに天才であるけれども、この2人の差は1024ですから、成績値としては恐ろしいほどの差になります。もちろん、1024という差は、成績が64の凡人には、もはや推し量ることのできないほどの差です。
(省略)
 こうして考えると、ものごとの習得において、もっとも大切な心得は「努力の継続」であることがわかります。努力を続けて初めて報われるわけです。ですから、なかなか結果が現れないからといって、すぐにあきらめてはいけないのです。もちろん、周囲の天才たちを見て躊躇することもいけません。彼らと自分の能力を単純に比べることは無意味です。なぜなら、努力と成果は比例関係にあるのではなく、累乗関数の関係にあるからです。自分は自分。いまは差があっても、努力を続けていれば、いつか必ず天才たちの背中が見え、そして彼らを射程距離内にとらえることができます。こうした成長パターンを示すのが脳の性質なのです。たとえ効果が目に見えなくとも、使えば使っただけ着実に、能力の基礎が蓄積されていくのです。ときに勉強が辛くなったら、この事実を思い出して自分を鼓舞してください。いつかきっと効果が現れるから、もっとがんばろうと。「天才」とは、努力が足りない凡人によって作られた言葉です。この言葉にだまされてはいけません。「九九パーセントの努力と一パーセントのひらめきです」と天才エジソン自らが語ったように、「天才」とは神によって与えられた天賦の才能ではなく、血のにじむような努力の賜なのです。
(省略)
 記憶力を増強させる方法をいろいろと述べてきました。その結果、「好奇心」と「努力」と「忍耐力」、そして、ちょっとした「コツ」が重要であることがわかりました。(省略)本人の姿勢と気持ちのありようが要素としては大きいのです。結局は「やる気」がなければ記憶力は増強されません。
◇ LTP(シナプス結合の増強が長期的に持続する現象:適度な不安感や危機感は記憶力を一時的に増強させる。一方、ストレスがかかるとLTPは大きく減少する。記憶力はストレスに弱いことを覚えておこう。)はドコサヘキサエン酸(DHA)で大きくなる。
◇ 海馬がθリズムに乗るとLTPが起こり易くなる。初めての場所にいったり、初めての人に会ったりしたときに、海馬は自然にθリズムの活動をします。(省略)しかし、こうした特別の状況でなくても、θリズムを意識して発生させることができます。もっとも効率的な方法は、覚えたい対象に興味を持つことです。(省略)「うんうん、なるほど、それでつぎにどうなるんだ?」と積極的な姿勢でいるほうが、海馬のθ波は大きく発生します。
◇ 記憶の適齢期(臨界期):絶対音感は3から4歳。言語を覚える能力は6歳くらいまでが高い。ただし、言語の臨界期は絶対音感ほど厳密ではなく、中学生になってから英語を習い始めても習得はできます(学習のスピードが遅くなるだけ)。中学生のころでは意味記憶の能力がまだ高い。しかし、この年齢を超えたころから、少しずつエピソード記憶が優勢になってきますので、これまでのような丸暗記作戦ではいずれ通用しなくなります。
 にもかかわらず、この事実に気付かずに、いつまでも同じ様な勉強方法を繰り返していると自分の記憶力に限界を感じるようになるのです。(省略、歳をとって)本当に記憶力が落ちたわけではなく、記憶の種類が変わったにすぎません。ですから、自分の記憶についてよく理解して、それに応じた勉強方法をとることが大切なのです。
 歳をとって、エピソード記憶が発達してくると、丸暗記よりも、むしろ論理だった記憶能力がよく発達してきます。ものごとをよく理解して、その理屈を覚えるという能力です。当然、勉強方法もそうした方針に変えていく必要があります。この努力を怠ると、もはや効率的な学習はできません。そして、授業についていけなくなり、落ちこぼれてしまう可能性すらあります。
◇ 脳を詳細に調べてみると、確かに、神経細胞の総数は歳とともに減っていきますが、シナプスの数はむしろ反対に増えていくことがわかります。つまり、神経回路は年齢を重ねるにしたがって増加していくのです。この事実は、若い頃よりも歳をとったほうが記憶の容量が大きくなるということを意味しています。
◇ 私たちは短期記憶を使ってものを無限に覚えることができるわけではありません。一度に記憶できる個数が限られているのが短期記憶の大きな特徴です。その数はおおよそ七個です。訓練してうまく覚えれば九個くらいまで記憶することができますが、下手をすると五個くらいしか覚えられないこともあります。いずれにしても短期記憶に関してはあまり個人差がなく、人間が瞬間的に把握して記憶できる対象の数はどういうわけか七個程度なのです。
(省略)たとえば、53-9046-7281のように10桁になってしまい、覚えるのが困難になります。しかし、途中に入る「-」が短期記憶を助けてくれるのです。「-」がないと、5390467281となって、短期記憶の範囲を完全に超えてしまいますが、数字の羅列の途中に「-」を入れて韻リズムを作ると、「53」「9046」「7281」という大きく三つのグループができ、短期記憶の容量内に収まるのです。グループ化によって記憶容量が増えるというわけです。このようにグループを作ってものを覚えることを専門用語で「チャンク化」といいます。私たちが普段から知らず知らずにやっているちょっぴり高度な記憶術です。
◇ 脳内の海馬に一時的に保存された事柄が長期記憶に変わるまでは1ヶ月ほどかかる。この1ヶ月の間に、海馬は脳に記憶として定着させるかどうかを選別する。そのため、1月以内の復習が欠かせない(脳に入力された情報は海馬で2〜4週間、一時保存される。脳はその間に3〜4回以上使われた情報を重要と判断して長期記憶化する)。1週間に3回アプトプットもよい方法。
※ 語呂合わせは一つではなく複数作るのがオススメ。2〜3通り作ると記憶力が増強する。
※ 中学生から高校生以上では、複数の情報を関連づけながら(AだからB, BだからCとするなどとして)覚える(ロジカル記憶法)と良い。
※ 予習、学習、復習の比率 = 1/4 : 1 : 4
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■ 睡眠の最近明らかになった効果
・睡眠中は覚醒中よりもより脳老廃物が除去される(睡眠中は間質腔が広くなる)。
 睡眠中のマウスでは脳の「間質腔」(グリンパティック液が静脈周囲腔に流れ込む途中で通り抜ける細胞間の空間)が覚醒時よりも60%以上広がることが分かっている。
・グリンパティック液は老廃物を除去するだけでなく。様々な栄養素などの物質を脳組織に送り届けている可能性がある。新たな研究から、グリンパティック系の導管がニューロンにブドウ糖を送り届け、エネルギーを供給していることが示された。
日経サイエンス 2016/07号
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■ 記憶の想起が記憶を強化させる
 セントルイスのワシントン大学のロディガーとパデュー大学のカーピックは最近、記憶の想起(ごく短時間思い出すこと)によって、記憶が強化されることを見出した。
 マッガウの長年の研究から、人はみな感情面で重要な経験をより強く記憶することが分かっている。
日経サイエンス 2014/09号, 36〜41
※ 恐らく、海馬の近くに感情をつかさどる扁頭体があるためであろう。扁頭体を活性化させると海馬も働く。感情がともなった記憶の方法(ストーリーを理解するや語呂あわせ)が有効に効いてくる。
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■ 場所法
 風景や建物など本人がよく知っている場所を思い描いて、それを貫く経路沿いの地点に、記憶したい事柄をひとつずつ配して「記憶の宮殿」と呼ばれるものを構成する。記憶力コンテストの参加者はいまもこの方法を使って長い数字列や文字列、トランプの並び順を記憶している。
日経サイエンス 2016/06号, 32〜40
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■ 新たなニューロンの形成
 野菜・果物の摂取や運動の後に休息すると、脳の奥にある海馬で肝細胞から新たなニューロンが生まれるのを促進できることが示唆されている。この新生ニューロンが成長して既存のニューロンに接続し、学習と記憶の能力が実質的に高まる。
日経サイエンス 2016/01号, 66〜73
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■ 検索練習
 カーピックが2008年に恩師であるワシントン大学のローディガーと共同で発表した研究で、語彙について自分でテスト問題を出しながら学習した学生は後に80%の単語を覚えていたのに、単語を繰り返し読んで学んだ学生は単語の1/3しか思い出せなかった。
日経サイエンス 2016/02号, 92〜99
※ 正しく覚えた単語についてはその後の勉強から除外してよいが、検索練習(自分でテスト問題を出しながら学習)は行なわなければならない。そうしなければ、結局1/3程度しか思い出せない。検索練習をせずに勉強だけしても結局1/3程度しか思い出せない。論文では、勉強とテストの全セッションを終了して1週間後の結果となっている。
JD Karpicke and HL Roediger, science, 2008: http://science.sciencemag.org/content/319/5865/966.full
・a 30s distractor task (30秒の妨害課題)
(短期記憶の効果は15-30sであるため、恐らく短期記憶の効果を消すために行なわれている)
・勉強(S)とテスト(T)を交互に行い、それを4回繰り返す。
・40語の単語を勉強し、テストする。
・1週間後のパフォーマンスが良かったグループの結果では下記のようになる。
 S(40) T(40) S(26.8) T(40) S(8.0) T(40) S(2.0) T(40)
 ここで、Sは勉強、Tはテスト、()内は単語数。
・スワヒリ語と英語のペアで覚える。例えば、mashua-boat。テストは、mashua-?などとする。
※ 大事なこととして、どのグループでも勉強とテストを4回繰り返した直ぐ後での記憶が100%になっていることである。
 どのグループでも同じ結果で、40語の単語を1回目の勉強とテスト後で30%, 2回目で70%, 3回目で95%, 4回目で100%を覚えられている。一週間後では、テスト回数を減らしていないグループの記憶がよく保持されていた。
 もし、あなたの記憶力が悪いと思うなら、知っている内容も定期的に自分でテスト問題を出しながら学習することをオススメしたい。あなたに能力がないのではなく、そのコツを知っているか知っていないかで点数の差が出ている可能性がある。
※ 記憶量(約2.28倍)と費やしたコストの比(約1.35倍)を考えると、実に3倍近くの差が出る。勉強の仕方を知っているか知らないかでこれは大きな差である。
参考:http://www.nikkeibp.co.jp/article/nba/20080402/152046/?rt=nocnt 
※ 下記にあるダイアモンド社書籍オンラインの「脳が認める勉強法」(http://diamond.jp/category/s-nougamitomerubenkyouhou、無料)が非常に良い仕事をしている。無料でこれは凄い。
・下記HPには学習する場所を変えるだけで記憶が40%向上してることが示されている。
http://diamond.jp/articles/-/83900
・下記HPには、見て記憶に1/3、その後の 暗唱に2/3の時間を振り分けるともっとも記憶のパフォーマンスが良いことが明らかになっている。
http://diamond.jp/articles/-/83953
・さらに下記のHPでは「事前にテストして、例えその回答が誤っていたとしても回答後直ぐに正解を覚える」という方法が記憶によいことが書かれている。
http://diamond.jp/articles/-/84181
・学習の間隔は下記のHPに書かれている。
http://diamond.jp/articles/-/83657?page=2
・作業に没頭しているときを見計らって邪魔(別の作業)をすれば記憶が増強される(ツァイガルニク効果)
http://diamond.jp/articles/-/86082
・学習に変化をいれると学習の効果が増大(インターリーブ)
「音楽教師のあいだでは昔からこのテクニックが好まれていて、1コマの授業のなかで、スケール練習、音楽理論の勉強、曲の練習を代わる代わる行う。スポーツ のコーチやトレーナーも同じく、持久力を鍛えるエクササイズと筋力アップのエクササイズを交互に行い、筋肉に一定の回復期間を必ず与える」
http://diamond.jp/articles/-/86060
・下記のHPには追加で「ダイヤモンド社『チャンスがやってくる15の習慣』P19 著:レス・ギブリン 訳:渋井真帆」でどういうときに情報を記憶するかがかかれています。学術的にどういう結果がでているのかも気になることろです。
http://idea-hoihoi.com/article/post-2515.html
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人はどういうときに情報を記憶するのか?

10%−−読んだとき
20%−−聞いたとき
30%−−見たとき
50%−−見て、聞いたとき
70%−−口に出して言ったとき
90%−−口に出しながら、行動したとき

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http://www.oak.dti.ne.jp/~xkana/psycho/intro/intro_22/
http://www.oak.dti.ne.jp/~xkana/psycho/intro/intro_24/,
http://health-to-you.jp/forgetfulness/nouhanosyuruikoukakatuyou2158/
http://効率よく記憶する方法.com/%E9%95%B7%E6%96%87.html (20分で4割忘れる)
http://matome.naver.jp/odai/2141411018809373901 (短期記憶は15秒から30秒。聞く→(15から30秒後)→話すがよいとされるなど)
http://www.kiokuhouhou.com/technic/content.html
http://mnemonic-device.info/ 
※ 人間の脳はすべてを記憶できるとされているが、恐らくそうしないのは、悲しいことを忘れるためであろう。過去に囚われすぎるとワーキングメモリーを使い続けることになり、生存確率を減らす可能性が考えられる。もちろん、生き残るための記憶も必要なため、記憶した出来事に関連したものやそれに関連した刺激の多いもの、経験回数が多い事象を記憶することにしているのではないだろうか。
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■ 記憶を保持している割合と時間
文章:10%(学習して1時間後)
画像:20%(学習して1時間後)
文章+画像:60%(学習して1時間後)
Ref: M. A. Broner, IEEE Trans. Eng. Writing Speechm, ENS-7 (1964) 25.

◇ 学習して直ぐに忘れていくが1時間以降で保持している%はほぼ同じ(私の所有しているデータでは2時間後まで調査されている)。学習から1時間程度で復習するのが良い。
学習 > 1時間 > 6時間 > 1日 > 2日 > 1週 > 2週 > 1ヶ月 として復習すると良い。

◇ 司法試験で有名な伊藤塾の方法だと下記のようになる。
学習 > 覚えた1時間以内(大事なポイントを確認したり、ノートに傍線を引っ張ったり、復習はほんの2-3分でよい。さっと思い出す) > 寝る前(復習、習慣にする) > 翌朝(昨日覚えた内容をしつこく確認。誰かに説明するように声に出す)
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■ 学歴と遺伝子
 遺伝子が学歴に与える影響は、食生活や家庭環境、機会などの環境要因と比べるとごくわずかで、その割合は0.5%にも満たない。
出典: AFP=時事 2016年5月12日

◇ 遺伝
知能の遺伝率: 80%
運動能力の遺伝率:80-90%
音楽能力の遺伝率:90%超
記憶力の遺伝率:30-55% (学業成績や外国語の能力と同等で、遺伝や親の教育に関係なく、工夫や努力でなんとでもなる数字)

・「記憶には、@覚える段階=記銘、A覚えておく段階=保持、B思い出す段階=想起があり、3つの神経ネットワークはつながっている。記憶力を高めるなら、ただ覚えようとするより、覚えた直後に「思い出す」ことが肝心。繰り返し思い出して使われることで、脳の海馬が、仮置きされていた情報は『生態にとって重要なこと』と判断し、側頭葉にある、より大きな保管庫に記憶を移し、長期記憶にするのだ。覚えるだけで使わなければ、生態にとって重要な情報ではないと判断され、長期記憶に残らない。
・覚えるより使う、正しいタイミングで繰り返す──海馬をだますずるい記憶術≠ナ、高い効果が得られる。
・脳は、インプットよりもアウトプットを重視する「出力依存性」がある。英単語を覚えるときも、闇雲に暗記しようとするよりも、覚えた内容をその場でテストする、あるいは先にテストをしてから不正解だったものを覚えようとするほうが、効果が高い。読んだ本の内容を覚えておきたいなど、テストできないジャンルなら、学んだ直後に頭の中でおさらいする、つぶやく、人に話すなど、出力を重視すれば小さな手間でより大きな効果を生む。
・新しい情報を記銘し、覚えた状態を保持し、想起して引き出す。記憶の3段階を一体化させ、覚えるだけでなく引き出すまでを行う。
・思いついた日に復習よりも「6」で割った日に復習 (カリフォルニア大学が実験で成績を比較したところ、残り日数÷6の日が最適なタイミングだと分かった。何となく思いついた日に復習するよりも、試験日まで残り60日なら10日後に、残り30日なら5日後に復習すると、労力の割に効率よく記憶が定着する)
・期間@:期間A=1:5がベスト! (学習から復習までを期間@、復習から本番までを期間Aとしたとき、@÷Aが0.2前後のとき最も成績が良くなることが分かっている)
・効率のいいタイミングがつかめたら、勉強する場所も考慮したい。いつも自宅でするよりも、喫茶店や電車内など環境を変えて勉強したほうが、記憶のフックが増えて思い出しやすくなる。単純に覚えるのであれば、歩きながらリスニングで暗記するなど軽い運動をしながらだと、海馬からシータ波が発生しやすく長期記憶に定着しやすい。
・脳を使う作業に向かうときには、不安や焦りを抱えたままよりも、書き出して整理してから始めたほうがパフォーマンスは高くなる。不安があると脳のパフォーマンスは落ちてしまう。ワーキングメモリの容量を奪われてしまうため。

