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試料作製での理論

 金属材料の理解には、小原嗣朗「金属材料概論」朝倉書店 を読んでおくことをお勧めする。この本は、豊富な模式図を相図とと共に載せていることから、相律および状態図を具体的に理解しやすい。
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■ 記録 [1]
 結晶育成の多くは、数多くの失敗の上に成り立っている。一度の失敗は恐れることはない。誰もが経験しているのであるから。しかしながら二度繰り返すことは不注意と非難されても仕方がない。二度目の失敗を繰り返さないために必要なことは詳細な実験記録をとってそれを次の実験に生かすことである。記録の方法は種々あろうが、そのつどできる限り詳細な実験記録をとる習慣をつけることをおすすめする。
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■ 固溶域の微量不純物 [1]
微量不純物がある系の相図
(高温になって生じた)液が冷却されて液相線にT1またはT1'で交わると、それぞれ固相線とT1またはT1'と交差するCs1またはCs1'の固相が析出し始める。系の外に固相が取り出されることなく、平行状態を保持しながら冷却されると、液相固相の不純物濃度が変化し、固相不純物濃度が出発液相(理想的には仕込組成の濃度)に至り(T3またはT3')、液相不純物濃度は最終的にT3またはT3'での濃度となって消失する。その後はそれぞれ出発液相の固相不純物濃度を保って冷却されて行く。
※ 融点が上昇する不純物の場合は温度の低下で不純物濃度が低下(k > 1)
※ 融点が下降する不純物の場合は温度の低下で不純物濃度が上昇(k < 1)
※ 不純物濃度 CL / Cs = k
 結晶成長は定常的ではあるが、相平衡に達し得るような平衡状態にはなく、また系外に析出結晶が析出に応じて取り出されていく場合もある。もし不純物の固相内拡散が起こらないとすると、kに対応して析出結晶の初めと終わりでは濃度が
 k > 1, Cstart > Cend
 k < 1, Cstart < Cend
となり、結晶中の不純物濃度が変化する。意識して使用すれば結晶の純化となるが、均一結晶を得る目的に対しては妨げとなる。特に、対流や温度変動があると、析出固相に析出時間に対応した位置に濃度むらが生ずる。
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■ 水溶液からの析出 [1]
 析出を考えるときには、相図あるいはその一部である溶解度曲線が知られていることが望ましい。
 水溶液、非水溶液に限らず、室温付近で液相である系については、溶解度曲線が分かっていれば充分なことが多い。室温で固相となる場合には、析出物に歪みを与えたり、取り出すに当たって液出液に注意を払う必要があるために、固化前の液相から取り出すのがよい。このような場合には共晶温度を知っている必要がある。
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■ 溶解度 [1]
 水や有機溶媒を用いた析出による結晶育成には、相図の一部である溶解度曲線を作る必要がある。溶解度は、温度の上昇によって増大するとは限らないことにまず注意していおく必要がある。一般的にいって、溶媒に溶質を加えて溶解するときに、
1) 溶液の温度上昇があるもの 溶解度負
2) 溶液の温度不変のもの 溶解度不変
3) 溶液の温度降下があもの 溶解度正
の関係があるから、温度計を入れて温度を計るとよい。
※ 第2塩化鉄のように溶解度が結晶水によって変化するものがあることに注意する。硝酸アンモニウムなどでは相転移温度で溶解度が変化することに注意したい。炭酸ソーダの場合には含水量によって、溶解度の符号の逆転さえ生じることがあることも注意されたい。
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■ 蒸気圧 [1]
 沸点は液相の蒸気圧が外気圧と等しくなるところであるから、既知の外気圧下で沸点を測定することによって蒸気圧の測定が可能である。低融点、低沸点、物質の蒸気圧はこの原理によればよい。
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■ 融体の固化 [1]
 融体を冷却して行くと、通常融点よりやや低い温度でも固化は開始されない。この状態を過冷却状態と呼び準安定状態である。さらに冷却を続けると容器の壁が中の融体より低く、凹凸や汚染があると、そこが核発生の源となり、固化の潜熱を放出しつつ壁から融体内へ向かって結晶化が進行する。この場合得られる固体は多結晶である。この場合、壁から中心へ向かって柱状に延びた結晶粒が観察されることが多い。
 融体の固化にあたってある程度大容量の容器を用い、徐冷するか固液界面の温度差を小にすると結晶粒は大きくなると考えてよいだろう。
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■ 試料の秤量 [1]
 試料の秤量は、分析値に従って割掛けした値を、風袋重量(秤量時に使用する容器、薬包紙等の重要、風袋除去のできる天秤が便利である)を考えて有効数字3桁まで行う。
(例)灼熱減量 1.12%で他に 0.1%以下の不純物しか含まないα-Fe2O3と、同じく5.36%のY2O3を用いて、YFeO3育成用の原料200gを調合する。
  モル% 重量% 割掛値 秤量
α-Fe2O3 50.00% 41.42% 100/(100-1.12)=1.011 83.8g
Y2O3 50.00% 58.58% 100/(100-5.36)=1.057 123.8g
100.00% 100.00%   207.6g
 溶剤法の場合には、やや厳密さを欠いてもよさそうに思われるが、1%程度の組成変化が他相析出をまねいた報告があるから、やはり3桁調合の基準をもったほうが無難である。
 溶液原料に対しては、成分重量組成が分かっているときは秤量によるのが正確である。容量で調合するときは、容量組成が分かっているか、比重と組成の関係が3桁以上の有効数値で関係づけられている必要がある。
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■ 結晶化の推進力 [2]
 自然現象は系の自由エネルギーが減少する方向に進むが、結晶成長現象においては系の自由エネルギー変化は過飽和度の解消(過飽和溶液が飽和溶液になること)によるもの、つまり濃度変化によるものである。過飽和溶液の濃度をx、同じ温度での飽和濃度をx*とすると、過飽和溶液が飽和溶液と結晶に変化したときの自由エネルギー変化量Δμ[J/mol]は
 Δμ = μ - μ* = RT(lnx - lnx*) = RT ln (x/x*)
と表せる。これを無次元化して表すと、
 Δμ / RT = ln (x/x*) ≡ lnS 〜δ
となる。ここで、S(≡x/x*)は飽和比、σ(≡S-1 = (x - x*)/x* ) は過飽和比と呼ばれている。普通、(x - x*)を溶液の過飽和度と呼んでいるので、結晶化現象の推進力(駆動力ということもある)は溶液の過飽和度であるということができる。
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■ 成長速度と溶液の流れ [2]
 結晶の成長速度は、過飽和度だけでなく溶液の速度によっても変化し、しかも溶液速度が速くなるにつれて一定値に近づいて行くように見える。このことは、結晶の成長速度には攪拌の影響を受ける溶液中の移動過程と、その影響を受けない移動過程がかかわっていることを示している。
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■ 熱平衡状態でのゆらぎ [3]
 熱平衡では自由エネルギーGの最も小さい状態が実現確率が圧倒的に大きく、系を観察すればほとんどはこの状態にある。しかし、それよりわずかにGが大きい状態も長い間待っていれば、ゆらぎとしてある確率で実現する。結晶成長が始まるには、液体の中に微小な固体の種がたまたま出現するのを辛抱強く待つことになる。
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■ チョクラルスキー(Czochralski)法 [4]
 SiやV-X族化合物をはじめ、大半の酸化物単結晶の育成に用いられている最も代表的なバルク単結晶の育成方法である。この方法はCzochralskiが金属メルトの表面張力を測定する際に考案したものである。
 融液/溶液に区別なく共通で、材質は結晶の融点によって使い分けることになる。ここで注意したいのは育成中の雰囲気で、MoやW製るつぼは容易に酸化して揮発するので、不活性にする必要があり、したがって多くの酸化物結晶では酸素欠乏になりやすい。
溶融引上げ法:Siをはじめ、大半の酸化物単結晶の育成に用いられている方法で、加熱溶融は抵抗加熱式と高周波誘導加熱が一般的である。高周波誘導加熱式では軸方向の温度勾配の設定にアフターヒーターを用いる。育成可能結晶は用いるるつぼの融点で制限される。
液体封止チョクラルスキー法:V-X族化合物半導体バルク単結晶の育成では、X族元素の蒸気圧が高いので、融点からの解離(揮発)を防ぐために高圧を印加する。その際に融液に静水圧が印加されるようにB2O3を被せ、これを通して結晶を引き上げる。
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■ 結晶成長のミクロな描像 [4]
 メルト(溶融液相)からの結晶成長は「液体(液相)」−>「固体(固相)」の不規則ー>規則相の相転移である。この二つの相での化学ポテンシャルμの差と温度Tの差によって物質やエネルギーの移動が起こる。熱は高温部から低温部へ流れ、物質は化学ポテンシャルの高い方から低い方へ移動することで結晶は成長する。
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■ 成長駆動力の描像 [4]
 結晶核が生じたり、その後の結晶の成長あるいは溶解(揮発・蒸発)が進行するには結晶と環境相との間で物質のやりとりあるいは熱のやりとりに差が必要で、この差分が結晶成長の駆動力となる。ここで駆動力について述べるが、バルク成長のダイナミクスを理解するうえで肝心な概念である。
 結晶成長を決めるのは系の内部エネルギーUで系全体のエネルギーEより物体の運動に関与する力学的運動エネルギーKを差し引いた U = E - K で与えられる。内部エネルギーUのする仕事には、体積の変化に伴う力学的仕事(-PVPは圧力)を含んでいるが、結晶成長系のようにすでに熱的平衡と力学的平衡が2相間で成り立っていて、原子・分子の移動のみが行われる場合には熱力学的ポテンシャルとしてギブスの自由エネルギーGbを用いて議論される。
 系のギブス自由エネルギーが交わる点Tmが融点であり、液相が固化による相転移を行うに余分な自由エネルギーGbを必要とすることになる。原子・分子1個当たりのギブスの自由エネルギーの化学ポテンシャルμを用いると、系の原子数N、過冷却儺の温度TにおいてはGb = Nμという相転移のための駆動力が存在することになる。この僭bが駆動力で、一般的な扱いでは、融液、溶液、気体と固相との化学ポテンシャルμmμcのエネルギー差
 μ = μm - μc
が結晶成長の駆動力の一般的記述である。
 結晶成長を論ずる際には、このμは、希薄環境相からの成長では過飽和、濃厚環境相からでは過冷却が主な駆動力の実体でわれわれが制御しうる測定可能な成長の育成パラメータである。
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■ 平衡状態図(相図)
  熱分析によって得た曲線を各濃度ごとに数多く作り、それらの折点を連結したものが平衡状態図となる。
  熱分析によって時間-温度の関係冷却曲線を作れば、これによってできた曲線は変態点において非連続的な形状を示す。すなわち、液相から固相への変態(このときは凝固点となる)、凝固後の変態の位置を知るのである。
  ある一定圧力のもので、一つの系をこのように種々の濃度において各自の変態点を測定し、また熱膨張、導電率、磁気的資質を調べてこれらを総合すると平衡状態図を作ることができる。熱分析だけでは不明瞭な点はX線分析などを用いる。
中野信隆「改定 金属材料学(上)」コロナ社
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■ 二元系の状態図 [4]
 二成分系での独立変数は温度、圧力、組成(濃度)の三つである。化合物半導体のように蒸気圧の高い成分を含む化合物では圧力も重要な因子となるが、ごく一般的には温度と組成の二つが独立変数となる。
 多くの状態図では化合物AxByは整数x,yの定比である1本の線で表示されることが多い。これは「線化合物(line compound)」ともいわれるが、実は化合物AxByをはじめ端成分(end member) A, Bも多かれ少なかれ固溶域(solid solution region)があることに留意して結晶成長の面から結晶品質を追求していく必要がある。
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■  三元系の状態図 [4, 5]
 三元系の状態図の端の部分は二元系と同じになるので、二元系の状態図のデータをそのままプロットする。そこから推察して、三元系での状態図を作成する。作成した予測される状態図から重要となる部分に対して試料を作成して、新たにデータを書き込むとよい。
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■ 四元系の状態図 [6]
 四元系の状態図の端の部分と対角線上は二元系と同じになるので、二元系の状態図のデータをそのままプロットする。そこから推察して、四元系での状態図を作成する。
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■ モデル [6]
正則容体モデル:置換型固溶体(通常の合金では置換型固溶体が主役)
副格子モデル:浸入型固溶元素を含む場合(Fe-C-Cr系など)
で精度の良い結果を期待できる。
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■ 正則溶体近似での計算 [6]
自由エネルギー = 自由エネルギーの算術平均 + 相互作用エネルギー + 混合エネルギー
自由エネルギー: G
自由エネルギーの算術平均: GA * xA + GB * xB
相互作用エネルギー: ΩAB * xA * xB
混合エネルギー: RT (xA * ln xA + xB * ln xB )

