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水素吸蔵合金

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■ 水素吸蔵合金

◇ 水素吸蔵合金の結晶構造と特徴
 水素吸蔵合金の主成分となる金属は、Beを除く族1から族5までの元素と言われる。
 金属間化合物の場合は、すべて水素との親和力の強い元素(A)と弱い元素(B)の組み合わせからなる。
結晶構造 代表例 特徴
AB5 LaNi5 安定な水素化物を造る金属(A)と他の金属(B)の比が1:5
ニッケル水素電池に実用化されている
室温で水素貯蔵可能で中庸な性質を有する
AB2 ZrMn2 安定な水素化物を造る金属(A)と他の金属(B)の比が1:2
低温で使用可能なため冷凍機などに利用されている
ラーベス相構造を一般にとるのでラーベス相合金とも呼ばれる
A2B Mg2Ni 安定な水素化物を造る金属(A)と他の金属(B)の比が2:1
水素貯蔵材料として注目されているが反応温度が高い
AB TiFe 安定な水素化物を造る金属(A)と他の金属(B)の比が1:1
室温で水素貯蔵可能、BCC構造と類似の構造
水素を容易に吸蔵させるための処理(活性化処理)が困難
BCC Ti-V-C 複数の金属がランダムに溶け合った固溶体(上記の4種は金属間化合物)
室温で水素貯蔵可能なものでは最大の水素貯蔵量

◇ BCC系水素吸蔵合金
 TiとVは金属単体でおのおの4.0質量%、3.8質量%と高い水素吸蔵量を有している。これらの合金であるTi-V系の固溶体合金は、4質量%に近い水素吸蔵量を持つことが知られているが、さまざまな理由で1990年代半ばまでは応用には向かないとされてきた。
 射場らは、TiとVをベースとする合金中で、体心立方(BCC)構造を持つ固溶体相が従来の合金に比べて水素吸蔵量がはるかに多いことを見出した。さらに、このような固溶体相の中に、ナノオーダー変調構造を有するものを透過電子顕微鏡により発見した。このような変調構造を持つ合金の水素吸蔵量は、変調構造を持たなもののほぼ2倍であることがわかった。
 変調構造を持つTi-V-Mn系合金は、100℃で2.1質量%という高い水素放出量を示した。また、Ti-V-Cr系、Ti-V-Cr-Mn系の合金なども開発し、これらすべての合金は、従来の合金をしのぐ水素吸蔵量を示した。
 ラーベス相関連のBCC合金の開発が複数の企業により進められた。その結果、可逆的に放出可能な水素吸蔵量2.5質量%が達成された。また、高価なVではなく、Moを構成元素とするTi-Mo-Cr系合金が日本製鋼所によって開発され、Ti-V-Cr系合金と同等の水素吸蔵量が達成されている。現状では、室温での水素を放出および吸蔵できる合金系材料としては最も水素吸蔵量が大きいものである。しかしながら、固体高分子型燃料電池の出力温度で作動する合金であり、LaNi5の実質上2倍の水素吸蔵量を持つにも関わらず、最近設定された水素吸蔵量の目標値である5.5質量%には及ばないのが現状である。
 BCC構造が従来から知られている水素吸蔵合金の構造と決定的に違うのは、原子の充填密度である。一般に、水素吸蔵合金として利用されるAB5合金およびAB2合金では、原子の充填のされ方は最密充填である。ところが、BCC構造は隙間の多い構造であるため、水素をより多く格子の中に取り込むことができる。BCC構造を持つ合金あるいは金属は、金属原子当たり2個、場合によってはそれ以上の水素を吸蔵し、一般にはCaF2型構造をとる。CaF2型構造では、少なくとも金属は最密充填構造(FCC構造)をとっており、その隙間を水素原子が占めている。このような隙間があり、しかも安定な構造を有している点が高い水素貯蔵量を実現する理由の一つであると理解できる。
Ti-V-MnのTEM像:マトリックス(BCC)(Ti0.9Mn1.0V1.1)、ラーベス相(Ti1.0Mn1.2V0.8)、ラーベス相関連のBCC固溶体(Ti1.0Mn0.9V1.1