■ 珈琲の効果(飲みすぎは逆効果です。適度な量を自分自身で調べて飲みましょう)
・頭をスッキリさせるカフェインも、脳にいいと見られる。
・「コーヒーの香りも、脳を活性化させると考えられます。それも脳を癒やす″用と集中力を上げる″用の2種類があるのです。
 古賀さんは、異なる銘柄のコーヒーの香りを嗅いだときに現れる脳波を測定。その結果、グアテマラやブルーマウンテンの香りを嗅いだときはリラックス時に現れるα波が、マンデリンやブラジルサントスの香りを嗅いだときは集中時に出現するP300が、より多く測定されるなど、豆の銘柄によって脳に与える影響が異なる可能性が示唆された。実験結果を参考に、「リラックスする香り」と「集中する香り」を持つ豆を自分の鼻で確かめ、用途に応じて飲み分けてもいいだろう。


■ 司法試験
・「誤解されがちですが、記憶とは覚える≠アとではありません。インプットした情報を保存して必要なときにアウトプットする、一連の作業のこと。つまり、記憶力を向上させるためには、アウトプットをしやすいように¥報をインプットすることが大切です」。
(一例として、情報を整理したり、関連付けたり、法則性を見つけたりするということです)

■ 東大文科三類 合格者(年齢 50代)
・6月下旬から毎日12時間以上勉強して8ヶ月で合格。ただし、本合格者は青春時代に2度東大受験に失敗し、早稲田大に入学している。その後、ラテン語を独学で勉強。
・3カ月ごとの具体的な目標を設定。
・1日の勉強スケジュールも前夜に大ざっぱに鉛筆で書き、実際にやったことを当日ボールペンで細かく記入。勉強時間は本番の試験を意識して90分を1コマとし、教科やジャンルを切り替えている。
・ 時間の使い方で意識したのは優先順位。家事などルーティンを守り、家族のことは最優先とした。優先してやらなければならない教科やジャンルは、週の初めの月曜に予定し、1日のうちでは、ずれ込みが少ない朝イチのスケジュールに入れた。毎晩、テーブルに翌朝取りかかるべき教科書やノートを用意してから就寝。起きたらすぐに始められる態勢をつくっておいた。目次は勉強のルートマップ反復学習にも役立てる。
・『夢をかなえる勉強法』(伊藤真著)や『ドラゴン桜』(三田紀房著)など勉強法のノウハウ本は積極的に読み、よいと思ったものはどんどん取り入れる。
・ 実際の勉強では、過去問と模試を重視。受験生としての自分の立ち位置や苦手ジャンルを把握するためにも、分からなくてもとにかく試験問題を解いてみることからスタートした。自分の現状を把握したら、締め切り=受験日から逆算して、参考書の目次を見ながら計画を立てる。
・「1度やっただけでは覚えられないので、『忘れた頃に見直す』の繰り返す。(※ これが効率的かは分かりませんが……)

日経おとなのOFF, 2016/06号
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■ 働き女子の朝を大追跡(多くの方の実例が書かれていますの女性の方で気になる方はどうぞ)
 記憶ものは青ペンで書くとよいと記事で読み実践。
NIKKEI WOMAN 2016.9, p. 18-23.
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■ 記憶の裏ワザ
・復習すると、忘却スピードは緩やかになることがわかっている
・7割覚えている、言い換えれば、3割忘れた段階で復習するのが、モチベーションが上がるという意味でも理想的
・脳は、インプット時ではなくアウトプット時に記憶する。
・人は、忘れたことを思い出そうとするときに記憶する。忘れたことを引き出す手がかりを多くすることが重要。
・高橋氏による大学生16人が般若心経を覚える実験。半数の被験者は6時間連続で書き写し、もう半数は、20分程度の休憩を入れながら1時間×6回同じ作業をした。翌日テストをしたところ、後者のほうが成績が良かった。
(前者は63%記憶、後者(休憩を挟んでいる)は97%記憶。※ 同じ時間にして比較してみると8/6*63=84となる。休憩を挟んだ方が1割は余分に覚えられる)
・周辺情報を含めストーリーを付けて覚える
 公式や数字を丸暗記しようとしないで、筋道を立てて理解するのが記憶する近道。固有名詞や専門用語を覚えるには、一見すると必要がなくても、その言葉の由来やストーリーも含めて覚えたほうがいい。
・ 最近の研究で、有酸素運動や筋トレをすると、脳細胞の生産や成長にかかわる神経栄養因子のBDNFの分泌が増し、認知機能が上がることがわかってきた。脳の広い範囲と連係する、手や指を動かす作業も有効。
日経トレンディ、2016/07号
※ 長期の記憶に有利なエピソード記憶は「成功や失敗の思い出」でも良い。これは成功した、これは失敗したとしながら覚えていくと記憶力の増強に繋がる。試験問題を解いた人の方が点数が良い人が多い(成功体験をよく聞く)のはこういう理由もあるからかもしれない。
※ 記憶力が鈍ってきたら、記憶の方法がワンパターン化している。他の記憶術や覚え方、新たな語呂を作る、他の視点から詳しく解説されてる別の参考書や分かり易い別の参考書を読んだり、別の問題集を解くなど、新しい刺激を与えるとよい(といっても参考書を増やすということは自身の負担も増やすことになるので、どうしても理解できないときはその部分を他の参考書や問題集で補うという考え方にするとよい。説明や解説が下手な参考書は理解が進まず勉強の効率が悪いです。参考書や問題集は一長一短があるのでよいところだけつまみ食いしましょう)。脳に違う刺激を与える事で、記憶するための新しい神経回路を作ることにつながる。マンネリな覚え方は記憶の効率を悪くする。
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■ 脳に有利な方法
・毎日少しずつ
・数字は極力関連づける
(語呂あわせ、法則を見つける、小分けにする、ビジュアル化、ストーリー化、主体的にインプット、芋づる式に記憶{芋づる化:キーワードを整理して関連付ける}、関連付ける)
・一度見ただけで絵を似せて描ける人は頭の中でイメージ化して記憶すると記憶の定着率が高くなる
・読書家の方は言葉のまま記憶するのが記憶の定着率が高くなる
・声を出して耳で聞く(意味や内容を{妄想できる彼氏・彼女[2次元可]に}説明するとよい)
(上手く言葉で説明できれば、脳が「正しく理解できた」と判断して記憶を定着させるように働く)
・覚えたことを書いてまとめることも効果有り
・マンネリ化すると効果が薄くなるので、覚えるときにインパクトを与えるようにする
(場所を変えたり、紙や大きさ、色に変化をつけたり、何かをしながらや、比較対象を用意して比較して覚えたり、自らを主人公にして覚える、実況中継するなどが挙げられる)
Associe、2016/08
※ 特に比較して覚えるのは、覚える対象を法則化(グループでまとめ)し、違いを明確にして分解し、比較対象との関連付けもなされて記憶へのインパクトを高めるので効果的。世界史や日本史での地図や年号などは、人や体制で年代を大まかに分けてグループ(XX朝、YY政権、ZZ時代と自身が覚え易いようにわける)とし、覚え易い年号を語呂合わせとイメージを加えて記憶し、そこから何年後と覚えると記憶が定着しやすい。1775から何年後とすると177は覚えなくても良くなり疲労と記憶容量をセーブできる。年号は語呂合わせ&イメージがしやすいもの、333, 1555や1777などのぞろ目をまず覚えておくのも良いだろう。何年後になったかは語呂合わせや理由(理由がない場合は、自ら考えた勝手な理由を覚えるためと思って)覚えるようにするとよい。
※ 神経細胞ネットワークは既にある神経細胞とも結合するため、既存の記憶に関連付けられると太く、強くなり、忘れない記憶になる。そのため、関連付けの効果は大きい。
※ 脳がどこが使われているか?
・海馬が脳の下の方にある
・言葉に関係するブローカー野(海馬の前方少し上{顔の側}、喉や舌、唇などを動かして言葉を発する役目を負う。}、運動野に近い)
・言語に関係するウェルニッケ野(海馬の後方{後頭部側}、言語理解、発音のリズム、文法に関与する)
・動作に関係する運動野(海馬の上{脳の中央上部})
・風景に関する頭頂連合野(運動野の後ろ側(後頭部側))
※ 脳は視覚で認識できる文字、動作、顔、風景はすべて形(動き)のあるものとしてしか捉えていない
※ 外部から得た事象のほぼすべてが海馬に入る。そこで、時間、空間、経験、意味と色づけして記憶をつくる
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■ 集中力
・集中力がアップする時間帯は「起床後2〜3時間後」。朝7時に起きると9-12時、15-18時が勉強に適したゴールデンタイム(こういう事実を知ると土日祝や学生時代での夏休みの活用次第で成績の違いが出てくるのが分かる)。
・集中力が低下した場合は、休憩したり(ドリンクを飲む/少し歩く/背伸びをする)、別の作業をしたり、覚える順番を変えたりする。
・集中力が低下した場合は、「2-3秒で息を吸って、10-15秒で息を吐く」を5-10回繰り返す。
(副交感神経が刺激されて余計な力が抜け、脳が落ち着く)
・朝7時に起きると13-15時では体内時計によって少しだけ眠くなる。15分のあいだ目を閉じて(視覚刺激を遮断し脳を休める)数分間ぼーっとして休憩すると集中力を回復できる
(※ 私は脳老廃物が除去されるためだと思っている。15分の仮眠も効果があると言われるが、私はそのまま長時間寝てしまうことも多かった)。
・視界に緑を入れると集中力を呼び覚ます効果がある。
(自然の緑はリラックス効果をもたらすといわれる。屋外の緑をオフィスの窓越しから見たり、デスクの周囲に観葉植物を置いたり、公園を散歩するなどが効果があるとされる)
・「雨風・たき火の音」や「川のせせらぎ」など自然界の音も集中力を高める効果がある。このホワイトノイズは、小さい音量でクラッシックを流したりすることでも同じ効果がるとされる。
・易しいものと難しいものを織り交ぜて覚える。
Associe、2016/08
※ 時間を区切ると集中力を高く維持できる(数値で言えば、だいたい48分程度集中して勉強、12分程度休憩を私は行っているが、多くの場合、時間に関係なく疲れてきたら休むことにしている)。
※ 休憩では私は、チョコよりも、低糖の「霧の紅茶」や微糖のブレンド珈琲を氷をたくさん入れて小さいコップ1杯程度飲む方が集中力が維持できた(飲み物の種類は飽きが来ないように適宜変える)。飲みすぎると集中力が下がるので、適度な量は探す必要があります。休憩に入って直ぐ飲む。
※ 長く活動的な体を維持するためには(仕事で大事な時期になる30-50代でそれをよく痛感するようになるので大事)、夕食は腹7分(もうちょっと食べたいなと思うあたり)が良いと言われる。私の場合は上記にあるように紅茶を休憩時間に摂取するので、夕食は腹7分で済む。
※ 勉強のやる気が出ないときは、趣味をご褒美として休憩時間に行なうようにして勉強を始めるとよい。フィギュアを眺めたり、やりたいことを少しだけ行なったりする。短時間で趣味ができるように準備はしておこう(必要な道具をちゃんと整理しておくなど)。ご褒美をあげるのは神経伝達物質のドーパミンが関係するので有効なやり方となる。達成に長時間かかるようなものの場合は、非日常的で珍しい経験が可能なようにするとよい。短時間の休憩を紅茶を飲んで目をつぶって静かにするだけにして、一冊本を終了したら次回の勉強の休憩に趣味をどーんと行なうというのでもよい。好きなことと結びつけて無理なく興味を保てるように、色々と好きなものを探してみるのがよいです。
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■ 睡眠
・人間の脳は起床して光を浴びた時点から約16時間後に眠くなるようにできている
・規則正しい睡眠のために重要なのは起床時刻。就寝時刻は揃えずに、早く寝られるときは寝て、睡眠の量を確保する。就寝が遅くなっても、起床時刻を守れば睡眠のリズムは崩れない
・入浴は就寝一時間前(入浴しなかった場合、入眠後での睡眠が浅くなる。シャワー派の人はストレッチやヨガをすることで入浴と同様の効果が得られる)
(人間の体は夜になると深部体温(内臓の温度)が徐々に下がり、十分に下がりきったところで眠りに入る。入浴すると、深部温度が一時的に上昇するが、体が反応して手足などから熱を放出するため、深部温度は約1時間で一気に下がる)
・必要な睡眠の量には個人差がある。起床から4時間後にあくびやだるさ、ぼーっとする感覚がある場合は、睡眠の絶対量が足りていない
・覚えたことを記憶に定着させるには、「眠り始めから3時間後までの深い眠り(90分周期で2回訪れる)」をしっかりと確保する必要がある。※ 3時間後以降も90分周期で睡眠の深さが変化するが、それは徐々に浅くなっていく。
Associe、2016/08
※ 米国の神経医学者スティックゴールドは2000年の認知神経科学雑誌に、何か新しい知識や技法を身につけるためには、覚えたその日に6時間以上眠ることが欠かせないという研究結果を発表しました。
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■ 食事(なんでもそうですが適量が大事です。取りすぎは良くありません)

◇ 概ね摂取しているもの
・1日1食は、野菜を必ず食べる。ビタミンやミネラルが不足すると記憶力が低下する
・納豆は栄養から見て(脳に)良い食品(1日1パック)
・ハチミツやメープルシロップは単糖類なので体の中で素早くエネルギーに変わる
・カレースパイスに使われる「ターメリック(ウコン)」の「クルクミン」が記憶力の改善に効くとされる
※ 上記の観点以外に、野菜や果物では「ホルミシス」の影響が考えられる。日経サイエンス 2016/01号, 66〜73

◇ 食すが、意識的にできるだけ控えるもの
・牛、豚、鶏肉などの飽和脂肪酸と揚げ物(コロッケ、とんかつ、天ぷら)
(逆に、魚、卵、乳製品を食べている。肉は赤身の部分、ω3やω9系の油で揚げた揚げ物、大豆製品{?})
・大豆油、ひまわり油、コーン油などのω6系の油
(逆に、ω3系のゴマ油やアマニ油やMCTオイルやDHA、ω9のオリーブオイルやキャノーラ油をもし可能だったら用いる。献立にもよるので無理はしない)
Associe、2016/08

◇ 米国のマウスによる実験結果 (カフェインにしても果糖にしても何でも適量が重要ということ)
 果糖の取りすぎは脳に悪影響、DHAは脳ダメージの軽減の可能性有り
 実験で果糖を与えた群、果糖とドコサヘキサエン酸(DHA)を与えた群、両方とも与えなかった対照群を比較。6週間後、果糖群では血糖、中性脂肪、インスリン値が上昇。また迷路試験でゴールまでの時間が果糖群は対照群に比べて有意に長く、学習記憶が損なわれていることがわかった。DHA群では果糖群に比べ時間が短かった。
 また脳の遺伝子解析で、果糖によって代謝や記憶に関わる領域の遺伝子に変化が認められた。

日経ヘルス, 2016/08号
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■ 運動

◇ 米モントクレア州立大学での比較実験。ボールを右手で「45秒握る」「15秒休む」「再び45秒握る」を単語を覚える前と前後で繰り返す。記憶している単語数が18%上がった。
・覚えるときは「右手」、思い出すときは「左手」でボールを握るのがポイント。
・脳と身体支配は左右が反対(神経が左脳は右側の体、右脳は左側の体に繋がっている)であるため、「覚える」ための左前頭葉は右手、「思い出す」ための右前頭葉は左手が動く事により刺激されていると考えられる。
Associe、2016/08

◇ 脳を成長させると明らかに分かっているのは、有酸素運動
・ウォーキングなどの有酸素運動をすると、高齢者でも脳の内部にある記憶装置である海馬が大きくなるという報告が多々ある。
・ピッツバーグ大:「ストレッチをしたグループ」と「1週間3回、各40分の速いウォーキングを行なったグループ」では、1年後、前者では海馬の容量が1.4%減少した。一方、後者のグループでは海馬の容量が2%増し、記憶テストの結果が良くなった。
・ネズミの実験では、運動したネズミの海馬内で新しい神経細胞が生まれやすくなることも知られている。
・海馬の腹側部には感情の安定に関わる仕組みがあり、運動でそこが強化されることも報告されている。
おとなのOFF, 2015