化学ポテンシャル
μA = GA  + ΩAB * (1-xA)2 + RT ln xA
μB = GB  + ΩAB * (1-xB)2 + RT ln xB
μAα = μAβ , μBα = μBβ

相平衡条件(共通接線則):下に凸になっている部分を結ぶ

ΩAB < 0: 規則化が起きるので、状態図は複雑になり、収集がつかなくなる。現実の合金では ΩAB < 0 が多い。
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■ 副格子モデルでの計算 (例:GaPとGaAsの2つの組み合わせ{擬2元系}) [6]
自由エネルギー = 自由エネルギーの算術平均 + 相互作用エネルギー + 混合エネルギー
自由エネルギー: G
自由エネルギーの算術平均: GGaP * yP + GGaAs * yAs
相互作用エネルギー: LPAsGa * yp * yAs
混合エネルギー: RT (yp * ln yp + yAs * ln yAs )

正則溶体近似と式の形は同じ。少しだけ異なる。
yP + yAs = 1 (副格子の部分でPとAsに関係する原子位置)
LPAsGa : P原子とAs原子間の相互作用係数。第2近接原子対である点に注意。最も重要な第1近接原子対のエネルギーは第一項のGGaP とGGaAs に含まれている。 
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■ 状態図からの自由エネルギー [6]
固相線や液相線を破線で延長し、温度を固定して縦軸をG, 横軸を組成xプロットする。各温度での対応関係が成り立つようにする。相は自由エネルギーが低い方となる。ある例だと、温度が低下するほど曲線の形状はほぼかわらず、Gの値が上昇する(固相と液相とでGの変化量が異なり、液相の方が低温でGの変化が大きくなる)。
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■ 製錬反応と熱力学
 酸化物の生成反応を例にとると、自由エネルギー変化凾fと反応に関与する成分の活量αの間には温度T(K)において次式が成り立つ。
  2M + O2 = 2MO
  僭 = 僭° + RTlog(α2mo/α2m*po2)
 ここで()内は活量項であり、非平衡を含め一般の状態における値を示している。
 この僭の値が負であれば、反応は右に進むことになるが、平衡状態に至れば僭=0となる。
 このときの活量の項は平衡時の値となり、平衡定数Kと等しくなるから、
  僭°/J = -RTln(α2mo/α2m*po2) = -2.3RTlogK = -19.15logK
  ここで僭°は標準自由エネルギー変化である。この数値を用いて僭°‐T図を作ることができる。
 僭°はエンタルピHとエントロピーSの関数として示され、しばしば次の2項の式で表される。
  僭°=僣°-T儡° = A + CT
  -logK = -2RTlog(αmo/αm) + -log(po2) = (A/19.15T) + (C/19.15)
 ここでpは分圧であるが正確には1atm(101.325 kPa)の純粋気体を基準とする気体の活量である。
 一方、活量αは活量係数γを通じてモル分率xと次式で関係づけられ、実際の濃度と関連することになる。
  α=γx
 これらの諸式の関係に基づき凾f°値から出発し、問題とする反応が最終的に落着くべき平衡状態における濃度関係を知るのが、乾式製錬における熱力学応用の定法となっている。湿式、電解製錬の場合については、活量の基準がことなったりするものの、基本的には同様である。
 ところで製錬反応の中で最も普通な酸化物の還元反応では、金属と酸素の間の親和力が基本になり、その強弱は酸化物生成の僭°‐T図などから知ることができるが、さらにもう少し直接的なものとして酸素分圧po2と温度の間の関係図もしばしば用いられる。
 もし、M, MOが純粋固体であれば、活量はともに1となるら、log(po2)を1/Tに対して示すと直線関係を得る。
 これ(各種酸化物に対するlog(po2)-1/T図)は酸化物生成の僭°‐T図と同様な意味を持つ図であり、酸素との親和力は上にあるものほど弱く、下のものほど強いから、下位の物質を還元剤として上位の酸化物から金属を得ることができる。
Pb-PbOの線からは、この線より上のpo2ではPbOが、下の領域ではPbが安定になる。
 例えば、1300 Kではlog(po2) = -7.35となり、po2 = 2.97*10^-8より低い酸素分圧(atm=0.003 Pa=3x10^-3 Pa)の条件におくと還元が進んでPbが安定になる。
「金属精錬工学」日本金属学会
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■ ピン止め効果 [6]
ピン止め理論:多結晶組織中に微細粒子を分散させると、結晶粒界のピン止めによって結晶成長を抑制できるという理論。
等方性粒子の場合:粒界エネルギー(σgb)に比例したピン止め力(fp)が発生して、粒成長を遅滞させる。
異方向粒子の場合:粒子と結晶との界面エネルギーに応じて、粒界の接触角(θ)が変化し、異常粒成長を誘発する。
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■ 拡散係数 [6]
 ある温度での拡散距離 = √ ( 2 * ある温度での拡散係数(m2/s) * 時間(s) )

◇ 半無限体における非定常拡散
 フィックの第二法則の式(wikipediaを参照)を解くと下記のようになる。
 (C-C0)/(Cs-C0) = 1-erf( x/(2√(Dt) ) = erfc( x/(2√(Dt) )
 時間 t = ( (x/4)^2 ) / D
  D: 拡散係数
  x: 拡散物質の浸透深さ
  C: 距離xにおける濃度
  C0: 距離x=無限または時間t=0における濃度
  Cs: 距離x=0における濃度
 上記の式とフィックの第一法則の式を用いると、単位面積をとおして拡散する溶質の全量を計算することができる。

◇ 拡散の駆動力は本来は濃度勾配ではなく、化学ポテンシャルの勾配である。

※NIMSのデータベースに金属での拡散係数Dが記述されている。
「金属物理化学」日本金属学会

※ 非常に単純には、「時間 = 到達して欲しい距離の二乗 / 拡散係数」 として反応時間を概算されることもある。
※「半無限体における非定常拡散」で計算すれば、球状の粉に浸透していく場合、例えば、粒径45μmのCuと平板のSeを混ぜて880℃で焼鈍すればCuの拡散係数から53分以内で完全に浸透し、十数時間以内に低温相のCu2Seを作ることができる。
R. D. Heyding, Can. J. Chem. 44 (1966) 1233.
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■ 変態温度と変態時間
 等温変態曲線、S曲線、T.T.T曲線などと呼ばれる。1930年にBainとDavenportが発表。
 S曲線は鋼の成分含有量によって皆異なり、各種の鋼のS曲線は一つ一つの研究によって見つけ出さなければならない。
 S曲線は色々な文献で見ることができる。S字に似た曲線になり時間のオーダーもほぼ同じに見える。厳密には違っていても参考になるでしょう。
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■ 変態曲線
 鋼をオーステナイトの領域から冷却するときに起こる変化をよく理解することは、鋼をよりよく利用するために必要なことである。これは、鋼をオーステナイト領域からある温度まで急速に冷却し、その温度を一定に保つときに起こる変化、すなわち、鋼の等温変態を研究することによって、もっとよく理解することができる。
 共析鋼を例にとると、このとき起こる変化は、つぎのようである。

