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フェーズフィールド法

  ここではフェーズフィールド法の基本情報について纏める。
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■ フェーズフィールド(PF)法
□ 場の秩序変数を用いた不均一場における連続体モデルに基づき、現象論的に材料組織形成過程を計算するシミュレーション手法
□ 位置および時間に依存する場の秩序変数を設定し、この変数を用いて複雑な組織が有する全自由エネルギーを書き下し、そのエネルギー散逸から発展方程式を定義して、秩序変数の時間および空間変化(組織形成過程)を計算する。
□ 計算モデルを構築する際、まず始めに重要なステップは、計算を行うために必要十分な秩序変数を定義することである。
□ 秩序変数の数が多いほど、より詳細な計算は可能となるが、計算時間や記憶容量の観点では、秩序変数の数は少ない方が望ましい。
□ 通常、考慮すべき秩序変数の数は、計算対象によって種々変化する。基本的に連続体モデルであるので、必要十分な秩序変数の数の決め方には研究者の主観に負うところが大きい。計算対象の組織の形態と状況を幾何学的に記述するのに必要な最小限の秩序変数を定義したりする。用いた秩序変数で、計算対象の組織の絵を幾何学的に描けるかどうかを判断基準にしたりする。
□ 材料組織の全自由エネルギーが最も効率的に減少するように、組織形成過程を非線形発展方程式にもとづき算出する。つまり、計算理論に、エネルギー論と速度論の双方が内在されている。
□ エネルギー評価法は、不均一な形態の組織が有する全自由エネルギーの一般的計算法となっているので、ナノからメゾスケールにおける複雑な材料組織安定性を効果的に解析できる。同時に、全自由エネルギーを基礎に組織形成過程を非線形発展方程式に基づき計算するので、本手法は組織の静的安定性と動的組織形成解析を兼ね備えた頑健な体系を有している。
□ シャープな自由界面の移動ダイナミクスを、拡散界面モデル(diffuse interface model)を用いて代替的に解く方法として提案された。拡散界面モデルを採用することによって、移動する自由界面位置を非常に簡便に定義できる点がこの手法の利点である。
□ 移動する自由境界(界面)問題(moving free boundary problem)は、スカラー場(Φ(r,t))のダイナミクスを記述する偏微分方程式を解く問題に置き換えられる。

■ 適応範囲
・デンドライト成長(凝固過程)
・拡散相分散(核形成、スピノーダル分解、オストワルド成長など)
・規則-不規則変態
・各種ドメイン成長(誘電体、磁性体)
・結晶変態
・マルテンサイト変態
・形状記憶
・結晶粒成長・再結晶
・転移ダイナミクス
・破壊(クラックの進展)
・外場(応力場、磁場、電場など)作用下における組織形成

■ 多成分・多相系の組織形成を記述する一般的な秩序変数
 秩序変数としては、多成分系の濃度場 ci(r,t)、及び、多相を記述するフェーズフィールド φi(r,t)である。
ここで、r = (x,y,z)は組織内の位置ベクトル、tは時間である。秩序変数の添え字 i は、濃度については成分の番号(Nc成分系では i = 1, 2, …, Nc)を、φi(r,t)については相の番号(相の数がNφの系では、 i =1, 2, ・・・, Nφ)を表している。φi(r,t)は位置rに、時間tにおいてi番目の相が存在数r確率を意味する。したがって、φi(r,t)の変域は 0 =< φi(r,t) =< 1 である。
 規則-不規則変態が関与する組織形成では、新たな秩序変数として長範囲規則度 ηi(r,t)が追加される。
ここで、添え字のiは位相の異なる規則層の境界が逆位相境界である。さらに強磁性相や強誘電相が関与する組織形成では、材料内部における自発磁化や自発分極を表現する秩序変数として、それぞれ、局所的な磁気モーメントベクトル M(r,t)、及び、分極モーメントベクトル P(r,t)が追加される。
 多結晶粒成長や再結晶の計算では、異なる結晶方位を持つ領域の存在確率を表す秩序変数として、先に説明したφi(r,t)が用いられる(方位の異なる結晶粒を異なる相とみなして計算する)。
 転移密度、eigenひずみ、クラック、ボイドなどを、場の秩序変数とみなせば、変形や欠陥のダイナミクスの計算がPF法の枠組みで可能になる。

■ 不均一組織の全自由エネルギー
 不均一組織の全自由エネルギー Gsys = Gc + Egrad + Estr + Emag + Eele
ここで、Gcは化学的自由エネルギーで、単相の均一場の化学的自由エネルギーを ci(r,t)とφi(r,t)を用いて機械平均することにより算出される。Egrad は勾配エネルギーであり、秩序変数場の空間勾配の二乗に比例する量として計算される。Estrは弾性ひずみエネルギーで、eigenひずみや弾性率が秩序変数の関数として表現され、マイクロメカニクスに基づき計算される。また外部応力場を考慮する場合には、 Estrに外部応力場に起因する力学的ポテンシャルエネルギーも考慮される。Emag は外部磁場や磁区組織に関連したエネルギーで、マイクロマクネティクスで扱われる全ての磁気エネルギーを含む。Eeleは電気エネルギーで、外部電場やクーロン相互作用(誘電体では電気双極子-双極子相互作用)に起因する電気エネルギーを含む。
 これらの各エネルギーが、秩序変数の汎関数として表現される。材料科学においてエネルギーを考慮していない分野は、おそらく存在しないであろう。したがって、PF法では、個々の学問分野にて長年培われた最先端のエネルギー計算手法を集約し活用することができる。特にエネルギーはスカラー量であるので、異なる分野におけるエネルギー計算式であっても、比較的容易に加算することができる点も大きな利点である(しかし、二重評価部分が存在しないように注意が必要ではある)。ただし、各種のエネルギーの評価式は、通常、計算精度に依存して非常に多種多様に表現されている。