◇ 運動の習慣
・体を動かすと覚醒度が上がって、脳の反応はよくなる
・汗をかくような運動も覚醒度を高い状態に維持するのに有効
・週に3-4回の運動習慣(汗をかくような)を3-6ヶ月続けると効果が出てくる
・上記が無理な場合は、週に2日、ウォーキングなどを行なうのでもよい
Associe、2016/08
※ 若い人のデータしかないが、超回復の観点からは、週に1回運動すると筋力が維持され、週に2回だと筋力が増強されることが分かっている。その観点からも週2回はオススメであると思われる。数年前には、高齢者に対するデータが無いと病院でお会いした医者に言われたので、現在なら高齢者向けのデータも存在するかもしれない。
※ 体を動かすと覚醒度が上がって、脳の反応はよくなる。そのため、座っている状態から立つ、歩くでも効果がある。右手や左手をにぎにぎするだけでも私には効果があった。私は集中力の維持以外に、上記にもあるように記憶力の増強の意味でも手を動かすことを行なっている。上記に記したような休憩(立つや歩くといったちょっとしたこと以外は体と目と脳は完全に休ませる。休憩時に常に手は動かさない)と組み合わせると眠気を誘発しにくくなり、勉強の効率が上昇した。日常生活や休憩時間を除いて12.8時間程度は余裕で可能になる。是非とも、みなさんには色々な方法を模索して、10時間以上の勉強を続けられる状態を増やして欲しい。
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■ どのイメージがいい?
・覚えるべき内容を整理、理解した後に、目的によって「映像」「音感」「カテゴリー」「語呂」を使い分けて覚える
・人名は音感と文字のイメージ映像で記憶(名前の「響き」「文字」から想像したイメージ映像に、「顔」の情報を組み込んで覚える。非現実的なイメージ映像が効果的)
・細かすぎる数字は簡略と語呂を使って記憶(桁数の多い数字はすべて覚えずに、「およその数」に変換した後、「語呂合わせ」にして覚える)
・覚えにくい専門用語はイメージ映像を合成して記憶(用語が持つ「言葉の響き」と「意味」に、それぞれイメージしやすい映像を作って覚える。個性的なイメージ映像を作るほど、忘れにくくなる)
・2つの映像を合成して、「専門用語」と「意味」をセットで覚える。「イメージする映像は、できるだけ『非現実的なもの』『ギャップが大きいもの』を当てはめるほどいい。
日経ビジネスアソシエ, 2016/03号
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■ 語学学習
「手書きする」「音声を聴く」学習は、脳活動が上がった。オフィスや無人の会議室より、カフェで勉学が集中力高い結果に。
日経トレンディ、2016/07号
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■ 記憶と休憩
・「記憶:休憩」の黄金比率は「48分:12分」。約50分を記憶に充てて、約10分休むと覚えよう。「これを守らずに、2時間ぶっ続けで覚える作業に没頭したら、その後2時間休む必要があります。それでは非効率的だということは、自明の理ですよね」
・覚えた後のご褒美を用意する。記憶のしやすさは、価値判断に左右される。極端な例だが、「このページを一字一句覚えないと会社を解雇される」という状況に陥れば、覚えられてしまうもの。
・脳の準備に3時間&休息を適切に。朝起きたら体を動かして、脳に必要な血液をどんどん送り込もう。準備OKとなるまでに3時間かかる。通勤中は、周囲や電車の中吊り広告を意識しながら見るのもいい。一方、夜0時には寝ること。夜中3時までの間に行われる脳の組織修復が十分でないと、翌日の覚えやすさに悪影響を与える。
・「分かりました」はNG、指示内容は必ず復唱。上司に指示された時、条件反射的に「分かりました」と返事をしていませんか? 「人間が繰り返せるのは理解・記憶したことだけ。当たり前と思うかもしれませんが、復唱は脳に入ったかどうかを判断するうえで、重要なことです。

■ 間違いは×?
・単調な「肯定」よりも、インパクトを持つ「否定」の方が印象に残りやすい。(「10」を覚える時は「9ではないぞ」「11でもないぞ」と思うこともしておくと「10」を明確に覚えやすい)
・わざと間違って覚えるのも1つの手 (その通りに記憶しないとダメという考えをやめる。名前を覚える時、『ハラグチ』ではなく、『グチハラ』と前後を入れ替えた方が、余計なことをやった分、頭に入りやすい)
・覚えた時の状況を振り返る。(無理に思い返さずに、覚えた時の状況や雰囲気はどうだったかという点に意識を集中する。「あの時、カターンと音がしたな」と覚えた時の状況を振り返ることで、肝心の記憶にたどり着く可能性が上がる)
・ジャンルやイメージを自問自答する。(覚える時に「ジャンルで分けると何か」「似たものは何か」といったことも、併せて考える癖をつけるといい。「どんなジャンル?」「何かに似てない?」と自分に問いかけて、思い出すこともある)

■ 短時間での勉強の場合
・勉強の質を高めるコツは、頭に入ったと思っている内容をキチンと思い起こすこと。仮に、20分間を勉強に割けるなら、最後の5分は思い出す作業に集中することがポイントだ。記憶の定着率は確実に上がる。

日経ビジネスアソシエ、2011/04/19号
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■ 記憶術とは何か?
・記憶術は,いかに覚えるものを整理するかという「整理術」だ。複数のモノが雑然としている状況は覚えにくいが,頭の中に整理の引き出しを作って,そこに一つひとつしまっていけば覚えられる。どこにしまったのか,それを思い出しさえすればよい。言い換えれば,整理の引き出しは記憶の「呼び水」だ。
・ただ語呂合わせを作るのではなく,イメージと結び付けて覚えるということ。イメージはできるだけ強烈なものを思い浮かべる。これで語呂合わせを忘れにくくなるからだ。その光景を思い出すようにし,語呂合わせで作った文章から無機質な文字の羅列を思い出すようにする。
・自分だけのルールを作る。記憶術の達人は,自分なりの変換ルールを作ったり,イメージと結び付けることで記憶するのが基本。そして,思い出す「きっかけ」を作ることが効果的であると強調する。

■ 「整理の引き出し」はどのように作るのか。
「整理の引き出し」は記憶の基礎となるもので,これに本来覚えるべきものをくくりつけていく。具体的には,2段階で記憶する。1段階目は,身近なものをいくつか記憶する。例えば,自分の家から駅までの道のりで目に入るものを順番に並べていく。玄関→階段→飼い犬のタロー→止まれの標識,といった具合だ。実生活に即したものなので,これらは意外と楽に記憶できる。これを「整理の引き出し」とする。
 2段階目は,1段階目で覚えた基礎に,本来記憶するフレーズをくくりつける。例えば,「ハンバーガー」,「りんご」,「携帯電話」という言葉を覚えるとする。忘れないようなイメージを想像することが大切だ。1段階目で覚えた一番最初の単語は玄関。玄関のドア全体にハンバーガーがたくさん貼り付けられている場面を思い浮かべる。こうして「玄関:ハンバーガー」と対応付ける。階段:りんご,飼い犬のタロー:携帯電話も同様にイメージを作っていく。こうすれば1段階目の記憶が呼び水となって,本来覚えたかったものを楽に思い出せる。

日経バイト、2003/05号
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■ 海馬”を働かせるコツ
・使う目的≠はっきりさせること。「例えば、資料を読み込む時には漫然と読むのではなく、『明日のプレゼンで引用したい』など、情報をアウトプットするシーンを具体的にイメージする。目的が明確になれば、海馬は俄然やる気になる。
・制限時間≠設けること。仕事を進める際、締め切りが近づかないとお尻に火がつかない人は少なくないが、実は海馬もそのタイプという。「10分以内にキーワード10個を覚える」など、制限時間を設定すると、海馬は活性化する。
・記憶に深く関わるのは『思考系』と『感情系』の部位。『思考系』は前頭前野に当たる部位で、物事を順序立てて考え、判断、実行する。扁桃体を中心とした『感情系』は、喜怒哀楽の表現や他人への共感に関わる。つまり、記憶する時には意味のない言葉の羅列よりも、思考系部位を刺激する『ストーリーとして理解できる情報』や、感情系部位を刺激する『これは面白い、共感できるといった感情を伴う情報』が定着しやすい。
・目で見る、声に出す、耳で聞く、体を動かすといった、様々な感覚刺激も、記憶の定着に有効。
・既に覚えている情報と結びつける。新しい情報は、既に覚えている情報と結びつけることで、記憶に定着しやすくなる。名前と顔、それぞれに「似ている」「近い」情報を思い出すと、脳が情報を整理しやすくなる。
□  講演
1. 短冊メモ(付箋など)に話したい内容のキーワードを1つずつ書く
2. メモを「話したい順」に並べ替える
3. 制限時間を設けて、キーワードだけを覚える
4. 声に出して練習する
□ ネット活用
・ 新しく知った用語をネットや辞書で調べる。1つの言葉について、いくつもの情報をたぐり寄せることで、記憶はより定着する。分からない用語に出合ったら、辞書やネットで調べて理解を深めるようにすると、覚えやすい。
□ 雑誌
・雑誌の写真を見て覚え、本を閉じて描き出す。雑誌に載っている写真を1枚選んで3分ほど観察。雑誌を閉じて、どんな写真だったか紙に描き出す。視覚によるインプットを手でアウトプットするという刺激で、記憶力が高まる。
□ その他
・脳内で記憶を司る海馬は、目的がはっきりしないと効率的に働かない。
・「脳が好むのはスモールステップ=B一度にたくさんの情報を詰め込むのではなく、小分けしたり、ポイントを示したりして、処理しやすいように準備する。すると、格段に記憶力がアップします」

日経ビジネスアソシエ, 2015/08号
日経WOMEN(2014年08月号)には実際の資格試験の勉強法などが書かれています。
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■ マインドフルになる方法(この訓練時間は10-15分)
 マインドフルネス訓練が有効なのが注意力を高めるからだけではないことはほぼ確かだ。この訓練は多くの脳内ネットワークとプロセスを変えて強化している可能性が大きい。
 マインドフルネス訓練に長年取り組んできた人では、訓練していない人に比べ、より複雑で密なしわをなして折りたたまれていることが報告されている。しわの数が多いことは、これら脳領域のニューロンがより効率的に情報交換しているしるしと考えられる。
1. 背筋を伸ばした安定した姿勢で座り、両手を太ももの上に置くか、掌を上にして体の前で重ねる
2. 視線を落とすか、目を閉じる(どちらでも可。しっくりくるほうを選ぶ)
3. 自分の呼吸に注意を払い、神体全体をめぐる呼吸の動きを追う
4. 空気や鼻や口を出入りする際の腹部のあたりの感覚を意識する。呼吸は自分の呼吸だけに気をつける。
5. 呼吸の影響を受ける身体の部分を1つ選び、注意をそこに集中する。呼吸そのものではなく、集中をコントロールする
6. 注意がそがれるのに気付いたら、注意を自分の呼吸へと戻す
7. 5-10分後、注意集中からモニタリングに切り替える。自分の心を大空と見なし、思考と感情、感覚を流れる雲と見なす。
8. 呼吸とともに全身の動きを感じる。自分の感覚を受けとめ、いま起きていることに気をつけ、体験の質の変化に注意を払う。音、匂い、そよ風の愛撫……思考。
9. 約5分後、視線を上げるか目を開く。
日経サイエンス 2015年1月号, p.44-51
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■ (会社で)仕事を頼まれたときは期限と目的を聞く
 では、業務中のコミュニケーションについてはどうだろうか。まず、上司や先輩から仕事を頼まれたときの対応の仕方について。
「新人が仕事を頼まれたときの答え方は二つ。ハイかイエス。ノーはない(笑)。仕事を選ばず、頼まれたことをきちんとやり切れば信頼を生み、新しい仕事につながります。このとき、頼まれた仕事に対して、いつまでに、何のために必要なのかを問うことです。例えば、上司からコピーを頼まれたとします。社外プレゼンテーション用か社内保管用かなどの説明がない場合には、自分から聞くべきです。使用目的によって仕事のやり方は変わるはずですし、そういう視点で仕事を考えると、自分ができる工夫の幅も広がります」
 どんな作業にも背景がある。特に新人に任される仕事は、大きなプロジェクトのごく一部。だからこそ作業目的を聞くことが必要となる。
 また、そうした”担当部分”だからこそ進め方がわからない指示も出てくるだろう。
「上司の指示はメモを取って聞き、作業を始める前に、自分の認識が間違っていないかどうか内容を確認するのがベストです。そして、作業中にわからないことが出てきたら、すぐに誰かに聞く。仕事は、皆の力を合わせて、最大限のパフォーマンスをすることが大切。上司や同僚の力を上手に借りてくだsだい。ただし、自分でできるところまで下調べしておくのは当然。その上で、わからない分をメモにまとめて聞きに行く。新人は自分が思っているよりも早めに確認したほうがいい。もし進め方が間違っていたら、軌道修正は早いほどいいからです」
 それでもミスをして叱られた場合や、先輩と意見が対立してしまった場合は、どうすればいいのだろうか。
「僕は、人間は皆、そこそこに賢いものと思っています。意見が対立したら、それぞれに理屈があり、ある程度は共に正しい。だから、叱られたといって落ち込む前に、叱った人がどうしてほしかったのかを考えてみる。なぜ相手はそう思うのか。そうすると、自分が勝手に思い込んでいたことや、見えなかったことがわかってきて、自分の成長につながります」
 それでも、自分の意見を言ったほうがいいことも多い。その際は、友人に対するように言ったのでは角が立つ。
「まず、相手の意見が参考になったこと、それでも一つ疑問に残るので、『あえて言わせてください』という態度が大事です。相手への敬意を払い、その上で意見を述べれば、相手も耳を傾けてくれるはずです」
(省略)
 また、上司の言葉やアドバイスに感銘を受けるようなことがあったら、それもきちんと伝える。
(省略)
「連絡は、社内外を問わず、”電話かメール”ではなく、”電話とメール”が基本です」
(省略)
 重要事項や緊急事項の基本はフェース・トゥ・フェースだ。
(省略)
 自分に届いたメールへの返信は、できるだけ早いほうがよい。遅くても24時間以内に返信する。たとえすぐに結論が出ない内容でも、メールを受信し、検討している旨はすぐに返信すべきだ。そして、メールの文面は短く、結論を先に書く。「長文を最後まで読まないと、何をしてほしいのかわかならいという内容では、相手の時間をムダに使わせることになる」からだ。

週刊ダイヤモンド 特大号、2012年4月7日(この雑誌は手に入れて読んでおくべき。この他にも有用な意見が多数記載されている)
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■ 研究室のスケジュール(明確にメモしていなかったので完全に正しいわけではないが、私が経験した中でも優れた研究室のスケジュール。旧帝や他の国公立ではスケジュールが酷いところがあり、卒論や修論ギリギリに学生が準備している状況であったりする。本当にダメなところで苦労したので、それを改善したいために下記にその内容を示す。”頭がいい人たちは”そうでない人を育てる方法や配慮を理解できなからため息が出る。研究室を酷い状況にしているから、旧帝の学生が国公立の学生に負けると思える状況が作られている。そもそも旧帝の教官たちに夏休みや自由研究期間なんていう話をすると、それ何?みたいな顔をされるけど、そういった時間を作っても質の高い学生が育っている現実を直視した方がいい)
4月:B4研究室配属、上の学年が付いて一緒に研究(7月末まで)
5月:月末にM1中間発表
6月:月末にM2中間発表

7月:月末にB4の第一回中間発表
 発表終了後一人で研究の許可が出る
8月:休み(自由研究期間)(院試)
9月:自由研究期間
10月:研究再開、月末にB4の第二回中間発表
11月:月末にM1中間発表
12月:中旬から下旬にB4の研究室内最終発表
 M2研究内最終発表
 卒論および修論執筆開始
1月:卒論発表、修論発表
2月:卒論提出、修論提出
3月:自由研究期間
※ 自由研究期間を除いて、毎週火曜または水曜の午後15:00-17:00までコロキウム(学生の研究の進捗を交えて勉強してきたことを報告。かなり自由があるので内容は学生が雑誌会{英文の雑誌の一部を紹介}すること)を開催。
※ 装置マニュアルも完備。紙媒体のマニュアルは装置の直ぐ傍とWEB上にあり、装置利用での動画も完備している。
※ 解析の手順書やマクロ、Excelシートなどを用意し、コピー&ペーストやワンクリックで整理した結果が出るようにしている。
上記のような配慮をして、良い結果を出すために実験条件を変えたり、解釈やより良い研究手法や新しい解析手法を勉強することに時間を費やせるようになっている。酷いところは上記の研究環境の構築が足りず、装置や解析をすることさえまずできない。そんな研究室を数多くみてきた。そんなところでは良い研究はできない。理由は簡単だ、装置や解析ができるようにマニュアルの読み込みや試行錯誤を費やさねばならず(場合によっては装置を壊し、修理する予算や時間がさらに追加されるという悪循環が生じる)、それらが出来るようになるまで3ヵ月から6ヵ月はかかる。そういった体制にすると休みや自由研究期間を作ることができず学生の士気も下がる。
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■ プロの翻訳者も使っているgoogle活用法
・検索結果の上位10-20個から探す
・URLが「.jp」や「blog」のページは英文ミスもあり要注意
・PDFは公式文書が多く信頼性が高い
・"(ダブルクオーテーションマーク):単語ではなく言い回しを調べられる。
例:Thank you だとThankとyouの結果が表示される
例:"Thank you"だと Thank you の結果が表示される
・*(アスタリスク):文章にふさわしい語句を調べられる
例:"Thank you for * our products"
アスタリスクの部分に入る単語や文の検索結果が表示される
・入力した英文が間違っていた場合は「もしかして」機能を利用
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■ プロの翻訳者も使っている英辞郎 on the WEBの活用法
・AND検索:そのまま順番に記入
・OR検索:| (Shift + \)
例: As mentioned earlier | before
(英訳に便利。どちらが自分の思い描いた表現に近いかが分かる)
・NOT検索:-
例: explore -探検 -調査
・フレーズ検索:"(ダブルクオーテーションマーク):単語ではなく言い回しを調べられる。
和訳の際には2-3語まとめて検索するのがコツ
・単語間語数指定検索:
as {1} is とするとasとisの間に入る1語を検索
as {1,} is とするとasとisの間に入る1語以上を検索
as {2} is とするとasとisの間に入る2語を検索
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文章の書き方が上手くない学生の訓練方法
指導教官にもよるだろうが、下記にお薦めの論文を記しておく。