1)温度がMs(変態開始温度)温度より高い範囲では、セメンタイトとフェライトの共析が起こる。この変態は核の生成と成長を含む過程であるから、変態の量はその温度における保持時間に依存する。

2)温度がMs温度より低い温度範囲では、冷却の途中で瞬間的にマルテンサイトに変態する。この変態は時間的な要素をほとんど含まないので、冷却の際に通過する温度範囲に依存する。

 1)の温度範囲で起こる変態は等温変態曲線になる。この曲線上の反応開始の時間と反応終了の時間を各温度で得て、
プロットするとS曲線が得られる。
 一方、2)に述べた温度範囲で起こる変態は、Ms-Mfの温度範囲を通過するか、しないか、が反応の開始と終了を決めることになる。一定の組成の鋼に対しては、MsおよびMf(変態終了温度)温度は一定であるから、これは2本の直線で示される。したがって、鋼を冷却する過程で、これらの曲線を横切るときに変態が開始または終了することを示す図になる。
 
 析出反応に対応する範囲の曲線がこのようなC形になるのは、A1変態線から温度が下がるに従って過冷却の度が増大し、オーステナイトが不安定になるので反応速度は速くなるが、さらに温度が下がると、原子の拡散速度が低下して反応が遅くなるためである。
 フェライトとセメンタイトの核の生成と成長は、オーステナイトの結晶粒界で始まるので、オーステナイトの結晶粒度が大きいほど変態開始時間は短くなり、かつ変態終了までの時間が長くなる。すなわち、C曲線(S曲線でCの形になる部分)の形はオーステナイトの結晶粒度にも影響される。
 この曲線の上で、最も短時間で変態が開始する点を湾曲点または鼻、またMs温度のすぐ上のくぼんだ部分を湾と呼ぶ。

 炭素鋼の場合、Ms点を近似的に求めるために、つぎのような式が経験的に得られている。
  Ms = 550 - 361 x C [℃]
 ここでCは炭素含有量[mass%]である。
小原嗣朗「金属材料概論」朝倉書店

◇ Ti合金のTTT図
 β相のTTT曲線も、一般の場合と同様にC字型で、中間の温度で変態速度が最も大きくなる。低温においては、中間遷移相ωが生成するので、もう一つC曲線が追加されている。
 マルテンサイト変態は、無拡散であるのでMsは時間に関係なく、一定の温度で示される。
石田恒雄「焼結材料工学」森北出版
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■ 焼きもどし温度と保持時間
 鋼の焼きもどしによる機械的性質は拡散によって行われる炭化物の凝集状態によって支配されるから、焼きもどしの温度と焼きもどしの時間とは密接な関係にある。
 ゆえに炭素鋼においては次式の値を焼きもどし指数として、この値をもって焼きもどしの程度を表すことができる。
 P = T*( K+log(t) )
 P:焼きもどし指数
 T:絶対温度であらわした焼きもどし温度
 K:定数(材質によって異なり、12から25の値をとるがC 0.2から0.4%の鋼で19.5、C 0.9から1.2%の鋼で15.0とおいてさしつかえない)
 t:焼きもどし時間(h)
 たとえば、0.4%C鋼について540℃で4時間焼きもどししたときのかたさと、550℃で2時間焼きもどししたときのかたさは大体同じになり、
 1.0%C鋼を545℃に10時間焼きもどした場合と600℃で1時間焼きもどしたものとは焼きもどし指数は同じ値であって、
同じ焼きもどし効果を与えるとされている。
したがって焼きもどし温度のみやかましく規定するばかりではなく、焼きもどし時間にも留意しなければならない。

◇単体金属のおよその再結晶温度
金属 再結晶温度
Sn 常温以下
Cd 0-50℃
Pd 常温以下
Zn 15-50℃
Mg 150℃
Al 150-200℃
Au 200℃
Ag 200℃
Cu 200-230℃
Fe 400-500℃
Pt 450℃
Ni 530-660℃
Mo 900℃
W 1000-1200℃

中野信隆「改定 金属材料学(上)」コロナ社
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■ 結晶粒の成長
 液体金属のなかにいくつもの核ができて結晶粒が成長すると、互いにぶつかり合ったところで境界が出来て凝固が完了する。
 結晶の粒界の部分は最後に凝固するため、金属中に異種の原子が含まれている場合、結晶のなかに固溶されないものは、最後に結晶粒界に集まる。
 凝固によって結晶が成長するとき、結晶はどの方向にも同じように成長するのではなく、結晶の構造によってそれぞれ成長が速い方向がある。
 凝固の過程で熱が一方向に流れるような状態にすると、結晶粒を一定の方向に成長させることができる。融解した金属を冷却するとき、熱流の方向、冷却速度などの条件を適当に選ぶと、同じ方向に並んで成長した結晶粒をもつ鋳塊を作ることができ、それによって、材料の性質に非常に強い方向性を持たせることができる。このような方法を、一方向凝固という。また、同様な方法によって、1個の結晶だけを成長させると全体を単結晶にすることができる。
 このようにして単結晶を作る方法をBridgeman法という。

金属が凝固するときの結晶成長の優先方位
結晶構造 金属 結晶の成長方向
bcc Fe <100>
fcc Al <100>
  Cu <100>
  Ag <100>
  Au <100>
  Pb <100>
  Cd <0001>
hcp Zn <0001>
  Mg <2110>
XRDで特定の方向の強度が強く見えることになる。

小原嗣朗「金属材料概論」朝倉書店
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■ 反応過程
 一般に気体、液体、固体などの化学反応の速度を表すために、原子の移動の起こる確率 r、すなわち反応速度 rは、
 r = A * exp(-Q/RT)
という形の式がしばしば用いられ、これが実験結果とよく一致することが知られている。
 ここで、rは反応速度、Aは定数、Rは気体定数、Tは絶対温度、Qはその反応の(1モル当たりの)活性化エネルギーになる。
 一般に原子当たりの活性化エネルギーはエレクトロンボルト[eV]で表されていることが多く、また1モル当たりの活性化エネルギーの場合は、SI単位系ではジュール[J],cgs単位系ではキロカロリー[kcal]で示されている。これらの間の換算は次のようである。
 1 [eV/atom]   = 9.648 x 10^4 [J/mol]
 1 [eV/atom]   = 23.03 [kcal/mol]
 1 [J/mol]      = 6.241 x 10^18 [eV/atom]
 1 [kcal/atom] = 4.342 x 10^-2 [eV/atom]
 1 [kcal/atom] = 4.184 [J/mol]
 このような取り扱い方は反応(速度)過程、または反応速度論と呼ばれる。
 この反応過程の考え方で注意すべきことは、反応の過程が、ポテンシャルエネルギーが最低の状態と、最高の状態との間の差だけで考えられていることである。すなわち、ポテンシャルの山を越すか越さないかということは問題にされているが、変化の経路がどうであるかということは、考慮されていないということである。
  一般的にいうと、反応の活性化に必要なエネルギーは、機械的エネルギー、熱的エネルギー、電気的エネルギー、光エネルギーあるいは、その他の形のエネルギーでも与えられる。
 固体では、熱的エネルギーによって活性化される現象が多い。固体内の変化の多くは、拡散によって進行するので、金属材料に関する熱的に活性化される現象には、上記の式の指数関数の形の項が入ってくるのである。
小原嗣朗「金属材料概論」朝倉書店
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■ 結晶粒の生成発達
 核が生成して凝固を始める温度は、温度がちょうど溶融点に到達したときではなく、溶融点から少し温度が下がって過冷の状態になったときであり、その程度は金属によって異なるものである。Al、Cuなどはごくわずかであるが、Sbは過冷の過程が著しい。結晶の大小および数は、成分、不純物の存否などによっておおいに異なるが、これらが同一の条件であれば主として冷却速度によって異なってくる。

◇ 結晶核の生成数、成長速度と温度との関係
 Tamman(1921)によって発表されて以来結晶粒の生成発達の説明に利用されている図がある。
 結晶核の生成数Nは凝固点の少し下の温度で最大値を示し、それ以下の温度では急速に減少する。
 結晶の成長速度Gは初め急に増大し、Nよりも高い温度おいて最大値を示すが、以後はある温度範囲にわたって一定値をとり次いで急減する。すなわち溶解金属が凝固するときは理論凝固点以下に過冷された位置から凝固を開始し、凝固終了後常温における結晶粒の数や大きさは、NとGの両曲線の相関位置によって定まってくることになる。
※ Gがほぼ変化せず、Nが大きい温度がある場合には、その温度にしてから急冷すれば多数の結晶粒を得ることができるようになる。その温度が高温側にある可能性があることを覚えておきたい。一概に低い温度にすれば結晶粒が多数得られると思い込むのは間違い。

◇ 結晶粒に大小があるのは、核から成長した結晶粒のぶつかりあいだけではなく、融体が結晶する際には一定量の熱量を放出するので、その付近の温度が上昇し、いったん過冷されてもまた温度が上昇する。
一般に金属は冷却速度が遅ければ結晶粒の数は少なく結晶粒度は大きく、冷却速度が速ければ多数の結晶粒を生じてその粒度は小さい。

◇ 冷間加工
冷間加工度が小さいとNは小さいが、Gは大きい。したがって、わずかに冷間加工した金属を焼き鈍しすると、少数の結晶粒が大きく成長する。逆に強く冷間加工した金属を焼き鈍しすると多数の微細な結晶粒で構成されることになる。
 わずかな加工を行って高温で焼き鈍しすると大きい結晶粒が得られる。(逆もまたしかり)
冷間加工度と焼き鈍し温度および時間の適当な組み合わせによって、金属材料の結晶粒を適当な大きさに制御することができる。これは、実用的には非常に大切なことである。