◇ Mg系水素吸蔵合金の開発
1) ラーベス相構造を持つMg系合金:
 水素の車上搭載法の目標値はガソリン車並みのタンクのサイズと重さで同等の航続距離を持つこととなっている。水素吸蔵合金に関しては、体積当たりの水素密度は十分目標を達成しているが、重要の観点からは高いハードルがいまだあるといわざるをえない。
 Ti系のBCC合金では、金属原子1個当たり水素原子2個の貯蔵が最大と仮定すると、約4質量%の水素吸蔵量が限界と思われる。そのため、より軽量なMgを主成分とする合金が、研究の対象として、最近は最も有力になってきている。
 しかしながら、Mg系合金の欠点は水素放出温度が高いことであった。固体高分子型燃料電池の出熱温度は80℃を上回らないと想定される。ところが、従来のMg系水素吸蔵合金では、水素放出温度はおおむね300℃以上であった。寺下らは、これまでの常識を覆して室温で作動するMg系水素吸蔵合金の開発に成功した。しかし、放出温度の低下と引替えに、水素吸蔵量は約1.8質量%と代表的なMg系水素吸蔵合金であるMg2Niの3.6質量%の半分程度であった(Mg0.68Ca0.32Ni2.0)。
2) Mg系BCC構造合金の開発:
 秋葉らは、Mgとは合金を造らないとされていたTiが、メカニカルアロイング法によって合金を作ることを明らかにした。現時点(書籍出版当時)では、水素と反応するとの実験結果は得られていない。しかし、MgとTiの合金であれば、ともに構成元素が水素を金属当たり2個まで吸蔵するので、MgTiH4などが実現すれば5質量%以上の吸蔵量が達成できる可能性がある。また、久慈らは、MgとVを基本にしてメカニカルアロイング法によって合成された三元系合金で室温における水素吸蔵性を確認している。最近では、メカニカルアロイング法を用いてBCC構造を有するMg-Co合金の合成の報告があった。このMg-Co系合金は数ナノメーター程度の大きさの粒子である。Mg-Co合金は100℃で2.7質量%の水素吸蔵量を示した。
 このように高温で水素の吸蔵放出が報告されていたMg系水素吸蔵合金でも、固体高分子燃料電池の排熱温度に近い温度で、十分な航続距離を実現できる吸蔵量を持つものが存在する可能性が示唆された。今後、軽量なMgの特徴を生かした水素吸蔵合金の研究開発がより一層進むものと期待されている。また、ここでも、最密充填構造ではない、BCC構想が水素貯蔵の主役成っていることに注目したい。

◇ Mg及びMg2Niとその類似合金
 単体のMgは軽量であり、単位質量当たりの水素吸蔵能(吸蔵水素の質量%)が他の水素吸蔵合金に比べ著しく大きいので、水素吸蔵材料として有望な金属である。しかし、活性化処理が困難で水素化反応が遅く、また、適度の吸蔵速度と解離圧を得るには600K以上の高温を必要とするために、実用上大きな制約を伴う。Mgの水素反応速度を高める方法として、少量のNi,Cuまたは希土類と合金化するのが有効であることが知られている。
 これらの元素が触媒として作用するためである。Mg-Ni系では高Mg側にMg-Mg2Niの共晶がある。
 Mg2Niは質量当たりの水素吸蔵能はMgに劣るが他の合金に比べれば優れており、また、活性化が比較的容易であるため、高温用水素吸蔵合金としての利用が考えられる。
 Mgリッチ側の共晶組成に近いMg-12.2%Ni合金の水素放出過程のPCT特性を見ると、2相組織を反映して2段階のプラトーが見られる。低圧側がMg相によるもので、高圧側がMg2Ni相によるものである。Mgは水素をほとんど固溶せず、次の反応によって水素化物を生成する。
 Mg + H2 <-> MgH2
Mgは稠密六方晶(hcp)構造(a=0.3023nm,c=0.5200nm)であるが、MgH2は体心正方(bct)構造(a=0.4517nm,c=0.3021nm)であって、水素吸蔵によって別の結晶系に変態する。この結晶は遷移金属や希土類の水素化物とは異なり、イオン結合性の強い絶縁体である。その生成熱は負の大きな値をもち、温度が低いと解離圧が著しく低下する。単体のMgでは表面酸化層によって水素分子の解離・再結合が妨げられるために吸蔵放出速度が遅くなるが、Mg2Niが共晶として存在すれば、それを経由して水素の吸蔵放出が可能になり、その速度が高められる。同様の促進効果がMg-Mg2Cu共晶系でも認められている。
 Mg2Ni単相の水素放出過程のPCT曲線を見ると、プラトー特性はMgと同様に平坦であるが解離圧は数倍高い。この反応平衡は次式で表される。
 0.54MgNiH0.3 + H2 <-> 0.54Mg2NiH4
これに対して次の不均化反応も存在する。
 2Mg2Ni + 3H2 <-> 3MgH2 + MgNi2; 僭0298--28kJ/molH2, 僭0552-+9kJ/molH2
ただし、298KではMgやNi原子の拡散が起こらないので右向きの反応は進行せず、一方、562Kでは僭>0となるので、やはり右向きの反応は起こらない。したがって、この系では不均化反応は自然に抑制されている。しかし、Mgは化学的に極めて活性な成分なので、吸蔵・放出サイクルを重ねると、水素ガス中に含まれているH2OやO2と反応して次第に劣化していく。
 MgNi2は六方晶(a=0.519nm,c=1.322nm)で、C16型のCuAl2に似た構造をもち、単位胞は18個の原子を含む。α相ではこの格子中にMg2Ni当たり0.3個の水素原子がランダムに分布している。重水素化物は立方晶で、MgとNi原子がCaF2型の格子(a=0.6525nm)をつくり、D原子は各Ni原子のまわりに8面体に配置している。これらのサイトのうち2/3がランダムに満たされると絶縁体のMg2NiD4結晶となる。この構造は高温相(β'相)とよばれるもので、518K以上で安定である。これ以下の温度では単斜晶の低温相(β)相に変態する。β相ではD原子はNi原子のまわりに4面体に配置した規則構造をとっている。このように、Mg2NiもMgと同様に結晶構造が全く異なる水素化物に変態する。
 Mg2Niと類似の合金にMg2Cuがあり、これも水素貯蔵に利用できる。この場合はMg2Niと異なり、次のような不均化反応を積極的に利用する。
 2Mg2Cu + 3H2 <-> 3MgH2 + MgCu2
この反応も573K以上ではMg2Niに近いPCT特性を与えるが、「0.54MgNiH0.3 + H2 <-> 0.54Mg2NiH4」と比較すると水素吸蔵能はMg2Niの約3/4倍となっている。