英語論文(英語圏で著名な研究者の論文を読むとよい)
XAS
  R. A. Rosenberg et al., Phys. Rev. B 33 (1986) 4034.
  http://prb.aps.org/abstract/PRB/v33/i6/p4034_1

XPS
  C. S. Fadley et al., J. Surf. Anal. 3 (1997) 334.
  http://www.sasj.jp/JSA/CONTENTS/vol.3_2/Vol.3%20No.2/Vol.3%20No.2%20334-364.pdf

原著論文を調べる以外に、下記の書籍が参考となる。
  原田豊太郎 著、『例文詳解 技術英語の冠詞活用入門』、日刊工業新聞社
  原田豊太郎 著、『例文詳解 技術英語の動詞活用入門』、日刊工業新聞社
  原田豊太郎 著、『例文詳解 技術英語の前置詞活用入門』、日刊工業新聞社
  原田豊太郎 著、『例文詳解 技術英語の形容詞・副詞活用入門』、日刊工業新聞社
  原田豊太郎 著、『例文詳解 技術英語のキー構文・キーワード活用入門』、日刊工業新聞社
  鈴木英次 著、『科学英語のセンスを磨く』、化学同人
  富井篤 著、『科学技術英語表現辞典』、オーム社
  研究者辞書編集部 編、『数量表現辞典』、研究社
  研究者辞書編集部 編、『英語類義語使い分け辞典』、研究社
  原田豊太郎 著、『『理系のための英語「キー構文」46』、ブルーバックス
  http://homepage1.nifty.com/Mercury/ohoyamak/Links.html

英文執筆でのポイント
冠詞
a. 一回目に登場する単数での名詞には不定冠詞(a, an)をつける
b. 読み手と書き手の双方が理解している場合には定冠詞(the)をつける
c. 一般的概念である場合の数えられない名詞や複数形の名詞は無冠詞
  (一般的な手段・方法を表す抽象名詞の場合、無冠詞で用いる)
d. 上記以外の数えられない名詞または複数形の名詞は無冠詞
e. 主格関係のof については the をつけるのがよい
f. kind, sort, type などの名詞を単数形で用いる場合、ofの後の名詞は無冠詞単数形
  (ただし、kind の方に重点のある表現の場合、ofの後の名詞は冠詞を伴うことがある)
g. kind, type などが複数形になるとofの後の数えられない名詞または複数形の名詞は無冠詞(まれに、単数形の名詞が無冠詞となることもある)
h. behavior は数えられない名詞とされる(a behavior やbehaviorsは誤用)。2つ以上の挙動を比較する場合は数えられる名詞として扱う
i. knowledge は、ある知識を別の知識と区別する場合、知識にはっきりとしたまとまりを与える場合には、数えられる名詞として用いる
j. caseを事情、事実の意味で用いる場合、the case とする

名詞の種類分け
a. 数えられる名詞:自然界の動植物や工業製品
b. 数えられない名詞:固有名詞、科学技術分野でよく用いられるequipment, evidence, information, machineryなどがある。これらの名詞は原則として複数形をとらない
c. 上記の両方で使われる名詞:動詞や形容詞から派生した抽象名詞が該当する。
  数えられる名詞で用いる場合は、対象を具体的、個別的にとらえていることが多い
  数えられない名詞で用いる場合は、対象を抽象的に、一纏めとして捉えていることが多い
  (たとえば、at high temperatureは漠然と高温としているが、at high temperaturesは個々の温度をイメージしている)

多くみられる冠詞における誤りの例
a. A incrases with increasing 〜 という場合にtheをつけるのは誤り
  この場合の increasing は動名詞ではなく、現在分詞である。したがってthe はつけない
b. 一般的な手段・方法を表す抽象名詞の場合、無冠詞で用いる
  the Boltzmann's constant のような場合、the は誤り
  by the X-ray diffraction, by the chemical analysis のような場合のthe も誤り

形容詞の順番(主観的なものが前、客観的なものが後)(調査中)
冠詞・指示代名詞・所有格 + 順序・数量 + 評価・主観  + 大小・寸法 + 年齢新旧 +  色・性質 + 産地・出所・起源 + 材料・出所 + 使用法 + 名詞

動詞(使い分けは下記の参考文献を参照すると早い)
  原田豊太郎 著、『例文詳解 技術英語の動詞活用入門』、日刊工業新聞社
  http://homepage1.nifty.com/Mercury/ohoyamak/Links.html

前置詞
A. 使用頻度の高い前置詞:at, by ,for, from, in, of, on, to, with
B. 使用頻度の低い前置詞:at, by ,for, from, in, of, on, to, with 以外
  使用される場面が限られており、一度意味及び用法を覚えれば使用するのはそれほど難しくない

化学 Vol. 70 No.1 (2015)
「○○だから君はできない、反省しなさい」というネガティブな指導方法よりも、「○○だから君はできる、頑張りなさい」というポジティブな指導方法のほうが、学生は伸びますし、指導以外においても前向きな言葉遣いを心がけることで、講義室や研究室の雰囲気も明るくなり、研究でよい成果がでる豊かな発想力が培われるのではないでしょうか?
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和文論文(十倉好紀先生の論文が有名である)
十倉好紀 著、『有機準一次元結晶における中性-イオン性転移』、日本物理学会誌、40 (1985) 700.
  http://ci.nii.ac.jp/naid/110002075765/

十倉好紀 著、『n型高温超伝導体』、日本物理学会誌、45 (1990) 901.
  http://ci.nii.ac.jp/naid/110002068680/

十倉好紀 著、『酸化物がつくる異常金属相:強相関電子材料』、日本物理学会誌、49 (1994) 621.
  http://ci.nii.ac.jp/naid/110002066281/

十倉好紀 著、『d電子系の金属-絶縁体転移--電荷ダイナミクスの観点から-』、日本物理学会誌、54 (1999) 98.
  http://ci.nii.ac.jp/naid/110002077370/

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英語教育

◆ 人気の高いNewsサイト
・Voice of America (VOA) -- Learning English:
  http://www.voanews.com/learningenglish/
・BBC--Learning English:
  http://www.bbc.co.uk/worldservice/learningenglish/
・National Public Radio (NPR) -- News
  http://www.npr.org/sections/news/
* 15分でも毎日英語をインプットし、楽しめて、今の英語力よりほんの少し上位のレベルで、毎日でも辛くない教材を使うのが上達のポイント。
スティーブン西田、「化学」、67 (2012) 58.

◆ 国際学会 発表のための訓練法
・Slideshare ( http://www.slideshare.net/ )
  ポスターや講演スライド(音声付きも可)など、あらゆるプレゼン資料をオンラインで公開・共有できる便利なツール(音声発表のみのOK)。ほかの人のものも閲覧できるし、発表後の自身のプレゼン資料も随時アップロードできる。
・Scivee ( http://www.scivee.tv/ )
  研究を科学者間で共有できるwebサイト。学術雑誌やビデオ、スライド、ポスター、音声を登録・公開できる。
・TED Talks ( http://www.ted.com/talks )
  非常に多くの聴衆を前に語る様々な分野の著名な専門家(思想家や研究者など)の講演記録が公開されているwebサイト。英語リスニングの練習にも好適と言える。
* ポスターの説明に入る前に、次のような表現で話題の的を絞るのがお奨めです。
・ 「〜にご興味ありますか?」”Are you interested in 〜 ?”
・ 「〜についてはご存知ですか?」”Do you know about 〜 ?”
・ 「かいつまんで説明すると〜」”To summarize briefly, 〜”
* ポスターセッションでは、ポスターの説明を3〜5分行ったら、次の説明に進む前に、質問を受け付ける時間を2〜3分ほど挟む。踏み込んだ説明や議論は後日のE-mailや面会に回すことも考えて良いだろう。
*オーラル発表では、聴衆に体を向けて講演し、聴衆それぞれに3秒ずつアイコンタクトを取る。 
*スティーブ・ジョブズなど「プレゼンの天才」と呼ばれる人たちは、聴衆の興味や理解のレベルに応じて、その聴衆にピッタリ合うようにプレゼンテーションの内容を”仕立て”直します。
* 下記は相手に敬意を表しつつ、説明を求めたり異論を述べたいときに使える表現です。
・ ”I wonder if you could explain 〜 in more detail.”
・ ”Sorry, but I'm having trouble understanding 〜 .”
・ ”I'm afraid I don't follow your logic regarding 〜 .”
スティーブン西田、「化学」、67 (2012) 46.

◆ 効果的なスライド&ポスターデザイン
・デザイン「最初の10歩」
1) 書体はサンセリフ体に
  サンセリフ(sans serif)体とは、HelveticaやArial、Gill Sans など、余計な線や装飾のない書体のこと。見易さのためには、これらに統一するのがベストです。
※ もちろん、学問ルール上、物理量の場合はイタリックにします。この他、下線やボールド体にすべき箇所もあるので、注意してください。ポスターやオーラル発表のスライドでは、多くの場合、Arial や Helvetica が使われます。(論文だと字体は何を使うかは投稿の規定に書かれています)
2) 文字は大きく(24ポイント以上)
3) 可能であれば、1枚のスライドで用いる色は3〜4色に絞る。
※ グラフや図などで色分けをしたときには、その意味に合わせて色を統一して使って下さい。また同じ色となるようにRGBの値も揃えておくのがベストです。
4) 余白は大事
※ 文献ではこのように書かれていますが、私の場合、1枚のスライドに1図か2図程度、どうしても必要な場合は4図などと、あまり1枚のスライドに多くの図を入れないようにと指導されました。見易さや結果を1枚1枚伝えていくという点でも、1枚のスライドに1〜2図程度が良いのではないでしょうか。
5) 画像の解像度に注意
  最低のラインとしては、72ppi(pixlels pr inch)が目安とされています。図を入れる場合に、メタファイルなどで書き出しておくと、拡大しても不鮮明な画像となりにくくなります。書き出しの形式を変えてみて、画像の大きさを変えても問題ない形式のものを用いるようにしましょう。
6) 文字情報は簡潔に
  不必要な文や表現を載せていませんか? 口頭で述べる内容をすべてスライドに載せるのはNGです。聴衆は、スライドを読みはじめた瞬間に耳がシャットダウンし、講演者の話が”馬事東風”状態になるものです。話に耳を傾けてもらえるよう、必要な事実や図のみを厳選して、スライドやポスターに載せましょう。
  ※ つまり、短いフレーズで、要点だけ載せるようにします。
  ※ 最後のスライドの結果と考察に少しでも関連性がズレる文や表現、図は載せないようにします。結果と考察に少しでも内容が外れると、その外れた内容も最後のスライドまでに議論するのかと聴衆は考え、余計な混乱を招くことになります。特に「イントロダクション」や「背景」の説明、そして、「目的」は、「結果と考察」に完全に関連性があるかどうか(少しでも外れたところがないか)常にチェックして作成しましょう。
7) 図もシンプルが一番
  「苦労して得たデータなので」と、講演趣旨(伝えたいメッセージ)に直接関係しないデータまでスライドに載せてしまう人がいます。これまでの頑張りをしってもらいたい心境は十分にわかりますが、そういった余計なデータや画像が聴衆を情報のジャングルで”迷子”にさせ、本来の伝えたいメッセージから遠ざけてしまうことに気づいてください。スライドおよびポスターに載せる材料は、客観的に選りすぐりましょう。それによって残された少数精鋭の図表は、すべてが”伝えたいメッセージ”の語り手となります。
  ※ 逆に実験事態が出来なくて結果が少なく、選ぶ図も無く、規定の枚数にスライドがならないという事態も起こることがあります。この場合、あれこれ努力して図から結果を引き出しても、担当教官としっかりと議論できないと、あれこれ努力したすべてが無駄になります。この場合は、進学を諦めるか別の研究室に向かうのが無難です。理論計算の結果で補いたい場合は、本HPを参考にして、物理を議論してみたりして下さい。
8) 構造は流れを重視
  スライドの順番(ポスターであれば1区画の配置)も熟慮が求められます。その際のポイントは、研究背景から実験結果へ、一つのストーリーとして自然な流れをつくることなので、発表の練習をしながら言葉の詰まるところを自己分析したり、友達や研究室の仲間に指摘してもらうとよいでしょう。
  ※ 下記の「外部発表の指導方法」 を参考にスライドとストーリーを組み立てる。
9) アニメーションの多用は逆効果
  物質や細胞の経時変化を動画(ムービーや顕微鏡像のアニメーション)で見せるのは効果的なプレゼン手法ですが、テキストの表示(とくに箇条書きテキストの表示で使われる例が多い)やスライド送りへのアニメーションの利用は、避けた方が得策です。理由の一つは、例えるなら「オオカミ少年」効果とでもいえるでしょうか。無用なところで頻繁に使うと、本当に効果を狙いたい(強調したい)ところで聴衆が注目してくれなくなるのです。もう一つの理由は、前後のスライドへの移動に時間がかかり、質疑応答のとき素早く返答できないことです。プレゼンは、質疑応答も含めて一つのエンターテイメント。アニメーションの多用は結果として、スマートな演出の邪魔をすると心得てください。結果や考察などにかかわる重要な変化を説明(実演)するときに、ピンポイントで使うことをお勧めします。
10) 聴衆の立場でバランス吟味
  1枚1枚のスライド(ポスターであれば1区画)において、テキストと画像のバランスは取れていますか? 完璧な対称性や均等性は必要ありませんが、聴衆の目線は一般的に(無意識に)、スライドやポスターの左上から右下へ動くといわれています。自身が聴衆の立場なら目線はどう動くか、心の声を聞きながら、スライドやポスターのデザインを吟味するとよいでしょう。

・"Presentation Zen"
  和訳本もベストセラーとなった世界的に有名な本で、ご存知の方も多いかもしれません。(同著者の同名ブログ : http://www.presentationzen.com ).

・"The Visual Display of Quantitative Information"
  初版は50年以上も前の本ですが、内容の有用性は今もまったく色あせておらず、定量的な結果をプレゼンしたい研究者や学生すべてにオススメ。

・"Presenting Research in Science and Engineering"
  早稲田大学の准教授であるLaurence anthonyによる本書は、理工学分野の効果的なプレゼンテーションのための優れたテキストです。誰もが取り入れやすいかたちで書かれている点も、推奨のポイントの一つです。

・"Information is Beautiful"
  本書とブログでは、独創的・創造的・インパクトのあるデータの見せ方が紹介されており、その内容は世界的に高く評価されています。(同著者の同名ブログ : http://www.informationisbeautiful.net ).プレゼンテーションの新しいアイディアを模索している人に、強くお勧めします。
スティーブン西田、「化学」、67 (2012) 54.

◆ 語彙の学習法
・ The General Service List
  ( http://www.auburn.edu/~nunnath/engl6240/wlistgen.html )
  1982年のコーパスを用いて選出された2284語のGSLがすべてリストアップされている。ここから知らない単語を抜き出して単語帳を作ると良い。
・ About the General Service List
  ( http://jbauman.com/aboutgsl.html )
  上記webサイト作者であるJohn Bauman氏によるGSLについての少し詳しい説明サイト。GSLの概念や成り立ちなどを知ることができる。
・ Academic word list
  ( http://simple.wiktionary.org/wiki/Wikionary:Academic_word_list )
  Wiktionary(無料の辞書サイト)内にあるAWLリスト。頻度に応じて10段階に分けてあるので、汎用度の高い方から順番に覚えてくと効率的。
・ Vocabulary Exercises for the Academic Word List
  ( http://.englishvocabularyexercises.com/AWL/index.htm )
  ALWを自習できるwebサイト。空欄に合う単語を選択していく演習問題が公開されている。上記で示した10段階に分かれている点も便利。
・Vocabulary Size
  ( http://my.vocabularysize.com/ )
  語彙を覚える達成度の評価に使える。
※ GSLの約2000語が現在でも全英文の80%を占めている。残りの20%は学術用語で占められていると考えて良いだろう。AWLの約570語は幅広い学問分野で使われる英文の約10%を占めている。
※ 学習法としては、「単語カードなどに書きだし(裏面に日本語を書く)、シャッフルして何度も繰り返し眺め*、ときどき裏の日本語から先に見て英単語が思い浮かぶかテストする」ことが下記の参考文献で推奨されています。
*専門的には"distributed learning(分散型学習)"と呼び、何か単語を覚えたら、例えばまず1時間後に見直し、次は6時間後、次は1日後、2日後、1週間後というように、少しずつ間隔を空けて見直す学習法。
スティーブン西田、「化学」、67 (2012) 44.

◆ 英語上達に最も効果の大きい方法
とても忙しくて英語学習に15分しか時間を割けず、どれか一つしか手を付けられない場合は、基本的にはリーディングを優先させて下さい。
以下は文献でおススメされていた書籍のHP
・Penguin Graded Readers (Longman)
  ( http://www.longmanjapan.com/penguin_j.html )
・Oxford Graded Readers (Oxford University Press)
  ( http://www.oupjapan.co.jp/graderdreaders )
・Cambridge Graded Readers(Cambridge University Press)
  ( http://www.cambridgejapan.org/elt2.html?cl=Readers )
  この三つは、TOEICスコアや英検などを基準に初級者から上級者まで数段階に分類され、それぞれのレベルにあわせた幅広いラインナップをそろえている書籍シリーズです。ご自身に適したレベルから、「面白そう」と思える本を探して、どんどん読んでいってください。
・Very Short Introductions (Oxford University Press)
  ( http://www.oupjapan.co.jp/academic/vis/index.shtml  )
  これはネイティブスピーカー向けのノンフィクション・シリーズですが、教養を得るという点で非常に優れているので紹介します。
スティーブン西田、「化学」、67 (2012) 52.