等温再結晶曲線:一定温度の焼き鈍しにおける再結晶の時間変化。この曲線は、再結晶に関連する現象に特徴的なものである。最初に全く変化の現れな潜伏期があった後、新しい結晶粒が現れ始める。この再結晶の進行は、焼き鈍し温度を変えても、曲線の形は大体同じになる(温度が低くなると横軸がlog(t)で長時間側にシフトする。立ち上がりがはじまる前までが潜伏期になる。恒温変態曲線も似た形のカーブになる)。再結晶に関連して変化する性質、例えば、電気抵抗、硬さ、強さなどで測定しても似たような経過を示す。

◇再結晶という現象で重要な問題は、新しい結晶粒が、どのような過程によって形成されるか、ということである。この点に関しては、結晶粒界あるいは析出物などの近くに、最初に新しい結晶粒が出現することが認められている。これは、そのような部分では、結晶が他の部分より強く不規則に変形されるため、最初にその一部のひずみのない微小部が熱的に形成され、それが周囲の結晶のひずみエネルギーを解放しながら成長していく、ということが他の部分よりも起こりやすいと考えられている。
 このようなことから考えると、最初の金属内部の粒界の多少、すなわち加工前の結晶粒の大きさが、再結晶に影響することが理解できる。加工前の結晶粒が小さいほど、再結晶完了後の結晶粒は小さい。また、異種原子が存在すると、再結晶核の成長が妨げられる。したがって、金属の純度も再結晶に影響する。高純度の金属ほど再結晶しやすく、低温の焼き鈍しでも再結晶が起こる。

塑性加工:金属に塑性変形を与える操作。加工ということばは、変形というよりは、目的とする形状を与える操作という意味の方が強い

冷間加工:加工の際の温度が常温。冷間加工を行うと、金属の結晶の内部に、転位や原子空孔のような結晶の欠陥が増加するため、全体としての物理的性質や機械的性質が加工間に比べて変化する。
 加工ひずみの全くない状態、すなわち完全焼き鈍し状態では、金属結晶内の転位密度は大体10^4 - 10^6 /mm^2であるが、強く冷間加工された状態では、転位密度は10^9 - 10^10 /mm^2程度にまで増加する。

熱間加工:加熱して加工している

◇冷間加工された金属が焼き鈍しされるときに生じる変化は、冷間加工された結晶粒がそのままの形でひずみを解放してゆく過程の回復と、これに続いて、さらに新しいひずみのない結晶に変わってゆく過程の再結晶に分けて考えられる。

◇冷間加工によってひずみを生じた結晶粒が、再結晶によってひずみのない結晶粒に全部置き換わった後も、さらに焼き鈍しをつづけると、結晶粒の形状や大きさが変化する。これを結晶粒成長という。これは加工による内部ひずみが解放された後に起こる変化で、その駆動力は結晶粒界のもつ界面エネルギーの減少によるものである。したがって、全体として粒界の面積が減少するような方向に変化が起こる。
 このとき観測される主な現象は、粒界の直線化、微細な結晶粒の消滅およびそれに隣り合う結晶粒の成長などである。
結晶粒界の平衡状態は、3つの結晶粒界が1点において120°ずつの角度で交わる形である。
 したたがって、平衡状態では再結晶粒がいずれも正6角形に近い形になる。この状態に近づく変化は、結晶粒が正多角形に近い形の場合、辺数が少ない結晶粒で、辺のなす角度の小さい結晶粒は時間とともにしだいに小さくなり、一方、辺数の多い結晶粒で辺のなす角度が大きい結晶粒は大きくなる傾向を持つ。このときの粒界の移動は、曲率半径が小さいほど動きやすく、また移動の方向は曲率の中心に向かって起こる。

◇再結晶には、必ず結晶粒形の変化が伴う。このために、再結晶とは一般の結晶粒界、すなわち、大傾角粒界の移動を伴う現象である、と考えられている。したがって、サブバンダリー、すなわち、小傾角粒界のみの移動を伴う現象が回復であるとされている。
 結晶粒界の両側では、結晶の配向は異なる。このため、1つの結晶粒のなかですべり面上を移動してきた転位は、結晶粒界にぶつかると止まってしまう。結晶粒の大きさが小さいほど、金属材料の内部で占める結晶粒界の割合は大きくなる。
 したがって、結晶粒が小さいほど転位が移動しにくくなり、強さが増大する。
 σy = σ0 - K*d^-(1/2)
ここで、σyは降伏強さ、dは結晶粒径、σ0とKは定数である。この式をHall-Petchの関係という。

小原嗣朗「金属材料概論」朝倉書店
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■ 加工硬化
 塑性変形が起こると、金属は硬くなる。加工によって硬くなるので、この現象を加工硬化、または歪硬化と呼ぶ。
 加工硬化の原因は、外力が加わると、結晶粒にすべりを起こし、その面にすべりに対する抵抗力が生じ、すべりにつれてその抵抗力は大きくなることによる。
 塑性変形の開始からくびれの始まるまでの部分の応力-ひずみ曲線は近似値的に次の式で表せられる。
  σ = K*ε^n
ここで、Kは定数で強度係数、nも定数加工硬化係数、またはn値とも呼ばれている。
 またσは真応力、εは真ひずみを示す。したがって、塑性加工できる限界が存在し、それ以上の加工では、材料はもろくなって破壊することになる。また加工硬化によって比重・密度が減少する。
 これは結晶内部のひずみで、その結果として容積が増すためである。さらに塑性加工によって組織的には結晶粒は力の方向に伸びて微細化され、結晶格子は転位の多いひずんだ形になる。
 一般に金属は、加工度に応じて硬さと強さが増し、伸びは減少する。塑性変形が進むと、転位の数が増し、加工後10^12/cm^2の転位密度に上昇し、それがもつれた糸のようになって、互いに動きにくくなる。それは転移の相互作用により、または結晶内部の障害物によって全身を阻止され、そのまわりの応力場によって、結晶の平均内部応力を高め、新しい転位の運動を抑える。また、転位がすべり運動中変形を受け、その抵抗のためついに運動できなくなる。これが加工硬化の機構と考えられる。
石田恒雄「焼結材料工学」森北出版
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■ 回復、再結晶、粒成長
 塑性加工により欠陥が形成され、ひずみにエネルギーが増し、硬化するが、これを加熱すると、次のような過程を経て、徐々に軟化していく。

低温側

回復過程:結晶粒の大きさや硬さや引っ張り強さはほぼ同じで、伸びや絞りが増大する
再結晶過程:結晶粒はわずかに増加し、硬さや引っ張り強さが大きく低下、伸びや絞りが大きく増大する
結晶粒の成長の過程:結晶粒の大きさが大きく増加し、硬さや引っ張り強さが低下、伸びや絞りが増大する

高温側

1)第一過程-回復
 加工硬化された結晶粒が、そのままの形でひずみを解放していく過程、すなわち、ひずんだ結晶格子中の原子が、元の安定状態に戻ろうとする傾向がある。拡散により原子が移動し、原子の再配列が進むと、内部応力が除去される。
この原子の最初の再配列は、個々の結晶内で生じる。この結晶粒の形や結晶の向きに変化を生じないで、物理的性質や力学的性質のみが変化する過程を回復と呼ぶ。

2)第二過程-再結晶
 塑性加工によってひずみを生じた金属をさらに加熱すると、その内部にひずみのない新しい結晶粒の核が生じ、これが成長するのに伴って、ひずみを生じた結晶粒が消失して、全体がひずみのない結晶粒に置き換わる。また、転位の少ない結晶粒が生まれて、全体が新しい結晶粒の集まりに変化する。この過程を再結晶といい、再結晶が始まる温度を再結晶温度という。再結晶過程で、強さや伸びなどの力学的性質が変化する。
 この再結晶は加工度と密接な関係がある。加工度の低いもの程、再結晶温度は高くなる。また高温になる程、結晶粒は粗大化する。特に、低加工度、高温下では結晶粒が著しく粗大化し、肌荒れ発生の原因となることがある。

3)第三過程-粒成長
 塑性加工によってひずみを生じた結晶粒が再結晶によってひずみのない結晶粒に全部置き換わった後も、さらに加熱すると、新しくできた結晶粒は隣接する小さい結晶粒を併合して次第に大きくなってくる。これを結晶粒の成長と呼ぶ。
 これは加工による内部ひずみが解放された後に起こる変化で、その駆動力は結晶粒界のもつ界面エネルギーの減少によるものである。したがって、全体として粒界の面積が減少するような方向に変化が起こる。その時観察されるのは、粒界の直線化、微細な結晶粒の消滅およびそれに隣り合う結晶粒の成長などである。
 粒成長した金属はかえってもろくなるから、加工硬化を除くための加熱温度は、再結晶温度を超えてはならない。
石田恒雄「焼結材料工学」森北出版
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■ 塑性加工と温度
 金属塑性加工は、温度によって一般的に熱間加工と冷間加工に分類され、それらの中間温度の場合は、特に温間加工と呼ぶ。
1)熱間加工
 熱間加工は、再結晶温度以上の加工であって、加工によって結晶粒が変形すると、ただちに再結晶により新しいひずみのない結晶が形成される。したがって、熱間加工では大きな変形量が与えられる。
 熱間加工は、一般的に高温加工であるが、再結晶温度の低い鉛や錫では、室温で加工しても熱間加工の範囲に入る。
 熱間加工では、材料内にひずみ硬化が蓄積されずに、パス間で十分消滅することを期待して行われていた。
 時代と共に塑性加工技術の高速化とそれに伴うパス間時間の短縮によって、各パスの加工には前パスのひずみ効果が受け継がれる状況になっている。
 金属塑性加工は普通、第一段階として熱間加工を行う。その目的は変形抵抗を下げて、加工力を低くすること、変態能を高めること、拡散によってインゴットの偏析を消滅させること、などである。このようにして、鋳造組織よりはるかに靭性、加工性のよい緻密な組織に変化する。
 しかし、高温における加工で、表面酸化の問題、酸化膜形成によるスケールロスおよび金属表面層の酸素富化が起こり、鋼では表面層の脱炭も問題となる。熱間加工における最高温度はなるべく高い方がよいが、溶融と過剰な酸化および脆弱な組織の生成などによって制限される。一般には最高温度は融点の40から50℃以下にとるとよい。