◇ 高圧水素と水素貯蔵合金を組み合わせた水素タンク(ハイブリッドタンク)
 最近、トヨタ自動車は高圧水素と水素吸蔵合金を組み合わせ、高い体積密度を持つと同時に水素吸蔵合金タンクの欠点であった低温始動性および水素充填速度が高圧ボンベ並みの水素タンクの開発に成功した。水素吸蔵合金は一般に微粉であるため、ボンベの内容積の半分程度の空間を占めているにすぎない。残りの半分の水素ガスが占めている空間に高圧水素ガスを充填することで、貯蔵量を向上させるねらいである。従来は、高圧ガス保安法による高圧ガスの対象外となる1MPaG未満での水素吸蔵合金の利用が得策とされ、低圧で水素吸蔵合金を使うことが常識であった。そのため、高圧ガスと水素吸蔵合金をハイブリッドすることは、わずかの例外を除き検討されてこなかった。ここで使われている水素吸蔵合金は、チタン系のAB2型合金で水素貯蔵量は1.9質量%と発表されている。同社では、合金としての水素貯蔵量3〜4質量%の達成を目標の一つと定めている。この数値は合金によって達成が可能と思われる数字であり、今後、この分野の開発が急になると思われる。

◇ 水素自動車用タンクシステム
 水素吸蔵合金を水素の貯蔵、輸送に利用する技術開発は、近年新たなフェーズを迎えている。従来、水素吸蔵合金をタンクシステムに利用する場合、容器の重量を抑えるため、より低い圧力条件で動作させる設計が多く、特に日本国内では高圧ガス保安法の対象外となる1MPaG未満の圧力で水素を貯蔵する応用例が中心であった。しかし、最近の開発においては、1MPaGを超える圧力条件で作動する水素吸蔵合金を使用するタンクシステムの開発事例が多くなってきている。これらの開発事例は、水素吸蔵合金そのものが液体水素と同等以上の体積貯蔵密度を有する特徴を生かし、高圧貯蔵方式と組み合わせることで、よりコンパクトな水素貯蔵タンクシステムが実現することを明らかにしている。
 2005年、トヨタ自動車は2.2質量%の水素吸蔵能力を有するTi1.1CrMn合金を、外容積45lのType-3型(Alライナ+CFRP)の高圧タンクの中に充填した車載用高圧タンクシステムを開発した。この合金の実際に吸蔵放出する有効水素吸蔵量は1.9質量%である。この高圧型水素吸蔵合金は高圧タンク内のアルミフィンを有する熱交換機に組み込まれた状態でセットされているが、水素吸蔵合金は粉状となっていることから、タンク内に最大充填しても約50%は空隙となる。この空隙にも35MPaの高圧ガスを充填できることから、大きな貯蔵効率の改善が図られ、タンクの総内容積180lで7.3kgという高密度の水素貯蔵が可能になり、同じ容積での35MPa高圧貯蔵方式と比較し、2.5倍以上の体積貯蔵効率を有する。現在(書籍出版当時)までに開発されている2.2質量%の合金では、この高圧型タンクシステムの総重量が420kgとなるが、今後、高圧作動型の高容量水素吸蔵合金の開発が進むことにより、自動車用としてさらに現実的なものになると提言している。
メーカー・機関名(年) 水素貯蔵量 合金種 総重量(合金量) 備考
Daimler-Benz社(1975) 約17Nm3 TiVFeMn 140 kg(80 kg) 乗用車
Daimler-Benz社(1975) 約5.4 kg TiZrCrVFeMn (約280 kg) 乗用車
ビリングス社  --- TiFe (1002 kg) バス
機械技術研究所/化学技術研究所(1980) 7.1 kg LmNiAl 663 kg(480 kg) ワゴン車
水素エネルギー開発研究所 60 m3 Mm系合金 --- 乗用車
マツダ(1992) 37 m3 TiZr系合金 --- 水素ロータリー車HR-X
Mgバインダー使用
トヨタ自動車(2001)  --- Ti-Cr-V合金 約270 Kg FCHV-3
航続距離>300 km
Texaco Ovonic Hydrogen Systems 社(2004) 3 kg   190 kg HEV試作車
タンク内容積50l
トヨタ自動車(2005) 約1.83 kg Ti1.1CrMn 105 kg (75 kg) 35MPa高圧型タンク
タンク外容積45l
Mmはミッシュメタルで、La, Ce, Pr, Ndなど軽希土類の混合物である。