◆ 英語上達法
1. 発音
  Starfall.com: http://www.starfall.com/
  美しい発音を真似る練習に役立ちます。
2. リズムと抑揚
  English Central: http://www.englishcentral.com/ 
  英語学習向けの総合的なWEBサイト。登録は無料。このサイトの(ブラウズからビデオサイトに入る)”Watch-Learn-Speak”ビデオにトライしてみてください。。登録ユーザーの話し方を審査してくれる機能もあります。 
3. 文法と語彙
  audible.com: http://www.audible.com/ 
  厳選されたオーディオブックのデータベース。朗読は著者自身あるいはプロの声優ですから確かですし、視聴版を聞いて好みの筆者を選べる。ブログやポットキャストと違い、編集と改訂が重ねられていて信頼できるという長所があります。
4. 書き方
   ”The Oxford Book of Modern Scientific Writing”, Oxford University Press, New York (2008). 科学者の珠玉の名文集。
5. プレゼン術
  The 20 most-watched TEDTalks (so far): http://blog.ted.com/2011/06/27/the-20-most-watched-tedtalks-so-far/ 
  プレゼンの練習をしたり、ヒントやアイディアを得るのに絶好のWEBサイト。すべての話題が20分以内に収められており、多くは字幕が付いているので、話の内容も簡単に確認できます。気に入った講演者を見つけたら、その人の講演を(できればすべての講演を)、体に染み付くまで繰り返し見るとよいでしょう。
スティーブン西田、「化学」、67 (2012) 52.
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■ 実験ノート記載のコツ

・ 実験中の疑問点を考察している段階でも、観察した内容は即座にノートへ記録する

・ 一つひとつの実験を説明するときにはタイトルから始め、タイトルの下に簡単な要点をまとめておく
(日付や日時は重要。最新の情報やその前の情報をいかに迅速に得られるようにノートを記しているかが、これまで得られた結果を反映して次の実験に移行する速度を左右する。ゾルゲル法を行う場合は特に温度と湿度も記録しておく癖をつけると良い)

・ 生データと観察の記録を忘れずに書く
(具体的に書くこと。光触媒などでは見える色の濃さが作製した試料に対する重要な情報を与えてくれることが多い。色の種類だけでなく濃淡などを記録しておくことによって測定の優先順位や効率性を高める指針になったりする。数値で表示される桁の範囲は物理的に意味に省略してよいと考えられる場合以外は全て記しておくこと! 後にデータを見返して、必要のある桁だけ記述するようにすればよい{先輩から意見を貰える場合にはそれを参考にすればよい})
※ マウスを用いた実験の場合には、光、音、喚起、温度、湿度、清掃、消毒、給水、給仕、実験者の性別(男性から分泌されるホルモンをマウスが嗅いだことによるストレスによって生じる鎮痛効果が生じる。これは30-60分続く){化学 Vol.69 No.09 (2014) 54-56. }によって影響を受ける。

・ 実験の順序どおりに書く
(変則的な実験の順序になった場合に結果が妥当かを検討するのに役立つ。そのようなときは突然訪れる。しっかりと実験ノートに記載しておけば、実験で許容される条件が分かり、実験手法の省略化{より楽に実験が行えるようになる。これは大事!!}や誤差の許容範囲が分かるようになる。エクセルで管理したり、試料瓶と実験ノートに実験手法の頭文字を記していくなどすれば良い意外に簡単に管理できる。試料瓶と実験ノート、エクセルでの管理表に書いておくことで、誤りの判別や本当はどんな試料だったかをこれまでよりも正確に確認できるようになる{ここ重要!!})

・ 報告する情報よりもより多くの情報を実験ノートに書いておくように努める
(変更しないパラメーターは最初に”全て”書いておいて、必要になったときに直ぐに見つけられるようにページ番号を分かりやすいところに記録しておくと良い。実験失敗などで実験装置でのパラメーターを元に戻すときなどにも有用。もし、何かの拍子に全てのデータが吹っ飛んで消えてしまったら、と考えて実験の詳細を最初に記しておく)

・ 実験データの確実さ・明白さは、その先に書く論文で結論を述べるうえでの大前提となり、潔白な正直さを証明することにもなる

・ 実験ノートの記憶を続けると、現在行っている活動の方向付けができる

・ 実験を何連で行うかなど、最適条件を決めるのが上手になる

・ まず実験ノートを書きながら考え、次に実験で測定する

・ おのおのの実験に番号(シリーズ記号)付けをして、番号づけで実験操作を体系付ける
(試料は番号で管理し、条件が大きく異なる場合や作製手法が異なる場合には記号を新たに付ける。そうすることでエクセルなどで試料を管理でき、どの行程まで作業が進んでいるかを確認することもできる。他の人がサンプルを見て、一瞬で、その試料がどのような実験手順で作られて現在どのような試料の状態になっているかを判別できるのがよい。試料においては、何かを吸着させたり、焼鈍時間や雰囲気を変えたり、アニーリング前後で、試料が見た目で変化しないこともあるため、このことが重要になる)

・ 自然科学の生産性は、実験の段取りが上手いかに関わっている。上手に記録が付け続けられている実験ノートは再現性が非常に高いという以外にも、実験速度を向上させ、副産物として、これまで気付かなかった傾向を統計的に議論でき、生産的な研究活動に必須のものとなる。
(これまで気にしていなかった点に気付く手がかりになる。実験ノートに記述していなかったことが重要なパラメーターであったということは良くある。それは、実験ノートに記載されているパラメーターが同じだということから気付くことになる)

[1] 化学 Vol.69 No.8 (2014)
論文執筆についての教科書: "The Art of Scientific Writing: From student Reports to Progessional Publications in Chemistry and Related Fields", Second, Completely Revised Edition, H. F. Ebel, C. Bliefert, W. E. Russey, eds., Wiley-VCH, Weinheim (2004)
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■ E-mail
・ アカデミックの現場で論文出版のための競争があっても、協調できるマインドのチームワークを築こう
・ 簡易なコミュニケーションツールのE-maiを生産的に活用して論文執筆のチームづくりに努めよう
・ 研究者一人ひとりの人間性も論文の質を左右する。一緒に働きやすい、一緒に論文執筆しやすい研究者になろう
・ (研究室内及び研究グループで)頻繁に連絡を取り合うこと
・ 同じ目標を共有すること
・ 立場や分野の違う相手が抱える問題に理解を示し、フレキシブルに対応していくこと
・ 個人と組織の二つの意味合いでメールを出す
[1] 化学 Vol.69 No.9 (2014) -26.
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各研究室の教育方法
□ 鈴木研 [1]
 僕はできるだけ学生自らの発想や考えを尊重し、大切にしてきました。ただ、グループ研究では各人ばらばらの考えでは効率や有効性の点からあまりいい結果は望めませんので、それをうまくまとめる必要があります。それが僕の役割でもある。何かいい結果ができたときなどは、僕が声をかけて、お酒とジンギスカンでコンパをやる。コンパを嫌がる学生はいませんからね。
 北大の有機化学は、工学部、理学部、農学部、薬学部とありますが、みんな仲がいいし、横のつながりもよく、コミュニケーションがうまく取れている。1年に何回かジンギスカン・パーティを開いて情報交換したり、雰囲気がとてもいんですよ。北大には田舎のよさがあります。僕はたいへん気に入っている。
 真面目に研究していれば、そのような発見や発明に出会うチャンスは必ずあるはずです。その機会を生かせるかどうかは、ひとえにその研究者の研究態度と努力に掛かっている。まず、「自然を直視する謙虚な心」「小さなことも見逃さない繊細さと注意力」、そして「旺盛な研究意欲」が重要ではないでしょうか。
 ブラウン先生だけでなく、私にとっては本を通して有機化学へ導いてくれたフィーザー先生も恩師なわけです。それから、僕の研究センスはブラウン先生、杉野目先生、松本先生、伊藤先生からの影響が大きいですね。学ぶということはまねるということ。自分一人でできるなんてありえません。僕にとって師匠の恩恵はそれくらい絶大です。

□ 今研 [2]
 ここに学生が全員いるので、合ったらその場で捕まる。(「あの実験はどうなった?」という感じですか?)そうそう。でも、別に結果が聞きたいわけではなく、何か話していると意思疎通がいろいろなときに取れますよね。最新の結果を聞くと、話していて次のアイディアも生まれる。できるだけみんなに声をかけるように心がけています。
 うちの研究室は、触媒を合成するグループと放射光を使って触媒がどう動くかを測定し、目に見えるようにイメージングする研究をしているグループに分かれています。学生が4月に研究室へ来ると、まず彼らに何がしたいのか希望を聞きます。合成をしたい人は合成のテーマを、測定をしたい人は測定のテーマという感じで、ここまでは彼らの意思を尊重して決めています。
 あとは、そのときどきでやらなければいけないホットなトピックやターゲットを選んで各自に一つずつ与えます。私のところでは学生全員が違うテーマをやるようにして、誰かの下で真似をする研究はしないようにしています。学部4年生でもゼロから研究を立ち上げて、修士までの3年間で一つの仕事をしていくかたちで取り組む学生が多いです。
 (そのテーマは先生が具体的に考えて、指示されているのですか?)いいえ、「この錯体でこんなものをつくろう」というイメージはいいますが、この予想はあまり当たらないので、細かくは指定しません。意図的にそうしています。たぶん私たちがすぐ頭で思い付いたことは、そんなにたいしたことではないと思う。もちろん、まったくゼロから学生に考えさせるのは無理なので、最初に使う材料や反応などは指示します。進めていくと、研究に取り組むなかで思いつかかなかった結果が得られることがたくさんあるので、そこからまた次のアイディアを考えます。
 (まずは学生にやってもらって、先生はそこから予想外の結果を期待している)ええ、予想しなかった結果がでたときに、その価値に気付けるかどうか、それが研究の面白さだと私は思っています。結果次第で彼らの研究テーマが変わることは四六時中あります。新しく思いもよらなかったことがでたときに、「失敗した」とだけ思う人と「これは何かに使えるかも」と感じる人では、その後の展開が大きく違ってきますね。
 (失敗を、ただ単に失敗に終わらせるのではなく)そうですね。その失敗がのちに役立つことも少なからずあります。私も365日そばについて実験を見ているわけではないので、考えた通りにはいかないけれど何か見つかりそうだというときに、学生にはそれを感じとれるようになってほしい。
 化学というのは、自分でやった経験がとても大事だと思います。何か問題に直面したときに、どういうアプローチをするか、どういうふうに自分は考えるか、人にどうやって説明するか、おそらく自分で考えたことしか残らないでしょう。大学や企業に就職して研究者になったとしても、学生時代にやった研究とはまったく違うことに携わる方がほとんどです。そういうときのために、学生のときはいろんな問題に対して自分で一歩一歩考えていくプロセスを大事にしてほしい。自分が実際に考えて解決していったプロセスが、将来いろいろなところで役に立つだろうと思います。

□ 茶谷研[3]
・C-H 活性化の研究を始めるきっかけは?
 このきっかけとなる研究も、実は別の反応を狙って実験をしていたときに見つかったものです。ある学生がアセトフェノンとビニルシランを使った脱水素ケイ素化反応の実験をしようとしていたら、なぜか芳香族ケトンのオルト位のC-H結合にアルケンが付加してしまった。その学生がやるとうまくいくけれど、それ以外の学生ではまったく反応が進まない。理由をいろいろと調べていくうちに、添加しているルテニウム触媒のかたちが違うことが分かりました。
 この実験をしたのは、実は非有機化学系の別の研究室からうちの研究室に来て、初めて有機化学実験を経験したM1の学生でした。だから、はっきりいって実験が下手。窒素雰囲気下で反応をさせているつもりが、空気が入っていたためにルテニウム触媒のかたちが別のものに変わっていた。結局、それが活性だったのです。腕のいい学生が実験をすると、うまくいかない反応(笑)。そこで、今度はそのかたちのルテニウム触媒をつくって窒素雰囲気下で反応させると、ちゃんと反応が進んで再現できた。セレンディピティーそのものもです。
・それを見逃さずにうまくつかまえられたポイントは?
 最初にその化合物のNMRを見たときは、手探りの状態でした。そんな反応が行くと思っていなかったから。例えば、オルト位のC-Hの数がおかしい。ベンゼンも対称ではなくなっている。それで、「こんな構造だろうか」と試行錯誤しながら検討していきました。うちの研究室では、昔その化合物と似たような生成物をつくっていて、そのNMRデータをもっていたのです。ベンゼン環とシリル基の間にある二つのメチレンが特徴的なNMRパターンを示すので、検討していくうちにピンときた。これがわれわれの研究分野の一番の醍醐味ですね。「どうしてこんな化合物が合成できたのか?」からはじまって、その構造がわかって、「えっ!?」。この過程が一番どきどき、ワクワクしますね。この実験がきっかけで、C-H活性化を研究テーマ中心に置くようになりました。
・実際に反応が進まないときは、どう解決していますか?
 この研究分野は、「あれやれ、これやれ」といって、その通りに反応が行くことはほどんどありません。だから、あまり具体的ではなく、「こんな感じの反応機構をまず考えてみては」ということを学生に伝えています。あとは学生自身が情報を収集して、いろいろ考えて反応設計をしながら実践していく。たまに「この反応をやってみては?」と思いついて提案してみたら、パッと反応がいくときもあるけれど、だいたい99%はノーリアクション。あるいは収率が悪かったり、出発原料も回収できないような状態が普通。触媒反応の開発は予想しにくく、やってみないとわからない。何が起こるかわからないということばかりです。でも、そこが面白い。
 優秀な学生は、少ししかできていない生成物でも、「これが面白い!」と思ったら、その生成物の選択性を上げて、収率を良くすることを自分自身でとことん考えだします。研究には、これが重要なのです。
※ "優秀な学生"というところがポイントです。給与を貰う立場になると、私の所属していた研究室ではそんな余裕はなく、教官が納得する研究かまたは成果がでないといつも怒られていました。それが下層労働者に求められていることだということは覚えておいてください。下層研究者は論文も書かなくてはなりません。
・学生に期待することは?
 ときどき同じ研究を、何代もの学生にやらせています。最初のA君に実験をさせてみる。でも、うまくいかない。次に、世代が変わってからB君にさせるけど、やはりダメ。でも数年後C君がやると、なぜかうまくいく、ということがある。それは、やはりC君の実験に関する情報収集能力、あるいは彼の努力や知識の差、なんですね。それから、「できるまでやる」という信念も重要。できなかったらゼロですからね。
 もちろん、こちらも簡単にできるようなことをやらせているわけではないから、なかなかうまくいかないのは当然。もしかすると本当にできない可能性もありますが。一応、われわれはできると信じて、学生にさせます。学生はできるまでやってみるしかない。
・学生にはどのような知識とスキルが必要でしょうか?
 実験の数が大事でしょうね。いかに多く実験ができるか。スピードと数。たとえば一日中ずっと研究室にいても、少ししか実験をしない学生がいる。一方で、他人の2,3倍は実験をしている学生もいる。より早く、数多く実験ができるというのは重要です。これは、ある意味能力ですが、一つは実験の段取りの良さもあるのでしょうね。それと、実験のセンス、これに加えて、関連の文献を調べるなど、どれだけ勉強しているか。有機化学を研究するには実験が一番重要です。
 われわれの研究分野は、何が起こるかわからないものばかり。ですから、幅広い知識が必要になりますね。たとえば、「パラジウム触媒反応だけ知っている」のではなくて、幅広く多くの反応を知っていることが重要です。でないと、新しいことや面白いことが起こっているのに気付かず、見逃してしまう可能性がでてくる。
・研究室の様子をお聞かせください
 スタッフとしては、講師の福本能也先生と、所属上は別組織の若手フロンティア研究センターの特任講師の鳶巣守先生の3人。博士課程の学生は3人、修士課程11人、4年生は4人。今年の3月からは、フランス人のポスドク(グローバル COE)が一人来ています。そのほかに、カナダ、フランスなどから短期滞在の交換学生や招聘研究員、また韓国籍の研究員もいます。研究室の体制としては、ドクター、マスター、4年生で研究テーマのグループをつくっていて、先輩が後輩の面倒を見ます。
・学生の研究テーマは、どのように決めていますか?
 4年生はまったく新しいテーマを研究することはなく、いままで先輩がやってきた研究の見習いとして、やり残したようなところ、継続すれば確実に結果がでるだろうと思われるテーマを研究しますね。だんだん慣れてきたら新しいことにチャレンジしていく。というのは、われわれの研究分野は、反応が行かないことが多い。99%はほとんど行かない。「反応の設計が悪いから行かないのか」「実験をやっている腕が悪いからうまくいかないのか」すら、わからないことが多い。だから4年生は、確実に反応するとわかっている研究テーマからまずスタートします。
・学生を指導するうえで、どんなことに留意していますか?
 あまり細かいことをごちゃごちゃいわない、基本的に割と学生のやりたいように自由にさせています。大枠を把握している程度ですね。実験に関しても、例えば毎日は聞かない。データの出方にもよりますし、研究の仕上がりの段階では、毎日尋ねることもありますが。それから、研究会の前に学生を呼んで、まとめて聞くことも多い。
 輪講室でお茶を飲んでいる学生がいたらつかまえて、「いま何をやっているのか黒板に書きなさい」、というのはよくやります。学生にはいつも、「頭を使え、実験は誰にでもできる、だけど研究は頭を使わないとできない」と口酸っぱくいっています。
※ 茶谷: われわれが未熟で予測できる範囲が狭いため、何が起こるかわからない。でも、そこが一番の魅力だと思います。
村上: 意外なことが起こったり、予想とは全く異なったものを合成したり、見つけたりするところが非常に面白い。生成物の構造が全然わからず、X線構造解析を行なってようやく骨格変換を起こしていることが分かったりするケースもある。

