IR&Raman

 ここでは、分子軌道法及びバンド計算法によるRaman分光の結果の得方をまとめる。
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■ 分子軌道法
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□ GAMESSの利用
参考文献
・ 『すぐできる 量子化学計算ビギナーズマニュアル 』
・ 『Gaussianプログラムによる量子化学計算マニュアル 計算入力法から実験値との比較まで 』(NMRの計算に関する記述がある)
・ 使用方法は上記の文献を参考にすれば良いが、Raman分光の計算をする方法については詳細に解説さていない。そのため、本解説では、特にWinmostarを用いたRaman分光の計算方法を解説する。

□ WinmostarによるRaman分光の結果の得方(Winmostarがアカデミックフリーではなくなったので注意)
1) RUNTYP=OPTIMIZEで計算
2) RUNTYP=HESSIANで計算
3) case.pun(case=ファイル名)にある$HESS 〜 $ENDまでをコピーして、Winmostar の右欄のDebug の下の空欄にペースト
4) $STARTでHESSをREADにする
5) RUNTYP=RAMANで計算
(Fireflyは並列計算が可能であり、条件にもよるが計算速度が数倍度速くなる。Fireflyを利用可能にして計算することも試されたい)

□ FacioによるRaman分光の結果の得方
計算方法は下記のHPに記載されている。
(下記のまとめは、参考文献 http://egfinal.jp/another/gamess.html より作成)
「 振動解析:File>Load new gamess output for optimized geometry→$CONTROLのRUNTYPをHessianに変更して計算。
 Raman:Hessian演算後、File>Load New GAMESS>Get HESS grout from gamess punchでHessian演算の結果を読み取り→RUNTYPをRAMANに変更して計算」

□ 高精度な計算
以上の計算結果では、スケールファクターを用いて比較する方法があるが、より精度の高い計算方法が『すぐできる 量子化学計算ビギナーズマニュアル 』で解説されている。以下にその方法を記す。(Winmostarでの方法を調査中)
1) 構造最適化計算(OPTIMIZEで計算)
2) 振動解析(HESSIANで計算)
3) RUNTYPE=VSCF とする
4) $VSCF NGRID=12 PETYP=DIRECT $END
  または、PETYP=QFF
5) case.pun で得られる$HESS 〜 $ENDを貼り付け
※ PETYP=DIRECTはポテンシャルエネルギーを全てのグリッドで計算する高精度な方法。時間負荷が非常に大きい。計算負荷はNGRID で指定した値の2乗に比例して計算負荷が増加数する。デフォルト値(16)より下げることがお勧め。
※ PETYP=QFFは4次テイラー展開のポテンシャル関数を作って振動状態計算を行う方法。計算精度はDIRECTよりも落ちるが、計算速度が約10倍早くなる可能性がある。計算負荷はNGRIDにほぼ影響されない。。デフォルト値(16)のままでよい。
※ 非調和振動数計算の結果はアウトプットファイルの一番最後に記載される。
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■ バンド計算法
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PWscf: 左欄のPWscfを参照してください。
ABINI: かなり難しい。
CPMD: 試していない。
VASP + Phonopy: 小さい単位胞の系なら私は計算に成功(左欄のVASPを参照)。
WIEN2k + Phonpy: 小さい単位胞の系なら私は計算に成功(左欄のWIEN2kを参照)。
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■ RISEの利用
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精度が高いRaman散乱の計算コード
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■ Raman分光法 ([8,11]を見ると良いだろう)
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□ 赤外分光とラマン分光の比較
・赤外(IR)
特徴:官能基(C=O, C-H など)、側鎖、汎用性
空間分解能:10μm
問題点:水蒸気吸収、試料の形状によってピークの位置やスペクトルの形状が変化する
試料:有機物一般、組成・同定

・ラマン(Raman)
特徴:骨格振動(C=Cなど)、選択性、断面測定、低波長領域側の測定が容易(最新のであれば10cm-1から測定可能)
空間分解能:0.5μm
問題点:蛍光によるBG(対策:試料厚さを薄くしたり、波長を長くしたりする)、標準データの不足
試料:無機化合物(単純立法格子で単位胞に1原子のものを除く{3*1-3=0で理論的に観測できない})、配向・結晶化度