◇ 錯体水素化物
 M(M'Hn)の組成式で表される一連の水素化物群を錯体水素化物という。ここで、元素Mは主にLi, Na, K, Mg, Caを中心とするT族・U族元素など、また元素M'はAl, B, N, 遷移金属元素などである。それらの元素の組み合わせによって、下の表に示すような多様な錯体水素化物が報告されている。
  M(M'Hn) 錯体イオン 材料密度
〔g/cm3
水素密度
重量密度
〔g/cm3
水素密度
体積密度
〔g/cm3
分解温度
〔K〕
Al-H系 LiAlH4 (AlH4)- 0.92 10.6 97 398-438
  NaAlH4 (AlH4)- 1.27 7.4 95 483-571
  KAlH4 (AlH4)- 1.24 5.8 72 523-588
  MgAl2H4 (AlH4)- 1.10 9.3 102 413-473
B-H系 LiBH4 (BH4)- 0.66 18.5 122 548-653
  NaBH4 (BH4)- 1.07 10.6 115 673-838
  KBH4 (BH4)- 1.18 7.4 87 580-847
  MgB2H4** (BH4)- 1.48 14.9 221 533-593
N-H系 LiNH2 (NH2)- 1.17 8.8 103 513
  NaNH2 (NH2)- 1.37 5.2 71 773
  KNH2 (NH2)- 1.65 3.7 61 673*
  MgN2H2 (NH2)- 1.38 7.2 99 473
TM-H系 Mg3MnH7 (MnH6)5-,H- 2.29 5.2 119 513-
  Mg2FeH6 (FeH6)4- 2.73 5.5 150 593
  Mg2CoH6 (CoH5)4- 2.80 4.5 126 553
  Mg6Co2H11 (CoH4)5-
(MnH5)4-,H-
2.43 4.0 97 643
  Mg2NiH4 (NiH4)- 2.72 3.6 98 553
  LaMg2NiH7 (NiH6)5-,H- 3.91 2.8 110 ---
  BaReH9 (ReH9)2- 4.96 2.7 134 -373
*は昇華温度、**は結晶構造を仮定して算出
錯体水素化物の中では、n個の水素は元素M'と共有結合的に結合し、(M'Hn)陰イオン(錯体イオンと呼ばれる)を形成し、さらにこの陰イオンが元素Mの陽イオンと結合するとされる。このような結合性に起因して、水素とそれ以外の原子との比率は大きくなり、金属水素化物では1から2であるのに対して、BaReH9では4.5(水素が9つに対して、それ以外の原子が二つ)にも達する。また、水素の重量密度もLiBH4などでは18質量%以上にも達しており、この値は一般的な金属水素化物であるLaNi5H6(約1.4質量%)の10倍以上である。これらの錯体水素化物の存在は古くから知られていたが、近年、高密度水素貯蔵材料としての材料開発が国内外で活発に進められるようになった。

◇ Al-H(アラネート)系
 AlH4陰イオンを含むNaAlH4そのものは、可逆的な水素放出(NaAlH4の相分解)・吸蔵(NaAlH4への再結合)反応の進行が極めて遅く、特に再結合反応においては10から40MPaの高圧水素と473かあら673Kの高温も必要であった。しかし、触媒としてのTi化合物を液相反応によって添加した場合、比較的温和な条件でも可逆的な反応が進行することが見出された。実際には、水素圧力-組成等温線図および以下の反応式のような2段階の水素放出・貯蔵反応によって、それぞれ3.7質量%および1.9質量%の水素を貯蔵する。
 NaAlH4 <-> (1/3)*Na3AlH6 +(2/3)*Al + H2 <-> NaOH + Al + (3/2)*H2
触媒の添加方法として、TiアルコキシドあるいはTi塩化物を含む溶媒中でNaAlH4を再結晶化する方法や、NaAlH4(あるいはNa水素化物とAl金属)をTi塩化物やTiブトオキサイドなどどともに機械的に混合する方法などが検討されてきた。これらの触媒がNaAlH4の表面だけに存在するのかあるいは内部に固溶するのかも含めて、現在でも存在状態や触媒機構の解明に関する研究が続けられている。NaAlH4での水素の重量密度は約5.6質量%であるが、実際は上記の反応式の第一反応(理想的には3.7質量%であるが、触媒の添加量が増加すると重量密度はさらに減少する)だけが利用できると考えられており、国内外の現状での開発目標値(5.5から6質量%)には及ばない。