□ 高橋研[X1, X2]
 僕のドクター教育のポリシーは、長芋を1本掘り出せるドクターよりも、ジャガイモ畑を耕せるドクターを育てることです。4年生が入ってきたら、ドクターを取ることを前提に5年のスパンのテーマを与えます。だいたい5年のスパンのうち3年後くらいから、新しいコンセプトの研究を始めて、もとのテーマと合体させたり入れ込んだりしながら、一人前に新しい分野を開拓させる。そうして5年後にはその新しいテーマをで1000万以上の研究費を取れればいいと、そんなふうに考えています。つまり、研究室の先輩が誰もしていなかった真新しい分野のテーマを渡されても一人前に開拓して、来年のタネイモをちゃんとつくって予算取りにつなげられる研究者に育てたいのです。
 難しいのは、うまくいったテーマの引き際を見極めること。パチンコでピーク止めっていうのがありますよね。ジャラジャラっていっぱい出ているからといって一日粘るとダメになる。研究も同じで、もっと結果が出そうだとしても、国内で類似の研究を展開するグループが五つ以上出てきたら、僕らは撤退準備にとりかかるようにしています。そしてまた新しい分野の開拓を始めます。
 大学は、将来のアカデミアを教育するだけの場ではないと思っています。学生の八〜九割は会社に就職するのですから、そこで研究するために役立つことを教える使命もあるのです。僕は工学部の化学者ですから、理学部の化学者とはちょっと一線を画した研究に取り組んできました。こういう教育方針ですので、ドクターの卒業生が多くなったと思います。
 そすてドクターを取ると、僕の研究室ではポストドクターとして海外へ行く人が多い。ポスドクには日本から給料をもっていく場合と、行った先で給料を貰う場合と二通りあって、向こうで給料を貰えるようなポスドクになるのは結構大変です。しかしながら、僕の研究室から行く人は、ほとんど向こうで給料をもらうポスドクになっています。
 僕は海外の学会や大学、企業へ行くとき、学生を一人連れて行くようにしています。ドクターの学生に、卒業したらどこに行きたいか聞いて、ポスドクとして海外のこの先生のところに行きたいということになると、まずその先生に、うちの学生に会ってくれないかと頼んでいくのです。そして、その大学の近くに海外出張が入ったら、その学生を一緒に連れて行くわけえす。学生は、僕が講演している間に、目当ての先生のところへ行ってインタビューを受けてくるわけです。ポスター発表で学会に参加するなら、そのポスターをもって目当ての研究室でプレゼンテーションをしたり、ドクターやポスドクとディスカッションして、それをボスに聞いてもらうというアレンジをしておく。
 学生だって、ただ学会に行っただけでは何にもならないし、行ってポスターの前に立っても、それだけではあまり効果はないと思うのです。そういうアレンジをして、行きたいラボでインタビューを受けられれば学生のためにもなるし、相手の先生にとってもいい。相手だって、給料を出すからには間違った人を取りたくないですよね。
 ただし、そこまで行く費用は僕がもちます。僕の海外出張はポスドクのアレンジツアーでもあるから、費用を安くするために、学生と一緒に同じ部屋で泊まったりします。寝言まで聞かれちゃうけれど、そういうアレンジをして、向こうで給料をとれるポストドクターとして送り出すのです。[X1]
 僕の研究室では、研究室にこなくなってしまった人とか病気になってしまった人は非常に少ないです。常々どのようなことをやっているかというと、報告・連絡・相談、つまり報・連・相の徹底です。助教や准教授のスタッフと昼ご飯を食べながら、お前たちの部屋では何か困っていることはないかって聞くわけです。
 それから、「エレベータートーク」。研究室内の飲み会があると、学生には一人一分ずつ近況報告をさせます。会社に入ってエレベーターで社長と一緒になったら、黙っていたら何もなんらない。何かしゃべらないとチャンスはこないよということで、しゃべる練習として始めました。学生にも「報告」をしてもらう。学生の場合は報告しておくと責任回避もできる。ボスに報告しておきましたっていえば、トラブルがあったときにボスも責任の一端があるわけだし、なにかあったら報告すれば、スタッフや学生同士でいろいろ考えられる。
 スタッフから、こういう風に困ってる学生がいますよって報告がくるとします。そうすると、教授・准教授・助教の3人体制で相談する。当事者だけだと一方的になってしまいますから、たとえば、3週間も研究室に来なくなった学生がいたとしたら、必ず家までスタッフの誰かを派遣する。それでもダメだったらご両親を呼ぶ。親父さん、おふくろさんは、自分の子供が登校拒否をしているなんて思いませんから、まさかって思うようです。両親まで引っ張り出してって思うかもしれませんが、うつ病のような精神的なものかもしれませんし、それに、われわれスタッフが説得するよりは、親の涙が一番効果的だと思っています。これでだいたいよくなります。マスターはみな取れたし、ドクターは64名中一人だけドロップアウトしましたが、あとは全員取得できました。
 悩みの中には、もちろん研究に関する悩みも入ってきますよね。以前も言いましたが、新しい研究分野を拓こうとすると批判ごうごうだから、学生だけじゃなくて若いスタッフだって悩んでいます。
 僕は、報告・連絡・相談ができない人こそ、よけいに深く悩んでしまったり、うつ病にjなってしまったりするのではないかと思います。だから、報・連・相というのを研究室に入った学生に徹底的に仕込んで、話のできる環境をつくることにしています。人に話して相談すると、悩んでいたことも実はたいした悩みじゃないってことがわかる場合もありますし、つまりは、病気になってからというより、ならないような環境づくりが大事です。病気になる前に、芽が出たら早めに摘んでおくことが大事です。
 「ボスと同じ研究をしない」ということは大原則でした。これは米国では最低限のマナーでした。[X3]
※ 学生さんと対峙すると、ムッとしてしまうこともあるが、優しく微笑んであげてほしい。私が尊敬する教員の中には、かつて別の学校で怒られて嫌な思いをしたので、学生さんにはそんな思いをさせたくないと考えて、いつも笑顔で怒らない方がおられた。笑いながら「そうだけど、こうしたらもっとよくなるんじゃない?」などの建設的でありがたいコメントをしていた。私もその研究室で研究をさせて頂いたときには非常に伸び伸びと研究を出来、深夜や休みの日に研究をしても苦に感じない、素晴らしい経験をした。一方、対面する直前に眉間にしわを寄せている方にお会いしたときには萎縮してしまって研究意欲もかなり減退してしまった。今思えば、体面する直前だけ厳しい顔をしており、対面中は笑顔になっていたことを思うと、厳しい研究環境に置かれたなかでもその方には気をつかって頂いていたんだとわかる。いろいろな方々と接すると、普段は厳しいが(研究職で食べていけるようにという優しさが込められている)、いくつかの場面で優しい面(見えないところで事務処理をして頂いたり)が見えたりする素晴らしい研究者や教員の方々も大勢いらっしゃるので、どの教育方法が良いかははっきりとはいえない。自身にあうと思われる尊敬するかたの方法を参考にしてみるのも良いかもしれない。

□ 文献[X]の記事は面白いので見ておくと良いだろう。「何事もやってみなければわからない!」
○ 化学における常識は「まちがいだらけ」と思って、労を惜しまず実験をすることを薦めたい。
 例えば、1826年に尿素が無機化合物から合成できることを発見したウェーラー(F. Wohler, 1800-1882)も、当時の常識である「無機化合物から有機化合物の合成は不可能」という知見を信じていたならば、得られた物質が尿素であると同定しなかったのではないだろうか。言い換えれば、彼はそれまでの知見にこだわらなかったために、この大きな発見を成したとも言える。
○ 前任者からの申し送り事項のなかに、合成を試みたが成功しなかったという化合物があった。天邪鬼の本領を発揮して、あえてこの化合物も取り上げて一人の担当者に割り当てた。反応経過は、逐次その担当者にTLC(薄層クロマトグラフィー、簡易反応チェック法)を見せてもらうことにした。反応条件をいろいろ変えたが、なかなか目的物はできなかったので、反応溶媒を変えるように指示したところ、量はきわめて少ないが、目的物らしいスポットがあるというTLCをもってきてくれた。そこで、急遽ほかのタイプの化合物合成を試みていた人を2人増員し、そのスポットが増える条件を手分けして探させた。その結果、ある反応条件下なら、目的物が高収量で得られることがわかった。ただちに黄色カプラーを探索している全員に与えた化合物をすべて放棄させ、この系統の化合物の研究に集中させることで目的を達成することができた。
 普通の人間なら、前任者が諦めたものを追試はしないだろう。確かにそのままの条件ではできなかった。しかし、根気よく条件を変えることにより目的は達成されたのである。もちろん、過去の知見は貴重な財産だが、このときのようにすべてを網羅していない場合がある。化学反応においては、駄目といわれても、見方を変えて実験することが大切である。
○ 前任者は、優れた硬膜剤を発見していたものの、その大量合成が難航していた。その硬膜剤中間体は、市販の原材料から3段階の工程を経て得られていた。ブロム体は高収率で得られるが、次のチオエーテル体から一気に酸化してスルホン体として硬膜剤中間体にする工程がネックとなっており、安定に高収率で合成できる条件の確立が必須であった。この工程は、同じ反応条件でありながら収率がよい場合と極端に悪い場合が見られ、原因が不明だった。
 きわめて高収率の場合もあったので、微妙な反応条件の差ではないかと考え、数人に反応温度や滴下時間、添加方法などを変えて実験してもらった。ある日、その反応を最初から担当していた研究者が、酸化段階のときに筆者を呼びに来た。それまでの経験で、反応中に赤い蒸気がでると収量が低下するから見てほしいとのことだった。その赤い蒸気を見て、すぐ臭素の蒸気だとわかった。筆者は過去の経験から、アルコールに溶解している副生成物の臭化カリウムが酸化されてブロム酸になり、過酸化水素より強力な酸化力で収率を下げていると判断したのである。そこで、原料の脂肪族のブロミドを脂肪族のクロリドに変え、カリウムアルコキシドもナトリウムアルコキシドに変えて合成してみた。これだと反応の副生成物は臭化カリウムではなく塩化ナトリウムとなる。臭化カリウムはアルコールに溶けるが、塩化ナトリウムは溶けない。プロミドをクロリドに変えることで、チオエーテル化の反応は遅くなっても、アルコール内に副生成物が存在しないために過酸化水素による酸化は受けない。これにより反応を阻害する臭素の発生を抑えることができた。
 この出来事は、化学の常識に囚われた結果の失敗といえる。実際、今回のような反応では臭素が入っている化合物のほうが高収率が期待できることが常識である。しかし、この例からもわかるように、副生成物が反応の進行を妨げる場合もある。つまり、常識は一般論であって例外もある、ということである。わかってみれば簡単なことと思われるかもしれないが、当事者は筆者の反応の変更を指示するまで、数ヶ月にわかって苦戦していたのである。
○ とかくスマートさや効率性が好まれる時代であるが、科学現象の真理は実験によってのみ裏付けられる。泥臭いかもしれないが、労を厭わず実験することこそが真理に近づく王道ではなかろうか。
※ ただし、私の経験では、分野が違うが、元素の置換量を変える場合には、0.数%で突然に急峻なピークを描くような物性(低温での電気抵抗は除く)を示すものはみられなかった。雇用主からは細かく%を振るなとも言われることもある。1%毎に置換量や混入物を変えていっても怒られることもある。これは選別の仕方の方針にもよる。多くの場合、物性は置換量や混入量に対してブロードなピークを描くので、2〜3%毎に(例えば、0%, 3%, 6%, 9%など)大まかに調べて有望な物質を見つけていくのも良いだろう。これは指導教官と相談しなければならない。なぜならば、論文では、1%毎に置換量や混入物の量を変えたときを記してあるが、それは論文に出来るほどよい物性の値が得られていたという理由があるためである。だから、実験をする前に、「置換量や混入量は何%毎に変えていくのか?」ということを、雇用主や指導教官とよく相談して欲しい。後で解雇や研究計画を変更するなどのトラブルが起きないようにするために。

□ ドイツでの研究室の様子[X4]
・ ミュンヘン工科大学 Bach研
 研究室は総勢29人。研究者1人につき広い実験台が二つずつ割り振られ、ドラフトも付いていた。フラスコなどの実験器具も豊富で、不自由することはありませんでした。また、研究室の入っている建物の1階には試薬などを購入できる場所があり、学生は、必要な試薬を、研究室の研究費から自由に購入することができます。自由に使える共通のNMRも4台あり、スムーズに実験を進めることができました。(省略)
 研究室では、みなが気軽に声をかけてくれて、実験のアドヴァイスもしてくれました。パーティーや飲み会にもよく誘ってくれました。研究室での日常会話はドイツ語でしたが、セミナーはすべて英語で行われており、彼らの英語力の高さと、研究者にとっての英語力の必要性を再認識しました。
・ レーゲンスブルク大学 Reiser研
 基本的な実験設備は日本と同様でしたが、意外だったのは実験室の小ささと多さで、少人数(3〜4人)の実験部屋が10ほど並び、各部屋にドラフトチャンバー、エボポレータ、各種ガラス器具など必要設備が備えられていました。(省略)研究室メンバーも溌剌としていて、朝8時くらいに来て実験を始め、夕方6時にはキッチンでビールを1本開けてサッと帰宅するといった具合で、メリハリのある生活という印象でした。
 カルチャーギャップとしては、たとえば講演会やセミナー発表後、聴衆は拍手の代わりに一斉に机をゴンゴン叩くことに面食らいました。また、誕生会や歓送迎会は自分でケーキなどを準備して主催する必要があり、受身で待っていては祝ってもらえないのも、面白いなとおもいました。
 それから、伝えようという意思があれば、英語は(苦手でも)なんとかなることがわかりましたが、周囲がドイツ語で盛り上がるとカタコトの英語では割って入りづらく、もう少しドイツ語も勉強しておけばよかったと感じました。
・ミュンヘン大学 Trauner研
 (省略)ドイツ到着の翌日に登校すると、さっそく博士課程の学生たちがNMRなど装置類の使い方を教えてくれて、すぐ実験に着手できました。
 学部生を含め約40人が在籍していました。多くはドイツ出身者ですが、ヨーロッパ各地、アメリカなどからもポスドクが集まっていました。1人に対しドラフトが一つ用意され、広いスペースで実験できました。研究報告と全合成の論文紹介を中心とした演習のゼミが毎週2回あり、いつも活発な議論が英語で交わされていて、有機化学のレベルの高さを痛感しました。
 実験風景は日本と変わりませんが、実験に対する考え方は大きく異なっていました。彼らは、研究を"仕事"と捉えているようです。1日の実験計画をきちんと立て、それを終えると、研究室に長く留まらず帰宅していました。また、仕事を早く終わらせるために、実験結果を考察する時間を設け、効率的な実験を心がけていたと思います。
 Trauner研では日常会話も英語で、当然ながら、ほとんどの人が英会話を苦にしていません。