2) 冷間加工
 冷間加工は、加工硬化の生ずる温度での加工であり、普通は室温での加工を指す。
 金属塑性加工では、第一段階として、熱間加工を行うが、精度のよい製品をつくるためには、第二段階として必ず冷間加工を行うのが普通である。
 冷間加工によって金属は加工硬化し、強さは増大するが、伸びは減少する。加工と共に降伏点、耐力は急増し、引張強さに接近する。
 密度は減少し、電気抵抗は増加する。結晶粒は微細化し、転位密度は増大し、結晶粒子のひずみは大きくなる。
 冷間加工の加工度が高くなると、硬化が激しくなり、加工完了する前に破壊をまねくことになるので、焼き鈍しが必要となる。
 加工硬化した金属を、色々な温度で一定時間焼き鈍しすると、ある温度から軟化が始まり、微細で均一な組織および強度を高めた材料を得ることができる。
 冷間加工は加工硬化による硬さの増大と伸びの減少はあるが、加熱の面倒がなく、美しい仕上げ面が得られ、精密な形状に加工できるという特徴がある。

3) 温間加工
 温間加工は室温と再結晶温度の間の温度範囲で行う加工である。その加工度は冷間加工よりも低くないと、脆化が激しい。
 材料の再結晶温度が高く、熱間加工できない場合の温間加工である。加工中には転位が多数発生するが、この温間加工範囲では、鋼中の炭素や窒素原子が容易に転位のところへ拡散してゆき、転位の運動を妨げる。
 そこで変形を続けるために、別の新しい転位が発生しなければならない。この結晶中の転位密度の急激な増加が、強さを高める。
 さらに転移の移動速度と原子の拡散速度とがマッチする条件で、すなわち、加工速度と温度とを合わせて加工することによって、加工とひずみ時効とを別に行い、より強度の高い材料が得られる。
石田恒雄「焼結材料工学」森北出版
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■ 焼結
 金属の2つの試片を密着させて温度を上げると、その間に拡散が起こるため、2つの試片は接合される。
 金属の試片のかわりに、金属の粉末を圧縮して固めたものを加熱すると、個々の粒子の間に拡散が起こり、粉末は互いに凝着して1つの塊状の固体になる。この現象を焼結という。
 金属の融点を絶対温度でTmとすると、焼結は0.7*Tm程度の温度から起こる。焼結は同一の金属の粉体同志でも、また異種の金属の粉体同士でも起こる。
 焼結の進行過程はネック部の半径をx,焼結時間をtとすると、
  x^n ∝ t
という関係がある。焼結中に起こる物質移動の機構によってnは異なり、
 体積拡散(粒内拡散と粒界拡散をいっしょにして扱う)の場合 n=5
 表面拡散の場合 n=7
になるとされている。金属粉末の焼結の場合は、一般的にn=5であるが、微小な粉末になると、体積に比べて表面積がおおきくなるため、表面拡散が優先するようになる。
小原嗣朗「金属材料概論」朝倉書店
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■ 粉末冶金
 金属の粉末を圧縮成形して加熱すると、焼結が起こって一体化することはかなり古くから知られていて、実際に応用されてきた。
 金属の粉末を原料に用い、焼結現象を利用して機械部品を製造したり、特殊な性質の材料をつくる技術を、粉末冶金と呼んでいる。
小原嗣朗「金属材料概論」朝倉書店
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■ 質量効果
 質量硬化とは材料を熱処理する際、質量の小さい材料は内外部とも均一に熱が行き渡るが、質量の大きなものになると熱の伝導に時間を要し、焼き入れの場合など外部には焼きがはいって硬化しているにもかかわらず内部は硬化しない。つまり焼きの入らない状態になることがある。この内外部に熱処理効果の差異を生じる現象をいう。質量の増大とともに焼入効果が減少することを質量効果が増大するという。
 元素によって、これを含有することにで鋼の質量効果を減少して焼入効果を増大させるものがあり、Ni,Cr,Mo,Mn,Ti,Vなどはこれに属し、焼入性を改善する効果のある元素であるがTi,Vは少量に限る。
中野信隆「改定 金属材料学(上)」コロナ社
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■ 結晶粒界への析出
 表面エネルギーの大きい母相と整合関係にない析出物は、結晶粒界へ析出すれば、界面を共有することによって全表面エネルギーの約半分だけ析出物形成に要する自由エネルギーは少なくてすむことになる。また、結晶粒界の原子配列は乱れているから、急冷中あるいはその後に溶質原子が偏析して過飽和度が高くなり安定相が析出しやすくなる。しかし、結晶粒界の性質はそれをはさむ二つの結晶間の方位関係により異なっている。
 たとえば、方位差が小さいときは小傾角粒界といわれ、転移の規則的な配列からできている。このとき、方位差が単純な傾きのみからなっているときは、粒界は刃状転移の配列でできているが、ねじれの成分が入るに従って、らせん転移がまじってくる。また、方位差が大きくなるに従って配列している転移の間隔は小さくなり、ついには個々の転移としての性格をもたなくなる。しかし、このような大傾角粒界でも原子配列は無秩序ではなく、粒界をはさんでの方位関係によって適合性のよい原子配列があり、粒界エネルギーの低い、規則的な原子配列をもつ粒界(対応粒界)があることが知られている。
このモデルによれば、粒界の方位差はある対応位置とそれからのずれで表され、ずれは粒界の面に転移網を入れることに相当する。したがって、このような結晶粒界の構造の差によって、形成される析出物の種類、数、成長速度、形態などが異なることになる。
 たとえば、240℃で時効したAl-Cu合金では、粒界の方位差が9℃以下のときは粒界にΘ’中間相が析出し、方位差が9℃以上になるとΘ安定相が形成され、それらの数や形は結晶粒界での方位差と方位関係、すなわち結晶粒界の構造に依存することが知られた。また、結晶粒界上のΘ安定相の成長速度は、母相Al中のCu原子の体拡散律速の場合より桁違いに大きいことが知られており、粒界析出物の成長は、体拡散、粒界拡散、母相と析出相との界面拡散の三つに支配されているとして解析されている。
 このように結晶粒界に析出相が優先的に形成されると、粒界に沿って溶質原子の低い領域ができ、析出物のない領域が生ずる。この領域はまた、粒界に沿って空孔濃度の低い領域が形成されることとも密接な関係がある。
幸田成康「合金の析出」丸善
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■ ひずみ取り焼き鈍し
 加工を受けた鋼の内部ひずみを除去する目的で行う焼き鈍し操作で、変態点以下の600℃前後に加熱し徐冷する。
普通鋳造、鍛造、圧延、冷間加工、焼きもどし、溶接などのあとに残留している応力を取り去るもので、これらの残留応力は約450℃くらいから取れ始めることから低温焼き鈍しともいわれている。
中野信隆「改定 金属材料学(上)」コロナ社
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■ 酸化
 鋼の酸化は加熱炉内のガス、加熱温度と加熱時間、鋼の性質などによってその酸化の度合いが種々異なる。
 炉内のガスが酸化性ガス(空気、酸素、水蒸気、二酸化炭素、亜硫酸ガス)であるときは酸化が進行し、中性ガス(窒素)や還元性ガス(一酸化炭素、水素、メタン)から成るときは酸化は起こらない。
 酸化の速度は温度の上昇に伴って加速度的に上昇し、500から600℃で著しく進行する。
 水蒸気は約700から900℃くらいの間が最も酸化力が盛んであって、940から1010℃の間では空気が水蒸気よりも大きい酸化力を持つ。
 二酸化炭素は空気、水蒸気よりも酸化力が弱い。亜硫酸ガスは少量在中しても約900℃以上の高温度でスケールの生成を増大して材料の損失を増す。
 亜硫酸ガスは高温度の鋼に触れると、鉄を酸化するのと同時に、酸化鉄を作って鉄中に浸透し、いっそうスケール損失をおおきくするものである。ゆえに鋼を高温度に加熱するときにはSO2の侵入を防止することが大切である。
中野信隆「改定 金属材料学(上)」コロナ社
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■ 鋼の変態および組織に及ぼす元素の影響
 合金鋼はその加えられる特殊成分元素によって組織が著しく異なり、また変態の起こる温度や変態速度に影響を及ぼすものである。その影響は大別すると次の二つのtypeに類別することができる。

・type T
 このtypeに属するものはMn,Ni,Co,Cu,Zn,Au,NなどでA3変態温度を著しく低下させ、A4変態温度を上昇させる作用がある。そのためγ領域が拡大することになり、これら元素の含有量によっては急冷しなくても常温でオーステナイト組織を持つようになる。

・type U
 このtypeに属するものはCr,W,Mo,V,Ti,Al,Si,Sn,Sb,Zr,Be,B,Ge,AsなどでA3変態温度を上昇させ、A4変態温度を下降させる作用がある。このためこれら元素の含有量がある程度以上になると、δ域とα域とを直接つないでしまい、A3変態とA4変態の間には狭いループがつくられ、γ域はそのループの中に閉鎖されることになる。

 このほかCr,W,Mo,V,Si,Ti,B,Nb,Taなどは固い炭化物をつくりやすく、Mn,Ni,Coなどは炭化物をつくらずに、地の中に固溶されやすい性質を持っている。

 以上のように相反するtypeに分かれるようであるが、実際にはこれら諸元素が2種以上共存することが多く、その量も千差万別であり、その結果あらわれる性質は複雑であるが、一般に特殊元素を含むものはS曲線の鼻の部分(短い時間側)が上昇し、かつ右側へ移動するものである。
 鋼に特殊元素のあるものを加えると冷却速度が速くなくてもAr'変態が阻止される。そしてAr"変態を起こす。ゆえにマルテンサイト組織となってかたさを著しく増す。すなわち普通の炭素鋼のように水、油に焼入れしなくても空中冷却で硬化させることができる。このような鋼を自硬鋼といい、Ni,Mn,Crなどはこの性質が著しく、W, Moなどは自硬性はあるが著しくない。その理由は、W鋼, Mo鋼にあってはAr'変態をたやすく阻止することは同じであるが冷却の場合に生じるマルテンサイトは容易に炭化物を析出するため空中冷却の程度ではかたさの大きいマルテンサイト組織をえることは難しいためである。
中野信隆「改定 金属材料学(上)」コロナ社
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※ コリアーク炉の電極棒にはトリウムが入っているので、削る場合にはマスクをすること!!