◇ B-H(ボロハイドライド)系
 還元剤としても利用されているB-H系は、最近では水素の重要密度の高さから水素貯蔵材料としても注目されるようになった。
 BaBH4 + 2H2O <-> NaBO2 + 4H2
この水和反応の促進には、表面処理したマグネシウム系水素化物が有効とされており、また水和反応によって生じたNaBO2の再生技術などの研究が進められている。off-board再生での水素放出(発生)材料としての性能が期待されている。記述のNaAlH4と同様に、熱分解反応によってもB-H系からの水素放出反応が進行する。
 LiBH4 <-> LiH + B + (3/2)*H2
この反応では、Li水素化物として水素が材料中に残るにも関わらず13.8質量%もの水素が放出されており、水素貯蔵材料としての潜在性は高い。しかし、上記の反応式の右方向への反応は通常548から653Kで進行するので、その低温化が一つの課題であり、SiO2の添加による水素放出温度の低下なども試みられている。一方、B-H系そのものの熱力学的な不安定化を目指した系統的な研究も進んでいる。電子構造の実験的・理論的解析により、LiBH4を不安定化して低温で水素を放出させるには、Liの一部をMgなどの電気陰性度のより大きな元素で部分置換することにより陽イオンとBH4陰イオンとのイオン結合性を弱めることが効果的であることが見出された。なお、上記の反応式の反応は、873Kの高温および35MPaの高圧水素中で進行することが報告されており、さらに温和な条件での反応の進行を目指した研究も進められている。

◇ N-H(アミド)系
 LiNH2(リチウムアミド)では、NaAlH4と同様の2段階の水素放出・吸蔵反応によって、それぞれ約5質量%の水素を貯蔵する。
 LiNH2 + 2LiH <-> Li2NH + LiH + H2 <-> Li3N + 2H2
ここで中間層のLi2NHはリチウムイミドと呼ばれる。上記の反応式の場合、比較的温和な条件下(例えば、0.3MPa、528K)でも水素吸蔵反応が進行するが、LiNH2の放出反応はアルゴン中で約553K(真空中では473K以下)であり、LiBH4と同様に熱力学的な不安定化とそれに伴う水素放出反応の低温化が望まれていた。B-H系と同様に、N-H系でも陽イオンとNH2陰イオンとのイオン結合性を弱めることが効果的であり、電気陰性度のより大きなMgでのLiの部分置換によって、水素放出反応の開始温度はアルゴン中でも373K以下にまで低下する。陽イオンを形成する元素の電気陰性度と錯体水素化物の安定性との相関は、錯体水素化物の安定性を系統的に理解・制御するうえでの重要な指針となる。N-H系で重要なことは、燃料電池反応の阻害要因となるアンモニアの放出を抑制することである。次式のようにLiNH2だけを昇温するとアンモニアが放出される。
 LiNH2 <-> (1/2)*Li2NH + (1/2)*NH3 <-> (1/3)*Li3H + (2/3)*NH3
一方、Li水素化物はアンモニアと反応して水素を放出する
 NH3 + LiH <-> LiNH2 + H2
このようにN-H系においては、アンモニアと低温でも迅速に反応して水素を放出する第2相との複合化が不可欠であり、そのために多様なN-H系と水素化物との組み合わせが試されている。その中で、水素貯蔵量や水素放出温度の観点から、これまで最も良好な特性を示したのはMg(NH2)2とLiHとの複合化である。例えば、以下の反応では、昇温ともなて最大9.1質量%の水素が放出される。
 Mg(NH2)2 + 4LiH <-> (1/3)*Mg3N2 + (4/3)*Li3N + 4H2
MgはLiに比べ安価であり、Mg(NH2)2はLiNH2と比較して大気中で安定であることも、実用化の観点から有用であろう。

◇ 他の水素化物や錯体水素化物との複合系
 N-H系では、アンモニアの放出を抑制するために、水素化物との複合化が必要であった。最近では、錯体水素化物の安定性を制御する目的でも複合化の研究が活発化している。例えば、既述のLiBH4を不安定化する目的で、次のような反応が提案された。
 2LiBH4 + MgH2 <-> 2LiH + MgB2 + 4H2
 LiBH4 + 2LiNH2 <-> Li3BN2 + 4H2
それぞれ11.5質量%、11.9質量%もの水素が放出され、LiBH4だけの場合に比べて423から473K程度の低温でも水素放出反応が進行することが確認された。また、LiAlH4の水素放出反応は制御しにくい発熱反応であるが、次のような複合化により吸熱反応に改質することもできる。
 LiAlH4 + 2LiNH2 <-> Li3NH2 + 4H2
最初の反応式ではさらなる不安定化、第二と最後の反応式では、水素吸蔵反応などが課題であるが、複合化によって反応過程を制御できることを示した事例であり、錯体水素化物に対しては不可欠な材料設計指針であろう。