■ 発展方程式
 秩序変数は、物理的に保存変数と非保存変数に分類される。形式的にPF法は、以下の保存場、及び、非保存場の非線形発展方程式を同時に数値解析し、組織形成の時間発展を計算するシミュレーション手法と見なすことができる。
 保存場: ∂ci(r,t) / ∂t = ∇・{Mij ∇ (δGsys / δcj(r,t))}
 非保存場: ∂si(r,t) / ∂t = -Lij  (δGsys / δsj(r,t))
ci(r,t)、及び、si(r,t) は位置rおよび時間tにおける保存場並びに非保存場の秩序変数えd、iは秩序変数の番号である。Mij とLijは、各々の秩序変数の時間変化に対する易動度(緩和係数)で、一般的には秩序変数と温度の関数となるが実際の計算では定数もしくは温度のみの関数とされる場合が多い。Gsysは相変態組織全体の全自由エネルギー汎関数である。Gsysを用いて、Gsysの秩序変数に関する変分(δGsys / δcj(r,t)  と (δGsys / δsj(r,t)) )を解析的に導出できるので、上記の発展方程式の数値計算は、通常の非線形偏微分方程式に対する時間発展形式の数値計算に等しい。したがって、従来、計算力学や計算流体力学の分野にて発展してきた各種の数値計算手法を活用できる。
 PF法は、エネルギーの減少する方向にしか組織変形を計算しない。特にエネルギーがいったん増加する核形成過程をPF法は計算できない。したがって、PF法における組織形成の計算では、初期核(もしくは場のゆらぎ)を人為的に与えた計算が行われている。例えば、スピノーダル分解では、通常、初期組織に微細な濃度揺らぎを導入することによって計算が行われる。核形成-成長型の相分離では、古典的核形成理論に従って、核を人為的に導入する手法が採用されている。核形成過程は相変態において極めて重要であるが、PF法の枠組みでは、核形成は直接扱えないことを理解しておくことは非常に大切である。

□ SGTE pure: http://www.crct.polymtl.ca/sgte/index.php
□ Redlich-Kister(R-K)級数(Lij(n)=a+bT
 実際の容体の過剰ギブスエネルギーを再現するには相互作用パラメーターの濃度依存性の導入が必要になり、R-K級数が広く用いられている。
 a:非温度依存性項、±107 J/mol以内
 b: 温度依存性項、±103 J/mol以内
 各パラメーターのRSD(Relative Standard Deviation、パラメーターの相対標準偏差)が0.5以下。
 パラメータの数が多すぎる場合やデータの重みづけが適切でないとRSDが大きくなる。
◇ 幾つか原子の配置を変えた単純な構造の形成エネルギーを第一原理計算から求める。それを再現するようにR-Kパラメーターの非温度依存項を与える。温度依存項を最適化の対象とする。
 初期探索にPANDATのPan-Optimizer(極大極小機能のため、溶解度ギャップを意識することなく最適化を進めることができる)、詳細な熱力学アセスメントにはThermo-calcのParrotモジュール(コマンドの種類が多い)を用い、可能であれば両者を用いる。
◇ 熱力学モデル
・正則溶体モデル: 液相や固溶体相
・副格子モデル:
※ [http://www.materials-design.co.jp/faq/faq2.htm]を見ると良い。

□ スピノーダル分解(A-B-C成分系合金における拡散相分離)
ユーザーが入力するパラメーター(A-Bの二元にするときは c3=0とすればよい)
・ 相互作用パラメーター
 標準的な値: 2.5x104 J/mol
・ 濃度勾配エネルギー係数
 標準的な値: 5.0x10-15 Jm2/mol
・ 易動度
 無次元量: Mc(22)=Mc(33)=1, Mc(23)=Mc(32)=-0.5

□ マルテンサイト変態
ユーザーが入力するパラメーター
・ 変態の駆動力
 標準的な値: 1.0x103 J/mol
・ 勾配エネルギー係数
 標準的な値: 5.0x10-15 Jm2/mol
・ ラメの定数:試料に依存
・ 変態ひずみ:試料に依存

参考文献
[1] 小山敏幸ら著、フェーズフィールド法入門、丸善出版、2013年
 pp.44-49に書かれているソースコードはC言語で書かれている。内容みると、書籍に書かれている式のとおりに記述されており、非常に読みやすいコードになっている。
 複素フーリエ変換についても理論的な説明があるので非常に助かる。
 clapackなどを使っていてそれについて解説されていたらもっと嬉しかったのですが……。出来る方は自作した方が何かと便利ですものね……。
[2] http://www.jim.or.jp/journal/j/pdf3/73/12/891.pdf
[3] http://tkoyama.web.nitech.ac.jp/Materials_Design/MDS_Phase-field_method.pdf
[4] http://www.cs.kyoto-u.ac.jp/wp-content/uploads/2012/07/01takaki.pdf
[5] http://ist.ksc.kwansei.ac.jp/~nishitani/Lectures/Kyoto/CompMatSci/PhaseField.pdf
[6] http://www.jasma.info/wp/wp-content/uploads/2013/02/2013_p024.pdf 
[7] http://web.math.sci.hokudai.ac.jp/~tonegawa/ws.pdf
[8] http://www.pfm.kit.ac.jp/index.html
[9] 日本金属学会関東支部 『ここまでできる。計算材料科学入門』
[10] 阿倍太一『材料設計計算工学 計算熱力学偏』内田老鶴圃
[11] H. L. Lukas, S. G. Fries and B. Sundman: Computational Thermodynamics, cambridge (2007).
[12] http://www.materials-design.co.jp/
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