[1] 化学、Vol.66 No.1 (2011) 21.
[2] 化学、Vol.69 No.1 (2014) 12.
[3] 不活性結合・不活性分子の活性化、日本化学会
[X] 化学、Vol.67 No.8 (2012) 20.
[X1] 高橋孝志、現代化学、509 (2013) 38.
[X2] 高橋孝志、現代化学、511 (2013) 23.
[X3] 高橋孝志、現代化学、505 (2013) 37.
[X4] 化学、Vol.67 No.10 (2012) 28.
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■ 福井謙一氏の言葉
「科学の研究で大切なのは直感です。その直感は、自然に触れることで養われます。庭などで昆虫を観察する。両親をいつくしみ、友達とのけんかも自然の一部なんだ。そこから吸収することはいくらでもある」[1]
「孤立無援の研究こそだれにも評価されない研究こそ、自然の神秘に関与する可能性がある」[1]
「拙速をもってよしとするときがある」[1]
「コンピューターがしたことは分かったが、君のしたことはなんですか?」[1]
「これはできている」:同期の友が原料合成に悪戦苦闘しているところに、福井先生が入ってこられて、匂いを嗅がれてこのようにおっしゃった。友はこの言葉を励みに合成を繰り返し、成功に漕ぎ着けた。私は隣の実験室で実験していたので、その場面を今でも鮮明に覚えている。なんと理論化学者が、化合物の匂いを瞬時に嗅ぎ分けた。しかも、分析すればほぼ収率ゼロの微量な化合物の匂いを、そこまでなれるものか、その後の目標になった。
「なんの役にも立たないことします」:1988年の基礎化学研究所の開所式での会見で、マスコミから「なんの役に立つことをするか?」と問われ、こうお答えになられたとか、これも福井先生ならではといえよう。
「教科書を疑え」「新しいことを考えろ」[2]
「私は研究室にはいってきた学生に、理論をやりたい者は、まず実験をせよ」と言い続けてきた。[3]
[1] 化学、Vol.68 No.11 (2013) 16.
[2] ”福井謙一博士とその一門”、読売新聞、2013年10月25日; http://www.yomiuri.co.jp/job/biz/columnscience/20131024-OYT8T00613.htm
[3] 技術力向上プロジェクト; http://www.gijuturyoku.com/doc/doc11.html
※1: とはいえ、新参者に教科書を疑うことは難しく(新参者では知識や経験を一朝一夕には増やせず、上司に反論できない)、また、雇われ研究者の場合には、そんなことをしている暇はない。余計なことをすれば怒られ解雇されるのがオチである。日本の人々がSTAP細胞の発見に沸き立つのは良いが、これを理解していないと、路頭に迷う博士研究員の屍の山が出来るのがオチである。ハーバード大から給与を貰える方が凄いが、無名で業績も僅かしかないような私の様な者は自己の給与と研究資金を手に入れられるだろうか? 彼女は共同研究を申し込んで、職がある間に共同研究者を見つけることができたが、通常、そんなことはおきず、アルバイトをしながら赤字経営でボランティアとして研究を続けるか{←このHPの管理者はいまここ。これ以上被害者を増やさないためにこのHPを開設している}、職が終了するか、孤独死する。そして、発見した新事実がいつもインパクトがあるものとは限らない。プロジェクトでは、大風呂敷を広げた方針の下で、苦しい研究生活を行っても成果を得られず、加えて、プロジェクトでは実用化を目指すために、論文を書くのに適した研究内容である保証も無いため、研究者としての業績も作りにくい。私は駄目人間なので出世は当初から諦めているが、私よりも遥かに英語力もある東大出の博士が不遇な立場にあることを聞くと、どういう世の中なのか分からなくなる。政府は「(博士)研究員の命は鴻毛より軽し」とでも思っているのだろうか。
※2: 2014/2/20時点において、STAP細胞の論文に関して疑義が出されている。生物・化学系の論文は、”論文に書いてある方式”に従っても同じ結果が再現できないことは多々ある(私は光触媒の分野でそれを経験した。また、まだ僅かであるが他分野での化学系の方も同様の意見である方がいる事を確認している。和文雑誌『科学』では生物系で幾つか似たようなことが書かれているので目を通してみるのもよい)。一般的に、再現性が出ないことには下記の幾つかの理由が考えられる。
1. 論文に詳細な実験方法(テクニックのようなものも含めて)が書かれているわけではないため(光触媒の場合、二度焼きや三度焼きなど、炉から何度も出して乳鉢でする必要があったり、砕くときに使う溶媒の種類や有無であったり、測定装置の違い{閉鎖循環系を用いるか?}などがあるために)、同じ結果を得るのは難しい。ただし、絶対値は論文に近づかなくとも傾向は一致するので、trueであるとは考えている。ただ、水素発生量の大きさで議論するのであれば、よいデータが出る装置やテクニックがある方がインパクトがあるので、それによって他者の追随や外国からの追い上げが難しくなっていないかは気にしたところではある(どこまでフェアーに記すかや他者による再現性を求めるかではあるが・・・・・・。STAP細胞の場合は特許の問題などで詳細に記述できていないことも考えていたが真相はどうか・・・・・・)。光触媒での研究においては、Xeランプを用いて可視や紫外光を光触媒に照射するが、そうすると、フラスコの温度が(直接当てると60-80℃程度まで上がる。ミラーやフィルターを入れると温度の上昇は少なくなるが・・・・・・)上昇する。温度によっても水素発生量が異なってくるのに、何も記されていないのはどういうことかも分からない。大気圧条件下と低真空条件下で水素発生量が変化すると思われるが、ルシャトリエの原理で議論されたものを教科書などで見ないのは何故か?(きっと私が勉強不足なだけだろうと思っている)
2. 上記と近いが、研究環境の違いによるもの。具体的には、sol-gel法は研究室内の温度や湿度などでも加水分解などで影響を受ける。そのため、sol-gel法を用いた実験はそれぞれの研究室内で再現性が得られるが、他の研究室では同じ結果を得にくいため、企業での研究としては喜ばれやすいとも言われる(自社しかそのデータで再現性がでないため)。しかし、光触媒では温度や湿度などは論文に記されている例をほとんど見ない(私が見ていないだけならばよいが・・・・・・。私が見たことにある工業高校の実習ノートや提出用のプリントには温度と湿度を記す欄があったのだが・・・・・・。工業高校にも劣るのか???)。他の興味深い例としては、電子レンジを用いて試料を作製する研究などが嘗てあったが、一般的に買える安価な電子レンジでは条件が異なり、他者が再現性を得るのも難しくなるので、そのような電子レンジでは論文が通らないとされた。これは仕方ないことではあるが、研究資金が少ない研究者にとっては打撃でもある。
3. 単純な間違い。研究者としては致命的だが、精魂尽き果てるまで研究している方には許してあげたい。特に、人海戦術が必要な場面で、学生さんたちの力を借りれず、一人で4-5人分の仕事をする場合などで、ポスドクにとっては日常茶飯事であろう。(4-5人分働く方法:装置のスケジュールを上手く組んで、4-5つの装置を同時に動かす。朝と夜でコアタイムを二つ作り、泊り込みで作業。土日も研究を行うで、最高で9人分くらいの研究結果を得ることができるときもある。それでも、体力が続かないため日曜日は流石に半日休むが・・・・・・。さらなる詳細は書かない。私が誰か特定されて通報されたり労働環境を議論されたりして研究できなくされても困る。研究者は研究成果=論文が全てなので、才能の無い人間は、”かたぎ”の生活を捨てないと生きていけない。多くの研究者は自分のためや他者からあなたのためだからと言われて過酷な生活を送っている方がほぼ全てだと思う)。まさかと嗤うかもしれないが、論文が書けない人間はこうなる。某超巨大企業の関連などでのテクニシャンだと、ストップウォッチを3つ持って装置3つを休み時間なく動かしたりする。上から降りてテクニシャンの仕事をすると最低賃金から百円程度の違いで高卒、学士、修士、博士と賃金が分けられてそれぞれのレベルの仕事が要求されることもある。論文以外の部分の仕事(実験)はほぼ同じレベルを要求されて博士の場合で時給1100-1200円の仕事(論文にできるほどの実験計画や結果が出せる)ができるかは心しておいたほうがいい。私はまだ生きていけるだけ幸せなほうだが、もっと酷い状況の博士も存在すると聞いている。もし、工学に近い方向で理論的な研究がしたければ、このHPを読んでボランティアなどで行えばよいだろう。退官された先生方で、この方面で論文をどんどん書いている方もいらっしゃる(十分に博士号に値する仕事だ)ので、それで十分、世の中に貢献できる。このHPは、何度も言うように、私のような被害者を出さないために開設している。正確な情報が与えられなくて自己責任という名で孤独死する前に、別の生きる道を是非とも見出して欲しい。それが私の願いである。
4. 不正が行われた場合。朝日新聞などで報道されているので分かると思う。実際にあると思うとゾッとする。もし、他の教員や面倒を見ている学生がそうしていたら、どこまでデータを信頼すればいいのかも分からなくなるので心が痛い。上記の単純な勘違いであれば、まだ不正よりは救われる。いちいちチェックしていたら、自分が研究した方が早いかもしれないと思う方も多いのではないだろうか。そう思うとある意味で悲しくなる。研究環境の構築や研究室の風土作りは大変。
 余談だが、STAP細胞の論文については、レフェリーのチェックがどうだったかは気になる。生物系の場合は同じ画像を加工している不正の例も新聞などで見るので、その点がチェック項目として挙げられていなかったかはとても気になる。とはいえ、レフェリーとなった場合、同じ画像を加工して使っていないかはチェックするが、画像やデータの色の諧調を変えて調べるまではしたくないな・・・・・・。競争の激しい分野は過酷な研究状況なのでミスをしやすくなると配慮して調べることはあるけれども・・・・・・不正でなければ、私の数少ないレフェリー経験だと、大抵は、参考文献や図の注釈、論文の主要な部分には影響しないがマイナーな部分の幾つかのスペクトルに対する凡例の誤りや取り違え(この誤りを他者が見つけるのは難しい)などの記述ミス、式の展開や記載ミス、単純な計算の誤り、単純な単位の間違えなどで収まる。
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教育方法の一例
近角聡信 著、『銅鉄主義-研究テーマの選び方-』、固体物理、38 (2003) 65.

  この題目は、昔、固体物理の研究が始まった頃に流行った言葉で、「銅について研究したことを、鉄についてもう一度繰り返す」ことを意味している。今日では銅と鉄とはずいぶん違った金属であることがわかっているが、それが認識されていなかった頃、同様な研究を対象を変えて繰り返すことを意味していた。
研究テーマを選ぶときの安易な方法であるが、はたしてこれでよいだろうか。
1. 魔の3ヶ月
  筆者が東大の物性研究所で磁気第T部門を担当していた頃、全国から共同利用の研究者が研究のためにやって来た。1〜2年の滞在期間の間に研究を仕上げなければならなかったので、適当な研究テーマを選ぶのが、最初の仕事である。
   そのとき、筆者は研究者の自主性を重んじて、使える装置などを考えた上、大体の方向性を示した後は、本人にテーマを選ばせた。期間は3ヶ月である。
  この3ヶ月の間は、図書館に行ってそれまでに同じ分野で発表された論文を調べるとか、他の分野の有名な論文を探すなどして、適当なテーマを選ぶわけだが、これがなかなかうまく行かない。弟子達は、この苦悩の3ヶ月を「魔の3ヶ月」と呼んでいたようである。
その「魔の3ヶ月」を終わって、研究者が筆者の前に現れて、彼の得た構想を報告する。筆者はそれを聞いて、よほど無意味な構想でない限り、思い切り褒めてあげる。すると、その研究者の表情はパッと輝く、内面的には、研究心というロウソクにポッと焔が灯もるのである。そうなれば、もうその研究者はエンジンのかかった自動車のようなもので、自力でどこにでも行けるようになる。
  余談だが、一般的に、人は褒められるほど嬉しいことはない。それと反対に叱られて良くなることはほとんどない。これは子供が親に育てられるときもそうだし、後輩が先輩から指導されるときもそうだし、修業僧が高僧の教えを受けるときも例外ではない。
エンジンのかかった研究者は、夜遅くまで研究室に残って、熱心に研究する。その結果を学会で報告する。そこで他の研究室の有名な先生から質問を受け、「なるほど!」などと感心されると、更に研究心がエスカレートする。このようにして、研究者の卵は誕生するのである。
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2. 磁区とは何か(上記の文献の続き)
  ここで筆者が東京大学の物理学科の4年生のとき、卒業研究を始めた頃の話を紹介しよう。
その頃、つまり、1944年頃には東大の物理教室には錚々たる偉い先生方が揃っていたが、いずれも古典物理学の専門家で、固体物理を専門とする研究者はいなかった。当時教室主任をしておられた清水武雄先生は、この点を改革するため、北海道大学で磁気の研究をしておられた芧誠司先生を東京大学に招くことにした。
  芧先生は物理教室で磁気の研究室を立ち上げるため、伴野雄三氏をはじめとして数人の若手研究者をつれて北大から東大に乗り込んで来た。先生は我々4人の卒業研究生に対してそれぞれに研究テーマを与えたが、それにつけ加えて
「要するに磁区とは何かを解明することだよ。」
と言われた。その一言は筆者にとっては新鮮であった。研究とは遊びではなく、はっきりとした目標を持った仕事なのだという印象を与えたのである。
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4. 日常の物理学(上記と同じ文献)
  筆者が卒業研究をしていた1944年頃は世界大戦も終わりに近づき、文科系の大学生は学徒動員で戦争に駆り出され、筆者のような理科系の大学生は勤労動員として、軍需産業の工場に派遣されることになった。筆者は川崎にあった東芝のマツダ研究所−略称マ研−に派遣されることになった。
  いろいろな課を見学して回っているうちに、物理学者のグループにつかまってしまった。そこには川村肇氏をはじめとして、固体物理の研究者が集まっていた。図書館なども大学よりも充実していて、ロシアの雑誌なども初巻から揃っていた。
そこでの昼休みの雑談は誠に楽しいものだった。たとえば、後に北大教授となった小林秋夫氏などは筆者に
「おい、地球上に偏西風が吹くのはなぜか知ってるかい?」
と日常生活に見られる物理現象についての質問を投げかけた。
「それは、地球の自転に伴う地表の空気の角運動量の保存則のためさ。」
という具合に明快な解答を教えてくれた。それまでは、筆者の頭には、力学、熱学、光学、電磁気学のように教科書通りに分類された物理学しか入っていなかったので、これはとても新鮮に感じた。
  その後、大戦も終わり、筆者は1950年に学習院大学の物理学科に移り、そこで教育と研究に従事することになった。そこの教員の中にも、他の大学から来ていた講師を含め、日常の物理学を好む仲間が数人ほどいた。毎月一度、集まって当番が自分の考えた話題を黒板の前で話をした。そのうちにこの内容を随筆風に書いて、科学雑誌にロゲルギストというグループ名で発表することになった。それをまとめて単行本にしたのが「物理の散歩道」と「続物理の散歩道」として出版された。また更に、筆者が日頃書き溜めた日常見られる物理現象について書いた「日常の物理事典」と「続日常の物理事典」もある。
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朝日新聞社 人生の贈り物 2011年1月6日
(会員登録すれば無料で読めるとのこと。調査中)
米パデュー大学 ブラウン教授の研究室
  先生がくださったのは研究テーマだけではなくて、研究者、教育者としての姿勢です。
  パデュー大学はインディアナ州にある。ブラウン先生は50代の働き盛り。
  研究室には博士課程の学生が数人と博士研究員が30人ぐらいいた。
  先生は研究に対してシビアで、僕はあまり注意されなかったけれど、博士課程の学生にはかなり厳しかった。
  帰国するとき「おまえは大学の教員だから言っておくけど、教育は最初が肝心だ」と言われた。
「学生や博士研究員は3ヶ月注意深く見守って、きちんとなるようなら、あとは放っておいても大丈夫だ」とね。
  先生は「教科書に載るような仕事をしなさい」とよく言われました。「重箱の隅をほじくる研究はするな」という意味のことも言われた。大きな重箱の隅をほじくっても意味がない。小さくても空の重箱を自分の成果で埋めていくことが大事。私も学生によく言っていたし、考え方や態度として必要だと思うね。
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教育方法の一例
近角聡信、『科学随筆 実行力の養成』、固体物理、46 (2011) 49.