◇ 今後の展開
 錯体水素物は水素の重量密度が高い反面、その結合が強固なために、特にB-H系やN-H系では水素放出温度が高い。また、可逆的な水素放出・吸蔵反応においては水素以外の元素の拡散も必要であるために、一般的に反応速度が遅い。これらの特性に対して、金属水素化物は室温付近でも迅速な水素吸蔵・放出反応が進行して一部は実用化段階にあるが、水素の重量密度は低い。そこで、両者の優れた特性を融合した新たな水素貯蔵材料の開発が期待される。
 そのためには、まず錯体水素化物と金属水素化物の電子状態の観点での系統的な理解が必要であろう。錯体水素化物であるLiBH4では、水素とほう素とが共有結合的に結合してBH4陰イオンを形成し、Liは陽イオンとなっていることを述べた。一方、金属水素化物は、安定な水素化物を作る元素(例えばLa)とそうでない元素(例えばNi)との組み合わせであるが、水素は前者の元素ではなく(錯体水素化物と同様に)後者の元素と直接結合していることが報告されている。すなわち、第一原理計算コードであるDVXa法を用いて水素化物の電子・価電子密度分布を見ると、LaNi5H6 > Mg2NiH4 >LiBH4と金属水素化物から錯体水素化物になるにつれて、HとLa, Mg, Li(錯体水素化物でのM)との結合は連続的に弱くなっており、逆にHとNiやB(錯体水素化物でのM')との結合は強くなる傾向が理解できる。より定量的な議論が可能となれば、新たな水素貯蔵材料を開発するための重要な研究指針が得られるであろう。

◇ 水素と空孔の相互作用
 核融合炉では高温プラズマから漏れ出した高速の水素イオンが炉壁の材料に打ち込まれ、それが金属原子と衝突して止まる際に空孔を作るので、表面付近には空孔と水素原子が多量に共存する領域が生じる。
1. 空孔は複数個(=<6個)の水素原子をトラップする
2. トラップの束縛エネルギーはかなり大きい。中でも最初の2個で大きく、3個以上では若干小さくなる
3. トラップされた水素原子は空孔に隣接した通常の格子間位置からいくらか空孔側に変位した場所を占める
 より安定な水素化物を形成する金属では必ずしも高水素圧下ではなくても加熱によって空孔-水素クラスターの導入が起こり得る。重要なのは、金属中に水素が固溶している場合の真の熱平衡状態は多数の空孔(空孔-水素クラスター)を含む欠陥構造であるということである。したがって、通常の条件で(金属原子が拡散できない温度で)作られた水素化物の試料は時間が経つにつれて表面(空孔源)から欠陥構造に変わっていくはずである。また、一般に金属・合金中での金属原子の拡散は水素雰囲気中で促進されるはずだということも分かる。

◇ 水素吸蔵プロセス
 熱的に安定な金属間化合物中への水素の吸蔵は、温度が比較的低く金属原子の拡散が起こらない場合には擬2元系とみなすことができて、純金属-水素系の場合と同様に取り扱うことができる。ただし、水素を吸蔵した金属間化合物AmBnHxでは、水素濃度はx=[H]/[M]=X/(m+n)である。一方、金属原子の拡散が可能な高温では、金属間化合物は次式のように成分元素の水素化物と別組成の金属間化合物または金属単体へと分解する可能性がある。
 AmBn + (x/2)*H2 <-> AHx + Am-1Bn
水素化物AHxの生成熱が負の大きな値をとるために、その自由エネルギー変化が僭<0となって反応が右に進むことになり、金属間化合物の分解が起こるのだる。この現象は不均化反応(disproportionation reaction)と呼ばれ、水素吸蔵能の低下を招き、水素吸蔵合金の劣化の一因となっている。温度が低くても、水素吸蔵・放出を繰り返すと分解が徐々に進行することもある。このように純金属を除く大部分の水素吸蔵合金では、その圧力-組成-温度(PCT)曲線は熱力学的には”純安定な平衡状態”に基づいている。