■ 物性データ [1]
記号 晶系 融点℃ 沸点℃
Si 立方 1410 2355
Al 立方 660.37 2467
Ti 六方 1660 3287
V 立方 1890 3380
Fe 立方 1535 2750
Ni 立方 1453 2732
Ta 立方 2996 5425
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■ 回復と再結晶(調質)
 常温加工を施した金属を加熱すると、常温加工によって加工硬化した性質が元に戻る。すなわち、加工によって形成された多くの格子欠陥を含んだ状態は熱力学的に不安定であるから、加熱して原子の移動、拡散を容易にしてやれば欠陥は消滅したり、配列を変えたりして金属の内部にたくわえられたひずみは次第に減少し、それに伴って機械的性質や物理的性質も加工前の状態に近づいてゆく。
 この加工によって内部ひずみ(常温加工によって生じた)を生じた結晶粒がそのままの形で内部ひずみを失っていくゆく過程を回復といい、内部ひずみのある結晶粒の中に、内部ひずみの無い新しい結晶の核ができてその核がしだいに成長してゆき、完全にひずみを開放する過程を再結晶または調質という。再結晶は常態温度近くにおいて行われる。
 以上の原理から機械的性質の改善を目的とした加工のことを焼き鈍しといい、この熱処理方法を目的によって、軟化焼き鈍しとかひずみ取り焼き鈍し、あるいは完全焼き鈍し、球状化焼き鈍しなどと称する。
 再結晶が起こり始める温度よりさらに高温度で焼き鈍しを行うと再結晶によてできた結晶粒が、お互いに隣の結晶粒を併合することによって結晶粒の成長を起こして、さらに発達してゆく。
 したがって焼き鈍しの温度が高く、焼き鈍しの時間が長ければ、破断面などでは肉眼でも見えるほど大きな結晶粒に成長発達する。
 結晶粒は微細なほど機械的性質が良好なのであるから、このように結晶粒が大きく成長することを阻止するように心がけるが普通である。
 この再結晶は常温加工を行ったものを加熱した場合にも起こることは既に述べたが、このような再結晶を起こさない鍛錬終止に適当した温度を鍛造仕上温度という。

◇  変態区域以下まで鍛錬を続けると結晶粒は極めて微細になるがゆずみが残留する。この場合は常温加工と同様な結果となり、鍛造の仕上温度としては不適当である。したがって仕上げ温度は変態区域の直上くらいが最も適当な温度であると考えられる。
 再結晶温度は一般に加工度の大きいほど低く、また材料が純粋なほど低く、不純物の存在するとき、あるいは合金ともなれば高くなるのが普通である。

◇  粒度の粗大な組織のものは加工度が小さく、焼き鈍し温度が高すぎるのが原因であるから、合金鋼で焼き鈍しによって非常に微細な結晶粒を得るためには相当高度な常温加工を施した後適当な温度で焼き鈍しをすることである。

◇ まとめると、良質な小さい粒子を作るためには、変態温度以上にした後、熱間加工を変態温度の領域のなかまで行い、最後に仕上温度を変態温度が開始する温度付近にする。
中野信隆「改定 金属材料学(上)」コロナ社
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■ 非理想気体の自由エネルギーの標準状態
 非理想気体の自由エネルギー変化はdG = VdG(温度一定)にその状態方程式を代入して積分すれば得られるが、かなり複雑な形の関係式になる。
 化学熱力学ではこのような複雑な形の式の使用を避けて、非理想気体の場合でも理想気体と同一の形の式が成立するように補正圧力として新しい関数fを定義し、これをフガシテー(fugacity, 逃散能)とよぶ。フガシテーを用いると理想気体の自由エネルギー変化は温度一定のもとでは次のように示される。
 dG = RT*dln(f)
 G = G° + RT*ln(f)
 フガシテーの単位は理想気体の場合と同じである。非理想気体について予めPとfの関係を求め図または表に表しておけば、非理想気体の自由エネルギー変化を計算することができる。一般の気体は、温度一定のもとでは圧力が低くなると理想気体に近づくことにより、P→0、f→Pとなる。自由エネルギーの標準状態はf=1(従来圧力単位としてatmを使用したが、
ここではSI単位にあわせるために圧力単位としてP=P(Pa)/101325(Pa)と定義した無次元圧力の1を意味するものとする)で、理想気体と同じ挙動をする状態とする。(この関係は、例えば、Pが0.6以上では、df/dPが1から小さくなり、pが大きくなるとdf/dPはさらに小さくなる。圧力Pが大きい場合、実在気体を理想気体に相当する状態に合わせるにはより高い圧力Pが必要となる)
 一般の冶金反応は高温1気圧(101325 Pa)のもとで行われるために多く場合fはPに等しいと考えてよく、フガシテーはあまり問題にならない場合が多い。
「金属物理化学」日本金属学会
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■ 固溶体と金属間化合物
 ある固体に別の固体が溶け込んだものを固溶体という。構造上、固溶体は2つの型に大別できる。1つは置換型固溶体であり、各成分原子はその結晶構造の位置を互いに置換して存在する。たとえば、Cu-Ni系は全組成範囲でfcc構造の置換型固溶体になる。
 このような置換は互いに置換する原子の大きさがあまり異ならないときに生ずる。もう1つは侵入型固溶体であり、主成分の結晶構造の隙間に他成分の原子が位置を占めている。
 たとえばFe-C系の固溶体のα、δ相ではC原子は主成分のFeのbcc構造の隙間にまたγ相ではfcc構造の隙間に存在する。
 侵入型固溶体は両成分の大きさに大きな差がある場合に生ずる固溶体である。このゆな合金の固溶体の生成には、それを支配する要因として各成分原子の大きさのさ、成分元素の電気陰性度または原子価の相違等が密接に関係している。
 2種またはそれ以上の金属元素が簡単な割合で結合し、成分元素の性質は違った新しい性質の化合物を生ずることがある。この化合物を金属間化合物という。金属間化合物の組成は、その成分元素が一般化合物で示す原子価とほとんど関係がない。たとえばKとHgの間にはKHg13,KHg5,KHg3,KHg2,KHgの化合物があり、通常の分子の化学結合の概念では統一的に説明することができない。
 しかし、原子価は、金属間化合物の結晶構造とは密接な関係がある。CuZn, Cu3Al, Cu5Snの化学組成は、互いに全く異なっているが、その結晶構造はすべてbcc型(β相)である。いまこの3種の化合物の原子価の和と原子数の比をとれば、Cu, Zn, Al, Sn, Feの原子価をそれぞれ周期表に従って1,2,3,4,0とおくことにより(遷移元素の場合のみ例外的に0にする)
 CuZn:(1+2)/2=3/2
 Cu3Al:(1x3+3)/4=3/2
 Cu5Sn:(1x5+4)/6=3/2
 FeAl:(0*1+3)/2=3/2
 のようにすべて3/2になる。この例から、化学組成の点では互いに関係のない1群の金属間化合物でも、原子価電子数と原子数の比が同一値であれば、それらの結晶構造はきわめてよく似ているということがわかる。これをHume-Rotheryの電子-原子比の法則という。
 Cu5Zn8,Cu9Al4,Cu31Sn8のように原子価電子数対原子数の比が21/13となる場合はγ相と呼ばれる複雑な立方構造に、
CuZn3,Cu3Snのように7/4になる場合はε相というhcpになる。
 β相合金たとえばCuZnなどでは、さらに秩序-無秩序転移といわれる現象が生ずる。すなわち低温では、Cu原子はbcc構造の立方体の体心の位置だけを占めるが、高温になるとCuおよびZn原子が無秩序にbcc構造の各位置を占める。
「金属物理化学」日本金属学会
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■ その他の有用な情報 [7]
・原子寸法比に関して、ヒューム・ロザリーは溶質原子の原子サイズがホスト原子のそれよりおよそ15%以上大きいと一次固溶体の固溶範囲が狭まることを指摘している。原子サイズ効果は弾性エネルギーを使って説明されている。
・e/aは1原子あたりの遍歴電子数(ヒューム・ロザリー電子濃度則を論じるときに使う)
 遍歴電子の定義が重要になってくる。
 valency electrons per atomでは [Ni:0][Cu, Ag, Au:1][Zn, Cd, Hg:2][Al, In, Ga:3][Sn, Si, Ge:4]と詳しい説明も無くリストされている。
・VECは1原子あたりの価電子数(飽和磁気、電子比熱係数、熱電能のユニバーサルカーブ)
 d電子を含めてそのまま計算する
・価電子帯にdバンドを含まないNa, Mg, Alではe/aとVECは一致する。