製作力の養成
  筆者は中学生の頃、模型機関車の製作に熱中した。それも、キットを買って来てその部品を組み立てればできるというような簡単なものではない。はじめから金属材料を買って来て、それを加工して作るのである。幸いに神田にカワイ模型店という模型屋があって、そこで小さな万力とか手回しのドリル、金鋸、糸鋸などの工作用具や真鍮板などの金属材料を買うことが出来た。また、ネジを切ったり、孔にネジ溝をつけるためのダイスやタップなども、高価だったが買うことが出来た。これは待望の道具だったので、とても嬉しかったことを今でも覚えている。
まず、電気機関車の車体を支える台車の製作から始めた。車輪の軸受けの上に車体を載せる時に振動を吸収するための板バネを挿入するのだが、これを縮尺どおりの寸法で作ると、全然硬くて変形せず、バネの役目をしないことがわかった。それは1/nの模型の場合、車体の重量は1/(n^3)に激減するのに対していたバネの寸法は1/nにしか減らないためであることに気がついた。これは後に物理学で習った次元解析をすれば明らかになることであったが、この辺りで模型というものに限界を感じた。
  さらに、作ろうとしていたED53型の本物の電気機関車を見るために、同じく模型マニアのO君と八王子にある機関車の車庫に本物の機関車を見に行ったことがあった。運転手の人がとても親切で、われわれを運転台に乗せてくれたり、各種の部品やその機能を説明してくれたりした。しかし、本物の機関車の複雑さがあまりにも夢に描いていたものと違っていたので、幻滅を感じたのであった。その内に学校の勉強も忙しくなり、模型は未完成のまま終わってしまった。しかし、模型作りに熱中している間に要請された製作力は、後に実験物理学者として研究を進めて行くのに大いに役立ったことは確かである。

執筆力の養成
  世の中には知識人でありながら、文章を書くのが苦手な人が少なくない。折角、知識をもちながら、これを発表出来ないのは本人にとっても、社会にとっても損失である。執筆力を養うにはどうしたよいだろうか。
  それには、まず自分の好きな作家の著書を丁寧に詠むことである。筆者の経験を述べてみよう。筆者は物理が好きで東大の物理学科に入学したが、物理の面白さを伝える講義は少なかった。学生実験の時間には、なまの物理現象に触れることが出来たので、熱中することが出来たが、その他の講義は退屈なものが多かった。特に英国などの先進国で物理を学んだ先生は、教壇の上で自分のノートを読み上げて、学生にそのままノートに取らせていた。そこに出てくる難しい漢字は、一々黒板に書いて学生に一字一句そのままの文書をノートに取らせていた。これが英国流の講義の形式であることは、後に筆者がオーストラリアのメルボルン郊外にあるモナーシュ大学に交換教授として短期間滞在した時に、英国から来た同僚が講義の時、一々スペルを黒板に書いて学生にノートを取らせていたことでわかった。
  しかし、東大にも中にはユニークな講義をする先生もいた。電磁気学の講義を担当したS教授は、「今日のように印刷術の発達した時代に、ノートなど取る必要はない」といって学生にノートを取ることを強制しなかった。このS教授の講義の内容もユニークであった。たとえば、導体でも誘電体でも、外部から電場をかけると表面電荷が現れる静電誘導という現象があるが、前者は内部にある伝導電子が移動して表面電荷を生じるのに対して、誘電体の場合には、個々の分子が分極する結果、内部の分極電荷は隣の分子の分極は打ち消しあい、表面だけ打ち消されない電荷が現れるのである。この事実をS教授は力学モデルを使ってわかりやすく説明された。教授は金属の電荷を平面状に置いた球にたとえ、平面を傾けると球が移動するのに対して、誘電体の電荷は平面の各所のバネを通じて固定された球のようなもので、平面を傾けると、個々の球が個々の場所で僅かに移動して重心が移動するに過ぎない。という具合である。筆者はこのS教授の講義は熱心に聴講した。
  物理学科の講義の時間は比較的少なかった。講義のない時間には、ロックフェラー財団が寄付した中央図書館に行って様々な本を読んだ。中でも印象深かったのは寺田寅彦の随筆集であった。(中略)
  筆者も何冊か随筆を書いているが、これらの随筆を書く際にも、先人に教えられることが少なくない。その一つは一つの文や段落の中に書きたいことをあまり多く詰め込まないことである。また、書いたものを経験のある先輩に査読してもらうことも、執筆力をつける有効な方法である。

話術の養成
  人の前で立ち上がって話をする場合、話し方のうまい人から話下手までいろいろある。たとえば、結婚式に招待されて祝辞を述べる時とか、グループの会合で近況を述べる時とか、大勢の学生を前にして教壇から講義をする場合などである。
  話上手になるにはどうすればよいだろうか。筆者の先生の芧誠司先生は話上手で有名であった。先生が東大を定年で辞められた後に、それを記念して毎年夏に「芧コンファレンス」が開かれるようになったが、先生には特別セッションで講演をお願いした。このコンファレンスには家族も参加したが、先生の話は誰にもわかりやすく、またユーモアがあって楽しく拝聴することが出来た。
  何時か先生は筆者に「近角君。話をする時には、何時、何処で、どういう機会に・・・というように、具体的に話すといいよ」と教えて下さった。これは話の聞き手の注意を喚起し、好奇心を起こさせるためである。これは随筆を書く時にも通用する教訓である。
また、聴衆を退屈させないことも大切である。祝詞などを述べる時など、話し慣れない人は長話しになる傾向があるが、これを防ぐために、「片足を浮かせて話せ」という教訓がある。足に疲れを感じる頃には、聞き手も退屈し始めるからである。そうなったならば話をやまえて着席した方がよい。長話しは、人に好かれるものではない。
  しかし、講演や講義の時には、そうはいかない。決められた時間だけ話さなければならないからである。少人数の聴衆に話をする時は、一人一人の顔を見ながら話せばよいから聴衆の心を掌握しやすいが、ホールや大教室で多数の聴衆に話す場合にはそうはいかない。聴衆の中には居眠りをしたり、私語を始めたりする人も出てくる。このような雰囲気を引き締めるのに一番良い方法は、軽い冗談をいって聴衆を笑わせることである。私語していた人は、何で皆が笑ったのかを隣の人から聞いたり、居眠りをしていた人は自分が笑われたのかと思って、よだれを拭きながら目を覚ます。
  筆者も若い頃には、講義を聴かない学生を叱りつけたりしたものだが、そうすると、そのあと教室の雰囲気が固くなってしまう。「笑わせ術」を身につけてからはそういうことはなくなり、聴衆の心を掌握出来るようになった。
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細野秀雄、『新機能材料探索の醍醐味』、応用物理、80 (2011) 615.
(編集準備中)
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外部発表の指導方法

 大学や研究室にもよるが、講演はパワーポインターで作成する。1枚1分程度を目安にして、10分講演+5分質疑であれば、10枚用意する(10分講演だから)。

 1枚目はタイトル(タイトルの下に氏名と所属も書き入れる)

 2枚目はIntroduction(研究の背景{他の文献との違いや本目的までの問題提起})

 (前回から引き続いている研究内容の場合は、この後に1枚前回までの結果を説明するスライドを用意しておくことも考えておきたい)

 3枚目はPurpose(目的)←まとめや結論と明確に対応するようにする。

 4枚目はExperimental(実験手法・実験条件・計算手法)

 5枚目は実験原理(AFMとかXAFSとか実験で用いた手法の原理を説明する)

 6枚目は実験結果と考察(生スペクトルを見せてから加工した図を見せる)

  実験結果は Results、考察は Discussion、実験結果と考察はResults and Discussion

 7枚目は実験結果と考察(生スペクトルを見せてから加工したスペクトルを見せる)

 8枚目は実験結果と考察(生スペクトルを見せてから加工したスペクトルを見せる)

 9枚目は実験結果と考察(生スペクトルを見せてから加工したスペクトルを見せる)

 10枚目はSummary(まとめ)
◆ 図によっては、生スペクトルと加工したスペクトルが一つの図に収まっていることもある。
◆ 講演をしていて、7分程度で予鈴が鳴る。これを目安に話を進め、9枚目で10分を超えそうであれば、10枚目を見せた時に「まとめはこのようになります」として終わらせる。
◆ レーザーポインターを指す場合は、両手で脇を締めてふら付かない様にし、文字を読み上げながら文字の下をゆっくりとなぞっていく。図を指し示すときもゆっくりとさせ、ふらふらしたり、早いスピードで円を描いたりしない。
◆ 英語での講演の場合は、顔を観衆に向けて説明し、その後、レーザーポインターで、この図ですと指し示す。読み上げる英文の文章を区切るのは、前置詞を読み上げた後となる
◆実験がどうしても出来なくて、6枚目と7枚目用しか図がなかった場合には、私は理論計算の計算条件と計算モデルの図を描いたスライドを1枚と、理論計算の結果と実験結果の比較をした図で考察を行ったスライドを1枚作成して、全10枚とした。

以下の外部発表に関する記述は不正確。時間があるときにデータを見直してみたい。
◆ 博士前期過程だと、たしか20分程度が講演時間となる。上記の5枚目のスライドがもう一枚増え、6〜9枚目のスライドも大体倍に増える。
◆ 博士後期課程だと、たしか40分程度が講演時間となる。複数のセクションのアウトラインを示すスライドが1枚作られ、各セクションで 2〜10枚目のスライドが作られる。最後に、すべてのまとめが作られる。
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参考文献:博士号のとり方 学生と指導教官のための実践ハンドブック

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Excelでのログノートの作り方
1) ウィンドウ枠の固定を用いて最上段に項目を作る
2) 上記1)で作った段に、試料、ファイル名、測定範囲名、繰り返し回数、コメント の欄を作る
3) 新しい行に、試料からコメント欄までの範囲から更に2列追加して結合し、そこに測定開始日を書き込む。文字は太字で大きくし、背景に色を付けておいたりすると良いだろう。
4) 測定の初めには、XPSであれば、EFやGapの値なども書いておくとよい。
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多量のデータを処理する場合 (特にigor上ではファイル名を詳細に書き込もう!)
1) データは分かりやすい名前にする(試料名と条件を付けた名称にする)。
試料番号も作成する。また、Excelなどにも記しておく。
2) 試料の取り違えがないように、試料自体に可能な限り情報を書き込む。
試料の箱や容れ物は一つだけ空けるようにする(複数の箱を開けない)。
3) データの傾向がスムーズに変化しているかをチェックする。
4) メモでは分類の異なる試料の条件を横に並べて書かない(他の試料と誤る)。
   横に並べて比較する場合だけにする(データ処理で用いるとミスが増える)。
5) igor上では一括でグラフにしない(グラフに追加をしていく)。
どうしても一括でグラフにしたい場合は、注釈でスペクトルに誤りがないかをチェックする。
6) 可能であれば、試料や実験の様子を写真に残しておく。
※ 「ctrl」を押しながら igor を開くと、複数のウインドウで igor を取り扱える。「Browse Expt...」で困る場合は、試してみるとよい。
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講演での聴講における悪い素行の対処法{webでの情報をまとめた}
疲れやすく眠りやすい傾向のある場合は以下の対処方法を準備しておく。
1. 目立たない席に座る。
2. 自身の見た目が悪くなったら友人に注意喚起してもらう。
3. 講演スライドを模写する。加えて、必死にメモし、手と体を動かす。
  文字をどこまで綺麗に書けるか? 文字数を揃える。 ちょっとこだわってみる。 
4. コーヒーとオレンジを事前に取る。
5. 背筋を伸ばして、胸を開く。加えて、正しい姿勢にする。
6. 生姜をハンカチに挟んで眠くなったらかざす。加えて脳を冷やす。
7. 「叫んでみた!」と想像する。
8. 質問を考えてみる。
9. シャープペンシルで手を傷つける。
10. 講演内容に興味を持つ。
11. 休み時間に寝る。
※ 睡魔に打ち勝とうと努力しても、見た目が悪ければ、悪い評価を受ける。見た目が良くなるようにする努力することも必要。

以下の点には注意
A. 目を瞑ったら見た目が悪く見える。
B. 椅子に持たれたり、肘掛に肘を掛けて猫背になると見た目が悪く見える。
C. 睡魔に打ち勝とうとして睨んだ目になったり、ふらふらしていると見た目が悪く見える。
D. 体を動かすためと、足を動かし、貧乏ゆすりのように見えると、悪く見える。
E. 疲れていても、息の吐き方には注意する。「はぁ」と息を吐くと、本人の意思は無視して、聞いた側の印象で評価が分かれ、最悪の場合、論争に発展する。
F. 長イスやそれに近い形態の座れる場所は、横になるところではない。注意書きは無くとも、横になって休むなどは避けなければならない。
G. 組織内には暗黙のルールというものが存在する。常に監視され、仕事に必要なこと以外は(例え休憩であったとしても)避ける。同僚や近い地位の人の行動を注意してみておき、大勢(体制)に従うことが必要。社会的に生きていけなくなる。

※ 規模の小さい大学などの場合、風貌と人相から完全に個人が特定されるので、普段の行いや見た目には十分注意することが必要。大学や研究室、上司の評価にも関わることになる。
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社会人{研究者}としての注意点
A. 研究活動で、自由にさせて貰える部分があった場合は、その自由にした部分においての責任{業績が出ないことも含めて}は自身にあることを認識しておかなければならない。 
  上司や同僚から好きにしていいよといわれた場合、これは”許可”ではなく、自身が責任を取れよという意味{研究において、梯子を外されることを自覚しておくこと}。研究で取り組む条件を自身が上記のような状況で決めた場合、例え相談した形跡があっても、良い結果が出なければ自身の責任であることを自覚しておく必要がある。
B. 責任自体を取ることもできないことがあることを認識しておくこと。自身の責任だとさせてもらえないこともある。自身の行動には十分注意しておこう。
C. 理論的にはありえそうでも、結果が出ない場合が多くある。現場を知らずに大風呂敷を広げるとこのようになるので、同僚や自分自身よりも若い人々に苦労を掛けたくない場合は、大風呂敷を広げる前に、結果を半分でも出しておくことができるように可能な限り苦労されたい。(被雇用者の場合にはある程度割り切っておくこと。被雇用者一人のみがどれだけ努力してもマンパワーの不足は補えないことが多い。ガサツにならない程度に、丁寧に仕事をしていこう。仕事の取り組みは早めに、装置を壊さないように、ガサツに見えないように作業していけばよい)
D. メールはビジネス文書の辞典などを参考に作成し、上から偉い人から順番に宛先を記入する。そして、「いつもお世話になっております。○○(所属)の××(名前)です。」からはじめて、必要な文面を書く。
E. 上記の注意点を気にすると大きな焦りが生じるが、作業を手早くしようとしてもガサツに見られるだけである。気持ちは急いても、一度心を落ち着け、全ての物が壊れやすく、また自身の給与で保障できないことを認識しておかなければならない。作業途中、変更が生じた場合には、気づいた点を説明し、十分安全な手順と時間を取って作業を行うこと。実験装置などの破損が起こった場合、金銭だけではなく、多くの信頼を失うことになる。
F. 原理を知らずに、長い年月実験を続けてしまった場合やいままで事故が起こらなかった場合にも注意。ブラックボックスの部分は実験装置において非常に脆い。今まで壊れなかったのが運が良かったと思うべきである。特に新しいことを始める場合や、経験を積んでも変更を行う場合、新しい分野に入る場合には、いつも気に掛けておかねばならない。フェイルセーフやフェイルフルールは無いと思うべきである。
G. 予備実験はスピードが必要だが、作業を荒くしたり、ガサツにしろという意味ではない。取りえるサンプル点数を最低4点(基準や0の位置も入れると5点)を取得して結果を出していく。精密にデータを取る場合と大まかにデータを取れる場合の区別をして、予備実験と本試験の違いを認識しておくとよい。また、忘れてならないのは、大抵の場合、予備実験でも本試験でも試料作成や測定のチャンスは1度しかないと認識しておくべきである。何度も試料を作成及び測定させてくれるところは少ないと思った方がよい。
H. より容易な手順が示されたとしても、ガサツになるような結果(試料の粉が飛び散る)などが起こる場合には、手順や作業を見直し、ガサツにならないように対策方法を練ることが必要となる。上司から言われた場合には、「これこれの手法を用いたが、試料の粉が飛ぶので方針を変えました」と伝える。
I. 被雇用者が装置開発する場合において、物品購入にて、(例えば、被雇用者が見積もりし、上司が見積書からチョイスした商品を発注・購入して、上司が納品物を実験室に置いた場合)、追加の物品を発注する場合に重複が生じれば、その責任は被雇用者であると認識される。被雇用者が発注・注文しなくても、納品された商品を確認することが求められることもある。特に他者が介在する場合には、見積書などもよくよく見直しておくことが必要である(見積もりや発注は頻度が少ないだけに慎重に落ち着いて、3度は見直すようにしよう)。
J. 研究職(実験補助者やポスドク)の場合、労働基準法などにある休憩時間を上手く取れない場合がある。これを他の時間に取るなどしても、サボっているだけにしか見られないことも多い。
K. 学位や学歴が高い場合、時給はかなり低くても、自身が有している学位や学歴の仕事が求められる。一般的な実験の仕事(試料作成及び測定)に加えて、結果の解釈や研究計画の方針、論文の読み込みなど、多くの要求が来る。学位や学歴が無いと困ることも多いが、学位や学歴を取得したらしたで、多くの仕事が出来て、サービス残業も持さない覚悟が必要となる。実際に解析に使うプログラム作成の技能やスキルなどといったことは大学や大学院で十分に学べることは極端に少ない。作業効率を高めるために、これらのプログラム作成の技術は学生のうちに取得しておいた方が良いだろう(本HPでも可能な限り記述していく予定である)。
L. 実験測定などの場合には、長時間の作業(6:00自宅→8:30会社または企業→23:00帰宅や18時間の実験など)での疲れた状態で、(次のユーザーが存在しているなどの状況で、試料回収が急がれるなどの)切迫した状況が要求される場合がある。この場合、ミスの起こる確率が極端に増加することが多いので、より慎重となるようにすること。普段からミスの起こりにくい対策方法を模索しておくことが必要。また、少しでも危険だと思ったときには、対策方法を作業前に施しておく。外した試料が飛んでいかないようにバリケードを作るなど(ただし、気持ちは緩めてはいけない。試料を外に飛ばさないように慎重に! バリケード(例え他の手法を採用したとしても)を作っても気休めにもならないことが多い。何もしないよりはましな程度である)
M. 上司や雇用主はよく見ているので、ミスがあれば、いま言っておこうということで、過去のものも含めて(ここで初めて指摘されるものもある)責められる。仕方ないことである。上司や雇用主だけではなく、周囲の人々も含め、よく被雇用者を見ていると認識しておこう。
N. 作製した試料や分析した試料を間違えないように、一つずつ処理していくこと。間違えた場合、実験もだが、”あなたの将来に”取り返しがつかなくなる。いまはそうでなくても、何百個と試料を限られた(強いられた)時間で処理する必要に駆られるだろう。一つずつ処理することを忘れないようにし、何重ものチェックができる名称や試料の取り出し方を模索しておこう。試料を扱っていて、突然試料を見失った場合を想像してみよう。一つずつ試料の箱を開けるなどしていれば、試料を特定することができる。つまり、そのような対策を常に考えて、実験方法や環境を整えていくことが研究者に求められる。もし誤って同じ番号の試料を作ってしまった場合には、NewのNやOldのOを試料名に付けたりして、決して間違えないようにする(修正できるのであれば、同じ番号にならないようにする)。
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(調査中の)参考文献:大学教員 採用・人事のカラクリ
(調査中の)参考文献:大学教員準備講座
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