◇ バンド・モデル
 Griessen-Driessenは金属水素化物の生成熱を母体金属のバンド構造から見積もる方法を提案している。彼らの提唱している生成熱の表式は次のようになる。
 僣 = (1/2)*ns*[α*(EF-ES)+β)
ただし、nsはs電子からなる伝導帯に含まれる電子数で、アルカリ金属では1、その他の金属ではほぼ2という値をとる。ESはバンドの底から数えて伝導電子数がns/2となるエネルギー、α=29.62kJ/eV.molH, β=-135.0kJ/molHととればよい。溶解熱の計算値と実験値を比較してみるとばらつきは比較的小さい。この式のもつ物理的意味は有効媒質理論によって説明されている。
(省略)
こうして得られる有効媒質理論からの溶解熱の近似式
 僣 〜 27*(eV)-110kJ/molH
は上に述べた経験式と係数まで含めてよく合っている。上式は母体金属のバンド構造が知られていれば計算できるものなので、これを合金水素化物に適用するには合金のバンド構造が知られればよいことになる。一般に、2種類の遷移金属からなる合金の状態密度には各成分元素に由来する二つのdバンドの山があって、この高さも幅も位置も異なる二つの山が適当に重なってバンドを形成している。この合金の状態密度曲線を各構成元素の状態密度から合成するにはコヒーレント・ポテンシャル近似(CPA)と呼ばれる方法があるので、これを使えばよい。こうして求めた合金水素化物の生成熱の計算値と実測値を比較してみると、そばらつきは同程度におさまっている。
 Griessenらによるこのバンド・モデルは、Miedemaのセル・モデルに比べて実験値との一致がよいだけでなく、物理的意味もこのようにある程度は明らかにされているので、それだけ有用であると言えるだろう。ただし、実用的な水素吸蔵材料では生成熱をより精密にコントロールしなくてはならず、そのために合金の多元化という手法が採られることが多い。合金水素化物生成熱の理論は、まだこの要求に応えられる水準には達していない。

◇ 水素の化学反応性
 水素は化学的に極めて活性の強い元素であって、多くの元素と何らかの結合をする。大まかに言えば、非金属元素とは共有結合を、金属元素とは相手によってイオン結合、共有結合、金属結合と多様な結合を形成する。金属結合はイオン結合や共有結合より弱いために、イオン結合と共有結合が決まった化学量論比の化合物を作るのに対して、ある広がりをもった組成範囲にわたって合金を作る。したがって、金属の水素化反応は比較的低い温度・圧力で生成・分解(水素の吸蔵・脱蔵)を制御できることになり、これが金属-水素系の応用にとって重要な性質になっている。どの元素とどのような結合をするかを知るには、電気陰性度を比較してみればよい。電気陰性度χは中性原子から電子1個を取り去るのに要するエネルギー(イオン化ポテンシャル、IP)と、1価の陰イオンから電子1個を取り去って中性原子にするのに要するエネルギー(電子親和度、EA)の和として定義される量で、この値が大きいほど陰イオンになり易い。たとえば、2種類の元素A,BについてχABが成り立つならば、IPA-EAB<IPB-EAAであるから、A原子からB原子に電子が移動してA+B-が形成されることになる。
 水素が反応性に富む第一の要因は電気陰性度が中位の値をとっていることにある。そのために周期律表の左端の元素(χ小)とは陰イオン(H-)として、右端の元素(χ大)とは陽イオン(H+)としてイオン結合を形成し、χの値が近い元素とは共有結合か金属結合を形成する。ただし、χの値が近いときは全く結合を形成しないこともある。
 水素の反応性が大きい第二の要因は、水素の陽イオンと中性原子のサイズが小さいことである。H+イオンの半径はほとんど0で僅かに負の値(-0.003nm)をとり、中性原子H0としては1s軌道の半径(ボーア半径)をとれば0.053nm、H-イオンの半径は0.208nmとされている。H+やH0が小さいことは立体障害を受けることなく分子や結晶中に入り込むことを可能にし、また結晶中での移動(拡散)を容易にして反応の進行を速めている。
 第三の要因は水素原子の質量が小さいことである。質量が小さいために原子(核)の波動関数が空間的に広がっていて、このことが量子論的なトンネル効果による原子の移動を可能にする。ところで、反応が発熱的で反応生成物の方がエネルギーが低ければ反応は直ちに起こるかと言うと、そうではない。一般に反応の途中で高いエネルギー状態を経由するので、それを乗り越えるための活性化エネルギーが必要である。このため、反応を促進するにはふつうは温度を上げてやる(ときには光をあてる)ことが必要になる。しかし、ときには適当な方法で反応経路をうまく変えてやることによって活性化エネルギーを下げることができる。これが触媒作用である。水素ガスが関与する反応では遷移金属(Ni,Pd,Ptなど)の表面が有効な触媒として使われる。

◇ 電気陰性度
 マリケンはχ=(IP+EA)/2という関係によって電気陰性度を定義した。水素の場合、IP=13.6eV, EA=0.747eVである。元素によってばらつきはあるがポーリングの値はマリケンの値のおよそ1/2.8になっている。マリケンの定義は分かり易いが、ポーリングの経験値の方がよく使われる。

◇ イオン半径
 イオン半径はふつう閉殻構造を持った電子雲が周囲からの電子の侵入を許さないことによって決まっているものであるので、閉殻電子をもたないH+のイオン半径を考えるのは妙な話ではあるが、それでも経験的な値として-0.038nm(1配位)、-0.018nm(2配位)が得られている。値が負になっているのは、プロトンの裸の電荷が周囲の陰イオンを互いに引き寄せる効果をもつことによるもので、水素結合の形成を表すものと言ってもよい。