□ Raman スペクトルから得られる情報[1,2]
・ ピークの強度:物質の濃度(検量線を作ることで比較が可能? ただし、スペクトルがサチらないこと)、対称正、面方位、結晶性
・ ピークの位置:化学結合、組成、結晶子サイズ、応力(特にピーク位置のシフト)、バンドギャップ
・ ピーク位置のシフト:応力(cm-1が大きくなると圧縮)
・ ピークの半値幅:結晶性(ピークの幅が狭くなると結晶性が良い)、結晶子サイズ、応力の不均一性
・ ピークの本数:対称性が(結晶の場合、最大で[3N-3]本現れる。それよりも少ないときは縮退している)

□ 蛍光やリン光の対策
・ 電子と正孔は、それが再結合するまでに試料内を移動するために、広い範囲で蛍光が生じる。一方、ラマンは広がらない。このことを利用して、試料を薄くすることで、蛍光によるBGの増加を抑制することができる。
・蛍光は待てばBGが小さくなる。しかし、リン光は待ってもBGが減らないことを覚えておく必要がある。
・絞の径を小さくする。(大抵の場合は信号の強度が大きく落ちる前くらいの径にするが、蛍光がある場合は私は分からない)
・レーザーの侵入深さは、レーザーの波長の約1/10程度になる。
・一般的なサンプルは、共鳴などの影響を除けば、レーザーの波長を変えても、ピーク位置や形状は変化しないといわれている。しかし、その例外としてDLCが有名。
・ レーザーのパワー(波長)を変えるとRamanがシフトするのは熱の影響のため
・ 粒径が大きいと Γ点におけるRamanシフトくらいになる(理論計算の結果と比較する場合にはΓ点、そして他の点を探す)
※ 低いcm-1からのBGはレイリー散乱によるものなので、よいフィルターを用いることが必要となる。

□ 装置(ほとんどのRamanは顕微ラマン)
・ レーザー:昔はガスレーザー(高価で大型で水冷が必要で長持ちしなかった)、現在は半導体レーザー(長持ちで安価)。
  波長(強度は異なるが幾つかの波長の光が得られる)
  Ar レーザー: 514.5, 488.0, 472.7, 465.8 などが選択できる
  Kr レーザー: 647.1
  He-Neレーザー: 632.8
・ 分光器:主流はシングルかトリプル分光器
  シングル:エッジやノッジフィルターを用いることで 30 cm-1からの測定が可能。古いものだと200cm-1から測定可能。
  トリプル:現在 10cm-1から測定可能。
  昔は分光器にはプリズムを用いていた。現在は回折格子。
・ 検出器:昔はフォトマル、現在はCCD検出器

□ マッピング[2,3]

□ ラマン散乱の選択則[4,5,8,13]
 双極子モーメント μ = a * E = [ a0 + (∂a / ∂Q ) * Q + …… ] * E 
ここで、 aは分極率、Qは原子核の変位である。Q = Q0 * cos(2πvt), E=E0*cos(2πv0t)とすると、
 μ = a * E = [ a0 + (∂a / ∂Q ) * Q + …… ] * E = a0*E0*cos(2πv0t) + (∂a / ∂Q ) * Q0 * E0 * cos(2πvt) * cos(2πv0t)
=  a0*E0*cos(2πv0t) +(1/2)* (∂a / ∂Q ) * Q0 * E0 * [ cos(2π{v+v}t) * cos(2π{v0-v}t)]
となる。v0-vがストークス光(Raman分光のスペクトルに使われる)、v0+vがアンチストークス光である。
・ Q0やE0がゼロでないことは明白であるので、(∂a / ∂Q ) ≠ 0 でラマン散乱が起きることが分かる。一方、双極子モーメント(μ= a * E)の微分が0であるとIRは不活性となる。
・ Raman散乱が生ずるためには、分子が振動変位を起こしたときに分子の分極率が変化することが必要になる。一方、赤外吸収では分子が振動変位を起こしたときに分子の双極子モーメントが変化することが必要となる。