参考文献
[1] 高須信一郎『物理工学実験 12 結晶育成基礎技術』東京大学出版会
[2] 佐藤清隆ら『溶液からの結晶成長』共立出版株式会社
[3] 上羽牧夫ら『結晶成長のしくみを探る』共立出版株式会社
[4] 宮澤信太郎ら『メルト成長のダイナミクス』共立出版株式会社
[5] 柿本浩一ら『流れのダイナミクスと結晶成長』共立出版株式会社
[6] 西澤泰二『状態図・七話』アグネ技術センター
 西澤泰二:平衡状態図のコンピュータ解析、日本鉄鋼協会・西山記念技術講座(1989)
 大谷博司ら:析出物の溶解度の熱力学、日本鉄鋼協会、ふぇらむ、11 (2006) 457.
 大沼郁雄:計算状態図に用いられる熱力学パラメータの評価方法、日本鉄鋼協会、ふぇらむ、11 (2006) 577.
[7] 水谷宇一郎ら『ヒューム・ロザリー電子濃度則の物理学』内田老鶴圃
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■ 金属元素の密度と融点の相関
 大体重い金属ほど融点が高いという傾向がある。このことは、高温で使用する耐熱材料としては、軽い金属は向かないということを示している。
 密度5Mg/m^3以下の金属を、軽金属と呼ぶが、これは一般的に融点の低いものが多い。
 チタン(Ti)(融点:1668℃)は、軽金属のなかでは例外的に高融点である。
 原子番号の大きい元素ほど密度が大きい。弾性率は融点の変化と似ている。
小原嗣朗「金属材料概論」朝倉書店
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■ 強さ
 金属が塑性変形する場合は、結晶がすべり変形をする。これは、結晶の内部で転移が移動するということである。したがって、結晶の内部に転移の移動に対する抵抗になるような状態を作ってやれば、強さが増加することになる。
 そのような金属材料の強化法としては、次のような各種の方法がある。
1)加工硬化
2)固溶体硬化
3)析出硬化
4)変態による硬化
5)規則格子による硬化
 このうち、5)は規則格子を形成する合金系があまり多くないので、応用される例は少ないが、他の方法は、実際に広く応用されている。しかし、材料が高温で使用される場合は、集積された転位が熱活性化によって動き易くなるために、加工硬化によって強化された材料は次第に軟化する。
 このため、1)の方法は、高温で使用される場合には適用できない。
 金属材料というものは、強さを増大させれば、一方では伸びが減少する、すなわち、延性が失われるものであるということがわかる。これは、金属材料の宿命ともいえることである。このことが、非常に強化された金属材料の使用例が多くなると、破壊靭性が重視されるようになるということを示している。
 構造材料は、用途に応じて強度と延性が適度にバランスした材料が要求される。また、使用環境に影響される変化を、なるべく最小に保つことなども必要である。
小原嗣朗「金属材料概論」朝倉書店
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■ 相変態とフォノン
 強誘電体の相変態の前駆現象として、フォノン・モードのソフト化が起きることが予言され、BaTiO3などのフォノン・モードの研究がなされた結果、ソフト・フォノン・モードの存在が確認された。
 さらに強誘電体の相変態でなくても、SrTiO3のような構造的相変態においても、前駆現象としてある種のフォノン・モードがソフト化することが確かめられている。
 現在までソフト・フォノン・モードが見出されている物質は完全に2次か2次に近い1次相変態を生ずる物質である。
 フォノンがソフト化すれば当然それによる物性の変化が観測されるはずである。それが顕著に現れるのは音響フォノンと最も密接に関連している弾性的性質の変化、すなわち弾性定数の異常変化である。
 前節でふれたように相変態の前駆現象として弾性定数がソフト化する物質がいくつか見出されている。
 この現象は格子ソフトニングとよばれており、化合物に多く見出されている。
 Nb3Snは室温でβ-W型の立方晶構造をもっているが、45Kに至ると立方晶⇔正方晶の相変態を生ずるが、この変態は完全な2次相変態であることが知られている。
 Sb3Snについて超音波法によって測定された弾性定数C11とC12の温度依存性を見ると、温度が高温側から変態点に近づくにつれてC11の値はどんどん小さくなってゆき、逆にC12の値は大きくなってC11-C12の値はゼロに近づく。このことは変態点において<110>方向に関して結晶がきわめて柔らかくなっていることになる。
 典型的なマルテンサイト変態をするFe-Ni合金(典型的な1次相変態)でも変態の前駆現象として、ある程度の格子ソフトニング(インバー領域{30-50at%Ni0では磁気変態点を境になだらかではあるがいずでも弾性定数のソフト化がみられる})が観測されたことは、原理的にマルテンサイト変態と音響フォノンの挙動との間にある程度の関係があることを示しているものと考えられる。
 一方、いかなるフォノン・モードが異常な挙動をするかを調べるためには、フォノンの分散を調べることが必要である。
分散関係全体を調べるためには、X線か中性子線の非弾性散乱の実験を行う必要がある。しかし、k〜0のフォノンについては音響フォノン・モードはBrillouin散乱の実験によって、また光学的フォノン・モードはRamman散乱の実験によって観測することができる。
 結晶中の音響フォノンによる光散乱を結晶中のBrillouin散乱というが、(文献に記述されている式から)入射光の振動数変化を、散乱角から、音速を導くことができる。
 それゆえ、散乱角を変化させることによって、波数kと振動数ωの関係が得られる。しかしフォノンのエネルギーは10GHzまでしか測定できないため、分散関係の全体を見ることはできない。
 Nb3Snにおいては、(C11-C12)/2になることが見出されているが、これがどのフォノン・モードによるものかという点について中性子の非弾性散乱によって研究がなされた。
 その結果によるとNb3Snでは光学的フォノン・モードのソフト化はまったく観測されずに、直接的に音響フォノン・モードに温度依存性のあることが確認された。
 k//[110]の音響フォノン・モードの温度依存性は、温度の低下とともに分枝はソフト化(波数0近傍において分散が小さくなる{=傾きが小さくなる})している。この結果は弾性定数の測定ともよく一致している。
 上に述べたようにソフト・フォノンと相変態と格子ソフトニングの三者はきわめて密接に関連していることがわかる。現在のところ、ソフト・フォノン・モードに関する研究は強誘電体物質が中心で、大部分2次相変態を起こす物質である。Nb3Snのような2次相変態をする物質は変態のさいの体積変化も内部ひずみもかなり小さいものであろう。しかし2次に近くても1次相変態を生ずる水晶になると、内部ひずみの効果はかなり大きく、ソフト・フォノンもその影響を受けて非調和性、すなわち他のフォノン・モードとの相互作用を考慮しなければならなくなっている。
 典型的な1次相変態であるマルテンサイト変態ではさらにこの内部ひずみは大きくなるから非調和性を十分に考慮しなければならないことは明白である。
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■ 真空封入でのテクニック
a) 焼鈍中に試料が縦置きした石英管の底を浸透して割れ出てきそうな場合
 石英管の下部を厚くするように熱して加工するか、斜めにするなどして焼鈍する。
b) 焼鈍後に石英管の破片が入る場合
 試料から遠い部分で石英管に小さな穴を開けて気圧を大気圧にした後、石英管を傷つけて本格的に割る。
c) 石英管はエタノールと超超音波洗浄の後、乾燥機で長時間乾燥させたものの方が良いとも聞く
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■ 熱電対
・He用(4K〜室温) ヒーター無し(自然昇温) 熱電対:金鉄クロメル
・N2用(80K〜400K) 投げ込みヒーター 熱電対:銅コンスタンタン
・高温用 (室温〜1200K) 加熱炉 熱電対:白金ロジウム
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■ 私の経験則
・ 3元系に第4元素をドープするなど、ドープでの固溶を考える場合には、NIMSの2元相図を参考にしてみるのもよい。私の場合には、経験的に600℃近辺での固溶状態となる。ドープする原子とされる原子は近い族のものの可能性が高い。計算状態図で600℃を当てはめると近い傾向になることもある
 750℃のときもあるが、それは冷却速度が早くて(相図で引かれている)線が下方に下がるためであると考えている
・ 空孔は高い温度の場合、エントロピー的に導入される可能性があるのでそれも注意しておく必要がある
・ 水冷やliquid quenchの場合は、冷却する前の温度での固溶度
・ 日新技研のアーク溶解炉(真空溶解装置)は純鉄 99.9%を溶かしているので、NIMSの相図から見て、溶解温度は1538℃以上であると思われる。溶解温度は1600-1811℃か? 合金は下から1-2mmは溶けていないように見える。冷却速度は目視での色温度を考えると、12gの合金で、熱伝導率が6 W/mKのとき、400 - 600 K/m か? (通常のAr圧から0.1まで1.5min)。真空炉の炉冷では1000℃から常温まで6-8時間程度
・ メカニカルアロイングでは、ドープする元素もともと少ない状態となるので、相図からドープする元素が少ない場合での析出物を考えてみると正解の確率が高くなるかもしれない。析出物は相図で見て高い温度まで安定であるものが優先的に析出するかもしれない(高い温度までより安定ということは、その物質がエネルギー的により安定{自由エネルギーが小さい}だからか?)
・ liquid quenchは高い温度まで安定の傾向がある。750℃まで? 固相拡散しにくいためか?
・ Naをドープする方法は油中で切断して真空中で処理しなくても良い。フラックス処理でNaClを用いて焼き、Naをドープさせる。NaClで焼いた後は水で洗えば良い。表面が僅かにNaで置換されているはずだ。内部に入れたければ、これを何度も繰り返せばよい
・ XRDによる格子定数から析出を考えた場合、1から2%程度ではゼーベック係数や電気抵抗に影響は無い(多くの物質でこれが当てはまる)。2から3%になると物性に影響が出始める
・ わずかに析出(影響が出る3から4%程度のところ)すると少量の析出では常温付近でのゼーベック係数の絶対値が増加したりすることもある
・ 過飽和固溶解状態だとSEMで析出が見えなくなり、XRDによる格子定数のから見た変化も直線的になる。急冷却後、温度をあげた事項処理により析出が開始される
・ 同じ族での重元素置換の場合においては、電気抵抗値の違いは小さく、ゼーベック係数はわずかに異なる
・ 族が違う重元素置換の場合には、電子構造の変化がより大きくなり、ゼーベック係数の違いが大きく見られる
・ Fe2VAlにおいては、論文にあるようにFe/V比により、ゼーベック係数とVECに対するユニバーサルカーブが描ける
・ ゼーベック係数とVECに対するユニバーサルカーブで、300 Kにおけるゼーベック係数のピークのVECよりもさらにVECの変化を大きくした(ドープした)ところで出力因子が高くなる傾向が見られる。これらの条件を考慮に入れれば、元素置換してもVECが同じであるならばほぼ同じ物性の結果を得られる(析出が無い場合、誤差内でほぼ一緒の電気抵抗値とゼーベック係数値)。わずかに物性が異なる理由は、Akai-KKRなどの第一原理計算の結果と比較すればよい。Tiは性能が向上し易い。Nbは変化が見られない。Taは正のゼーベック係数を(シフトではなく)増大させる? Moは性能を低下? TiとWの同時ドープはTa/V置換と比較して性能が向上したりする場合があるが良くわからない
・ Fe2VAlにおいては、論文にあるようにV/Al組成比でnかpかが決まる
・母材の純度が低いと電気抵抗率、次いで、ゼーベック係数が悪くなる。99.9%と99.7%では違いが生じる(99.7%では30%程度抵抗率が増加)。99.7%はアーク炉でアークを打って(高融点のものが外に向かい、また、炭素も吐き出される)から砕いて使用すると99.9%と同等の結果を得られることもある
・FeV(フェロバナ)は対応が難しい。不純物の影響がやはり出る
・TaはSiとタンタルシリサイドを作りやすいので対処が難しい。Fe2VAlにおいてTa/V置換では、Ta 5%までにすれば、Si/Al置換は12%程度まで置換できる
・Fe2VAlにおいてW/V置換でW 10%では析出物を作る
・ 熱電性能の傾向(現在 2015年): n型 非化学量論組成 = Si > Ge = Mo > Co, p型 Ti > 非化学量論組成
・PFが大きいと喜んだが、電気抵抗率が低いことで熱伝導率が高くなっており、ZTが思ったよりも高くなかったこともある(重元素置換量が同じでも熱伝導率は1-2 W/(m・K) 程度は変わる)。電気抵抗率が高くてPFが高いものを狙うべし!!
・ VECを調整しても、置換する元素で結果は異なる。局在しているdに電子がある元素と、自由または遍歴的なspに電子がある元素では、結合様式も異なり、やはり結果が異なるということだろう