◇ 熱力学的性質
 金属間化合物Mと水素ガスの反応において、水素固溶体(α相)から水素化物(β相)を生成するときには2相が共存している間の水素圧は一定(プラトー圧)になって、その平衡圧pabs
 ln(pabs/p0)=僣α→β/(R*T)-儡0α→β/R
で与えられる。逆にβ相が解離してα相となる反応では、平衡圧pdes
 ln(pdes/p0)=-僣β→α/(R*T)+儡0β→α/R
となる。ただし、p0=1気圧(0.1MPa)である。化学的な変化のみを考えれば、僣β→α=-僣α→β, 儡0β→α=-儡0α→βであるから、pabs=pdesのはずであるが、実際の吸蔵・放出プロセスでは、PCT曲線は完全には可逆的にならず、履歴(ヒステリシス)があって、通常は吸蔵のプラトー圧が放出のプラトー圧よりも高くなっている。これはβ相生成による大きな体積膨張(15-25%)のために結晶が塑性変形を起こし、転位や双晶などの格子欠陥の生成が反応のエンタルピーやエントロピーの変化に影響するからである。
 水素放出過程は吸蔵過程に比べ、格子欠陥の影響がより少ないことが予想されるので、水素化物の生成熱(僣f)や標準生成エントロピー(儡0f)を求めるときには、一般に放出プラトー圧(解離平衡圧)が採用されている。すなわち解離平衡圧pdesは水素化物の生成熱および標準生成エントロピーと、次式の関係にあると仮定して解析される。
 ln(pdes/p0)=僣f/(R*T)-儡0f/R
下の表はファントホッフ(van't Hoff)プロットで描かれる直線関係から得られた金属や金属間化合物の僣fと儡0fの値である。
水素吸蔵・放出反応 f
(kJ/mol H2)
0f
(J/mol H2・K)
T0
(K)
Ti <-> TiH1.97 -126 -126 1000
Mg <-> MgH2 -74.8 -135 551
Mg2NiH0.3 <-> Mg2NiH2 -64.7 -122 531
Pd <-> PdH0.6 -41.1 -98 419
TiCo <-> TiCoH1.4 -57.7 -146 395
LaCo5H0.2 <-> LaCo5H3.4 -45.4 -128 354
CaNi5H1.2 <-> CaNi5H4.5 -32.2 -103 313
LaNi5H0.4 <-> LaNi5H6.4 -31.9 -109 292
TiFeH0.1 <-> TiFeH1.0 -28.0 -106 268
MmNi5 <-> MmNi5H6 -20.9 -96 217
TiCr1.8H1.1 <-> TiCr1.8H2.4 -20.2 -111 182

解離圧が1気圧となる温度(標準解離温度)はT0=僣f/儡0fから直ちに求まる。標準エントロピーの変化は金属の種類によらず儡0f=120±25J/molH2・Kとほぼ一定であるから、T0は大体僣fの大きさに比例する。この温度はLaNi5やTiFeでは室温近傍にくるが、Mg2Niでは約530Kの高温にある。また、MmNi5では約220K, TiCr1.8では約180Kという低温になる。そのため、Mg2Niは高温型、LaNi5やFeTiは中温型、MmNi5やTiCr1.8低温型水素吸蔵合金と呼ばれる。これらの熱力学的パラメーターの値は、水素吸蔵合金を実際の水素エネルギーシステムに応用する場合に極めて重要になる。

◇ 活性化処理
 PCT曲線を正確に測定するためには、試料を最初によく活性化しておく必要がある。TiFeの場合、まず、試料を約200μm以下の細粒に粉砕し、それを573-773Kの高温で真空脱ガスした後、室温で30-50気圧(その温度での解離平衡圧より十分高い圧力)の水素ガスと長時間かけて反応させる。この操作を数回繰り返すことによって活性化させることができる。しかしこの処理技術はまだ確立されておらず、種々の問題が残されている。活性化処理を促進するには、合金組成を化学量論比からずらしたり、Feの一部をNiやMnなどの第3元素で部分的に置換する方法が有効であるが、これによってプラトー特性は強く影響される。
 一例として、TiFeのFeをMnで10-30原子%置換したときの313KにおけるPCT を見ると、Mn置換によって室温でも活性化が可能になったが、反面プラトー圧はMn濃度とともに低下し、またプラトーを示さず傾斜するようになる。α相の固溶限とそれに平衡するβ相の水素濃度も、Mn量とともに高濃度側にシフトしていく。しかし、ヒステリシスはMn置換によって逆に小さくなる。同様の傾向はCrやNiなど他の元素との置換によっても生じることが確認されている。TiFeと類型の合金にTiCoがある。この合金は、TiFeと同様に2段階のプラトー特性を示すことから、2種類の水素化物の存在が予測される。TiCoはTiFeより活性化処理が容易であるが、水素化物の生成熱がさらに負で大きいために、実用的な1-10気圧の解離圧を得るには400-470Kの温度が必要である。

[1] 深井有ら「水素と金属」内田老鶴圃
[2] 水素・燃料電池ハンドブック編集委員会「水素・燃料電池ハンドブック」オーム社
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