□ 倍音
 原子間距離が短くなると、原子どうしの反発が強くなり急にエネルギーが大きくなる。下記の式であらわせられる。
 V = a2*Q2 + a3*Q3 + a4*Q4 + ……
Q3 + Q4 の項は、非調和項と呼ばれる。
 T + V = (1/2)*( {dQ/dr}^2 + {k/μ}*Q^2) = E
上記の式にQ3まで入れると、下記のようになる。
 Ev = hcve*(v+1/2) - hcvx(v+1/2)^2
ここから下記のように、間隔が狭くなることが分かる。
v=0→1: hcv(1-2x)
v=0→2: 2hcv(1-2x)
v=0→3: 3hcv(1-3x)
一方、倍音の間隔が実験的に分かると、a2やa3を実験的に求めることができる。
※ 共鳴時には倍音も強度が増加する。

□ ボルツマン分布則
アンチストークス線の強度 / ストークス線の強度 = exp (-hcv/kT)
・ 室温でhcv/kT≒1となるのは約200cm-1である。

□ 交互禁制律(principle of mutual exclusion)
分子に対称の中心(center of symmetry)があると常に、ラマン活性のものは赤外不活性であり、赤外活性のものはラマン不活性になっている。

□ SERS(サースと呼ばれる)
機構は下記の2つが考えられる。
1. 表面プラズモンやポラリトンの励起により入射光と散乱光の電場が増大(物理的機構)
・微粒子のAg > Au > Cu で強度が強くなるが、1-2秒程度で測定できなければAgではなく、酸化しにくいAuがよく使われる。共鳴が起こる距離は200 nm以内まで。薄膜のAgやAuやCuではSERSが起こらないので注意が必要。
2. 金属と吸着種間の電荷移動によって生じた電子状態を中間状態とする共鳴ラマン散乱(化学的機構)
・金属依存性がなければ化学的。

□ Rmana散乱スペクトルでのマッピングと有限要素法での歪評価[6]

□ ガリウムヒ素の評価[7]

□ DLC
散乱断面積は G:D = 100:1 ?
・Gは縮む運動
・Dは六員環ではあるが周囲がないために原子位置が伸びる方向への運動。

□ 有機物であれば、Gaussian や GAMESSなどで計算して、だいたいの傾向や振動の同定をする。横軸はズレるが傾向があっていれば良いだろう。ピークの順番などが似ていれば振動の帰属もできるだろう。

[1] http://www.nanophoton.jp/raman/about.html
[2] http://www.mst.or.jp/method/eachmethod/a0010.html
[3] http://www.toray-research.co.jp/menu/jishou/jis_011.html
[4] http://www.rs.kagu.tus.ac.jp/yajilab/siryou_IRandRaman.pdf
[5] http://www.appi.keio.ac.jp/Itoh_group/coursework/pdf/01KAST.pdf
[6] http://panasonic.co.jp/ptj/pew/581j/pdfs/581_07.pdf
[7] http://www.scas.co.jp/analysis/pdf/tn024.pdf
[8] http://home.sato-gallery.com/education/el/hosoku_hikari06.pdf
[9] https://www.jstage.jst.go.jp/article/tanso1949/2007/228/2007_228_174/_pdf
[10] http://www.an.shimadzu.co.jp/ftir/support/lib/ftirtalk/talk/18.htm
[11] http://books.google.co.jp/books?id=6pwmySf1qYMC&pg=PA16&lpg=PA16&dq=%E3%83%A9%E3%83%9E%E3%83%B3+%E5%88%86%E5%85%89%E6%B3%95&source=bl&ots=bRmdxkFR88&sig=ZaCfcko-jhteynQkaAj_O3E3zmc&hl=ja&sa=X&ei=ZHzTUfTHJ4SmlAXYroGwAQ&ved=0CD8Q6AEwBTgy
[12] http://www.chem.chuo-u.ac.jp/~element/PDFs/OrgChem4/OrgChem4-02.pdf 
[13] 北川禎三、A. T. TU、”ラマン分光学入門”、化学同人
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