□ 不純物の固溶限
 濃度 = exp(- 生成エンタルピー / kBT) から計算できる
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■ 余談(MMRとZEMでのゼーベック係数測定の違い)
◇ 特徴
MMR: 下の架台でベースの温度、試料を載せる板で1.6-3 Kの温度差をつけて測定
ZEM-3: 炉の中でベースの温度、下の架台で10-50 Kの温度差(温度差はユーザーが設定できる)をつけて測定(10, 20, 30, 40, 50度の温度差での電圧のデータから、温度差と電圧の傾きによりゼーベック係数を求める)
以上の理由から、ZEMの方がMMRよりもピークの温度が50-100 Kほど低い温度側になる。加えて、ZEMのゼーベック係数の絶対値は1/1.1-1/1.2倍となることも多い。

◇ 測定の差
ZEM-3: 同じ試料を複数回測定したときの差:±0.5%程度
ゼーベック係数の標準試料
・コンスタンタン:各機関で結果が15%程度異なる
・Niが校正に良いとされる
※ 試料を冷やすタイプのオザワよりも、暖めるタイプのZEM-3の方がゼーベック係数が高く出る傾向
※ 現在の傾向だと、低温が測定できるMMRはZEMと近い値が得られる(400 Kではほぼ一致)。一方、高温が測定できるMMRではZEMの1倍のときもあるが、時として1.1-1.2倍の値が得られる。
※ 上記のような傾向があるとはいえ、電気抵抗よりも、ゼーベック係数はよほどのことがなければ正確に測れる
※ 儺は2.5〜3 Kが良いとされる。ZEM-3も可能なら温度差の設定は変更して測定した方が良い?
※ ZEM-3は測定中でも過去のデータを取り出すことができます。USBを差してデータを取り出してください。

◇ MMRの使用時の注意点
※ MMRの高温用の注意点として、アダブターのコンセントが電源に繋がったままであると、K-20とSB-100の電源を入れていなくても電流が流れ、ちょっとしたことで50万円程もする加熱冷却機が壊れる。MMRを導入する場合には、どういう条件で装置が壊れるかをこと細かく業者に聞いておくことが大切。架台のヒーター部分に熱伝導グリースを塗るが、グリースを下の配線につけてはいけない。
※ MMRでの低温では、湿度に注意すること。湿度が高いと結露し、冷却ができなくなる。
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■ 余談(熱伝導率測定のレーザーフラッシュ法について)
・比較する試料となるインコネル600にカーボンスプレーをかけずに測定すると、カーボンスプレーをかけたときよりも熱伝導率が2割ほど低くなる(※ どちらの場合にも試料にはカーボーンスプレーをかけている)。調べてみると、熱拡散率には変化無く、比熱が変化していることが分かった。
・IrisとAmpの値によっても数値が変わるので、正しい結果を与える条件にすること。例えば、標準試料が論文などで報告されている値になる条件にする。
・レーザーフラッシュ法の場合、熱拡散率は何度測定しても測定した結果が重なるので信頼しても良いと思う。一方、比熱は測定回数を多くして平均した値を採用することが大切。何度か測定して平均した値であれば、信頼性の高いDSCの値と悪くない程度に良い一致を示す。50℃毎に測定し、各温度4回測定した比熱および熱伝導率の温度依存性を多項式で3次から5次程度でフィットして比熱と熱伝導率を決めればよいだろう。

◇ LF法は10%程度の精度だといわれる
レーザーフラッシュでの誤差(実際に調べてみた。LFA 1000を使用)
・熱伝導率:11%程度(±5.5%程度)
・熱拡散率:3%(±1.5%程度)
・比熱(ばらつきも測定日に依存):10%程度(±5%程度)
※ 比熱はばらつきも大きいが、測定回数を多くして、平均するとDSCの値に近くなるので、LF法で測定した結果を用いても良いと思われる。ただし、日を変えて結果に大きな差が無いことを確認することが必要になる。これまでのデータの蓄積があればそれらと比較して異常な値を見極めることができる。
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■ ボールミリング(装置開発業者(プロ)のやり方)
ボールミルの洗い方(水やエタノールではダメだった場合)
・容器に下記の比率で入れて装置を動かす
 ボールを容器の1/3 + シリカをスプーン1杯程度 + 水をちょっと多め (ボールが浸るくらい)
・シリカは炉を扱っている企業で買うとよい
・シリカはパウダー状だが粗いものでよい
・シリカはキロ数百円のものを買えばよい
・ボールとシリカの分離には、百円均一で変える茶こしなどを使えばよい
※ ボールの表面のキズが消えてつやつやになるとのこと。
※ ボールミリングなどでは、他機関と完全に条件を一致させないと同じ結果を得られないので、そういったリスクがあることを認識しておくこと。ボールの表面のキズが消えてつやつやになることで再現性が得られるかはまだ分からない。
※ 洗浄が大変な場合には、教官と相談の上、上記の洗浄方法を行なってみるとよい。
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■ 余談(道具)
□ ピンセット
(値段の高いピンセットは値段相応に使い易い。長時間秤量しても疲れ難い)
・MMRやそれに類する細い試料のセッティング用: K1-AA
・試料の移送(薬包紙 > アーク炉):MEISTER 00B-INOX & 百均のピンセット曲型(で先端に堀や溝があるもの)
・秤量:HOZAN P-894
・100円程度の先端に堀があるものが学生に人気。何故なんだろう?
※ ピンセットの先が欠けたら、グラインダーを使えば使えるようになる。エメリーペーパーなどで磨けば新品同様になる。

□ 秤量のための試料の切断器具
・比較的柔らかく細かな試料の切断:ergo bahco 2101G-180
・比較的硬い試料の切断:MCC ミゼットカッター

□ アーク炉の掃除
・RYOBI HR-100(もうすこし小型の物があればよかったのだが……)
 リリーフは下記を用いると良い
・TRUSCO ステンレス 傘型ブラシ(軸φ3mm, φ10mm) 103K-4
・エスコ ステンレスワイヤーブラシ(軸φ3mm, φ8mm) EA819AH-12
※ 軸は長すぎるので棒の部分を1〜2 cm程度ノコギリなどで切ればよい。

□ キムワイプやキムタオルが購入できない場合
・市販のトイレットペーパー + エタノールやソルミックスで十分研究が可能
・トイレットペーパーは水に溶けやすいので水のみを扱う場合は注意
※ とある研究室に配属されてトイレットペーパーで十分研究できたときにはカルチャーショックを受けた。多くの機関でも無駄な経費を削減するために検討して欲しい。

□ 粉末試料の粒径を揃えるためにふるいを用いている場合
・超音波洗浄機を用いて洗浄
・ドライヤーでも良いが乾かすための台座などを用意しておいた方が良い
・お金があれば乾燥機を購入しておくことをオススメしたい(作業効率が向上する)
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■ 読んでおきたい和文論文
http://www.fml.t.u-tokyo.ac.jp/~izumi/CMS/LectureNote_CrystalDefect2015.pdf
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